2018年10月1日のグレージング現象2018/09/22

20181001グレージングgifアニメ
星仲間から相談があり、約10日後の10月1日夜に起きるグレージング現象(接食掩蔽/Grazing Occultation)についての地図を作ることになりました。せっかくなので当記事内に公開しておきます。現象が観察できそうな方は参考にしてください。

恒星が月に隠される「掩蔽」という現象の中で特に貴重なのが、今回のような縁ギリギリを通る接食掩蔽です(接ではなく接)。単純に恒星が消えて、また出て終わり、というだけでなく、月縁のデコボコにあわせて何度も点滅する様子が観察できるのです。対象が二重星であれば片方だけ隠されて「少し暗くなった」と言うような滅多に出会えない状況に遭遇することも。仲間同士で複数の観測布陣をすれば、点滅の時間差から月の地形を浮かび上がらせることができます。

今回隠されるのはオリオン座χ1星(約4.4等)。対する月は中秋の名月を過ぎていますから下弦前の豚まんみたいな形。左上図をクリックすると早回しのシミュレーションアニメを見ることができます(上側の白い点がχ1星)。グレージングは皆既日食並みに狭い範囲でしか観察できませんが、それでも今回は本州から四国、九州まで横切るとても長いルート上で観察可能です。日付が2日に変わる直前に起こりますが、ご興味ある方はぜひ望遠鏡で眺めてください。低空ですから、前もって視界を確かめておくと良いでしょう。地図下のコメントもお読みください。

地図中央位置


接食掩蔽用語解説
本格的に観測する方は鈴木寿さんのサイト星食観測日本地域コーディネーターのオフィシャルサイトなどをご覧になると良いでしょう。上の地図は接食ギリギリの場所だけでなく幅広く描いています。これは、事情があって基準線(地図上の赤線:ゼロライン)近くまで行けないけれど、南側10km程度でまでなら近づけるという方々も想定しています。

  • 今回の接食は月の北側で起こります。従って予報ライン群より南側では掩蔽が起こりますが、北側ではかすりもしません。

  • 恒星が理想月縁に接する点を接食点と呼びます。接食点の位置はいくつかの角度で表現されますが、右図を頭に入れておくと良いでしょう。(これは1995年2月19日のスピカによる接食掩蔽の例。)なお角度表示はローカルルールもあるため、たまに正負が逆だったり0から360度でなく-180から180度だったりします。この現象に限らず表記データがどんな記述ルールなのかきちんと明記してない場合が多いので、初めての方は気を付けてください。

  • 地図をドラッグ移動すると中央+マークの経緯度が地図欄外下部に表示されます。また基準の赤線(ゼロライン)上にある◎アイコンをクリックすると、現象日時などのデータが表示されます。◎アイコンは経度0.1度ごとに計算しました。表示データや地図ファイルはOccultという天文計算ソフトと自作ソフトを組み合わせて算出しています。このうち、方位角は北を0°、東を90°…という具合に右回りに測った角度です。

  • 予報ラインは赤線の他に緑線、青線、灰色線があります。緑線・青線は1.0kmおきのライン、灰色線は0.5kmごとの補間です。各線をクリックすると基準線から何km離れているか表示されます。また計算データは標高0mを基準としています。表示データのうちTanZと予報線方位は観測標高補正に使うための数値ですが、補正方法はやや難しいので当記事では扱いません。

  • ◎アイコンのなかで赤色のものは小数端数のない経度(135.0000度など)です。このうち奇数経度の赤◎アイコンクリックで表示されるデータには「リンク:月縁プロファイル画像」の項目があります。リンクをクリックすると別窓で月縁予報画像が表示されます。図の中央近く、黄色のドットが接食点です。月縁画像の縦軸は地図のゼロラインからの距離(北側はプラス、南側はマイナス)で、地図のラインに対応しています。また横軸のmは「分」です。予報時刻プラスマイナス5分程度は観察に徹することができるよう、余裕を持って準備しましょう。

  • 例:東経135.0度アイコンにもっとも近い-3.0km地点で観察すると、予報時刻23:53:18の1分前には谷間に星が光って見え、23:53:18には月に隠れ、1分後にはまた谷間に星が光って見える、という予報になります。月縁の谷間や山が入り組んだラインを見つけて観測地にすると、とても見応えがあるでしょう。観測地の検討は一番近いデータの時刻や月縁画像を参照してください。初めての方や不慣れな方は「観測」などと意気込まなくて良いですから、恒星を見失わない程度に倍率を上げ、眼視で楽しみましょう。

  • 記事内のデータや図版などは予告なく変更、更新、削除することがあります。



貴重な晴れ間に流星群・彗星・超新星を観察2018/08/14

20180814流星観察
昼も夜も曇りがちの天気が続いていました。昨夕は日本各地を襲った雷雨が当地・茨城にもやって来ましたので夜も全く期待してなかったのですが、なんと夜半前からそれなりに良い天気となりました。かなり貴重な晴れ間なので、明け方までビッシリ天体観察しました。

まずいつ崩れても良いように、手っ取り早くカメラを組んで固定撮影でペルセウス座流星群を連写。といっても春先から入居が始まった目の前の新築アパートが一晩中明るいので(左画像右下)、露出を切り詰めなくてはいけません。元々街中ですから暗い流星は望めないのですが、ペルセ群は明るいものも多く、また月明かりもないため観察条件はそれなりに良いのです。

高感度&絞り開放で撮らなくてはいけない流星なので、数十秒も露出すると真っ白になります。10秒から15秒なら左上画像程度。夜空なのに黒文字で星座案内ができるほど明るいですね。でもまぁこの状態で1000枚ほどほったらかし撮影をしたら、群流星6個と散在流星1個(下B画像)、それにイリジウムフレア(下F画像/2コマ合成)が写ってくれました。眼視でも明るい群流星をふたつ捉えました。なお下画像は光害を抑えるため、全画像の比較暗画像を作り、元画像から減算しています。薄雲が絶えず流れている状況なので荒れた写真ですが、これが街中の現状ということでご了承ください。

  • 20180814ペルセ群流星

  • 20180814散在流星

  • 20180814ペルセ群流星

  • 20180814ペルセ群流星



  • 20180814ペルセ群流星

  • 20180814イリジウム衛星

  • 20180814ペルセ群流星

  • 20180814ペルセ群流星



20180814火星
流星を流し撮りしている間に、まず火星を観察しました。大接近後は8月2日と5日に見たっきりご無沙汰です。久しぶりに肉眼で見た火星は少し暗く感じました。雲のせいかも知れません。日付が14日に変わる前後に撮影できましたが、大気の揺らぎがかなり激しかったので細部は分かりませんでした。

20180814火星図
右図は撮影時刻のGuideによる火星図。ちょうど中央上に「蚊に刺された跡」のようなオリンポス火山が見えていますね。右下に太陽湖があるはずですが、まだ縁寄りのためかよく分かりません。南極冠ははっきり見えました。北極側も青白かったのですが、火星自身の影が左やや上寄りにかかっていますので、この画像では暗く潰れてしまってます。

火星は9月初旬まで視直径が20″以上あり、観察好期です。接近が終わったらイベント終了…ということではありませんので、目を向けてみてください。

さらに明け方までの2時間、彗星と超新星を撮影しました(下画像/全て天体用白黒カメラです)。このうち、ジョンソン周期彗星(48P)は初撮りでした。火星とあまり変わらない低空のため、写りがとても悪いです。12等台とのことですが、右やや下向きに淡い尾が認められます。いっぽうジャコビニ・ツィナー周期彗星(21P)は想像以上に尾が伸びており、画面からはみ出てしまいました。向こう1、2ヶ月が見頃です。晴れたらぜひどうぞ。

  • 20180814ジョンソン周期彗星(48P)

    ジョンソン周期彗星(48P)
  • 20180814ジャコビニ・ツィナー周期彗星(21P)

    ジャコビニ・ツィナー周期彗星(21P)
  • 20180814超新星

    ふたつの超新星


参考:
2018年火星の地球接近に関する記事(ブログ内)

気象衛星ひまわりがとらえた部分日食2018/08/11

20180811日食図
本日は新月ですが、ちょうどそのタイミングで部分日食が起きました。約一ヶ月前、7月13日に新月になった際もオーストラリア南部や南極で部分日食となったので、二ヶ月連続ですね。今回も日本では見えませんでしたが、北極圏を中心に見ることができました。

具体的には左の日食図のピンクや青線に囲まれた範囲です(NASA Eclipseサイトから引用)。実は日本のすぐ近くまで可視範囲が及んでいたのですね。このため、気象衛星ひまわりからも確認できるのでは?と、密かにモニターしていました。前回の日食は欠ける面積が狭かったせいか、衛星画像ではよく分かりませんでしたが、今回は最大7割ほど欠けたためかなり暗くなり、よく分かりました。

20180811a
気象衛星ひまわりから今回の日食が見える範囲は右図の通りです(→アーカイブ:静止気象衛星による日食月影の可視範囲参照)。オレンジ線の中で日食が見えるため、程度の差はあっても月影が投影される範囲と見なすことができるでしょう。衛星画像の北側を指定時間に見ればいいわけですが、皆既日食のようにはっきりした影が投影されるわけではないため、明暗が破綻しない程度にコントラストを強める処理等を施す必要があります。

下に、9:00UT(日本時間18:00)から20分おきに11:20UT(同20:20)まで、画像処理済みの該当位置画像を掲載しました(画像元:RAMMB/画像処理等は筆者)。まだ月影がやって来てない最初の9:00UT画像のみ、世界地図や経緯線を描いてあります。日本が日没を迎える頃ですね。日周のため太陽光が右(東)から左(西)へ抜けてゆくのとは別に、北極の方から暗い影がゆっくり降りてくるのが分かるでしょうか?これが月影です。日本から見て北極のやや東側近くが一番深く欠けたので、北縁の明度変化がとても顕著ですね。最後の11:20UT画像は日食がほぼ終わっています。

時間や予算が無くて海外に行けない方はこのような日食の楽しみ方を覚えておくと良いかも知れません。なお次の日食は2019年1月6日の部分日食で、日本全国で午前中に見ることができます。どうぞお楽しみに。

  • 20180811-0900ut気象衛星ひまわり

    09:00UT
  • 20180811-0920ut気象衛星ひまわり

    09:20UT
  • 20180811-0940ut気象衛星ひまわり

    09:40UT
  • 20180811-1000ut気象衛星ひまわり

    10:00UT


  • 20180811-1020ut気象衛星ひまわり

    10:20UT
  • 20180811-1040ut気象衛星ひまわり

    10:40UT
  • 20180811-1100ut気象衛星ひまわり

    11:00UT
  • 20180811-1120ut気象衛星ひまわり

    11:20UT


参考:
2019年の今日は夕日に注目!(2017/12/26)
気象衛星がとらえた日食月影(HIMAWARI編)(2017/08/22)
気象衛星がとらえた日食月影(GOES編)(2017/08/24)
気象衛星がとらえた日食月影(METEOSAT編)(2017/08/26)
気象衛星がとらえた金環日食による月の影(2016/09/01)
気象衛星がとらえた日食による月の影(2016/03/09)


薄雲越しの超新星と火星の観察2018/08/05

20180805超新星
昨夜は薄い雲が空を覆い、夜半前は肉眼で1等星がやっと見えるような星空でした。でも23時頃から少し雲が薄くなった気がしたため、星仲間の(の)さんから知らせていただいた超新星を観察しました。

この超新星候補AT2018enbは山形県の板垣公一さんが8月2日夜に発見したもので、ペガスス座の鼻先にある銀河NGC7101に現れました。発見光度が16等台後半だったので昨夜の薄曇りでは写らないかも知れないと思いつつ撮影。結果的に写っていました。すぐ隣のNGC7100にも超新星候補AT2018ebsが光っていたため、図らずも両方を1枚の画像に収めることができました。それにしても暗い…。

超新星観察の後、ちょっと体力が尽きかけていましたが、火星が良く輝いていたためササッと撮影。熟睡してから画像処理を行いました。大気がずいぶん乱れていたのと、いつもの半分ほどしかフレーム数を撮ってないため、荒れ気味の画像です。

20180805火星
右下図は撮影時刻のGuideによる火星図。中央左にかけて小シルチスからシーレーン、中央から右へ向かってキンメリア人の海が暗く見えています。

20180805火星図
衝の頃は火星本体の影によって北側が暗かったのですが、だんだん左上に向きを変えてきたことが分かります。他の画像と縮尺を揃えてみると少しだけ小さくなったことも分かりますよ。一週間も経ってないのに、宇宙の見え方はどんどん変わっていきますね。

参考:
2018年火星の地球接近に関する記事(ブログ内)