群馬の小嶋さんが突発天体発見2024/01/01

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2023年も終わろうとする12月30日の19:30過ぎ、群馬県の小嶋正さんがオリオン座に14.0等の突発天体を発見したという情報が舞い込みました。当地は大晦日の宵まで曇り時々小雨が続きましたが、21時を過ぎると雲が流れつつも時々まとまった晴れ間がやって来るようになったので撮影してみました。

雲が頻繁に写野を横切ったため60コマ近く撮ったのにスタックできたのは28コマ。でもなんとか対象天体を写し取れました。星仲間の(の)さんによれば元々該当位置に14.9等の赤っぽい星があったようです。既知の変光星でなければ、急な増光が起きたと言うことでしょうか。

それにしても捜索家の皆さんは暮れも正月も休みなく観測されていてすごいですね。この画像が2023年の撮り収めになりました。毎年晴れれば必ず星を見ながら年越しします。この日ばかりは深夜でも喧騒が途切れず、夜空に除夜の鐘、各地の花火、初詣でに向かう車、救急車、消防車、ケンカする猫など、様々な音であふれていました。

20240101神酒の海、アルタイ断崖、テオフィルス
日付が2024年になってもそれなりに晴れ間が残っていたため、1時過ぎから月の観察に突入。ただシーイングは2/10以下の酷い状態で、薄雲も通過するため撮影はやめようかとも思いました。ついつい癖で何枚か撮ってしまいました。

右画像は美しい姿を見せていたアルタイ断崖や神酒の海付近。ぱっと見それなりに撮れているように見えても細部の揺らぎが大き過ぎるため、特に暗い部分の境界がスタックミスを起こしています。観察とは月面のみにあらず、「空のコンディション」も含めた行為であることを忘れてはなりませんね。

キリルス内にある小型月着陸実証機SLIMの着陸予定地の目印、シオリ(栞)・クレーターから広がる微小光条はもう光っていないようです。明日3日明け方にはキリルスそのものも暗くなるので、今夜見えなければ着陸直前の17日まで見えません。おそらくこれもスケジュールの重要な要素かと思います。着陸時に地面が見えなければ(可視光では)光学誘導も無理ですし、明る過ぎても着陸後の実験スケジュールが密になってしまいます。アポロ計画では人間を運んだため、特に着陸時の太陽高度に注意が払われました。(11号から17号まで、太陽高度5.17°から14.74°の間に月面着陸しています。離脱も50°までに行われました。)

20日後のSLIM着陸が楽しみですね。日本も晴れますように。

初日の出はXクラスフレア!2024/01/01

20240101太陽
2024年元日にいきなり太陽で強いフレアが起こりました。ちょうど関東の初日の出のころです。

20240101太陽リム
左は10:10ごろの撮影。昨日から左端やや上リムに見えてきた大きめの黒点を伴う領域(今日昼時点で採番されてないようですが、おそらく13536になると思われる)のあたりで、6:55JSTをピークとするX5.01クラスフレアが発生しました。X1クラスに届くだけでもすごいのに、X5だなんて…。いつ以来でしょうか?

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Xクラスは6:40ごろから7:24ごろまで継続し、8:40ごろまでMクラスを維持しました。日本の初日はXクラスフレアに彩られていたのです。右はSDOサイトからの引用でAIA304の6:59JST画像。左リムに強い光が見えますね。フレアもすごいけれど、右リムのプロミネンスたちも立派です。なんだか幸先良いスタート!?

静かな未明のお月見2024/01/02

20240102晴れの海、アペニン山脈
昨夜から今朝は雲も少なく、比較的安定した空。月高度が出てきた2日1時ごろから約1.5時間月観察をしました。大揺れ小揺れが頻繁にやって来ることは仕方ないけれど、時々ふっと静まることもあるのでなかなか楽しい。ただ、気温1度台は体にこたえました。撮影した中から4枚掲載。

下A画像は晴れの海付近。(同エリアを横構図で撮ったものが左画像。)尾根、特に東側のスミルノフ尾根が闇に浮いて目立ちます。尾根中央付近の計算上だと太陽高度がもうマイナスなのですが、わずかでも標高があるぶん日光が届いているのですね。メネラウス谷やカリップス谷など、海周囲に沿った谷も良く見えています。バレンタイン・ドームも影が出始めました。リンネの白さが目を引きますね。

晴れの海から南に目を移したのが下B画像。静かの海の西部にクラゲのようなラモントが写りました。モニターでは露出を4倍くらい上げないと見えない暗さでした。撮影時のラモント中心から見た太陽高度は約2.5°。5°以下だとリッジがとてもよく見えます。アラゴーのドーム群も確認できました。名所のヒギヌス谷、アリアデウス谷、トリスネッカー谷、リッター谷もしっかり陰影が出てますね。

20240102プトレマイオス、プールバッハ、アルタイ断崖
更に南に下ると下C画像が見えてきました。(同エリアを横構図で撮ったものが右画像。)右辺中央辺りにテオフィルス、キリルス、カタリナが並んでいるのですが、テオフィルスはほとんど真っ暗、キリルス内のシオリの位置ももう光っていません。カタリナは準Ray現象を起こしています。この三つのクレーターを囲むようにアルタイ断崖が影を落としていました。

画像中央にはアブルフェーダーの連鎖クレーターが写っています。途中からアルタイ断崖の影などに阻まれ、短く感じました。実際はカタリナの南あたりまで伸びているようです。(※IAUの「Gazetteer of Planetary Nomenclature」サイトによるとこの連鎖クレーターはアルタイ断崖までとされ、その先ポリュビオスあたりまで続いてるのは別物扱いみたいです。)アブルフェーダーの南、ポンタヌスEがConcentric Crater(同心円クレーター)に見えたので調べたらやはりそうでした。画像右下、リンデナウを花びらみたいに囲むようなロートマンG、ザグート、ラビ・レヴィあたりに何か構造的なものを感じます。

大晦日の夜から打って変わって辺りは静か。たくさんの名所旧跡(?)を堪能できました。

  • 20240102晴れの海、アリストテレス、エウドクソス

    A.
  • 20240102ラモント、ユリウス・カエサル、ドランブル

    B.
  • 20240102カタリナ、アブルフェーダー、アルバテグニウス

    C.


束の間のお月見2024/01/03

20230103月面南部
元日から二日にかけて一時的な天気の回復があったものの、三日目にはもう下り坂。それでも、期待してなかった3日未明に一時的な快晴夜が訪れたのでお月見を敢行。シーイングは2/10と悪かったので撮影は4シーケンスで切り上げ、あとは眼視に切り替えました。

左は南部を捉えたもの。細かいクレーターは大気の揺らぎで埋もれてしまったけれど、当夜の雰囲気は分かるでしょう。見辛いけれどバイイの全体がさらけ出されています。モレトスもずいぶん縁から離れ、長針のごとき中央丘の影が見えました。この影が途中で切れてスリット状に輝いています。影が不連続なのは変だと思い調べてみると、中央丘北側が大きくえぐれ、輝きの方向に尾根が飛び出ていることが分かりました。えぐれたところは影、尾根だけ細く光るため不連続に見えたのですね。おそらく同じ現象が下弦側のティコでも起こると思われます。機会があれば確認してみます。

シーイングが悪いとスタックの過程で細かい地形が均されてしまう他、コントラストの強いところ/弱いところそれぞれ偽模様が頻出します。フィルム時代やデジタル黎明期に「少ないコマ数のスタック(コンポジット)より、1枚撮りのほうが画質が良い」と言われた所以ですね。ただ、大気越しの画像はどんなにシャープに撮れても「丸い形が丸でなくなる」ことを避けられません。私は多少の偽模様に目をつぶってでも丸を丸にしたいと考えるので、多枚数スタックにこだわっています。