旧暦七夕の夜、久しぶりの星空。 ― 2026/08/20
昨夜から今朝にかけて久しぶりに安定した晴れ間が訪れたので、夜半からいくつかの天体を観察しました。
まずは土星。シーイングは6/10程度で大きな乱れも少なかったです。7月21日を境に環の傾斜が戻る方向に転じていましたが、さすがに一ヶ月程度では全く分かりません。左側B環に見られるスポークらしきものが写りました。自転と共に回っているのでアーティファクトでは無いでしょう。
環に投影された本体の影が右奥に見えていますが、これは一ヶ月の間にかなり小さくなりました。衝のころは太陽が正面から照らすので、この影が最小(ほぼ見えない)になります。残り2ヶ月と2週間。今後は急速に見えなくなるでしょう。像も大きくなったので、撮影時のROIをひと回り大きくしなくてはなりませんでした。
お次はマクノート彗星(220P/下A画像)。多くの方が撮影画像を公開されているようですが、すっかり暗くなりました。その代わり尾が長くなり、私の機材でははみ出てしまいました。はたして三度目のバーストが起きるでしょうか?
更に、板垣公一さんがNGC2748に発見したPSN(AT2026yly)と、徳岡修二さんがNGC1568近くに発見したPSN(AT2026yvy)も撮影。なかなか大忙しでした。AT2026yvyは天体が特定できなかったので、AT2026ylyのみ下B画像に掲載します。北極星に近く、赤道儀が上手に動いてくれませんでした。
まずは土星。シーイングは6/10程度で大きな乱れも少なかったです。7月21日を境に環の傾斜が戻る方向に転じていましたが、さすがに一ヶ月程度では全く分かりません。左側B環に見られるスポークらしきものが写りました。自転と共に回っているのでアーティファクトでは無いでしょう。
環に投影された本体の影が右奥に見えていますが、これは一ヶ月の間にかなり小さくなりました。衝のころは太陽が正面から照らすので、この影が最小(ほぼ見えない)になります。残り2ヶ月と2週間。今後は急速に見えなくなるでしょう。像も大きくなったので、撮影時のROIをひと回り大きくしなくてはなりませんでした。
お次はマクノート彗星(220P/下A画像)。多くの方が撮影画像を公開されているようですが、すっかり暗くなりました。その代わり尾が長くなり、私の機材でははみ出てしまいました。はたして三度目のバーストが起きるでしょうか?
更に、板垣公一さんがNGC2748に発見したPSN(AT2026yly)と、徳岡修二さんがNGC1568近くに発見したPSN(AT2026yvy)も撮影。なかなか大忙しでした。AT2026yvyは天体が特定できなかったので、AT2026ylyのみ下B画像に掲載します。北極星に近く、赤道儀が上手に動いてくれませんでした。
北海道の佐野さんがNGC5907に超新星発見 ― 2026/04/26
4月22日夜半前、北海道の佐野康男さんがりゅう座のNGC5907(=NGC5906)に16.62等の超新星候補天体を発見しました。分光の結果type2の超新星と分かり、無事SN2026kidの番号が付きました。順調に増光中とのこと。ただしtype2にしてはゆっくりした増光のようです。佐野さんの発見は21年ぶりとのこと。現在の大量発見に慣れちゃってると忘れがちだけれど、本来は人力で新天体を発見するのはこれくらいのペースが当たり前なのです。
当地はしばらく晴れ間がありませんでしたが、昨夜から今朝にかけて天気が持ったので、月没後にさくっと撮ってみました。未明から冷え込んでシーイング悪化や結露のリスクがあったけれど、意外にシャープに写りました。モニターでもしっかり見えておりました。明日はまた大雨とのことで、記録できて良かった…。
当地はしばらく晴れ間がありませんでしたが、昨夜から今朝にかけて天気が持ったので、月没後にさくっと撮ってみました。未明から冷え込んでシーイング悪化や結露のリスクがあったけれど、意外にシャープに写りました。モニターでもしっかり見えておりました。明日はまた大雨とのことで、記録できて良かった…。
月とプレアデス星団が宵空でおしゃべり ― 2026/03/23
月とプレアデス星団は一昨年2024年ごろから接近や掩蔽を繰り返していますが、今夜(23日宵)も大接近しました。
日本経緯度原点(東京)計算では19:02の最接近時に離角0.93°。この時刻や離角は地方によって差があるものの、概ね宵のいちばん良い時間に最接近してくれました。月軌道のブレによって約18.6年周期で接近時期と遠ざかる時期が繰り返されます。
接近する時期はまず星団の南から少しずつ月が近づき→接近のたびに離角が近くなり(〜2024年)→ついに掩蔽期(2025年ごろ)→そして北へ少し離れ(いまココ)→また南下を始めて掩蔽が頻発(2027〜2028年ごろ)→やがて南へ離れて(2029年〜)近づかなくなります。今年〜2028年の接近掩蔽を見逃すと、次は2043年からの4、5年間まで待つことになるでしょう(右下図参照)。
左上画像は23日19:10過ぎ、ほぼ最接近時の撮影。ブランケット5段階×2種をいったんHDR合成、ブログ用にSDRへ戻したものです。なんとか明るいところが完全白飛びせずに済みました。プレアデス星団のほうも七人姉妹とお父さんアトラス、お母さんプレイオネまでしっかり写ってます。そう言えばお嬢さん方は月の女神アルテミスの侍女でしたね。月とプレアデスたちは今でも仲良くおしゃべりを楽しんでいるでしょうか。
今年は10月1日未明に両天体が大接近します。これまた南中するころで空高く、最高の条件で見えるでしょう。更に11月24日19時台にも接近。このころには北に離れていた月が南下して星団の一部を掩蔽しますから、今年一年しっかり観ていると星団と月との位置関係を確実に理解できますよ。
プレアデス星団は黄道座標系で測ると黄緯が4°前後あります。月の黄緯はだいたいプラス5.1°からマイナス5.1°まで振れますから、「月がプレアデス星団付近で黄道から北に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと夏至に相当)=Major Lunar Standstillを迎えるころに星団掩蔽が起こる」と言えるでしょう。反対に黄緯がマイナス4.5°のアンタレスが掩蔽されるのは「月がアンタレス付近で黄道から南に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと冬至に相当)=Minor Lunar Standstillを迎えるころ」と言えます。回りくどい表現ですが、この月のブレによって様々な現象時期がほどよく分布し、私たちを楽しませてくれるのです。本当に自然って良くできているなあと感じます。
日本経緯度原点(東京)計算では19:02の最接近時に離角0.93°。この時刻や離角は地方によって差があるものの、概ね宵のいちばん良い時間に最接近してくれました。月軌道のブレによって約18.6年周期で接近時期と遠ざかる時期が繰り返されます。
接近する時期はまず星団の南から少しずつ月が近づき→接近のたびに離角が近くなり(〜2024年)→ついに掩蔽期(2025年ごろ)→そして北へ少し離れ(いまココ)→また南下を始めて掩蔽が頻発(2027〜2028年ごろ)→やがて南へ離れて(2029年〜)近づかなくなります。今年〜2028年の接近掩蔽を見逃すと、次は2043年からの4、5年間まで待つことになるでしょう(右下図参照)。
左上画像は23日19:10過ぎ、ほぼ最接近時の撮影。ブランケット5段階×2種をいったんHDR合成、ブログ用にSDRへ戻したものです。なんとか明るいところが完全白飛びせずに済みました。プレアデス星団のほうも七人姉妹とお父さんアトラス、お母さんプレイオネまでしっかり写ってます。そう言えばお嬢さん方は月の女神アルテミスの侍女でしたね。月とプレアデスたちは今でも仲良くおしゃべりを楽しんでいるでしょうか。
今年は10月1日未明に両天体が大接近します。これまた南中するころで空高く、最高の条件で見えるでしょう。更に11月24日19時台にも接近。このころには北に離れていた月が南下して星団の一部を掩蔽しますから、今年一年しっかり観ていると星団と月との位置関係を確実に理解できますよ。
プレアデス星団は黄道座標系で測ると黄緯が4°前後あります。月の黄緯はだいたいプラス5.1°からマイナス5.1°まで振れますから、「月がプレアデス星団付近で黄道から北に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと夏至に相当)=Major Lunar Standstillを迎えるころに星団掩蔽が起こる」と言えるでしょう。反対に黄緯がマイナス4.5°のアンタレスが掩蔽されるのは「月がアンタレス付近で黄道から南に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと冬至に相当)=Minor Lunar Standstillを迎えるころ」と言えます。回りくどい表現ですが、この月のブレによって様々な現象時期がほどよく分布し、私たちを楽しませてくれるのです。本当に自然って良くできているなあと感じます。
【月とすばるの接近/2022-2060年/日本経緯度原点】
| 最小離隔日時(JST) | M45・月離角(°角) | 月高度(°) | 太陽高度(°) | 月齢 |
|---|---|---|---|---|
| 2022-11-10 00:30:02 | -2.79 | 75.86 | -66.36 | 15.20 |
| 2023-01-30 19:19:42 | -2.46 | 75.41 | -27.33 | 8.56 |
| 2023-10-31 01:08:47 | -1.23 | 77.15 | -58.04 | 15.93 |
| 2023-12-24 17:19:57 | -1.56 | 36.45 | -9.52 | 11.37 |
| 2024-01-21 00:47:19 | -1.03 | 21.98 | -70.28 | 9.16 |
| 2024-12-14 04:13:46 | -0.20 | 10.68 | -29.39 | 12.54 |
| 2025-03-05 23:27:10 | 0.24 | 4.26 | -59.59 | 5.57 |
| 2025-08-17 00:12:49 | 0.22 | 18.69 | -40.39 | 22.83 |
| 2025-11-07 00:49:23 | 0.62 | 77.85 | -62.89 | 16.14 |
| 2025-12-31 23:38:56 | 0.75 | 51.88 | -77.34 | 11.54 |
| 2026-03-23 19:01:59 | 0.93 | 42.71 | -14.35 | 4.36 |
| 2026-10-01 02:43:03 | 0.90 | 79.28 | -34.98 | 19.59 |
| 2026-11-24 19:31:26 | 0.42 | 40.99 | -36.59 | 15.15 |
| 2027-01-18 17:02:12 | 0.75 | 54.87 | -2.47 | 10.49 |
| 2027-07-29 00:29:16 | 0.22 | 7.23 | -34.53 | 24.52 |
| 2027-10-18 19:09:49 | -0.13 | 7.49 | -26.57 | 18.32 |
| 2027-11-15 05:16:58 | 0.15 | 21.24 | -12.23 | 16.28 |
| 2028-01-09 01:31:26 | 0.28 | 23.13 | -63.74 | 11.85 |
| 2028-07-18 04:24:59 | -0.26 | 45.44 | -3.31 | 25.04 |
| 2028-10-08 03:03:57 | -0.51 | 75.07 | -32.48 | 18.99 |
| 2028-12-29 01:44:31 | -0.73 | 28.07 | -60.91 | 12.61 |
| 2029-02-21 18:50:55 | -0.80 | 67.54 | -17.43 | 7.97 |
| 2029-07-08 02:40:22 | -1.69 | 15.33 | -18.72 | 25.58 |
| 2029-09-28 03:21:11 | -1.84 | 76.24 | -27.27 | 19.32 |
| 2029-12-18 22:20:54 | -2.02 | 74.07 | -69.33 | 12.94 |
| 2030-03-10 22:37:23 | -2.75 | 8.33 | -54.00 | 6.29 |
| 2041-10-13 04:48:26 | -2.04 | 52.37 | -12.40 | 17.46 |
| 2041-12-07 00:44:06 | -2.05 | 58.01 | -69.64 | 12.92 |
| 2042-02-26 19:18:46 | -1.47 | 58.71 | -22.21 | 6.11 |
| 2042-09-06 02:06:15 | -1.01 | 56.04 | -35.51 | 20.96 |
| 2042-10-30 19:44:57 | -1.21 | 22.55 | -36.38 | 16.36 |
| 2042-12-24 17:03:23 | -1.07 | 33.62 | -6.39 | 11.73 |
| 2043-01-21 02:23:03 | -0.66 | 3.77 | -53.45 | 9.44 |
| 2043-07-04 02:26:28 | -0.63 | 9.99 | -20.12 | 26.29 |
| 2043-09-23 20:45:31 | -0.24 | 6.85 | -37.26 | 19.94 |
| 2044-02-07 22:23:19 | 0.63 | 37.39 | -61.12 | 8.39 |
| 2044-04-29 18:26:34 | 0.48 | 20.26 | -0.92 | 1.57 |
| 2044-11-07 01:48:39 | 0.76 | 68.86 | -52.62 | 16.72 |
| 2044-12-31 23:54:58 | 0.86 | 48.62 | -77.15 | 12.25 |
| 2045-03-23 22:19:40 | 0.72 | 4.09 | -47.73 | 4.84 |
| 2045-10-01 03:44:40 | 0.85 | 74.21 | -23.25 | 19.72 |
| 2045-12-22 04:26:32 | 0.42 | 3.20 | -27.71 | 13.32 |
| 2046-02-14 23:24:18 | 0.66 | 19.47 | -66.14 | 8.64 |
| 2046-08-25 00:00:08 | 0.04 | 21.93 | -43.28 | 22.19 |
| 2046-11-14 18:38:16 | -0.43 | 21.68 | -25.10 | 15.93 |
| 2046-12-12 04:35:55 | -0.25 | 8.49 | -24.65 | 13.91 |
| 2047-02-04 21:52:57 | -0.00 | 45.59 | -56.59 | 9.47 |
| 2047-04-27 18:39:54 | -0.68 | 19.24 | -3.92 | 2.21 |
| 2047-11-04 18:13:55 | -1.61 | 8.30 | -18.79 | 16.24 |
| 2047-12-02 02:12:21 | -1.21 | 44.49 | -52.17 | 14.18 |
| 2048-08-30 23:39:40 | -2.58 | 21.00 | -45.74 | 20.86 |
| 2048-11-20 23:54:24 | -2.67 | 75.15 | -73.14 | 14.43 |
| 2049-02-10 19:01:30 | -2.91 | 71.73 | -21.54 | 7.87 |
| 2060-01-13 21:42:37 | -2.88 | 64.50 | -58.91 | 9.84 |
| 2060-10-13 01:30:20 | -1.59 | 74.97 | -50.49 | 18.03 |
| 最小離隔日時(JST) | M45・月離角(°角) | 月高度(°) | 太陽高度(°) | 月齢 |
- 自作プログラムによる計算です。
- 最接近瞬時の離角が3°角以内、太陽高度が0°以下、月高度が0°以上、太陽から20°以上離れたところで起こるケースのみをピックアップしました。(※観察地は日本経緯度原点の設定なので、観測地が東京から離れるほど位置も時刻も少しずれます。)
- 離角にマイナスがついているのは、月が星団より南側に離れていることを表します。プラスは北側です。(この表のみのローカルルール。)
- 上の条件にこだわらなければ、この表以外にも「近くに見える」というチャンスはたくさんあります。
いよいよ夕空の水平月・逆転月が始まるよ ― 2026/03/06
3月20日に天気が悪かったら、翌日3月21日もほぼ水平なのでご覧ください。
今年から本格的に「夕空の水平月・逆転月」のシーズンが始まることを2026年2月16日記事などで言及しました。第1回目の好機は3月20日、日没直後の西空低空。本日から二週間後ですのでお忘れなく。
明け方の水平/逆転月は2024年ごろが最終でした。今期・夕方のケースは概ね2034年ごろまで続き、数年のブランクを経てまた明け方に戻ります。普段は現象を観るのが困難な北日本でも2028年3月27日、2029年3月16日、2030年3月5日など観察可能なケースがあり、期待が高まりますね。
水平月・逆転月という現象について当記事では触れませんので、以前の特集記事をご覧ください(→「横たわる有明月を観よう・Part1」・「横たわる有明月を観よう・Part2」)。また天文リフレクションズ・特選ピックアップや、明け方側のころ星ナビ2022年10月号でも特集が組まれたことがありますから、資料はそれなりに見つかるかと思います。
簡単におさらいすると、「新月をはさんで数日前から数日後の期間に、明け方の東天低空または夕方の西天低空に見える細い月が舟のように水平に見えたり、普段は見ることができない傾きに光る(弦の傾斜が逆転する)」現象です。起こりやすい時期が7、8年ごとに夕方と朝方を行ったり来たりします。起こりやすいと言っても初春から初夏(期間中に段々早まり、冬まで前進する)の年間数回程度に限られ、月齢1前後の極細月を薄暮+春霞の中で探さねばなりませんからハードルは極めて高いでしょう。
月は満ち欠けによる様々な形態があり、昼間の青空ですら見える天体なので、この現象には暗黙の制約が三つあります。「新月の日から離れない」、「太陽が地平下の時間帯に限る」、そして「日本国内限定」。いずれも「日本から見える低空の細い月」という縛りを成立させるためです。観察場所を国外にしたり昼間の時間帯や太い月齢まで認めてしまうと太陽と月の自由度が大き過ぎ、例えば赤道直下では毎月見える当たり前の現象になってしまうのです。(※国内でも北ほど難しく南ほどチャンスが増え、南西諸島あたりではほぼ毎年チャンスがあります。)日本からカノープスや南十字星を貴重な星として祭り上げるように、水平月・逆転月もなかなか見えないところに貴重さがあって、有り難みが増すというもの。
水平月のころの月と太陽の位置関係を模式図にすると右図のようになるでしょう。太陽はぴったり黄道上を動いて見えるのに対し、月は黄道から少しだけ南北にずれて公転します。この結果、日没直後の月から見て太陽がほぼ真下に位置する日が稀にやってきて、水平月になります。またこの図で、月が太陽真上よりも更に右にある場合は逆転月になるのです。山や塔などの前景で月の一部が隠されるなら、以前に紹介した「鬼富士」のような「二本のツノが生えた様に見える月」が見やすいシーズンと言えましょう。湖や海を前景に、舟のような月を観たり撮ったりするのも楽しそうです。
今年、少なくとも九州あたりまで水平月の北限が到達するのは3月20日、4月18日、5月17日の3回。できるだけ状況を把握していただくため、三つの候補日それぞれにおいて日没瞬時に月がどんな形で光っているか、そして月高度が10°と5°に下がったときに弦傾斜が何度になっているか地理的な分布を計算してみました。コメント付きで下に掲載します。
★3月20日
上A図は日没瞬時に月の光っている部分がどんな形でどういう向きなのかを国内六ヶ所でシミュレートしたもの。地平座標での描画、つまり、画像左右方向が水平方向、上下方向が天頂・天底の方向です。図内に書いてある高度は日没瞬時の値で、全国どこでも16°前後であることが分かるでしょう。また弦傾斜とは、幾何学上のカスプ(月の両端、尖った部分)を結んだ線が水平に対して何度傾いているかの数値です。数値が正の数なら右上がり、負の数なら右下がり。水平月のチャンスではご覧の通りアラウンドゼロ。弦傾斜は観察場所の緯度に大きく影響されます。なお実際の月は大気によって変形するので弦傾斜も変わりますが、今回は考慮しません。
上B図は、月高度が10°まで下がったとき、日本のどこで弦傾斜が何度になるかを地図化したもの(水色線)。またオレンジ線は各地の日没時刻を表しています。(※観測地標高は考慮していません。)例えば和歌山県の南紀白浜あたりでは18:10ごろ太陽が沈み、少し待つと月高度が10°になるので、そのとき月を見れば弦傾斜がゼロ=完全な水平月ですよ、と読み取れます。
更に待つと月高度が5°まで下がり、そのときの弦傾斜マップが上C図(黄色線)。同じ場所で観察する場合、時刻と共に弦傾斜が変わることに留意しましょう。透明度が高い空なら高度5°の繊月も余裕で見えるけれど、春霞があったら全く見えません。幸い、今回は4°余り離れた金星と横並びになっています。2月18日の大接近よりは遠いけれど、早い段階で金星を見つけて指標にすると便利です。(注:月面は金星に比べて「表面輝度」が4〜5等も暗いので、金星並みの明るさを期待してはいけません。)
★4月18日
上D・E・F図の見方は3月20日のケースと変わりません。注意していただきたいのは、日没時刻が3月のケースよりも新月に近いため、月が細く高度も低いこと。各地の日没時月高度はだいたい11°ですから、日没後すぐにE図の状態になるわけですね。背景が明るいところで繊月を探すのは慣れと勘が必要です。金星は離れてしまうため指標に使いづらくなります。もし正確なアラインメントが済んだ機材を用意できるなら、無理をせず自動導入に頼るのも手です。
★5月17日
5月は今年のチャンスでいちばん厳しい状態です。月齢は0.57くらいなので「ほぼ無理」と言ってもいいでしょう。上G図を見ると日没時の月高度が8°弱ですから、上H図の月高度10°はオレンジ線の日没時刻より前になってしまうのです。日没20分後くらいで月高度5°に下がりますから、かなり明るい空で月を探さなくてはなりません。眩しい空を長く見続けると視力が低下したり具合が悪くなるなど身体に悪いですから、休み休み行ってください。
低空の霞を避けるため、可能ならできるだけ標高が高いところで観察しましょう。平均的な小型双眼鏡の視野が概ね6〜7°角であることを利用しましょう。100〜150mmレンズ+APS-Cカメラの短辺が5〜8°角なのも頼りになります。万が一見えたなら、かなり深い逆転月を拝むことができるでしょう。撮影なら白黒センサーでフィルターワークを駆使するなどの方法もアリですね。
大変なことも多いけれど、苦労して見つけたときの喜びはひとしお。ぜひ小さな双眼鏡やカメラを片手に地平が見渡せるところへ出かけてみてください。一回でも多くの経験が今後の素敵な星空ライフの糧になるでしょう。
-
【注意点など】
- 上の各図は自作プログラムによる概算です。観察の目安として自由にお使いください。
- 本文中の「弦」とは、南北カスプおよび見かけの月中心を結ぶ直線としています。カスプは幾何学的に光が当たる端の位置であり、実際に光っているかどうか関係ありません。月表面は凸凹してるため、右図のようにカスプの手前で光が途切れてしまうこともあれば、カスプをちょっと通り越したところが光る場合もあります。従って実際の観察では想像してた弦よりも傾いて見えたり、水平だったりすることがあります。
- 地図上の0°ライン上は完全な水平月(弦傾斜が計算上0°)になるところ。またマイナス数値のラインは弦傾斜が右下がり、プラス数値は右上がりです。
- 日本では多くの場合、夕方見える細い月は地平下の太陽方位角に対し南寄り(左寄り)にあるため右下が照らされています。つまり弦傾斜は右上がり(正の数値)になっていることが普通です。
- カスプ位置は月の北極や南極からズレていることが普通です。特に繊月は太陽に近いためズレが顕著になります。内合時の金星のカスプが金星の極を全く通っていないのと同様です。
- 今回は夕方の例ですが、明け方の極細月も同様に弦傾斜を決められます。明け方の繊月は弦傾斜が負の数値であることが普通です。
- 弦傾斜は観察位置や月高度によって変化します。
- 撮影する場合はなるべく手持ちを避け、三脚と水準器(カメラ内蔵または外付け)などを利用してカメラを水平に保ってください。赤道儀で追尾するときは一度カメラを水平にしてもどんどんズレますからご注意を。随時チェックしましょう。


















