月とプレアデス星団が宵空でおしゃべり ― 2026/03/23
月とプレアデス星団は一昨年2024年ごろから接近や掩蔽を繰り返していますが、今夜(23日宵)も大接近しました。
日本経緯度原点(東京)計算では19:02の最接近時に離角0.93°。この時刻や離角は地方によって差があるものの、概ね宵のいちばん良い時間に最接近してくれました。月軌道のブレによって約18.6年周期で接近時期と遠ざかる時期が繰り返されます。
接近する時期はまず星団の南から少しずつ月が近づき→接近のたびに離角が近くなり(〜2024年)→ついに掩蔽期(2025年ごろ)→そして北へ少し離れ(いまココ)→また南下を始めて掩蔽が頻発(2027〜2028年ごろ)→やがて南へ離れて(2029年〜)近づかなくなります。今年〜2028年の接近掩蔽を見逃すと、次は2043年からの4、5年間まで待つことになるでしょう(右下図参照)。
左上画像は23日19:10過ぎ、ほぼ最接近時の撮影。ブランケット5段階×2種をいったんHDR合成、ブログ用にSDRへ戻したものです。なんとか明るいところが完全白飛びせずに済みました。プレアデス星団のほうも七人姉妹とお父さんアトラス、お母さんプレイオネまでしっかり写ってます。そう言えばお嬢さん方は月の女神アルテミスの侍女でしたね。月とプレアデスたちは今でも仲良くおしゃべりを楽しんでいるでしょうか。
今年は10月1日未明に両天体が大接近します。これまた南中するころで空高く、最高の条件で見えるでしょう。更に11月24日19時台にも接近。このころには北に離れていた月が南下して星団の一部を掩蔽しますから、今年一年しっかり観ていると星団と月との位置関係を確実に理解できますよ。
プレアデス星団は黄道座標系で測ると黄緯が4°前後あります。月の黄緯はだいたいプラス5.1°からマイナス5.1°まで振れますから、「月がプレアデス星団付近で黄道から北に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと夏至に相当)=Major Lunar Standstillを迎えるころに星団掩蔽が起こる」と言えるでしょう。反対に黄緯がマイナス4.5°のアンタレスが掩蔽されるのは「月がアンタレス付近で黄道から南に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと冬至に相当)=Minor Lunar Standstillを迎えるころ」と言えます。回りくどい表現ですが、この月のブレによって様々な現象時期がほどよく分布し、私たちを楽しませてくれるのです。本当に自然って良くできているなあと感じます。
日本経緯度原点(東京)計算では19:02の最接近時に離角0.93°。この時刻や離角は地方によって差があるものの、概ね宵のいちばん良い時間に最接近してくれました。月軌道のブレによって約18.6年周期で接近時期と遠ざかる時期が繰り返されます。
接近する時期はまず星団の南から少しずつ月が近づき→接近のたびに離角が近くなり(〜2024年)→ついに掩蔽期(2025年ごろ)→そして北へ少し離れ(いまココ)→また南下を始めて掩蔽が頻発(2027〜2028年ごろ)→やがて南へ離れて(2029年〜)近づかなくなります。今年〜2028年の接近掩蔽を見逃すと、次は2043年からの4、5年間まで待つことになるでしょう(右下図参照)。
左上画像は23日19:10過ぎ、ほぼ最接近時の撮影。ブランケット5段階×2種をいったんHDR合成、ブログ用にSDRへ戻したものです。なんとか明るいところが完全白飛びせずに済みました。プレアデス星団のほうも七人姉妹とお父さんアトラス、お母さんプレイオネまでしっかり写ってます。そう言えばお嬢さん方は月の女神アルテミスの侍女でしたね。月とプレアデスたちは今でも仲良くおしゃべりを楽しんでいるでしょうか。
今年は10月1日未明に両天体が大接近します。これまた南中するころで空高く、最高の条件で見えるでしょう。更に11月24日19時台にも接近。このころには北に離れていた月が南下して星団の一部を掩蔽しますから、今年一年しっかり観ていると星団と月との位置関係を確実に理解できますよ。
プレアデス星団は黄道座標系で測ると黄緯が4°前後あります。月の黄緯はだいたいプラス5.1°からマイナス5.1°まで振れますから、「月がプレアデス星団付近で黄道から北に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと夏至に相当)=Major Lunar Standstillを迎えるころに星団掩蔽が起こる」と言えるでしょう。反対に黄緯がマイナス4.5°のアンタレスが掩蔽されるのは「月がアンタレス付近で黄道から南に離れる(太陽と天の赤道の関係で言うと冬至に相当)=Minor Lunar Standstillを迎えるころ」と言えます。回りくどい表現ですが、この月のブレによって様々な現象時期がほどよく分布し、私たちを楽しませてくれるのです。本当に自然って良くできているなあと感じます。
【月とすばるの接近/2022-2060年/日本経緯度原点】
| 最小離隔日時(JST) | M45・月離角(°角) | 月高度(°) | 太陽高度(°) | 月齢 |
|---|---|---|---|---|
| 2022-11-10 00:30:02 | -2.79 | 75.86 | -66.36 | 15.20 |
| 2023-01-30 19:19:42 | -2.46 | 75.41 | -27.33 | 8.56 |
| 2023-10-31 01:08:47 | -1.23 | 77.15 | -58.04 | 15.93 |
| 2023-12-24 17:19:57 | -1.56 | 36.45 | -9.52 | 11.37 |
| 2024-01-21 00:47:19 | -1.03 | 21.98 | -70.28 | 9.16 |
| 2024-12-14 04:13:46 | -0.20 | 10.68 | -29.39 | 12.54 |
| 2025-03-05 23:27:10 | 0.24 | 4.26 | -59.59 | 5.57 |
| 2025-08-17 00:12:49 | 0.22 | 18.69 | -40.39 | 22.83 |
| 2025-11-07 00:49:23 | 0.62 | 77.85 | -62.89 | 16.14 |
| 2025-12-31 23:38:56 | 0.75 | 51.88 | -77.34 | 11.54 |
| 2026-03-23 19:01:59 | 0.93 | 42.71 | -14.35 | 4.36 |
| 2026-10-01 02:43:03 | 0.90 | 79.28 | -34.98 | 19.59 |
| 2026-11-24 19:31:26 | 0.42 | 40.99 | -36.59 | 15.15 |
| 2027-01-18 17:02:12 | 0.75 | 54.87 | -2.47 | 10.49 |
| 2027-07-29 00:29:16 | 0.22 | 7.23 | -34.53 | 24.52 |
| 2027-10-18 19:09:49 | -0.13 | 7.49 | -26.57 | 18.32 |
| 2027-11-15 05:16:58 | 0.15 | 21.24 | -12.23 | 16.28 |
| 2028-01-09 01:31:26 | 0.28 | 23.13 | -63.74 | 11.85 |
| 2028-07-18 04:24:59 | -0.26 | 45.44 | -3.31 | 25.04 |
| 2028-10-08 03:03:57 | -0.51 | 75.07 | -32.48 | 18.99 |
| 2028-12-29 01:44:31 | -0.73 | 28.07 | -60.91 | 12.61 |
| 2029-02-21 18:50:55 | -0.80 | 67.54 | -17.43 | 7.97 |
| 2029-07-08 02:40:22 | -1.69 | 15.33 | -18.72 | 25.58 |
| 2029-09-28 03:21:11 | -1.84 | 76.24 | -27.27 | 19.32 |
| 2029-12-18 22:20:54 | -2.02 | 74.07 | -69.33 | 12.94 |
| 2030-03-10 22:37:23 | -2.75 | 8.33 | -54.00 | 6.29 |
| 2041-10-13 04:48:26 | -2.04 | 52.37 | -12.40 | 17.46 |
| 2041-12-07 00:44:06 | -2.05 | 58.01 | -69.64 | 12.92 |
| 2042-02-26 19:18:46 | -1.47 | 58.71 | -22.21 | 6.11 |
| 2042-09-06 02:06:15 | -1.01 | 56.04 | -35.51 | 20.96 |
| 2042-10-30 19:44:57 | -1.21 | 22.55 | -36.38 | 16.36 |
| 2042-12-24 17:03:23 | -1.07 | 33.62 | -6.39 | 11.73 |
| 2043-01-21 02:23:03 | -0.66 | 3.77 | -53.45 | 9.44 |
| 2043-07-04 02:26:28 | -0.63 | 9.99 | -20.12 | 26.29 |
| 2043-09-23 20:45:31 | -0.24 | 6.85 | -37.26 | 19.94 |
| 2044-02-07 22:23:19 | 0.63 | 37.39 | -61.12 | 8.39 |
| 2044-04-29 18:26:34 | 0.48 | 20.26 | -0.92 | 1.57 |
| 2044-11-07 01:48:39 | 0.76 | 68.86 | -52.62 | 16.72 |
| 2044-12-31 23:54:58 | 0.86 | 48.62 | -77.15 | 12.25 |
| 2045-03-23 22:19:40 | 0.72 | 4.09 | -47.73 | 4.84 |
| 2045-10-01 03:44:40 | 0.85 | 74.21 | -23.25 | 19.72 |
| 2045-12-22 04:26:32 | 0.42 | 3.20 | -27.71 | 13.32 |
| 2046-02-14 23:24:18 | 0.66 | 19.47 | -66.14 | 8.64 |
| 2046-08-25 00:00:08 | 0.04 | 21.93 | -43.28 | 22.19 |
| 2046-11-14 18:38:16 | -0.43 | 21.68 | -25.10 | 15.93 |
| 2046-12-12 04:35:55 | -0.25 | 8.49 | -24.65 | 13.91 |
| 2047-02-04 21:52:57 | -0.00 | 45.59 | -56.59 | 9.47 |
| 2047-04-27 18:39:54 | -0.68 | 19.24 | -3.92 | 2.21 |
| 2047-11-04 18:13:55 | -1.61 | 8.30 | -18.79 | 16.24 |
| 2047-12-02 02:12:21 | -1.21 | 44.49 | -52.17 | 14.18 |
| 2048-08-30 23:39:40 | -2.58 | 21.00 | -45.74 | 20.86 |
| 2048-11-20 23:54:24 | -2.67 | 75.15 | -73.14 | 14.43 |
| 2049-02-10 19:01:30 | -2.91 | 71.73 | -21.54 | 7.87 |
| 2060-01-13 21:42:37 | -2.88 | 64.50 | -58.91 | 9.84 |
| 2060-10-13 01:30:20 | -1.59 | 74.97 | -50.49 | 18.03 |
| 最小離隔日時(JST) | M45・月離角(°角) | 月高度(°) | 太陽高度(°) | 月齢 |
- 自作プログラムによる計算です。
- 最接近瞬時の離角が3°角以内、太陽高度が0°以下、月高度が0°以上、太陽から20°以上離れたところで起こるケースのみをピックアップしました。(※観察地は日本経緯度原点の設定なので、観測地が東京から離れるほど位置も時刻も少しずれます。)
- 離角にマイナスがついているのは、月が星団より南側に離れていることを表します。プラスは北側です。(この表のみのローカルルール。)
- 上の条件にこだわらなければ、この表以外にも「近くに見える」というチャンスはたくさんあります。
いよいよ夕空の水平月・逆転月が始まるよ ― 2026/03/06
3月20日に天気が悪かったら、翌日3月21日もほぼ水平なのでご覧ください。
今年から本格的に「夕空の水平月・逆転月」のシーズンが始まることを2026年2月16日記事などで言及しました。第1回目の好機は3月20日、日没直後の西空低空。本日から二週間後ですのでお忘れなく。
明け方の水平/逆転月は2024年ごろが最終でした。今期・夕方のケースは概ね2034年ごろまで続き、数年のブランクを経てまた明け方に戻ります。普段は現象を観るのが困難な北日本でも2028年3月27日、2029年3月16日、2030年3月5日など観察可能なケースがあり、期待が高まりますね。
水平月・逆転月という現象について当記事では触れませんので、以前の特集記事をご覧ください(→「横たわる有明月を観よう・Part1」・「横たわる有明月を観よう・Part2」)。また天文リフレクションズ・特選ピックアップや、明け方側のころ星ナビ2022年10月号でも特集が組まれたことがありますから、資料はそれなりに見つかるかと思います。
簡単におさらいすると、「新月をはさんで数日前から数日後の期間に、明け方の東天低空または夕方の西天低空に見える細い月が舟のように水平に見えたり、普段は見ることができない傾きに光る(弦の傾斜が逆転する)」現象です。起こりやすい時期が7、8年ごとに夕方と朝方を行ったり来たりします。起こりやすいと言っても初春から初夏(期間中に段々早まり、冬まで前進する)の年間数回程度に限られ、月齢1前後の極細月を薄暮+春霞の中で探さねばなりませんからハードルは極めて高いでしょう。
月は満ち欠けによる様々な形態があり、昼間の青空ですら見える天体なので、この現象には暗黙の制約が三つあります。「新月の日から離れない」、「太陽が地平下の時間帯に限る」、そして「日本国内限定」。いずれも「日本から見える低空の細い月」という縛りを成立させるためです。観察場所を国外にしたり昼間の時間帯や太い月齢まで認めてしまうと太陽と月の自由度が大き過ぎ、例えば赤道直下では毎月見える当たり前の現象になってしまうのです。(※国内でも北ほど難しく南ほどチャンスが増え、南西諸島あたりではほぼ毎年チャンスがあります。)日本からカノープスや南十字星を貴重な星として祭り上げるように、水平月・逆転月もなかなか見えないところに貴重さがあって、有り難みが増すというもの。
水平月のころの月と太陽の位置関係を模式図にすると右図のようになるでしょう。太陽はぴったり黄道上を動いて見えるのに対し、月は黄道から少しだけ南北にずれて公転します。この結果、日没直後の月から見て太陽がほぼ真下に位置する日が稀にやってきて、水平月になります。またこの図で、月が太陽真上よりも更に右にある場合は逆転月になるのです。山や塔などの前景で月の一部が隠されるなら、以前に紹介した「鬼富士」のような「二本のツノが生えた様に見える月」が見やすいシーズンと言えましょう。湖や海を前景に、舟のような月を観たり撮ったりするのも楽しそうです。
今年、少なくとも九州あたりまで水平月の北限が到達するのは3月20日、4月18日、5月17日の3回。できるだけ状況を把握していただくため、三つの候補日それぞれにおいて日没瞬時に月がどんな形で光っているか、そして月高度が10°と5°に下がったときに弦傾斜が何度になっているか地理的な分布を計算してみました。コメント付きで下に掲載します。
★3月20日
上A図は日没瞬時に月の光っている部分がどんな形でどういう向きなのかを国内六ヶ所でシミュレートしたもの。地平座標での描画、つまり、画像左右方向が水平方向、上下方向が天頂・天底の方向です。図内に書いてある高度は日没瞬時の値で、全国どこでも16°前後であることが分かるでしょう。また弦傾斜とは、幾何学上のカスプ(月の両端、尖った部分)を結んだ線が水平に対して何度傾いているかの数値です。数値が正の数なら右上がり、負の数なら右下がり。水平月のチャンスではご覧の通りアラウンドゼロ。弦傾斜は観察場所の緯度に大きく影響されます。なお実際の月は大気によって変形するので弦傾斜も変わりますが、今回は考慮しません。
上B図は、月高度が10°まで下がったとき、日本のどこで弦傾斜が何度になるかを地図化したもの(水色線)。またオレンジ線は各地の日没時刻を表しています。(※観測地標高は考慮していません。)例えば和歌山県の南紀白浜あたりでは18:10ごろ太陽が沈み、少し待つと月高度が10°になるので、そのとき月を見れば弦傾斜がゼロ=完全な水平月ですよ、と読み取れます。
更に待つと月高度が5°まで下がり、そのときの弦傾斜マップが上C図(黄色線)。同じ場所で観察する場合、時刻と共に弦傾斜が変わることに留意しましょう。透明度が高い空なら高度5°の繊月も余裕で見えるけれど、春霞があったら全く見えません。幸い、今回は4°余り離れた金星と横並びになっています。2月18日の大接近よりは遠いけれど、早い段階で金星を見つけて指標にすると便利です。(注:月面は金星に比べて「表面輝度」が4〜5等も暗いので、金星並みの明るさを期待してはいけません。)
★4月18日
上D・E・F図の見方は3月20日のケースと変わりません。注意していただきたいのは、日没時刻が3月のケースよりも新月に近いため、月が細く高度も低いこと。各地の日没時月高度はだいたい11°ですから、日没後すぐにE図の状態になるわけですね。背景が明るいところで繊月を探すのは慣れと勘が必要です。金星は離れてしまうため指標に使いづらくなります。もし正確なアラインメントが済んだ機材を用意できるなら、無理をせず自動導入に頼るのも手です。
★5月17日
5月は今年のチャンスでいちばん厳しい状態です。月齢は0.57くらいなので「ほぼ無理」と言ってもいいでしょう。上G図を見ると日没時の月高度が8°弱ですから、上H図の月高度10°はオレンジ線の日没時刻より前になってしまうのです。日没20分後くらいで月高度5°に下がりますから、かなり明るい空で月を探さなくてはなりません。眩しい空を長く見続けると視力が低下したり具合が悪くなるなど身体に悪いですから、休み休み行ってください。
低空の霞を避けるため、可能ならできるだけ標高が高いところで観察しましょう。平均的な小型双眼鏡の視野が概ね6〜7°角であることを利用しましょう。100〜150mmレンズ+APS-Cカメラの短辺が5〜8°角なのも頼りになります。万が一見えたなら、かなり深い逆転月を拝むことができるでしょう。撮影なら白黒センサーでフィルターワークを駆使するなどの方法もアリですね。
大変なことも多いけれど、苦労して見つけたときの喜びはひとしお。ぜひ小さな双眼鏡やカメラを片手に地平が見渡せるところへ出かけてみてください。一回でも多くの経験が今後の素敵な星空ライフの糧になるでしょう。
-
【注意点など】
- 上の各図は自作プログラムによる概算です。観察の目安として自由にお使いください。
- 本文中の「弦」とは、南北カスプおよび見かけの月中心を結ぶ直線としています。カスプは幾何学的に光が当たる端の位置であり、実際に光っているかどうか関係ありません。月表面は凸凹してるため、右図のようにカスプの手前で光が途切れてしまうこともあれば、カスプをちょっと通り越したところが光る場合もあります。従って実際の観察では想像してた弦よりも傾いて見えたり、水平だったりすることがあります。
- 地図上の0°ライン上は完全な水平月(弦傾斜が計算上0°)になるところ。またマイナス数値のラインは弦傾斜が右下がり、プラス数値は右上がりです。
- 日本では多くの場合、夕方見える細い月は地平下の太陽方位角に対し南寄り(左寄り)にあるため右下が照らされています。つまり弦傾斜は右上がり(正の数値)になっていることが普通です。
- カスプ位置は月の北極や南極からズレていることが普通です。特に繊月は太陽に近いためズレが顕著になります。内合時の金星のカスプが金星の極を全く通っていないのと同様です。
- 今回は夕方の例ですが、明け方の極細月も同様に弦傾斜を決められます。明け方の繊月は弦傾斜が負の数値であることが普通です。
- 弦傾斜は観察位置や月高度によって変化します。
- 撮影する場合はなるべく手持ちを避け、三脚と水準器(カメラ内蔵または外付け)などを利用してカメラを水平に保ってください。赤道儀で追尾するときは一度カメラを水平にしてもどんどんズレますからご注意を。随時チェックしましょう。
『標準的な大きさ』の皆既月食 ― 2026/03/03
本日3月3日に皆既月食が起こります。「雛祭り月食」などと盛り上がってきましたが、残念ながら日本の大部分で天気が怪しそう。次に日本で見える皆既月食は2029年1月1日・初日の出前の未明です(→2025年8月19日記事参照)。偶然ながら「正月月食」「節句月食」「ゾロ目月食」になるようですね。
ところで今回の雛祭り月食の際、単に「皆既になる」だいうだけではなく、「満月として久しぶりに“標準的な”大きさに見える」というイベントにお気付きの方はいらっしゃいますか?普通の大きさの満月なんて毎年起こりそうなものだけれど、意外にも起きる期間と起きない期間がまとまって交互にやってくるため、しばらく見えないことがあるのです。しかも「瞬時に夜空に見える」「天気が良い」等の条件を加味すれば、10年あたり数回程度に減ってしまいます。
スーパームーンとか今年いちばん大きい/小さい満月と言った極値はよく話題になりますが、「標準的な大きさ」は全く話題になりませんね。でも標準があってこそ最大・最小が成り立ち、引き立つのですから、基本の大きさをしっかり観察し、自分の感覚に植え付けておくことに損はありません。
「標準的な大きさの満月」とは「地球中心と月とが平均距離にあるときの満月の視直径」と言い換えられます。平均距離を、ここでは多くの資料で使われる384400kmとしましょう。この数値は地球接近小惑星などの接近具合を表すひとつの単位としてLD(Lunar Distance)と言うこともあります。ちなみに月自身は回転楕円体に近く、月の軌道も楕円、しかも常に変化していますから、平均の計算と言っても様々な考え方があって簡単ではありません。(楕円軌道にも相加平均、相乗平均、調和平均などを定められ、それぞれ意味があります。)また月の直径に関してもいまだに精密な測定が行われてますし、何を持って正式な値とするかも色々な考えがあるでしょう。ここではIAU報告に基づいて平均半径1737.4kmを基準にします(→国立天文台・暦wiki参照)。これらは近い将来変わることもあり得ます。
1LDと月の実直径を使えば、地心平均視直径はおよそ31′ 4.55″=31.07576′=0.517929°と求まります(→国立天文台・暦wiki「視半径」参照)。
上図は今年の月視直径変化を計算したもので、A図は1月1日から4月1日まで、B図はA図のうち2月21日から3月5日を切り出したもの。結構変わりますねぇ。振れ幅も時期によって変化します。一般に月距離は「地心」から「月心」まで考えることが多いですが、地表から月を見ている私たちは地球直径ぶんの視位置変動があり、当然見かけの大きさに影響します。月食を数時間かけて最初から最後まで観察した方はご存知と思いますが、最初と最後で月の大きさが変わっていますよね。記事冒頭のような合成画像を仕上げるとき知ってなくてはならない案件なのです。
今回の月食では皆既最大が2026年3月3日20:33:41、満月瞬時は同20:37:53。満月瞬時の地心視直径は31′ 14.01″となって、前出の平均視直径に比べ10秒角程度大きく見えます。上B図からも満月瞬時に標準的な視直径に近づく様子が分かりますね。地心距離は1LD-1787.945km、測心距離は1LD-5573.829kmで、太陽系規模で考えればわずかな差でしょうか。(※ここでは日本経緯度原点を観測地代表にしています。)
別の見方で、満月瞬時における地球と月との距離をグラフにしたのが下図(※2019年11月13日記事の図を改良したものです)。C図は50年あまりの変化、そのうち2025年から2030年まで切り出したのがD図。2020年〜2025年は平均距離プラスマイナス2000km(図のクリーム色帯部分)に入り、かつ夜空に見えた満月は地心計算でも測心計算でも皆無、空白の期間でした。今回の月食満月からいよいよ「標準的な大きさの満月期間」が始まったと言えましょう。ただ、年間2回程度のチャンスはあれど、満月瞬時に空に見えるとは限りません。D図の範囲でも文字記入のある三回しかチャンスがないのです。意外なほど少ないですね。次回2027年10月15日は中秋一ヶ月後の満月で、瞬時の測心距離は平均距離より約290km月に近いだけ。国内では一番近いのが小笠原諸島付近の1LD-620km、いちばん遠くても北海道稚内辺りの1LD+190km。最も標準に近いのは函館で1LD-7km程度。今度こそ晴れてほしい。
2026年の満月については年初めの総括記事に書きました。満月に限らなくても良いのですが、普段から「自分の望遠鏡でこれとこれを組み合わせれば月がこれくらいの大きさで見える/写る」ことを身体が覚えるくらいになると良いですね。「今日の月はいつもより大きいな」と分かるようになったときの喜びはその人にしか味わえない醍醐味です。
参考:
天の川に近い皆既月食(2025/08/19)
満月の標準的な大きさを知るには?(2019/11/13)
ところで今回の雛祭り月食の際、単に「皆既になる」だいうだけではなく、「満月として久しぶりに“標準的な”大きさに見える」というイベントにお気付きの方はいらっしゃいますか?普通の大きさの満月なんて毎年起こりそうなものだけれど、意外にも起きる期間と起きない期間がまとまって交互にやってくるため、しばらく見えないことがあるのです。しかも「瞬時に夜空に見える」「天気が良い」等の条件を加味すれば、10年あたり数回程度に減ってしまいます。
スーパームーンとか今年いちばん大きい/小さい満月と言った極値はよく話題になりますが、「標準的な大きさ」は全く話題になりませんね。でも標準があってこそ最大・最小が成り立ち、引き立つのですから、基本の大きさをしっかり観察し、自分の感覚に植え付けておくことに損はありません。
「標準的な大きさの満月」とは「地球中心と月とが平均距離にあるときの満月の視直径」と言い換えられます。平均距離を、ここでは多くの資料で使われる384400kmとしましょう。この数値は地球接近小惑星などの接近具合を表すひとつの単位としてLD(Lunar Distance)と言うこともあります。ちなみに月自身は回転楕円体に近く、月の軌道も楕円、しかも常に変化していますから、平均の計算と言っても様々な考え方があって簡単ではありません。(楕円軌道にも相加平均、相乗平均、調和平均などを定められ、それぞれ意味があります。)また月の直径に関してもいまだに精密な測定が行われてますし、何を持って正式な値とするかも色々な考えがあるでしょう。ここではIAU報告に基づいて平均半径1737.4kmを基準にします(→国立天文台・暦wiki参照)。これらは近い将来変わることもあり得ます。
1LDと月の実直径を使えば、地心平均視直径はおよそ31′ 4.55″=31.07576′=0.517929°と求まります(→国立天文台・暦wiki「視半径」参照)。
上図は今年の月視直径変化を計算したもので、A図は1月1日から4月1日まで、B図はA図のうち2月21日から3月5日を切り出したもの。結構変わりますねぇ。振れ幅も時期によって変化します。一般に月距離は「地心」から「月心」まで考えることが多いですが、地表から月を見ている私たちは地球直径ぶんの視位置変動があり、当然見かけの大きさに影響します。月食を数時間かけて最初から最後まで観察した方はご存知と思いますが、最初と最後で月の大きさが変わっていますよね。記事冒頭のような合成画像を仕上げるとき知ってなくてはならない案件なのです。
今回の月食では皆既最大が2026年3月3日20:33:41、満月瞬時は同20:37:53。満月瞬時の地心視直径は31′ 14.01″となって、前出の平均視直径に比べ10秒角程度大きく見えます。上B図からも満月瞬時に標準的な視直径に近づく様子が分かりますね。地心距離は1LD-1787.945km、測心距離は1LD-5573.829kmで、太陽系規模で考えればわずかな差でしょうか。(※ここでは日本経緯度原点を観測地代表にしています。)
別の見方で、満月瞬時における地球と月との距離をグラフにしたのが下図(※2019年11月13日記事の図を改良したものです)。C図は50年あまりの変化、そのうち2025年から2030年まで切り出したのがD図。2020年〜2025年は平均距離プラスマイナス2000km(図のクリーム色帯部分)に入り、かつ夜空に見えた満月は地心計算でも測心計算でも皆無、空白の期間でした。今回の月食満月からいよいよ「標準的な大きさの満月期間」が始まったと言えましょう。ただ、年間2回程度のチャンスはあれど、満月瞬時に空に見えるとは限りません。D図の範囲でも文字記入のある三回しかチャンスがないのです。意外なほど少ないですね。次回2027年10月15日は中秋一ヶ月後の満月で、瞬時の測心距離は平均距離より約290km月に近いだけ。国内では一番近いのが小笠原諸島付近の1LD-620km、いちばん遠くても北海道稚内辺りの1LD+190km。最も標準に近いのは函館で1LD-7km程度。今度こそ晴れてほしい。
2026年の満月については年初めの総括記事に書きました。満月に限らなくても良いのですが、普段から「自分の望遠鏡でこれとこれを組み合わせれば月がこれくらいの大きさで見える/写る」ことを身体が覚えるくらいになると良いですね。「今日の月はいつもより大きいな」と分かるようになったときの喜びはその人にしか味わえない醍醐味です。
参考:
天の川に近い皆既月食(2025/08/19)
満月の標準的な大きさを知るには?(2019/11/13)
宵空を飾る明星と極細月 ― 2026/02/19
日食を終えたばかりの月が日本の夕空に戻ってきました。しかも、金星と同伴です。どうしても見たかったのですが体が不自由なことを考えると遠出はできません。そこで、近くに住む星仲間を誘って一緒に近場へ出かけることにしました。
少しでも良い見晴らしを求め、地元で評判の人工山に登りました。標高50mもありませんが、360°視線を遮るものは無く、光害一等地であることを除けば格好の観察場所です。カノープスだって見えるし、国際宇宙ステーションが空の端から端まで飛ぶのも途切れずに確認できます。現地には日没1時間前に到着。気持ちが前のめりだったせいか、日没前から双眼鏡で探したり沈む夕日を撮りまくっていました(記事下画像)。低空には視認できるモヤがあり、更には少ないながらも雲が流れていました。でも何とかなると信じ、日没後に見えてきた金星を頼りにひたすらシャッターを切りました。
左上画像は昨夕18日17:50過ぎの撮影で、太陽黄経差は約10.67°、撮影高度は約2.54°、月齢は0.87。金星との離角は1.44°でした。月が見えるように画像処理したため金星が大きくはっきりしてしまったけれど、実は金星像も弱々しくてか細い感じでした。
何とか肉眼で金星は確認できたものの、月は双眼鏡でも困難。条件を変えながら連写し、カメラの液晶モニター越しにようやく発見しました。2025年7月20日記事に書いた通り、月の単位面積あたりの平均輝度は満月であっても金星よりはるかに暗く、ましてや月齢1を下回る月を薄暮の中で見つけることはとても困難なのです。今回は幸運にも金星ありきで構図を決めて撮ったため、うまいこと写野に捉えることができました。これまでに捉えた月相で最も太陽黄経差が小さかったのは2013年4月11日の約11.63度。今回は金星と一緒の撮影だったから拡大撮影はできなかったけれど、いちおう自己ベストを更新しました。(実は2021年3月14日に太陽黄経差10.795°を記録してるんですが、このときは広く撮ってたまたま写ってたという撮り方なので、狙って撮ったカウントに含めません。)
ちなみに弦傾斜は15.44°(右上がり)あり、もし同時刻に沖縄(那覇)で見たなら7.96°でした。2026年2月16日記事下表には2月19日が水平月候補日に上げられていますが、関東でも沖縄でも18日より19日のほうが弦傾斜が少なく、水平に近づきます。これは月が黄道を南から北へ通り過ぎる通過点にあって、弦傾斜が減る方向へ急速に移動しているためと考えられます(2月18日15:18:46JSTに黄道に対する白道の昇交点を通過、つまり月の黄緯がマイナスからプラスへ動く)。しかしながら、ぱっと考えた予想に反した動きに感じるのは私だけでは無いでしょう。日が経つと、普通は弦が立ってきますからね。
太陽が出ていない時間に月と金星が1°台まで接近するチャンスはとても少なく、直近でそこそこ近いのは2028年3月30日宵(2°前後)や2031年3月26日宵(2°前後)、2035年4月6日明け方(0.6°前後)あたりでしょうか。今回は天候にも恵まれ、実にラッキーでした。驚かされたのは帰宅後30分もしたら雨がザーザー降ってきたこと。ほんの1時間程度の違いで美しい宵空に巡り合えて感謝感謝。山の上でおしゃべりしてくださった散歩中の街の皆様にも温かい気持ちをもらいました。
少しでも良い見晴らしを求め、地元で評判の人工山に登りました。標高50mもありませんが、360°視線を遮るものは無く、光害一等地であることを除けば格好の観察場所です。カノープスだって見えるし、国際宇宙ステーションが空の端から端まで飛ぶのも途切れずに確認できます。現地には日没1時間前に到着。気持ちが前のめりだったせいか、日没前から双眼鏡で探したり沈む夕日を撮りまくっていました(記事下画像)。低空には視認できるモヤがあり、更には少ないながらも雲が流れていました。でも何とかなると信じ、日没後に見えてきた金星を頼りにひたすらシャッターを切りました。
左上画像は昨夕18日17:50過ぎの撮影で、太陽黄経差は約10.67°、撮影高度は約2.54°、月齢は0.87。金星との離角は1.44°でした。月が見えるように画像処理したため金星が大きくはっきりしてしまったけれど、実は金星像も弱々しくてか細い感じでした。
何とか肉眼で金星は確認できたものの、月は双眼鏡でも困難。条件を変えながら連写し、カメラの液晶モニター越しにようやく発見しました。2025年7月20日記事に書いた通り、月の単位面積あたりの平均輝度は満月であっても金星よりはるかに暗く、ましてや月齢1を下回る月を薄暮の中で見つけることはとても困難なのです。今回は幸運にも金星ありきで構図を決めて撮ったため、うまいこと写野に捉えることができました。これまでに捉えた月相で最も太陽黄経差が小さかったのは2013年4月11日の約11.63度。今回は金星と一緒の撮影だったから拡大撮影はできなかったけれど、いちおう自己ベストを更新しました。(実は2021年3月14日に太陽黄経差10.795°を記録してるんですが、このときは広く撮ってたまたま写ってたという撮り方なので、狙って撮ったカウントに含めません。)
ちなみに弦傾斜は15.44°(右上がり)あり、もし同時刻に沖縄(那覇)で見たなら7.96°でした。2026年2月16日記事下表には2月19日が水平月候補日に上げられていますが、関東でも沖縄でも18日より19日のほうが弦傾斜が少なく、水平に近づきます。これは月が黄道を南から北へ通り過ぎる通過点にあって、弦傾斜が減る方向へ急速に移動しているためと考えられます(2月18日15:18:46JSTに黄道に対する白道の昇交点を通過、つまり月の黄緯がマイナスからプラスへ動く)。しかしながら、ぱっと考えた予想に反した動きに感じるのは私だけでは無いでしょう。日が経つと、普通は弦が立ってきますからね。
太陽が出ていない時間に月と金星が1°台まで接近するチャンスはとても少なく、直近でそこそこ近いのは2028年3月30日宵(2°前後)や2031年3月26日宵(2°前後)、2035年4月6日明け方(0.6°前後)あたりでしょうか。今回は天候にも恵まれ、実にラッキーでした。驚かされたのは帰宅後30分もしたら雨がザーザー降ってきたこと。ほんの1時間程度の違いで美しい宵空に巡り合えて感謝感謝。山の上でおしゃべりしてくださった散歩中の街の皆様にも温かい気持ちをもらいました。






















