超高速インターネット衛星「きずな」を撮影2019/03/11

超高速インターネット衛星「きずな」
デジタルデバイド(情報格差)という言葉があります。ネット情報が「次の一歩」を左右する現代、年齢差、地域差、経済差などが生む獲得情報の差が、更に格差を加速するのです。ただ(楽観的に見れば)努力や協力次第で何とでもなると言えましょう。

ところが天変地異でインフラが壊滅すると、そうも言ってられない状態に陥りますね。携帯のバッテリー切れ程度ですら「社会から取り残される」感覚を覚えた方は少なくないのでは?復旧に何ヶ月も、何年もかかるインフラですから、東日本大震災を例に出すまでもなく情報格差…というより隔離される恐怖ってハンパないでしょう。

日ごろからの備えを怠りなくと言っても、人間は忘れっぽく、また油断の多い動物。それが良い面もありますが、ある程度の自然災害リスクマネジメントはどなたにとっても必要ではないでしょうか。はるばる絶景地へ遠星したのにネジ一本忘れて1枚も写真を撮れなかった私は、そう思うのであります…。

堅い話はさておき、去る3月1日にJAXAが超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)の運用を終了したと発表しました(→JAXA報道資料)。「きずな」は東日本大震災の際にも通信面での災害支援に大きく貢献しました。2009年7月のトカラ列島皆既日食でも硫黄島からのライブ中継に使われましたね。運用終了は先月発生したトラブルが原因とのことですが、2008年2月の打ち上げから5年間が運用目標だったので、立派な大往生と言えましょう。

20190309「きずな」星図
「きずな」は冒頭の画像のような姿をしています(JAXAライブラリから引用)。ミ○キーの耳のようなふたつのアンテナが特徴で、二ヶ所の広域間通信が可能です。静止衛星なので、日本から見ると空の一ヶ所にほぼ静止して見えます。(※恒星に対しては動いています。)以前に気象衛星ひまわりを撮影したとき、同一写野内に「きずな」が写っていたことがありました(→参考記事1参考記事2)。今回は運用終了記念として「きずな」をメインに撮影してみることにしました。

撮影はよく晴れた3月9日明け方に実施しました。静止衛星は春分期と秋分期に地球の影に隠れてしまう「食」があるため、「衛星−地球−太陽」が直線に並ぶ時間帯の観察は避けましょう。(※静止衛星の食→気象衛星ひまわりの例:「春分・秋分期の運用」の項目参照。)位置情報はCalSKYの衛星ライブラリで計算し、導入しやすい天体の近くへやってくるタイミングを探しました。今回は右星図の通り4:40を過ぎた頃へびつかい座ε星近くに差しかかるようなので、これを利用しました。もし挑戦する場合は、予め星図上の写野角を把握しておきましょう。(※CalSKYは様々なスケールの星図を出力できます。)

何回か試写して撮影条件を詰めてゆきます。たまたま彗星観察直後で長焦点機材のまま臨んだため、高感度短時間露出にしました。観察時刻により衛星の位相=太陽光の当たり具合が変わりますが、この時の計算光度は約10.8等でしたので、最終的にISO8000・10秒露出に決定。εOphを写野左寄りに導入後、予定時刻近くに赤道儀追尾を切って「固定撮影」に切り替えます。(※ガイドしたままだと11等は判別不可能でした。)すると「きずな」が点像になって写り始めました(下A画像)。位置が1.5′角ほどずれていましたが、経験的に想定内。なお星が波打っているのは大気の揺らぎによるもので、追尾モーターのピリオディックモーションや地面の揺れではありません。

静止衛星とは言ってもわずかに動きます。図らずも長焦点で撮影したため「静止衛星の移動」がはっきり分かりました。せっかくですので約6分弱の動きを10秒ほどのGIF動画にして掲載します(下B画像)。画像上方向を天の北にしてあり、恒星は地球の自転によって左から右(東から西)へ日周しています。今回の「きずな」は南下していますが、もちろん北上することもありますよ。ご興味ある方はぜひ色々な静止衛星を撮影してみてください。

  • 20190309「きずな」撮影画像

  • 20190309超高速インターネット衛星「きずな」

    B:クリックすると動画再生します


大雨のち強風&花粉!2019/03/11

20190311-0600降雨レーダー
明け方から朝にかけて関東を中心に大雨の時間帯がありました。当地・茨城でも6時前から7時過ぎにかけて雨脚が強くなっています。

左は気象庁サイトからの引用で今朝6:00の降水レーダー画像。この時期にしては珍しく降雨帯ができています。ちょうど低気圧の中心が関東南岸を横切っており、ほんとうに台風のようでした。その後雨は早い段階で収まりましたが、雲と強い風はずっと残り、晴れてきたのは午後遅くなってからです。

20190311花粉光環
晴れたら晴れたで、強い風が大量の花粉を促したようです。右は17時前に太陽を物干し竿に隠して撮影したスギ花粉光環。今日も赤色の環が四重目まで見えているようですね。相当濃いことを物語っています。なお強風のため太陽面観察は中止としました。

夕方からはよく晴れ渡っていますが、強い風と花粉は明日まで続きそう…。今夜の天体観察は無理かなぁ。