今日の太陽と望遠鏡トラブル2025/07/08

20250708太陽
新暦七夕の昨夜は曇り。夜半頃かろうじて雲間から織姫星、彦星、デネブ、真っ赤な朧月がチラッと見えたものの、それっきりでした。今日も晴れ間はあるのに雲が多い空。透明度も悪いです。

20250708太陽リム
左は13:50前の太陽。雲間から出たところを狙いました。13:16ごろをピークとしたM2.48クラスフレアが発生したようで、撮影時もまだC5.5くらいありました。場所は左端やや上、明るく吹き出している小さなプロミネンスのところ。(まだはっきり見えてない所なので、採番はされていません。)

実はこの30分ほど前にも撮影を試みたのですが、この太陽望遠鏡(Phoenix)を使い始めて初めてのトラブルに見舞われました。太陽像に縞模様が現れ、ピントも全く合わない。PCではなく望遠鏡かカメラのどこかがおかしい。結線を全て外し、望遠鏡も全て分解し、ひとつひとつ組み立て直し、いじり回していたら、いつの間にか縞模様は出なくなり、ピントも合うようになりました。でも何かいつもと違う写り方。違和感を残したままこの撮影をした次第。原因は全く分かりません。いつもと変わらない手順なので、考えられるとすれば熱暴走くらい。何なのでしょうね?ちゃんと撮れてたらMクラスフレアどんぴしゃだったのに。

気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は908、真夏日地点数は756、猛暑日地点数は156、国内最高気温は大分県日田ポイントの38.6度。昨日は猛暑日地点数が今年初めて200を越え、210でしたから、今日のほうが少し涼しい?

今年の地球最速日はいつになるかな?2025/07/07

2017年1月-2025年5月のLOD累積
A.LOD累積
前回の「うるう秒」調整は2017年始の0時UT(9時JST)1秒前。もう8年半も実施がなかったので、その必要性を忘れてしまった人が多いかも知れませんね。

国際地球回転・基準系事業(IERS/INTERNATIONAL EARTH ROTATION AND REFERENCE SYSTEMS SERVICE)から7月7日UT付けで「2026年1月1日(2025年12月末UT)のうるう秒挿入はない」と発表がありました(→IERS News:2025年7月7日UT付けBULLETIN-C70)。これにより、少なくとも次の閏秒調整日の2026年6月末UTまではUTC-TAI = -37秒のままです。最後のうるう秒挿入(2017年1月8:59:60JST)から9.5年間うるう秒無し確定。

左上図は2017年のうるう秒挿入直後を原点として、1日ごとのLOD(Length of Day:1日の実測長)差分値を足してゆき(水色線)、正確な時を刻む原子時計に対して自然に基づく時計がどれだけズレているか(緑線)を表したグラフ。(※測定データは今年6月1日までを利用。)また右下図は、LODと24時間=86400秒との「差」の実測値(薄青線)、および31日移動平均(赤線)をグラフ化したもの。

2020年1月-2025年5月のLOD差分変化
B.LOD差分変化
ひところ騒がれた「史上初の閏秒削除か!?」というニュースはめっきり減ったけれど、右グラフで分かるように安心できるほどマイナス傾向が減ったとは言えず、むしろ毎年7月から10月までの4ヶ月動向が運命を握ってると言えなくもありません。とは言え「地球一回転はほぼ24時間」という期間は当分続きそうです。

このように、現在は1月と7月の初旬にIERSから「次の半年をどうするか」という発表があるのです。逆に言うと、うるう秒調整の有無は地球自転を実測しなければ分からないので、わずか1年先でも予測ができません。

うるう秒調整頻度があまりにも少ないと対処が疎かになったり忘れてしまったりで、システムクロックを直した瞬間に金融システムがダウン、チケット予約が大混乱、交通運行に支障が出る、といったトラブルが予想されます。不定期な「うるう秒調整」の仕組みが産業界を中心に大反対されている所以です。ある意味「2000年問題」にそっくりですね。

以前このブログにも書いた通り、国際電気通信連合を中心に「2035年までにうるう秒という制度を無くす」方向で話がまとまっています。でもズレが無くなる訳ではないため、原子時計と自然時計のズレをどう管理するかはまとまっていません。議論の混乱っぷりは国立天文台・暦wikiのこのページをお読みください。

微々たる量であっても、ほとんどの天文ソフトや現象の計算、移動天体の位置測定、自動導入など架台駆動ドライバ、ファイル管理アプリなどは現行の時刻システム上で作られており、自然時計との縁は切れません。大きな改修が必要になる可能性もあるでしょう。残り10年で可能なのでしょうか?
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ところで6月中ごろ、天文暦や時間の深掘りサイトで有名なTimeanddate.comに「Earth Will Spin Unusually Quickly in July and August」と題したトピックが掲載されました。2020年以降の夏期に起こっている「地球最速の日」について報じています。地球最速と言うのは要するに「LOD差分測定値がマイナス側に最も振れた日」、つまり地球1回転が24時間よりもかなり早く終わった日ということ。(※かなりと言っても1/1000秒のオーダーです。)「1日が最短の日」と言い換えても良いでしょう。

最速日は前出のB図にも書き込んであります。毎年決まって夏場に起こり、2022年6月29日に観測史上いちばん速かったとニュースになったのに、2年後の2024年7月5日にはあっさり塗り替えられました。記事では2020年以降の傾向として書かれていますが、調べるともっと前の1999年ごろからLODの減少が続いていたようです。

記事中に「地球最速日は月の赤緯が最大または最小になるタイミングで起こる」とあり、目から鱗が落ちました。地球の自転を遅くする主要因は海の潮汐摩擦と考えられますが、その海の満ち引きを操るのは太陽や月の引力。月が赤道上にある時に潮汐摩擦が大きくなり、赤道面から外れるほど小さくなります。言われてみれば当たり前なのに、意識してなかったから完全に見落としていました。

LOD変化と月の視赤緯変化の同期性
C.LODと月の視赤緯はシンクロする
さっそくIERSが公開しているLODデータと月の視赤緯がどれくらい同期してるか、直近の1年ぶんを計算しました(左図)。どうですか、この見事なシンクロっぷり。年を変えても同じでした。振動数が2倍の関係になってますね。月の赤緯がゼロになる(天の赤道を横切る)のはひと月に2回。図の緑線が0°を横切るとき青線が上昇、また、緑線が最大または最小になる時に青線が下降してます。青線全体が緩やかに上下してるのは月以外の要因がありそう。

Timeanddate.comには太陽の影響まで書いてありませんが、遠日点を迎える7月頭に海水を引っ張る力が弱まって潮汐摩擦に影響を与えるであろうことは想像に難くありません。もちろん太陽も赤緯の変動はあるけれど、周期は1年と緩やかで、夏至近くと冬至近くは南北に離れます。夏至から半月しか経ってない今は潮汐への影響が最も少ないと思われます。距離の遠さと相まって、夏に地球最速となることと深く関係ありそうです。今年はまだ最小期間が訪れていないのですが、前出記事の冒頭に今年の予想日として7月9日、同22日、8月5日の三つが挙げられています。これはいずれも下記の通り月の赤緯極値日に他なりません。

  • 2025-07-09 06:29:47 UTC、7月の最小赤緯:-28.4225°
  • 2025-07-22 10:03:07 UTC、7月の最大赤緯:28.4709°
  • 2025-08-05 14:05:43 UTC、8月の最小赤緯:-28.5303°

ざっくりまとめると「月や太陽が遠い時期、かつ赤緯が赤道から離れるほど地球自転は速くなる」ということになるでしょう。IERSサイトからは1962年始めから昨年2024年まで全日程ぶんのLODが公開されてますので、全ての年での地球最速日と、その近辺の月赤緯極値日を洗い出してみました。記事下の表に掲載しておきます。所々24時間以上の差が出ることはありますが、大半はプラスマイナス12時間以内に収まっていてびっくり。ときどき小惑星が月へ衝突する可能性がニュースになります。月そのものの変化は微々たのものかも知れませんが、わずかな軌道の狂いが巡り巡って時刻システムに大きく影響するバタフライ・エフェクトはありそう。いやぁ、知れば知るほど面白いですね。

【地球最速日=1日が最短の日/1962-2024年の年ごとの集計】
地球最短日
(UT)
LOD
(ミリ秒)
UT1-UTC
(ミリ秒)
月赤緯極値日
(UT)
視赤緯
(°)
ずれ
(時間)
1962年7月2日0.2820-8.33667月2日 01:02:1520.49421.038
1963年7月20日0.5080-85.79517月19日 17:38:4222.0808-6.355
1964年6月25日0.5400-118.60526月25日 17:27:17-23.767617.455
1965年8月9日1.0960-2.82958月9日 00:02:30-25.41290.042
1966年7月17日1.1680-17.75447月16日 23:46:0726.7168-0.231
1967年7月20日1.122046.13387月19日 21:25:55-27.7471-2.568
1968年6月26日1.0600-1.60396月25日 17:51:1528.2909-6.146
1969年8月9日1.271024.61338月8日 20:27:1328.5780-3.546
1970年7月30日1.2310-38.55747月29日 13:56:3628.2078-10.057
1971年8月3日1.8090-80.11908月3日 02:42:39-27.41672.711
1972年8月19日1.9110236.78628月19日 04:57:15-26.13754.954
1973年8月9日1.8520132.44778月8日 20:44:46-24.6376-3.254
1974年7月30日1.5110128.98437月29日 17:33:59-22.9841-6.434
1975年7月20日1.4450164.96337月19日 22:59:26-21.3196-1.009
1976年6月26日1.8230197.82046月26日 08:57:5619.90278.966
1977年8月10日1.456073.41038月10日 07:17:5018.65757.297
1978年7月31日1.491027.10097月31日 13:45:1718.336513.755
1979年7月23日1.428037.08047月21日 23:31:1718.6932-24.479
1980年8月8日1.2690144.27928月7日 17:52:1619.6395-6.129
1981年7月16日0.6850352.98727月16日 03:31:41-21.10433.528
1982年8月2日0.8330565.33018月2日 09:56:47-22.76079.946
1983年7月24日0.9849717.68497月23日 06:36:49-24.4113-17.386
1984年7月12日0.079590.02577月12日 04:58:26-25.92354.974
1985年7月16日0.1080540.87967月16日 13:57:1027.170513.953
1986年8月2日-0.005651.31648月2日 13:28:4628.091613.480
1987年7月23日-0.0865-412.45577月23日 04:28:5428.46504.482
1988年7月12日-0.087884.23017月11日 23:27:0828.3963-0.548
1989年7月2日0.2652-386.02187月1日 23:52:3127.8642-0.124
1990年7月20日0.6276-61.15277月19日 12:58:2426.9503-11.027
1991年6月27日0.7953230.40876月25日 19:24:29-25.6203-28.592
1992年7月12日0.8327427.71277月11日 22:53:41-24.0619-1.105
1993年7月16日1.2760576.85217月16日 15:24:1222.327915.403
1994年7月6日0.8566777.90877月6日 17:03:3620.728517.060
1995年7月25日0.8106-96.67547月24日 03:59:2819.3266-20.009
1996年8月10日0.6511138.72698月9日 17:45:1118.4232-6.247
1997年7月4日0.5519524.96267月3日 22:11:3018.4592-1.808
1998年7月9日0.0201-103.01017月8日 21:12:44-19.0361-2.788
1999年6月29日-0.1226519.59106月29日 04:36:41-20.22264.611
地球最短日
(UT)
LOD
(ミリ秒)
UT1-UTC
(ミリ秒)
月赤緯極値日
(UT)
視赤緯
(°)
ずれ
(時間)
2000年8月12日-0.3243199.63448月11日 19:15:12-21.7572-4.746
2001年8月1日-0.7212-23.31918月1日 17:59:35-23.429717.993
2002年8月6日-0.7350-225.15618月6日 07:02:4725.10487.047
2003年7月13日-0.9677-360.94337月12日 22:59:52-26.4659-1.002
2004年7月15日-1.0568-461.92847月15日 20:53:1027.545420.886
2005年7月5日-1.0649-612.51277月5日 13:14:2428.209113.240
2006年6月12日-0.3780199.98436月12日 10:39:14-28.450510.654
2007年7月27日-0.6348-161.95597月26日 23:33:43-28.2931-0.438
2008年7月16日-0.3822-448.80207月15日 15:15:23-27.5573-8.743
2009年7月5日-0.4134233.83617月5日 07:52:12-26.44957.870
2010年7月23日-0.8067-52.61457月22日 11:36:18-25.0210-12.395
2011年7月13日-0.3394-292.16147月12日 17:11:44-23.3670-6.804
2012年7月15日-0.3276413.43827月16日 01:40:0721.652125.669
2013年7月6日-0.349057.87347月6日 02:33:4820.15862.564
2014年7月25日0.0122-313.15647月23日 16:00:4018.9273-31.989
2015年6月17日0.2078-667.99606月16日 20:12:5718.4573-3.784
2016年7月17日-0.0449-220.02447月18日 04:11:30-18.580128.192
2017年7月8日0.0652357.51587月8日 11:23:03-19.456611.384
2018年6月29日-0.680869.30496月28日 15:00:10-20.7963-8.997
2019年7月16日-0.9753-168.87087月15日 23:14:30-22.4002-0.758
2020年7月19日-1.4504-219.68267月19日 12:20:2524.093112.341
2021年7月9日-1.4521-159.03857月9日 10:35:0625.641910.585
2022年6月29日-1.5972-71.79476月29日 04:37:0626.91784.619
2023年7月16日-1.3057-25.30097月16日 03:10:3027.87043.175
2024年7月5日-1.65081.10717月5日 00:33:1928.36970.555
地球最短日
(UT)
LOD
(ミリ秒)
UT1-UTC
(ミリ秒)
月赤緯極値日
(UT)
視赤緯
(°)
ずれ
(時間)

  • 自作プログラムによる計算です。(使用暦表:JPL-DE440)
  • 最短日(=最速日)は、各年1月1日から12月31日までにおけるLOD最小値の日付です。
  • 月赤緯極値日は、最短日プラスマイナス10日間内に起こる「月の視赤緯が最小または最大になる瞬時」のことです。
  • ずれは月赤緯極値日から地球最短日を引いて、時間に直したもの。マイナス値なら最短日よりも赤緯極値日が先行するパターン。
  • LODやUT1-UTCなどのデータはIERSのここから直接ダウンロードできます。ご自分で分析したい方はどうぞ。テキスト形式ですがファイルサイズが大きいので気を付けてください。


参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)

今日の太陽2025/07/06

20250706太陽
昨夜から今朝は皆曇ときどきにわか雨。朝からもモヤモヤした雲が空の半分以上を覆ってます。透明度がすこぶる悪い…。

20250706太陽リム
左は13:20前の太陽。かなり減光していました。活動領域が全て右半球に移動してしまい、左にはダークフィラメントくらいしかありません。新たなプロミネンスが見えていますから期待したいところ。右端にも大きめのプロミネンスが見えてます。

気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は889、真夏日地点数は713、猛暑日地点数は135、国内最高気温は三重県桑名ポイントの38.3度でした。集計母数は914地点なので、97%以上が最高気温25度以上、78%以上が同30度以上。辛い日々です。

2025年の台風4号が発生、今年初のダブル台風2025/07/05

20250705-0300jstひまわり画像
気象庁によると、4日9時から台風になるかも知れないと告知されていた熱帯低気圧が、本日5日3時に台風4号「ダナス/DANAS」になりました。直前の台風3号発生から2日後の発生、3号はまだ活動中なので、今年初のダブル台風となりました。

左画像は発生時である本日3:00の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。赤点線円は各台風中心の直径1000km円(左が4号)。夜間のため赤外バンドによる白黒画像です。

気象庁の予報では4号はほぼ停滞しており、今後は大陸海岸に沿ってゆっくり北東へ移動する見込みのようです。迷走中ですからはっきりしませんが、台湾や先島諸島へ接近する恐れがありますね。お近くの方、旅行や仕事で行かれる方、くれぐれもご注意ください。なお3号もだいぶ迷走してますが、ひとまず小笠原諸島からは離れつつあります。