今年初の花粉光環2019/03/01

20190301日没時の花粉光環
雨ときどき曇りの天気は昨日一日だけでなく、今日の朝まで続きました。午前中は雲が高くなったものの日は差しませんでしたが、午後になってゆっくり青空が戻ってきました。

外出してたので太陽観察はできませんでしたが、どうも鼻がむずかゆく、スギ花粉が多そうなことを肌で感じました。帰宅後にベランダから空を見ると、ちょうど隣家の屋根に太陽が隠れるところでした。うまく太陽面だけ隠れるように撮影すると(左画像)、あったあった、花粉光環が見えていました。

20190301日没時の花粉光環(強調)
夕方なので届く太陽光が赤系の色で占められ、干渉縞も虹色にはなりません。ですが太陽を取り巻くこのオレンジの環は、経験上スギ花粉による光環だと考えられます。右は夕日色成分を差し引いて光環が強調されるよう画像処理したもの。こうすると分かりやすいですね。明日晴れたら、太陽が高い時間にも確認してみましょう。はぁ、ついにこの季節になってしまったかぁ…。

LBVに望遠鏡を向けるも…2019/03/02

20190302_TCP J10524124+3640084 NGC3432
昨夜から今朝にかけて、雲が流れているもののいつもよりは晴れ間の多い夜でした。折しも新月期、チャンスは最大限に活かすべきですが、このところの体調不良と春霞の酷さが悩みどころ。

2月24日に山形の板垣公一さんが増光を発見した、NGC3432にあるSN2000ch(TCP J10524124+3640084)が天気の都合でずっと撮影できませんでした。だいぶ日が経ってしまいましたが、これをメインターゲットに考えつつ雲行きを見計らって撮影(左画像/白黒反転)。機材調整や新たな撮影ルーティーンのテストも兼ねています。フラット取得がうまく行かず斑がありますが、銀河自体はよく写ってくれました。

増光した天体は新規の超新星ではなく、これまでも平均1.5年に1回程度増光が確認されています。LBV(高光度青色変光星/Luminous Blue Variable)と考えられている天体だそうですが、今回の増光は17.9等で報告されており、自分の機材ではギリギリ。もう減光してると思われ、左上画像マーカー位置の天体がLBVなのかどうか怪しいところです。ただでさえこの時期はシャープに撮れないですからね。でもまぁ、この奇天烈な格好の銀河を撮影できただけでも良しとしましょう。

20190301岩本彗星(C/2018Y1)
日付変更前にはぎょしゃ座の星団や星雲を横切っている岩本彗星(C/2018Y1)も軽望遠で狙ってみました。夜半前は霞が酷く、3等星が見えるか見えないかといった空でした。赤道儀の調子も悪く、思うように撮影がはかどりません。どうにか画像に仕上げましたが(右)画質は最悪です。彗星をアップで撮ったほうが良かったかも知れませんね。

岩本彗星を撮っている頃は頻繁に雲が横切り、撮影中断の連続でした。でも明け方が近くなると次第に安定し、いつの間にか雲もなくなりました。

20190302月と土星
薄明が始まったころには、細くなった月と土星が南東低空に並んでいました(左画像)。追尾できる架台を用意できなかったので、三脚での固定撮影です。月の右上、いちばん明るい星が土星。月中心との離角は約1.3°でした。月周囲にオレンジ色の淡い光環が見えたのですが、モヤのせいではなく、花粉光環だったかも知れません。濃い日は細い月でも見えることがあります。

明日明け方は更に低くなった月と金星とが並びます。晴れれば見事な景色になるでしょう。ご覧になりたい方は、低空までよく開けた場所を探しておいてくださいね。花粉症の方は十分な対策もお忘れなく。

参考:
岩本彗星(C/2018Y1)に関係する記事(ブログ内)

今日の太陽と花粉光環2019/03/02

20190302花粉光環
最初に本日15時ごろの花粉光環をご覧いただきましょう。極めて鮮明に出現しています。ここ数日の雨と暖気、そして今日の快晴で一気に来た感じです。

私は花粉アレルギーがそんなに酷いほうではないのですが、それでも今日は鼻や目が敏感に感じ取って苦しいです。せっかく暖かくなってきたのに気ままな散歩ができないとか、外に洗濯を干せないのは辛いですね。きっと同様に辛い思いをしている方は多いのでしょう。

これから1ヶ月ほどはこのスギ花粉光環が観察できます。左画像は小さなボールを吊るし、カメラに直接光が入らないようにして撮影したもの。写真に撮る場合は何らかの方法で太陽を隠してください。太陽を直接見たり、光学ファインダー越しに見てはいけません。ご自身の目だけでなくカメラセンサーやパーツもダメージを受けます。くれぐれもご注意くださいね。また、月齢に関係なくお月様でも見えます(→参考記事1参考記事2)。もちろん満月に近いほど光環もはっきりします。花粉ではなく水滴による光環なら、金星や木星などでも見えます(→参考記事)。

20190302太陽
あらためて、いつもの太陽観察。こちらは11:20前の撮影です。昨夜からずっと晴れていたので、午前中から気温が高めになり、大気の揺れも大きくなりました。とは言え、活動領域は無く、静穏な光球なので目を引くものはありませんね。

20190302太陽リム
右上リムにやや高くなったプロミネンスが見えました。ループしているようには見えず、鎌首を持ち上げたヘビ…というより、芽を出し、背を伸ばすゼンマイのような形に見えます。

参考:
午後に花粉光環がクッキリ(形に関する記事・2016/03/15)
今日の太陽と花粉光環(色に関する記事・2015/03/05)

勾玉星雲に近づく岩本彗星2019/03/03

20190302岩本彗星(C/2018Y1)
昨夕から空に薄雲がはびこり始め、夜半前にはすっかり曇ってしまいました。でも宵のうちはまだ星座が何とかたどれるくらいに見えていたため、早々に望遠鏡を準備して岩本彗星(C/2018Y1)に向けました。ちょうどぎょしゃ座の勾玉星雲(IC405)近くを通りかかるタイミングだったのです。

1日前の撮影では拡大率を下げすぎて彗星のディティールがうまく出なかったため、今回は3倍ほど焦点距離を上げて撮影しました。ずっと薄雲がかかっており、彗星や星雲のディティールどころかファインディングすらままなりませんでしたが、どうにかカメラに納めることができました(左画像)。街中の光害や雲に屈せず、わずかでも撮影チャンスに恵まれたことに大感謝。天の恵みは自分ではどうしようもありませんから。

彗星頭部に広がるエメラルドグリーンの部分は「コマ」とも呼ばれますが、髪の毛を意味するcomaというラテン語が語源とされるそうです。ふわっとした様子が髪に見えたのかも知れませんが、どちらかというと伸びた尾のほうが長い髪に見えるような…。髪を結ったり盛ったりするのは今に始まった文化ではなく、何千年という歴史があります。長い宇宙の時を刻む彗星の輝きには負けますが、髪型にも相応の伝統や様式、考え方などが絡んできて面白いものです。

古代の装飾品であった勾玉にも様々な意味合いがあったと言われます。この画像にあるような赤い勾玉には「健康であるように」との願い。青い勾玉なら生命の源である水の恵み、白い勾玉なら長寿…といった具合。原石の色を見て使い分けるとは、なんと繊細な工芸魂なのでしょうか。私も5年ほど前に大病で入院した際、お守りの勾玉を知人のお子さんから頂きました。「色々な意味があるんですよ」と教えてもらい、感心したことを思い出します。いわゆるパワーストーンなどは信じませんが、有形物であれ無形物であれ、そこに人の想いが込められているという事実こそ大切で、尊いことだと感じます。

どんどん雲が厚くなるなか大慌てで撮った空のワンシーンですが、その割にあれこれ思い耽ってしまう時間を過ごせました。ふと我に返ると、すっかり雨が降り出しそうな空模様…。

参考:
岩本彗星(C/2018Y1)に関係する記事(ブログ内)