明け方に見えてきた紫金山・アトラス彗星2025/02/23

20250223_紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
昨夜は本当に久しぶりに風のやんだ快晴夜になってくれました。(…と言っても時折思い出しように吹いてましたが…。)このチャンスを活かすべく、ずっと観察したかった天体たちに望遠鏡を向けました。

左は明け方に回ってきた紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)。薄明が始まるころ高度が20°未満での撮影開始。電線越しでしたが、モニターでもしっかり見えました。だいぶ暗くなったけれど、まだまだ元気ですね。尾の向きが北西になったのでしょうか。

南に低くなってしまったアトラス彗星(C/2024 G3)と違い、しばらくは13-14等で見え続けます。現在はいるか座におり、これから夏の大三角形を横切るように移動しますからぜひ目を向けてみてください。

日付が変わる前には小惑星を二つ。ひとつは昨年末に地球フライバイを終えた小惑星探査機Lucyの次なる目標、小惑星Donaldjohanson(52246)です(下A画像)。以前に「探査機Lucyの先回りをする」と題して目標小惑星を撮影したとき、逃していたもののひとつです。順調なら今年4月に小惑星Donaldjohansonへ到達する予定とのこと。楽しみですね。

もうひとつ、天文関係の知人の名を冠した小惑星Tamotsu(9096)もすぐ近くで光っていたので望遠鏡を向けました(下B画像)。一週間ほど前に光度ピークを迎えていますから明るいですね。途中で赤緯方向のガイドが暴れてしまい星像にスパイクが出てしまいましたが、誤魔化さずに掲載しました。暗くなる前に再度チャンスがあったらまた見てみようと思います。久しぶりの星見で大満足でした。

  • 20250222_小惑星Donaldjohanson(52246)

    A.小惑星Donaldjohanson(52246)
  • 20250222_小惑星Tamotsu(9096)

    B.小惑星Tamotsu(9096)


今日の太陽とSTEREO-Aから見たアトラス彗星2025/01/20

20250120太陽
二十四節気の「大寒」を迎えました。昨日はぐずついたお天気で、夜も曇ったまま。今朝からは時々晴れ間があるものの、多くの時間は雲量5割以上の雲です。ただ気温が高く、いつもより5度以上暖かいですね。当地・茨城県南部は15度近くに達しています。

20250120太陽リム
左は11:00前の太陽。この頃だけ晴れてくれました。活動領域13959の大きな黒点は大きさを維持したまま右半球を進んでいます。また中央近くの13961は中央子午線に達しました。小さいけれど左半球にも黒点が続いてくれてます。プロミネンスはほとんど見えないけれど、左端やや上の大きなループは健在のようです。

20250117_234131_STEREO-A
日本の空からほぼ見えなくなったアトラス彗星(C/2024G3)ですが、南半球では大化けしているようです。また尾も含めて日本時間16日昼過ぎに太陽観測衛星SOHOの写野からも完全に消えていますが、14日0時JSTごろから同じ太陽観測衛星STEREO-A写野に入り、現在も続いています。左画像はSTEREOサイトからの引用で、本日時点で公開されている最新:18日9時JST少し前の画像。尾が凄まじいことになってますね。

20250118-0000UT_STEREO-A
右図は撮影時の太陽・惑星・彗星位置(JPL-Small-Body Database Lookupによる作図)にSTEREO-Aの位置を計算して描き加えたもの。彗星は近日点通過付近で一時的に地球軌道面の北側に来ました(図中の明るいグレー部分:8日12:30JST頃から15日19:30JST頃まで)。それ以降はどんどん南に離れています。STEREO-A写野からも南側(下側)へ消えて行きそうです。もう一日くらい、尾を含めると三日くらいは楽しめるでしょうか。※STEREO-Aは太陽を写野に入れず、地球側に飛んでくるコロナ放出などを監視しています。太陽は画像右の範囲外にいます。背景はみずがめ座で、写野内左寄りの明るい星は土星、そのすぐ右上下はφAqrとχAqrの並びと思われます。

もう一踏ん張りのアトラス彗星、火星と並ぶ双子の星2025/01/18

20250117_C/2024G3
昨日は良く晴れたのに風が強い一日。夕方は低空にモヤがあるものの、何とかアトラス彗星(C/2024 G3)を探し当てることができました。

左は17日日没直後のアトラス彗星。日没時点で太陽離角は約12.5°、高度差は約7.5°。日没前から導入していましたが、日が没してからも少しだけ観察する余裕がありました。だいぶ核光度は落ちたけれど、明るい空でも20分角近くの尾が確認できます。太陽との赤緯差がマイナス側に入ったので、尾の方向角も東(画像左側)向きから若干南(同下側)寄りになってきました。

明日19日ごろからは日没時高度が下がり始め、国内からは観察しにくくなるでしょう。残り一週間も経たないうちに日本の空から消えることになります。

20250118火星・ポルックス・カストル
時は移って本日18日未明。火星がカストルとポルックスと並んだ様子を西空で捕らえました。左画像で一番明るいのが火星。横並びでポルックスとカストル。金星銀星と言われる通り、双子の色の違いがおめでたいですね。大姉ちゃんのふりをした火星を加えて「みつご星」の勢揃い。おお、一姫二太郎じゃんか!(意味違う…)。

球面作図上だと1月17日23:25JSTに火星・ポルックス・カストルが一直線でした。定規を当ててみると火星が若干下側に下がっていて、数時間ぶん動いたことが分かります。肉眼でもわずかなずれを感じることができました。

近くに一等星がありますから、火星の順行や逆行、その速度や向きの変化を観察しやすい位置関係です。日没後暗くなるともう東に見えますから、興味のある方、特にお子さんがいらっしゃる方はぜひスケッチや携帯撮影して観察してみてください。週一回、新学期ごろまで続けるだけでも太陽系の不思議を感じ取れますよ。

参考:
火星と「みつご座」の季節はじまる(2024/11/02)

束の間の空の彩りと彗星2025/01/16

20250115_C/2024G3
左画像は昨夕(15日)日没10分前のアトラス彗星(C/2024 G3)。様々な色彩が溢れる中でキラキラ瞬いています。

昨日は午後に雲が広がる予報だったため、何とか昼までに彗星を撮影できないか頭をひねりました。諸事情で屋外に望遠鏡を設置できないため、窓際の限られたスペースが唯一の観測地。遮光しつつやっとの思いで組み上げたものの、1cmも移動できない究極の陣取り。

ところが、午前の早いうちから雲が湧き出し、なぜか天頂より南に居座ってしまいました。彗星は導入できたしピントも合わせたのに、薄雲が容赦なく通過します。適当に撮影したけれど画像処理で救える見込みはありませんでした。機材を移動するスペースも気力も無く、万事休す…。

午後は予報通り雲が増えました。でも夕方天気をチェックしにベランダへ出ると、太陽付近から晴れ間が広がりつつあるではありませんか。慌てて準備、西窓へ移動してあった望遠鏡を彗星に向けました。自分目線では日没前だったけれど、それより低い望遠鏡から見ると太陽が街並みに隠れつつあり、自然の遮光になりました。

モヤが濃かったので無理かなと思いましたが、彗星はすぐ見つかりました。しかも日々太陽から離れつつあるためか、驚くほど見やすい。17分角ほどの尾も確認。ですがのんびり眺める猶予はありません。ささっと観察・撮影。数分もすると彗星はがくっと暗くなり、モヤにのまれてゆきました。一握り=指四本分の幅を束と言いますが、昨夕の彗星-太陽離角はちょうど腕を伸ばして1束ぶん。正に束の間の空模様に魅せられました。

【検算】
予想通り15日15時JST前にアトラス彗星(C/2024G3)の核はSOHO写野から外へ出ました(下A画像)。尾はもう少し残るようです。 SOHO写野内を通過するアトラス彗星の位置予測を2024年12月24日記事に出していましたが、実際の彗星位置と1時間内外相当の移動ズレで済んだようです(下B画像/予測図に12-15各日0:30UT画像を合成)。このずれは誤差やミスと言うよりも、計算の際にSOHO実位置ではなく平均位置で計算していることや、写野中心と太陽が合っていない(SOHO側の運用姿勢で変わってしまう)ことによるものと考えています。またカメラの周囲では収差も大きいようです。検算することで、より良いプログラム開発に活かせます。

  • 20250115_0606UT_lasco-c3

    A.15日15:06JST
  • ATLAS彗星・位置予測計算と実際

    B.SOHO内位置予測と実際

※A画像内にある四つの赤丸は、いて座のアステリズム「テレベルム」です。