丸くなってきた月と半分欠けた金星2023/06/01

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昨夕から今朝までやや雲があったものの、それなりに継続して晴れてくれました。当初は曇りの予報だったので半信半疑で警戒しつつも、星月を楽しむことができました。色々やりたかったけれど、ひとまず月と金星に絞って観察。

後述するように、四日前の5月28日だったら「ほぼ同じ形」の月と金星を拝めたわけですが、当地はその日あいにくの空模様。昨夜の月はすっかり太っていました。左画像は31日20:20頃の撮影で、太陽黄経差は約133.56°、撮影高度は約45.12°、月齢は11.81。少し雲があり、相変わらずの悪シーイングだったけれど、皆曇に比べれば天国です。

5月2日夜の月に似ており、欠け際にはフィロラオスやアナクシメネス、J.ハーシェル、アリスタルコスが並び、すっかり朝を迎えた虹の入り江やガッサンディ、シラー、南極域のカサトスやニュートンなどが脇を固めていました。

J.ハーシェルはいつになくクレーター底がザラザラ感マシマシでした。影の出来方がちょうど良かったのですね。アリスタルコス北側のくぼみはちょうど明暗境界で、あるような、ないような…。はっきり分かりません。エンディミオンの向こう側、リム沿いにフンボルト海が見えてきました。今後満月までの数日間で一気に顔を出すでしょう。

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いっぽう月に先立って望遠鏡を向けた金星は、ほとんど半月状態でした。東方最大離角の4日前ですから無理もありません。シーイングの乱れもあって見分けがつきませんね。またこの撮影では画像上を天の北方向にしてあります。同じように撮影した5月17日の金星と比べ、自転軸が左(天の東)へ傾いたことが分かるでしょう。5月10日ごろ地球から見た自転軸がほぼ直立したあと、7月22日ごろまでどんどん左に倒れて行きます。もちろん視直径もどんどん大きくなる時期ですから、できるだけ頻度を上げて比較観察すると面白いですよ。

冒頭でも述べましたが、月と金星は見やすさを考えなければ概ね一朔望月ごとに見た目が同じ(相似形)になります。無論、厳密には赤道半径と極半径の比が異なるなど元々違う形ですから、あくまで天体を球と見なした“思考的お遊び”です。

観察点(地心)・球形天体・光源(太陽)が作る角を位相角と言いますが、互いに十分遠い場合は位相角が同じ状況なら、天体が光源に照らされた部分は同じ形になります。また、いわゆる輝面比は位相角のみで決まる関数なので、位相角が同じなら輝面比も一致します。

2023年・金星と月の位相角
左図は今年1年間の金星と月の位相角を図化したもの。0°に近いほど丸く(月なら満月)、180°に近いほど細い(月なら極細月や新月)見た目になります。青線が表す月位相角は一朔望月ごとに上下し、いっぽう緑線の金星位相角は内合から次の内合まで緩やかな変化をします。

青線と緑線の交点こそ位相角が一致するところで同じ形になるわけですが、月も金星も向き…つまり上弦側/下弦側または宵の明星側/明けの明星側があります。例えば上弦と下弦は位相角が一致するので輪郭だけ見たら同じですが、光っている向きは正反対。ですので「見た目が同じ」=「光る部分の形だけでなく向きも一致」と条件を絞って考えるなら、右図の赤点のところのみになるでしょう。

次は6月25日。梅雨時期ではありますが、上弦前の月と少し痩せた金星が、同じ形の光で宵空を飾るでしょう。内合に近づくと金星も月も見つけにくくなりますので、観察のチャンスを逃さず楽しんでください。

今日の太陽2023/06/01

20230601太陽
6月になりました。朝のうち日差しがあったものの、どんどん雲が多くなり、このまま明日からの荒天に繋がるだろうと思っていたら、またも夕方になって少し日差しが出てきました。

20230601太陽リム
左は16:10ごろの撮影。たくさん雲がかかって不鮮明です。これから消えて行く右上に活動領域13322ができ、また左やや下の新たな黒点エリアにも13323が採番されていました。ここでは今朝7:52ごろをピークとしたM4.3クラスフレアが起こっています。2、3時間にわたりエネルギーの高い状態が続きました。10時間ほど経ったこの画像でも明るいプラージュが見えてますね。

右端や左上リムにはダークフィラメントがちょっとはみ出したプロミネンスが見えます。もっと活発になって欲しい。

気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は344、真夏日地点数は8、猛暑日地点数は0。台風のせいで蒸してはいますが、日差しが少ない分、激暑にはなりませんね。

山形の板垣さんがへびつかい座に突発天体発見2023/06/02

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5月も間もなく終わろうとする31日22時過ぎ、山形県の板垣公一さんがへびつかい座に14.3等の突発天体を発見したとのこと。

同日夜に月を観察した後、少しずつ雲が増えて結露も多くなったため望遠鏡を架台から下ろし、配線も解いて小休止。夜半になっても雲が引かないなら片づけようと考えていました。ところが板垣さんの発見情報が入ってきたため急きょ再度組み立て、撮影することに。相変わらず雲が出たり消えたりしましたが、明け方に向かうにつれて少なくなってくれました。

該当する突発天体は青白い星として写りました。矮新星でしょうか?発見から1.5時間後の撮影でしたが、鏡筒など外気に曝されやすい部分が湿ってしまうほど湿度高め&気温低めで、なかなか厄介な時期です。

線状降水帯が何度も発生した一日2023/06/02

20230602-1040降水レーダー
本日は予報通り四国や本州太平洋側で大雨警報が出っぱなしでした。朝から悪名高き線状降水帯(線状降雨帯)が頻発し、次第に東へ移ってきています。今夜から明日は関東にも出るかも知れないとのこと。左は気象庁サイトからの引用で、本日10:40の降水レーダー画像。赤実線の楕円が発生中の線状降水帯で、このころ(地図上では)最も長くなりました。

直近の線状降水帯は今年3月22日未明に沖縄本島北部付近で発生した今年最初のもの。また去年の最後は9月23-24日の愛知・静岡両県に大雨をもたらしたものです(参考資料)。

今年5月25日からは線状降水帯の発生予報を最大30分早く発表することになり、先行予報は実況と区別して赤点線の楕円で描かれます。早めに注意を促すのは良いことと思いますが、前々からこの類いの予報がレーダー画像と著しく乖離していることが気になっていました。

気象庁によると、2023年6月初旬現在、線状降水帯を含む「顕著な大雨に関する気象情報」の発表基準は以下の通り。

    10分先、20分先、30分先のいずれかにおいて、以下の基準をすべて満たす場合に発表。

  • 1.  前3時間積算降水量(5kmメッシュ)が100mm以上の分布域の面積が500km2以上
  • 2.  1の形状が線状(長軸・短軸比2.5以上)
  • 3.  1の領域内の前3時間積算降水量最大値が150mm以上
  • 4.  1の領域内の土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において土砂災害警戒情報の基準を超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)又は洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)において警報基準を大きく超過した基準を超過


20220922降水レーダーの推移
去年9月22日の静岡の例を挙げると、右図のような経過でした。22日夕方にはもう結構な雨量で、右図は22日22時、23日0時、23日2時、そして線状降水帯がレーダー図に描かれた5時の図。もちろん前夜から大雨警報は出ていた訳ですが、これだけ線状降水帯という言葉が独り歩きしてしまうと、人間は返って「まだ線状降水帯が出てないから、ギリ大丈夫」と心理的バイアスをかけて思い込みがちです。

右図では大雨エリアがゆっくり移動していることや細長くないことが線状降水帯判定に引っかかっていたのかも知れません。降水がすっかり少なくなった5時時点でなぜ降水帯が発生したと判断したのかも不可解です。このときはさすがに「判定ロジックが間違っているのでは?」と疑いましたが、レーダーやアメダスなど実際の総合判定がどうなされたのか一般人には不明ですから、真相は闇の中…。

いずれにせよ、あまり線状降水帯という言葉に縛られ過ぎないほうが良いと考える次第。レーダー上の赤円も、線状降水帯ではなく「大雨危険エリア」を描いたほうが良いのではと常々思っています。