準水平月の季節 ― 2024/03/14
昨夕は久しぶりに美しい月が見えました。少し風が残っていましたが、ワクワクしながら日没を待ちました。すぐ近くに木星も見えています。
左は13日18:20過ぎの撮影で、太陽黄経差は約42.12°、撮影高度は約32.00°、月齢は3.02。画像上下を月の南北に揃えてあるので伝わらないと思いますが、実際は舟のように横倒しになっており、撮影時の弦傾斜はなんと12.059°。パッと見た目には水平月と言えなくもない状態です。
2021年9月1日特集記事「横たわる有明月を観よう・Part2」・文末の表を見ていただくと、来年からしばらくの間、晩冬から春にかけて見える夕月が弦傾斜プラスマイナス5°内(日本経緯度原点)という「水平月」になります。今年の春もその状態に近い訳ですから当然でしょう。沖縄あたりだともう完全に水平月ですね。太陽が真下にあることが感じられ、そのぶん地平線からも離れているため、日没から月没までの時間が長いことも納得できるでしょう。春限定ですが、大慌てで細い月を撮影しなくて済むことになりますね。
もうこんなに見えるのかと言うくらい月齢が進んでいて、シーイングは酷い状態ながらも南東火口列やフンボルト・クレーターが良く見えました。これだけリムから離れていたら、拡大すればフンボルト連鎖クレーターも見えたでしょうね。(余裕が無かったのでじっくり見ることはできませんでしたが…。)ゲミノス内部は真っ暗、エンディミオンはRay現象が起こっているようです。
月を眺めているうち少し雲が出てきてしまいましたが、大急ぎで近くの突発天体を撮影。三重県の中村祐二さんが10日19:13ごろおうし座に発見した14.7等の天体です(下A画像)。天気が思わしくなくてずっと撮影できなかったけれど、ようやく撮れました。若干青白いような…?
この後更にどんどん雲が増え、夜半まで曇ってしまいました。未明にはほぼ回復。今度は11日3:36ごろ群馬県の小嶋正さんがへびつかい座に発見した11.5等の明るい突発天体も撮影(下A画像)。この天体は他に板垣公一さん、山本稔さん、藤川繁久さん、中村祐二さん、Andrew Pearceさんも独立発見しています。中村祐二さんはひと晩に二つ発見ですね。
この天体は直ちに広島大学のかなた望遠鏡により分光され、He/Nクラス新星の初期段階と分かりました。既に「V4370 OPHIUCHI」という名称も付いています。実際に導入するとクリムゾンスターかと思うほど真っ赤でビックリしました。明るいうちにぜひ見てください。
左は13日18:20過ぎの撮影で、太陽黄経差は約42.12°、撮影高度は約32.00°、月齢は3.02。画像上下を月の南北に揃えてあるので伝わらないと思いますが、実際は舟のように横倒しになっており、撮影時の弦傾斜はなんと12.059°。パッと見た目には水平月と言えなくもない状態です。
2021年9月1日特集記事「横たわる有明月を観よう・Part2」・文末の表を見ていただくと、来年からしばらくの間、晩冬から春にかけて見える夕月が弦傾斜プラスマイナス5°内(日本経緯度原点)という「水平月」になります。今年の春もその状態に近い訳ですから当然でしょう。沖縄あたりだともう完全に水平月ですね。太陽が真下にあることが感じられ、そのぶん地平線からも離れているため、日没から月没までの時間が長いことも納得できるでしょう。春限定ですが、大慌てで細い月を撮影しなくて済むことになりますね。
もうこんなに見えるのかと言うくらい月齢が進んでいて、シーイングは酷い状態ながらも南東火口列やフンボルト・クレーターが良く見えました。これだけリムから離れていたら、拡大すればフンボルト連鎖クレーターも見えたでしょうね。(余裕が無かったのでじっくり見ることはできませんでしたが…。)ゲミノス内部は真っ暗、エンディミオンはRay現象が起こっているようです。
月を眺めているうち少し雲が出てきてしまいましたが、大急ぎで近くの突発天体を撮影。三重県の中村祐二さんが10日19:13ごろおうし座に発見した14.7等の天体です(下A画像)。天気が思わしくなくてずっと撮影できなかったけれど、ようやく撮れました。若干青白いような…?
この後更にどんどん雲が増え、夜半まで曇ってしまいました。未明にはほぼ回復。今度は11日3:36ごろ群馬県の小嶋正さんがへびつかい座に発見した11.5等の明るい突発天体も撮影(下A画像)。この天体は他に板垣公一さん、山本稔さん、藤川繁久さん、中村祐二さん、Andrew Pearceさんも独立発見しています。中村祐二さんはひと晩に二つ発見ですね。
この天体は直ちに広島大学のかなた望遠鏡により分光され、He/Nクラス新星の初期段階と分かりました。既に「V4370 OPHIUCHI」という名称も付いています。実際に導入するとクリムゾンスターかと思うほど真っ赤でビックリしました。明るいうちにぜひ見てください。
ようやく写せたポン・ブルックス彗星 ― 2024/03/04
昨日は朝からずっと透明度が高い空でした。夕空で明るくなっているポン・ブルックス彗星(12P)が狙えるかも知れないと、日没ごろから準備し、望遠鏡を向けました。
この彗星はもう6等台になっており、ずっと撮りたかったのですが、去年晩秋から長いこと北西の空で徐々に低くなってしまい、私が望遠鏡を設置できる範囲ではどうやっても建物にかかってしまう最も撮りづらい方向のままでした。彗星は動くものなのに、見える方向がこんなにも変わらないままというのも珍しいですね。それでも少しずつ南下しているため、ようやく撮れそうな位置になりつつありました。ただ、航海薄暮終了時で高度20°程度とかなり低く、ちょっと雲があったり霞が多いと途端に見えなくなります。
4月中・下旬にかけて4等くらいまで明るくなる予報ながら今より高くなることは無く、太陽の南側に広がるデッドゾーン(不可視エリア→2017年1月17日記事参照)に入ってしまいます。ですから、見るなら3月中の、低空まで良く晴れた日に限るでしょう。
約70年ぶりに回帰したこの周期彗星、去年の夏ごろは核近傍の様子が映画「スターウォーズ」に出てくるミレニアム・ファルコン号みたいと言われていましたが(→2023年7月31日の画像参照)、そのころ長い尾までは見えませんでした。今年に入り尾がどんどん伸びて、活発な活動が見られるようになりました。
左上画像は撮影画像をストレートに公開してますが、光害がある街中ではこの程度が関の山、長い尾やその活発さまでは感じ取れません。どうにかしてそれを炙り出す方法のひとつが、皆既日食のコロナ流線抽出でおなじみの「ローテーショナル・グラディエント処理」(Rotational Gradient filter/Larson-Sekanina filter)です。
冒頭画像にこの処理を施した処理例が右上画像。かなり強い処理ですから粒状性は保てなくなるけれど、同じ原画とは思えないくらい複雑な尾の構造が見えてくるでしょう。特に頭部を拡大撮影した画像なら尾の流線やシェル構造まで見えることがありますので、ぜひやってみてください。
彗星撮影中にネットをチェックしたら、三重県の中村祐二さんが3月2日19:30過ぎにおうし座に14.7等の突発天体を見つけたと言う情報が入っていたので、そのまま望遠鏡を向けてみました。彗星用に短い広写野のものを使っていたため写るかどうか心配でしたが、どうにか写ってくれました。そもそも発見した中村さんがもっと短焦点で発見しているので、写らないことは無いのですが…。
像が小さくてはっきりとは分かりませんが、この突発天体は青白いようです。矮新星かも知れません。
この彗星はもう6等台になっており、ずっと撮りたかったのですが、去年晩秋から長いこと北西の空で徐々に低くなってしまい、私が望遠鏡を設置できる範囲ではどうやっても建物にかかってしまう最も撮りづらい方向のままでした。彗星は動くものなのに、見える方向がこんなにも変わらないままというのも珍しいですね。それでも少しずつ南下しているため、ようやく撮れそうな位置になりつつありました。ただ、航海薄暮終了時で高度20°程度とかなり低く、ちょっと雲があったり霞が多いと途端に見えなくなります。
4月中・下旬にかけて4等くらいまで明るくなる予報ながら今より高くなることは無く、太陽の南側に広がるデッドゾーン(不可視エリア→2017年1月17日記事参照)に入ってしまいます。ですから、見るなら3月中の、低空まで良く晴れた日に限るでしょう。
約70年ぶりに回帰したこの周期彗星、去年の夏ごろは核近傍の様子が映画「スターウォーズ」に出てくるミレニアム・ファルコン号みたいと言われていましたが(→2023年7月31日の画像参照)、そのころ長い尾までは見えませんでした。今年に入り尾がどんどん伸びて、活発な活動が見られるようになりました。
左上画像は撮影画像をストレートに公開してますが、光害がある街中ではこの程度が関の山、長い尾やその活発さまでは感じ取れません。どうにかしてそれを炙り出す方法のひとつが、皆既日食のコロナ流線抽出でおなじみの「ローテーショナル・グラディエント処理」(Rotational Gradient filter/Larson-Sekanina filter)です。
冒頭画像にこの処理を施した処理例が右上画像。かなり強い処理ですから粒状性は保てなくなるけれど、同じ原画とは思えないくらい複雑な尾の構造が見えてくるでしょう。特に頭部を拡大撮影した画像なら尾の流線やシェル構造まで見えることがありますので、ぜひやってみてください。
彗星撮影中にネットをチェックしたら、三重県の中村祐二さんが3月2日19:30過ぎにおうし座に14.7等の突発天体を見つけたと言う情報が入っていたので、そのまま望遠鏡を向けてみました。彗星用に短い広写野のものを使っていたため写るかどうか心配でしたが、どうにか写ってくれました。そもそも発見した中村さんがもっと短焦点で発見しているので、写らないことは無いのですが…。
像が小さくてはっきりとは分かりませんが、この突発天体は青白いようです。矮新星かも知れません。
群馬の小嶋さんが発見した突発天体をようやく撮影 ― 2024/02/27
二週間近く遡りますが、2月15日3時ごろ、群馬県の小嶋正さんがおとめ座に13.2等の突発天体を発見しました。その後若干増光したようです。当地・茨城県南部はおとめ座が隣家から顔を出す時間にことごとく天気が悪く、ようやく今日撮影することができました。撮影までこんなに待たされたのは初めてかも?
大きく減光していたら写らないかもと心配しつつ望遠鏡を向けると、モニターでもまだ十分見える明るさでした。13等後半と言ったところでしょうか。満月過ぎの明るい空でシーイングも最悪でしたが、どうにか記録できてほっとしました。
突発天体撮影と平行して、もう一台望遠鏡をセット。月面に向けました。断片的に2時間近く見たものの大気の揺らぎは一向に収まる気配はありません。ずっとクレーターが踊り狂っていました。ですが、ちょうどラングレヌスの中央丘が“ケモ耳”を見せる絶好のタイミングだったので、無理を承知で月面観光に興じました。
右画像は0:40ごろ(ラングレヌスにおける太陽高度は約4.1°)、および2:20ごろ(同3.3°)の様子。北方向を左向きにしてあります。ケモノの耳のような影が伸びていますね。明暗境界近くのクレーターもどんどん闇にのまれているのが分かるでしょう。もう少し見ていたかったのですが、酷いシーイングと強まった北風による急激な冷え込みでくじけました。
下A画像はラングレヌスを含む東側火口列付近。もっと穏やかな空なら細かい部分まで見えたでしょう。左下にレイタ峡谷の一部が見えます。下B画像は危難の海や、その北に並ぶクレオメデス、ブルクハルト、ゲミノス、メッサラの列。危難の海を走るリッジが意外に抽出できました。コーシー断崖&谷やガードナー・メガドームあたりも少しずつ影が出てきて見やすくなっています。下C画像は神酒の海付近。一昨日に再起動を果たしたSLIMが着陸の目印にしたShioliクレーターを包む光条が赤点線円中央の小さな光点です。この付近が再び夜を迎えるのは3月頭ごろ。それまで何らかの観測が進めば嬉しいですね。
大きく減光していたら写らないかもと心配しつつ望遠鏡を向けると、モニターでもまだ十分見える明るさでした。13等後半と言ったところでしょうか。満月過ぎの明るい空でシーイングも最悪でしたが、どうにか記録できてほっとしました。
突発天体撮影と平行して、もう一台望遠鏡をセット。月面に向けました。断片的に2時間近く見たものの大気の揺らぎは一向に収まる気配はありません。ずっとクレーターが踊り狂っていました。ですが、ちょうどラングレヌスの中央丘が“ケモ耳”を見せる絶好のタイミングだったので、無理を承知で月面観光に興じました。
右画像は0:40ごろ(ラングレヌスにおける太陽高度は約4.1°)、および2:20ごろ(同3.3°)の様子。北方向を左向きにしてあります。ケモノの耳のような影が伸びていますね。明暗境界近くのクレーターもどんどん闇にのまれているのが分かるでしょう。もう少し見ていたかったのですが、酷いシーイングと強まった北風による急激な冷え込みでくじけました。
下A画像はラングレヌスを含む東側火口列付近。もっと穏やかな空なら細かい部分まで見えたでしょう。左下にレイタ峡谷の一部が見えます。下B画像は危難の海や、その北に並ぶクレオメデス、ブルクハルト、ゲミノス、メッサラの列。危難の海を走るリッジが意外に抽出できました。コーシー断崖&谷やガードナー・メガドームあたりも少しずつ影が出てきて見やすくなっています。下C画像は神酒の海付近。一昨日に再起動を果たしたSLIMが着陸の目印にしたShioliクレーターを包む光条が赤点線円中央の小さな光点です。この付近が再び夜を迎えるのは3月頭ごろ。それまで何らかの観測が進めば嬉しいですね。
宵の四日月、NGC4559のLBV増光も ― 2024/02/14
昨夕から今朝も良く晴れましたが、日中の気温が高かったせいか透明度がガクンと落ちました。夜半過ぎの湿度が85%もあり、すっかり春の空です。星の光は冴えないけれど、この湿度が大気の揺らぎを抑えてくれるようになるでしょう。
宵空の月がきれいだったので、前夜に続き望遠鏡を向けました。左画像は13日18頃の撮影で、太陽黄経差は約47.87°、撮影高度は約36.07°、月齢は3.42。南東の火口列はすっかり日向に出ました。エンディミオンが独特の影を見せています。タルンティウスの縁が光り始め、南に広がるリッジも映えますね。
レイタ谷は黒みが多いけれど、スネリウス谷は良く見えていました。ペタヴィウスの中を直線状に走るペタヴィウス谷と中央丘は、大昔(?)に流行った一本足斜鏡のRFTタイプ反射望遠鏡を思い起こさせます。(※ペタヴィウス谷はこの目立つ一本だけでなく、他の方向にも伸びています。)
南北カスプがかなり先まで光っていました。露出オーバー気味でも撮っているので、どのあたりなのか後で確かめようと思います。フンボルト海や縁の海、スミス海あたりの今年の秤動はさほど良くならないのですが、南の海あたりはこれから毎月のように見ごろがあるでしょう。夏以降は位相が悪くなるため、初冬までお預けとなります。
さて、13日2:40ごろに山形県の板垣公一さんがNGC4559にあるLBV(高光度青色変光星/Luminous Blue Variable)の増光を発見したとのこと。春の銀河まつりが始まってるシーズンですが、ここ数日間に撮影した方はいらっしゃいませんか?
日付が14日になって対象天体が高くなったころ撮影してみました(右画像)。前回の増光(今年1月5日)も板垣さんが見つけていました。気になるのは「増光の間隔」が短くなっていること。何かの前触れでしょうかネ?
宵空の月がきれいだったので、前夜に続き望遠鏡を向けました。左画像は13日18頃の撮影で、太陽黄経差は約47.87°、撮影高度は約36.07°、月齢は3.42。南東の火口列はすっかり日向に出ました。エンディミオンが独特の影を見せています。タルンティウスの縁が光り始め、南に広がるリッジも映えますね。
レイタ谷は黒みが多いけれど、スネリウス谷は良く見えていました。ペタヴィウスの中を直線状に走るペタヴィウス谷と中央丘は、大昔(?)に流行った一本足斜鏡のRFTタイプ反射望遠鏡を思い起こさせます。(※ペタヴィウス谷はこの目立つ一本だけでなく、他の方向にも伸びています。)
南北カスプがかなり先まで光っていました。露出オーバー気味でも撮っているので、どのあたりなのか後で確かめようと思います。フンボルト海や縁の海、スミス海あたりの今年の秤動はさほど良くならないのですが、南の海あたりはこれから毎月のように見ごろがあるでしょう。夏以降は位相が悪くなるため、初冬までお預けとなります。
さて、13日2:40ごろに山形県の板垣公一さんがNGC4559にあるLBV(高光度青色変光星/Luminous Blue Variable)の増光を発見したとのこと。春の銀河まつりが始まってるシーズンですが、ここ数日間に撮影した方はいらっしゃいませんか?
日付が14日になって対象天体が高くなったころ撮影してみました(右画像)。前回の増光(今年1月5日)も板垣さんが見つけていました。気になるのは「増光の間隔」が短くなっていること。何かの前触れでしょうかネ?