SWAN彗星・いて座新星を捕獲 ― 2025/09/28
昨夕は予報よりも雲が少なくて、晴れ間が持ちそうでした。貴重なチャンスなので宵の超低空にいるはずのSWAN彗星(C/2025 R2)を探すことにしました。とは言え明るい薄暮中だと眼視で導入が無理そうなので、まず目視できる月をカメラでとらえ、暮れて行く空に合わせて赤経差・赤緯差で限界等級の星を辿る高効率スターホッピング作戦にしました。とにかく1秒でも惜しい、時間との戦いなのです。(※宵の西空では、薄暮が進むと限界等級が上がるいっぽうで、待ってる間に高度が下がると限界等級が下がるジレンマがあります。)
まだ明るい日没20分後(17:50前)に作戦開始。400mm(Askar FRA400)+APS-Cセンサの画角で月導入。月縁を使い写野の東西南北を合わせます。同一写野にπScoがいることを確認→βScoへ。ここで慎重にピントを合わせます。そこからθLib→αLibと繋いでいざ彗星位置へ。彗星周りには明るい星がないので、だいたい導入したら何も見えなくても暗くなるのをひたすら待つしかありません。見えないまま雲や周囲の風景に没したらアウト。焦って望遠鏡を振るのはダメ、絶対。辛抱のしどころです。
ようやく写野内の7等あたりが見え出したのは開始から15分後。構図を微調整して中央付近を拡大すると、いたいた、彗星が。モニターではかき消えそうでしたが確かに天体の光です。そのあとは電線群に没するまでひたすら撮影を続けました。薄暮にも低空のモヤにも負けない絶妙な時間帯の30コマを選んでスタックしたのが記事冒頭の画像。中央に集光の強い緑色のコマが見えますね。手違いでフラット補正が一部合わなかったのはご愛嬌。右下の縞々は迫り来る電線群です。
撮影開始時の高度は7.7°。5秒露出でもこれだけ写ったことやコマ視直径を考慮すると、6等台中盤に入ったのはガセではないようです。この彗星は現在赤緯がマイナスなので南の観測地ほど有利。九州などでは10日以上前から確認されて羨ましい限りでしたが、ついに関東でも。(※福島県・鹿角平天文台のやまのんさんは既に24日にとらえています。)一時的に高度を下げていたSWAN彗星ですが、23日頃に上昇に転じ、今後は全国的に探しやすくなるでしょう。しばらく光度は停滞もしくは微増しますが一ヶ月もすると地球からどんどん遠ざかって急減光し始める予想なので、ご覧になりたい方はお早めに。
12°東には恒星間天体「3I/ATLAS」がいて、増光のうわさも聞いていたので心が揺れましたが、この望遠鏡では力不足ということもあって見送りました。ぼちぼちラストチャンスですね。(11月の明け方に再会の機会あり。)
続いて南南西に見える新星に望遠鏡を向けました。この新星は先日6.2等で発見されたケンタウルス座新星(V1935 CENTAURI)のちょうど1日前、21日19時JST過ぎごろにオーストラリアのJohn Seach氏が10.2等で発見したもの。日本でも小嶋正氏(群馬)と金津和義氏(島根)が独立発見しています。急減光したケンタウルス座新星とは対照的にぐんぐん明るくなっており、現在は7等台。(※CBET 5615には24日に写真等級6.4等の報告もあります。)なんとか街中の我が家からも見えるので、ぜひ撮りたいと思ってました。
対象はSWAN彗星と違ってまだ高さがあったからあっさり導入。天の川密集地ですが明るいためすぐ「これだ!」と分かりました。雲が迫っていたので短時間露光で済ませます。おおよそ7.5等と見積もりました。新しい天体に触れる時間は脳がリフレッシュされていいですね。
この新星は既に「V7994 SAGITTARII = NOVA SAGITTARII 2025 No. 4」の符号がついています。ご存知ない方もいらっしゃると思うので説明すると、突発天体発見時に付けられる「TCP J18035290-3127298」の形式の符号は2000年分点の赤経赤緯を表し、そのまま読み取ることで望遠鏡を向けることができます。この場合は「18h03m52.90s」「-31°27'29.8"」ですね。赤緯がプラスでも符号は省略されず「+」が挿入されるので、符号のところで赤経と赤緯が分かれていると覚えておけば大丈夫。なお発見第一報の位置で登録されるため、後から精密測定で座標が変更になってもTCP符号は変わりません。
まだ明るい日没20分後(17:50前)に作戦開始。400mm(Askar FRA400)+APS-Cセンサの画角で月導入。月縁を使い写野の東西南北を合わせます。同一写野にπScoがいることを確認→βScoへ。ここで慎重にピントを合わせます。そこからθLib→αLibと繋いでいざ彗星位置へ。彗星周りには明るい星がないので、だいたい導入したら何も見えなくても暗くなるのをひたすら待つしかありません。見えないまま雲や周囲の風景に没したらアウト。焦って望遠鏡を振るのはダメ、絶対。辛抱のしどころです。
ようやく写野内の7等あたりが見え出したのは開始から15分後。構図を微調整して中央付近を拡大すると、いたいた、彗星が。モニターではかき消えそうでしたが確かに天体の光です。そのあとは電線群に没するまでひたすら撮影を続けました。薄暮にも低空のモヤにも負けない絶妙な時間帯の30コマを選んでスタックしたのが記事冒頭の画像。中央に集光の強い緑色のコマが見えますね。手違いでフラット補正が一部合わなかったのはご愛嬌。右下の縞々は迫り来る電線群です。
撮影開始時の高度は7.7°。5秒露出でもこれだけ写ったことやコマ視直径を考慮すると、6等台中盤に入ったのはガセではないようです。この彗星は現在赤緯がマイナスなので南の観測地ほど有利。九州などでは10日以上前から確認されて羨ましい限りでしたが、ついに関東でも。(※福島県・鹿角平天文台のやまのんさんは既に24日にとらえています。)一時的に高度を下げていたSWAN彗星ですが、23日頃に上昇に転じ、今後は全国的に探しやすくなるでしょう。しばらく光度は停滞もしくは微増しますが一ヶ月もすると地球からどんどん遠ざかって急減光し始める予想なので、ご覧になりたい方はお早めに。
12°東には恒星間天体「3I/ATLAS」がいて、増光のうわさも聞いていたので心が揺れましたが、この望遠鏡では力不足ということもあって見送りました。ぼちぼちラストチャンスですね。(11月の明け方に再会の機会あり。)
続いて南南西に見える新星に望遠鏡を向けました。この新星は先日6.2等で発見されたケンタウルス座新星(V1935 CENTAURI)のちょうど1日前、21日19時JST過ぎごろにオーストラリアのJohn Seach氏が10.2等で発見したもの。日本でも小嶋正氏(群馬)と金津和義氏(島根)が独立発見しています。急減光したケンタウルス座新星とは対照的にぐんぐん明るくなっており、現在は7等台。(※CBET 5615には24日に写真等級6.4等の報告もあります。)なんとか街中の我が家からも見えるので、ぜひ撮りたいと思ってました。
対象はSWAN彗星と違ってまだ高さがあったからあっさり導入。天の川密集地ですが明るいためすぐ「これだ!」と分かりました。雲が迫っていたので短時間露光で済ませます。おおよそ7.5等と見積もりました。新しい天体に触れる時間は脳がリフレッシュされていいですね。
この新星は既に「V7994 SAGITTARII = NOVA SAGITTARII 2025 No. 4」の符号がついています。ご存知ない方もいらっしゃると思うので説明すると、突発天体発見時に付けられる「TCP J18035290-3127298」の形式の符号は2000年分点の赤経赤緯を表し、そのまま読み取ることで望遠鏡を向けることができます。この場合は「18h03m52.90s」「-31°27'29.8"」ですね。赤緯がプラスでも符号は省略されず「+」が挿入されるので、符号のところで赤経と赤緯が分かれていると覚えておけば大丈夫。なお発見第一報の位置で登録されるため、後から精密測定で座標が変更になってもTCP符号は変わりません。
【リコリモによる彗星観測リザルトシェア】
9月27日の天リフピックアップ作業配信で、TASC-onリコリモのような形を彗星撮影に適用し、リザルトをシェアできないだろうか、というアイディアを山口さんがお話しされていました。これは正に15年近く私が夢見ていたリモート天体観測の神髄。※下記参考リンクの「その3」でも語ってます。日本で見えない彗星や超新星などを何とか観測したいけれど、個人でのリモート天文台設置や運営はハードルが高い。iTelescopeのような既存サービスへの参加の選択肢もあるけれど、まだまだ敷き居も競争率も高い。そんなときこそリコリモのような利用しやすい環境を使えたらいいなぁと思うのです。観測結果は多くの人が共有すべきなので、リザルトシェアの親和性も高いでしょう。
彗星に限ると、暗いものまで全部撮るという欲張りをしなければ、たとえば注目彗星数を1時間内に抑えれば、一晩内の利用時間を占有しなくて済みます。極端なこと言えば、1彗星につき1分間の露光でRGBを最低1回ずつ撮れば事足りますから。露光を伸ばし過ぎても尾のディティールが失われますし、ノイズ低減のためにコマ数を増やすなら露光時間を減らすことになり、トータルは変わりません。(フィルター交換時間などは加算されてしまいますが。)次の彗星への移動含め10分から20分くらいのスパンでざくざくと撮ってゆけば宵に1時間とか明け方近くの1時間とか確保できれば、1日あたりの利用時間は十分ですね。また、関心が高い彗星が出てる場合は毎晩でも良いけれど、暗くなってくれば週一回でも十分ですから、年間あたりの利用時間だって星雲を何十時間も撮るよりずっと少ないでしょう。コスパが高く科学的価値も高い。こんな素晴らしい利用方法はありませんね。
参考:
リザルト・シェア構想(by天リフ山口さん)について(2025/06/14)
リザルト・シェア構想(その2)(2025/06/17)
リザルト・シェア構想(その3)(2025/08/04)
9月27日の天リフピックアップ作業配信で、TASC-onリコリモのような形を彗星撮影に適用し、リザルトをシェアできないだろうか、というアイディアを山口さんがお話しされていました。これは正に15年近く私が夢見ていたリモート天体観測の神髄。※下記参考リンクの「その3」でも語ってます。日本で見えない彗星や超新星などを何とか観測したいけれど、個人でのリモート天文台設置や運営はハードルが高い。iTelescopeのような既存サービスへの参加の選択肢もあるけれど、まだまだ敷き居も競争率も高い。そんなときこそリコリモのような利用しやすい環境を使えたらいいなぁと思うのです。観測結果は多くの人が共有すべきなので、リザルトシェアの親和性も高いでしょう。
彗星に限ると、暗いものまで全部撮るという欲張りをしなければ、たとえば注目彗星数を1時間内に抑えれば、一晩内の利用時間を占有しなくて済みます。極端なこと言えば、1彗星につき1分間の露光でRGBを最低1回ずつ撮れば事足りますから。露光を伸ばし過ぎても尾のディティールが失われますし、ノイズ低減のためにコマ数を増やすなら露光時間を減らすことになり、トータルは変わりません。(フィルター交換時間などは加算されてしまいますが。)次の彗星への移動含め10分から20分くらいのスパンでざくざくと撮ってゆけば宵に1時間とか明け方近くの1時間とか確保できれば、1日あたりの利用時間は十分ですね。また、関心が高い彗星が出てる場合は毎晩でも良いけれど、暗くなってくれば週一回でも十分ですから、年間あたりの利用時間だって星雲を何十時間も撮るよりずっと少ないでしょう。コスパが高く科学的価値も高い。こんな素晴らしい利用方法はありませんね。
参考:
リザルト・シェア構想(by天リフ山口さん)について(2025/06/14)
リザルト・シェア構想(その2)(2025/06/17)
リザルト・シェア構想(その3)(2025/08/04)
気象衛星ひまわりから見えた部分日食による月影 ― 2025/09/22
日本時間の本日明け方に部分日食が起こりました。見ることができたのは南半球の一部から南極にかけてのみ。最大食分は0.855でした。
結構深い日食でしたので、気象衛星ひまわりからはこの日食による月影通過が見えました。2:30から5:30まで10分おき19シーンを使ってGIF動画にしましたのでクリックしてご覧ください(ひまわりの元画像はNICT)。左に向かって増えてゆく日なたと逆向きに淡い影が右下へ向かって行くのが分かるでしょうか?これがお月様の影なのです。
秋分が近いので赤みを帯びたサングリント(海面などによる太陽の照り返し)が赤道に添って動いてます。この時期特有の動きです。ひまわり・サングリント・太陽がつくる平面が赤道面にあるということです。ひまわりは常に赤道面に居座っていますが、太陽が赤道面にいるのは春分と秋分のみ。したがってサングリントが赤道に添って動くのも春分と秋分のときに限られるのです。
日食になったと言うことは、本日が新月。つい先日起こった皆既月食からもう二週間経ったのですね。そして今日から約二週間後の10月6日は中秋の名月。秋になると季節の歩みが早く感じます。
結構深い日食でしたので、気象衛星ひまわりからはこの日食による月影通過が見えました。2:30から5:30まで10分おき19シーンを使ってGIF動画にしましたのでクリックしてご覧ください(ひまわりの元画像はNICT)。左に向かって増えてゆく日なたと逆向きに淡い影が右下へ向かって行くのが分かるでしょうか?これがお月様の影なのです。
秋分が近いので赤みを帯びたサングリント(海面などによる太陽の照り返し)が赤道に添って動いてます。この時期特有の動きです。ひまわり・サングリント・太陽がつくる平面が赤道面にあるということです。ひまわりは常に赤道面に居座っていますが、太陽が赤道面にいるのは春分と秋分のみ。したがってサングリントが赤道に添って動くのも春分と秋分のときに限られるのです。
日食になったと言うことは、本日が新月。つい先日起こった皆既月食からもう二週間経ったのですね。そして今日から約二週間後の10月6日は中秋の名月。秋になると季節の歩みが早く感じます。
気象衛星に写ったかも知れない皆既月食 ― 2025/09/20
知人のterujiさんがご自身のブログで「ひまわり9号による月食が見える可能性は?」と題して考察されています。気象衛星ひまわりの写野にはわずかながら宇宙が写る領域があるため、たまたま月食が写ることはないだろうか、と言うことです。私もだいぶ前に考えつつほったらかしにしていたので、計算してみました。
結論から言うと、あり得ることです。月は3月と9月に「満月かつ赤緯ゼロ付近」の状態になるため、もしこの時期の正午ごろ月食が起こったら「太陽・ひまわり・地球・月」の順にほぼ一直線に並んで、ひまわりからも月食が見えるのです。このとき正確に春分点・秋分点で月食が起こることは滅多にないので、ひまわり撮像のウィークポイント、赤道と両極(宇宙が写る範囲が極端に狭い/右下画像参照)を通る月食は少ないと見なして良いと思われます。
「本影直径1.5°に対して、ひまわりから見た地球は17°もあるから、隠れて見えないのでは?」と思ってしまいそうですよね。でも大丈夫。ひまわりは地表と共に15°/hという高速公転してますから、月が地球背後に隠れるのは最長でも1.5時間程度で済みます。多くの月食は継続時間/経路がそれなりに長いため、「だいたい正午ごろ」起こってくれればひまわりの全球撮像タイミング(毎10分おき)のどこかに引っかかる可能性は大きいでしょう。
今月上旬の皆既月食は赤緯がマイナス7°前後で起こったため気象衛星の撮像幅に入っていますが「日本で見えた=ひまわりの背面で起こった」ので写る道理がありません。もし西経93°の赤道上空にある静止衛星が宇宙をとらえていたら、地球と月食のツーショットになったでしょう。GOES-16が近かったのですが…残念ながら宇宙まで撮ってるのはひまわりだけなんですよね。
ひまわり8号・9号が稼働している2015年七夕から今日まで調べると、2015年9月28日正午頃に皆既月食、2024年9月18日正午頃に浅い部分月食がありました。それぞれの日を詳しく調べると、ギリギリで撮影できてなかったことが分かりました。撮影間隔が10分ではなく、例えば2分だとしたら2015年のチャンスは冒頭画像のように写ったはず。もちろんこれは想像図ですよ(地球画像はNICT、月画像はStellariumによるはめ込み)。ほんの数分ズレていたらなぁ…。見てみたかったですね。ちなみに台湾付近に写ってる台風は21号。
もしひまわり次号以降も赤道上空の同じ場所で観測したとして、残念ながらこの先は良いタイミングが大幅に減ってしまいます。写るかどうか分からないタイミングを待つよりも、別の科学衛星が宇宙から月食を観測したり、アマチュア用のリモート宇宙望遠鏡の実現のほうが早そうですね。
※下画像は2019年3月20日10:50(左半分)と11:10(右半分)にひまわりが撮影した実際の画像。春分近くなので満月に近い状態で地球とのツーショットを実現しています。こういうタイミングで月食だったらとてもカッコいい。(月が見やすいよう輝度と色調を調整してあります。皆既月食の場合は相当暗くなるでしょうね。)
参考:
アーカイブ:人工衛星が観た地球
土星と地球のツーショット探しに苦労する(2024/09/01)
金星、地球とのツーショット始まる(2024/08/21)
秋分と金星、太陽、そして地球(2019/09/23)
気象衛星が見た春分満月前の月と地球のツーショット(2019/03/26)
金星が地球の北極側を通過(2017/02/23)
結論から言うと、あり得ることです。月は3月と9月に「満月かつ赤緯ゼロ付近」の状態になるため、もしこの時期の正午ごろ月食が起こったら「太陽・ひまわり・地球・月」の順にほぼ一直線に並んで、ひまわりからも月食が見えるのです。このとき正確に春分点・秋分点で月食が起こることは滅多にないので、ひまわり撮像のウィークポイント、赤道と両極(宇宙が写る範囲が極端に狭い/右下画像参照)を通る月食は少ないと見なして良いと思われます。
「本影直径1.5°に対して、ひまわりから見た地球は17°もあるから、隠れて見えないのでは?」と思ってしまいそうですよね。でも大丈夫。ひまわりは地表と共に15°/hという高速公転してますから、月が地球背後に隠れるのは最長でも1.5時間程度で済みます。多くの月食は継続時間/経路がそれなりに長いため、「だいたい正午ごろ」起こってくれればひまわりの全球撮像タイミング(毎10分おき)のどこかに引っかかる可能性は大きいでしょう。
今月上旬の皆既月食は赤緯がマイナス7°前後で起こったため気象衛星の撮像幅に入っていますが「日本で見えた=ひまわりの背面で起こった」ので写る道理がありません。もし西経93°の赤道上空にある静止衛星が宇宙をとらえていたら、地球と月食のツーショットになったでしょう。GOES-16が近かったのですが…残念ながら宇宙まで撮ってるのはひまわりだけなんですよね。
ひまわり8号・9号が稼働している2015年七夕から今日まで調べると、2015年9月28日正午頃に皆既月食、2024年9月18日正午頃に浅い部分月食がありました。それぞれの日を詳しく調べると、ギリギリで撮影できてなかったことが分かりました。撮影間隔が10分ではなく、例えば2分だとしたら2015年のチャンスは冒頭画像のように写ったはず。もちろんこれは想像図ですよ(地球画像はNICT、月画像はStellariumによるはめ込み)。ほんの数分ズレていたらなぁ…。見てみたかったですね。ちなみに台湾付近に写ってる台風は21号。
もしひまわり次号以降も赤道上空の同じ場所で観測したとして、残念ながらこの先は良いタイミングが大幅に減ってしまいます。写るかどうか分からないタイミングを待つよりも、別の科学衛星が宇宙から月食を観測したり、アマチュア用のリモート宇宙望遠鏡の実現のほうが早そうですね。
※下画像は2019年3月20日10:50(左半分)と11:10(右半分)にひまわりが撮影した実際の画像。春分近くなので満月に近い状態で地球とのツーショットを実現しています。こういうタイミングで月食だったらとてもカッコいい。(月が見やすいよう輝度と色調を調整してあります。皆既月食の場合は相当暗くなるでしょうね。)
参考:
アーカイブ:人工衛星が観た地球
土星と地球のツーショット探しに苦労する(2024/09/01)
金星、地球とのツーショット始まる(2024/08/21)
秋分と金星、太陽、そして地球(2019/09/23)
気象衛星が見た春分満月前の月と地球のツーショット(2019/03/26)
金星が地球の北極側を通過(2017/02/23)
月食中の地球影移動&ターコイズ ― 2025/09/11
「月食中の地球影の移動が今ひとつ分からない」「恒星時追尾で月食経過を連射し、比較明合成した地球影は偽物なのか」といった月食関連の質問をいくつか受けたので、分かる範囲でお答えします。
背景の恒星が動いていないことから、恒星時追尾すれば月と地球影がこんなふうに動くよ、ということなんですが、一瞬「えっ!?」となりませんか?地球影は見えませんから、こんな奇妙な動きをしてたなんて想像つきませんよねぇ。また、よくよく見ると月も直線状に動いてなくて、緩やかに波打って移動しています。
以前に「ほしぞloveログ」のSamさんが悩んでいらしたように、普通にガイドして合成したら、影が上下左右に移動したぶん「変形した影」を抽出することになってしまうでしょう(→2022年12月14日記事参照)。たまたま変形量が少なくて丸い影っぽく見えることはあっても、それは偶然の産物に過ぎません。特に本影食が月出没に比較的近い今回のようなケースは、順行→逆行または逆行→順行に切り替わるために影移動が遅いので変形が目立ちにくい、というだけの話です。
地球影が動くのは「有限の距離」を見ているからです。影なので実体はありませんが、もし影の中心がピカピカ光る点だったら、その点は地心から見て太陽と反対方向にあり、かつ月と同じ距離にあるという条件を満たします。この仮想点は地球の公転に従って1日に約1°(1年で360°)西から東へ順行します。いっぽう日本にいるみなさんは自転によって東へ猛スピードで回転してますから、地球近傍で動きが遅いものは恒星に対して相対的に西へ逆行して見えます。月程度の距離でも自転に伴う逆行速度が勝ってしまうため、仮想点の順行速度を上回ってしまうのです。
仮想点が東から上るころ逆行が始まり、西へ沈むころ順行に戻りながら、少しずつ公転ぶんを消化してゆくのです。この一連の動きが冒頭のGIF動画に全て入っています。なお月の公転は観測者の自転による逆行よりずっと早い(1ヶ月弱で360°)ため、逆行に屈するすることなく東へ進みます。それでも視点移動に伴う南北の揺れがあって、緩やかに波打って見える、と言うわけです。
もし連射や動画で正確に影を描きたいなら、影の位置を予め計算し、時々刻々と移動する影を追尾するような架台制御を考えてみましょう。今の時代なら「1分ごとにちょっと移動して撮影」と言ったスケジュール撮影機能を駆使すれば実現できそうな気がします。
ターコイズは青と違います。絵の具にはターコイズブルーやターコイズグリーンがあって、それぞれ独特の風合いがあります。Webで無理に表現すると、ターコイズブルー、ターコイズグリーンになります。でも普通ブルーやグリーンは付けず、ターコイズのみでこの系統の色彩群をまとめています。撮影した画像をわざわざこの色に似せる必要はありませんが、青一辺倒じゃないと言うのは実際に眼視観察すると分かります。
大気組成のうち雲が到達できる10kmまでが対流圏、その上の成層圏にあるオゾン層を通過できた光がフリンジの色を作ります。よくオゾン層は紫外線を吸収して生物を守ってると聞きますよね。もう少し具体的に言うと波長300nm以下(紫外線)をほどんど吸収、440-800nm(600nm前後が最も多い)を少しだけ吸収するそうです(理科年表サイト参照)。可視光域では概ね「R:G:B= 1.0 : 1.2 : 1.8」程度の比率で通過して月まで到達するので青緑の縁取りになると言うわけ。この比率だと真っ青にはなり得ません。せいぜいブルーグレイとか浅葱鼠(あさぎねず/伝統色のひとつ)とかです。
「赤を吸収し青だけ通す」といった極端な説明が出回り過ぎてるけれど、そうじゃありません。しかもこの光が届くのは本影の縁の約0.05°角(=3分角→月軌道付近で約400km幅)のみ。そこが全部ターコイズと言うわけではなく、地球影中心に向かってだんだん青が減り、代わりに夕日色や赤銅色が混ざり始めます。だから、太くて青いマーカーで描いたような縁取りになってる画像を見ると、青ばかりにとらわれて階調を削り過ぎちゃってるなぁと残念に思うんです。
双眼鏡や低倍率望遠鏡でじっくり観察すると、確かに影の縁はブルーグレイに感じるんだけど、すぐ内側から広範囲にわたってくすんだ緑や黄緑が結構広がってるなって感じるんです。面積が広いだけに、私には青よりも緑のほうが目に残る。肉眼で見えるのだから色温度なんて関係ありません。色彩強調した写真よりも肉眼のほうが微妙なグラデーションが分かりやすいですね。右上画像は10年以上前、当ブログを始めたころの皆既月食で、何度も何度も実物を見て脳内記憶し、撮った画像を記憶に寄せて再現したもの。NASAの科学者がブルーと表現しなかった気持ちがとても分かりました。
月食の色再現については様々な観測を元にモデル化が進んでいます。最も優れたサイトのひとつをご紹介しましょう。Abdurrahman ÖZLEMさんのサイトにあるメニューとひとつ「TopoLuno(Topocentric Lunar Simulator)」です。(※説明ページ最下部に実行リンクがあります。)最新の研究を元にwebブラウザ上で月の色などをなるべく正確に再現するもので、月食だけでなく月出没の歪みや色変化など、たくさんのことができます。左は今回の月食を再現した作業中のスクリーンショット。「そうそう、これだよ、これ!」と叫んでしまいそうな再現性ですね。時刻経過に対する露出倍数や、ダンジョンスケールが変わったら(空気の汚れ具合が変わったら)どう見えるのか、と言ったことも再現できます。あくまでシミュレーションであることを理解した上で参考にすると良いでしょう。
このwebアプリの仕組みを学べば、月面から見た地球大気の発光シミュレーションも作れそうな気がします。元々月食に関係ない分野ですが、地球大気を薄いレイヤーの塊と見なし、大気差や蜃気楼現象などをモデル化する研究は随分前から盛んに進められており、私もいくつか論文を読んだことがありました。太陽光を地上観測者で止めず宇宙まで延ばせばいいだけの話なので、理屈上は難しくありません。問題なのは太陽が点光源ではなく面であり、また大気は三次元的に広がるため、微小な屈折光を大気全体・太陽全面について延々と積分しなくてはならない、と言った計算コストの面でしょうか。パソコンで賄えるような規模まで簡略化する必要があるでしょうね。いつか暇になったらやってみたいことです。
★地球影は変な動きをする
最初から言葉で説明しても分かり辛いので、まずは左のStellariumシミュレーションGIF動画をご覧ください。これは先日の皆既月食を含む、9月7日15:00JST(月出前)から8日12:00JST(月没日)まで、30分ごとの月と本影円・半影円を描いたもの。もちろん地心ではなく地上(日本経緯度原点/東京)から見た見え方です。同じことはステラナビゲーターでも可能です。背景の恒星が動いていないことから、恒星時追尾すれば月と地球影がこんなふうに動くよ、ということなんですが、一瞬「えっ!?」となりませんか?地球影は見えませんから、こんな奇妙な動きをしてたなんて想像つきませんよねぇ。また、よくよく見ると月も直線状に動いてなくて、緩やかに波打って移動しています。
以前に「ほしぞloveログ」のSamさんが悩んでいらしたように、普通にガイドして合成したら、影が上下左右に移動したぶん「変形した影」を抽出することになってしまうでしょう(→2022年12月14日記事参照)。たまたま変形量が少なくて丸い影っぽく見えることはあっても、それは偶然の産物に過ぎません。特に本影食が月出没に比較的近い今回のようなケースは、順行→逆行または逆行→順行に切り替わるために影移動が遅いので変形が目立ちにくい、というだけの話です。
地球影が動くのは「有限の距離」を見ているからです。影なので実体はありませんが、もし影の中心がピカピカ光る点だったら、その点は地心から見て太陽と反対方向にあり、かつ月と同じ距離にあるという条件を満たします。この仮想点は地球の公転に従って1日に約1°(1年で360°)西から東へ順行します。いっぽう日本にいるみなさんは自転によって東へ猛スピードで回転してますから、地球近傍で動きが遅いものは恒星に対して相対的に西へ逆行して見えます。月程度の距離でも自転に伴う逆行速度が勝ってしまうため、仮想点の順行速度を上回ってしまうのです。
仮想点が東から上るころ逆行が始まり、西へ沈むころ順行に戻りながら、少しずつ公転ぶんを消化してゆくのです。この一連の動きが冒頭のGIF動画に全て入っています。なお月の公転は観測者の自転による逆行よりずっと早い(1ヶ月弱で360°)ため、逆行に屈するすることなく東へ進みます。それでも視点移動に伴う南北の揺れがあって、緩やかに波打って見える、と言うわけです。
もし連射や動画で正確に影を描きたいなら、影の位置を予め計算し、時々刻々と移動する影を追尾するような架台制御を考えてみましょう。今の時代なら「1分ごとにちょっと移動して撮影」と言ったスケジュール撮影機能を駆使すれば実現できそうな気がします。
★ターコイズは青じゃない
かつてブルーベルトと呼ばれた時代もありましたが、すっかりターコイズフリンジに駆逐されてしまいましたね。ブルーが定着せず「トルコ石のような青緑」が流行るとは、よほどのこと。20年近く前にNASAの記事で使われ始めた表現だそうですが、古くて元記事が見つかりませんでした。この縁取りの色は実際に分光観測もされているため、陰謀論やアーティファクト説はまず無いでしょう。私もどちらかと言ったらいまだに懐疑的なのですが、「写ってないから存在しない」「写ったから存在する」などの短絡的な見方がダメなことは分かります。やはりきちんとしたエビデンスの追求が不可欠ですね。ターコイズは青と違います。絵の具にはターコイズブルーやターコイズグリーンがあって、それぞれ独特の風合いがあります。Webで無理に表現すると、ターコイズブルー、ターコイズグリーンになります。でも普通ブルーやグリーンは付けず、ターコイズのみでこの系統の色彩群をまとめています。撮影した画像をわざわざこの色に似せる必要はありませんが、青一辺倒じゃないと言うのは実際に眼視観察すると分かります。
大気組成のうち雲が到達できる10kmまでが対流圏、その上の成層圏にあるオゾン層を通過できた光がフリンジの色を作ります。よくオゾン層は紫外線を吸収して生物を守ってると聞きますよね。もう少し具体的に言うと波長300nm以下(紫外線)をほどんど吸収、440-800nm(600nm前後が最も多い)を少しだけ吸収するそうです(理科年表サイト参照)。可視光域では概ね「R:G:B= 1.0 : 1.2 : 1.8」程度の比率で通過して月まで到達するので青緑の縁取りになると言うわけ。この比率だと真っ青にはなり得ません。せいぜいブルーグレイとか浅葱鼠(あさぎねず/伝統色のひとつ)とかです。
「赤を吸収し青だけ通す」といった極端な説明が出回り過ぎてるけれど、そうじゃありません。しかもこの光が届くのは本影の縁の約0.05°角(=3分角→月軌道付近で約400km幅)のみ。そこが全部ターコイズと言うわけではなく、地球影中心に向かってだんだん青が減り、代わりに夕日色や赤銅色が混ざり始めます。だから、太くて青いマーカーで描いたような縁取りになってる画像を見ると、青ばかりにとらわれて階調を削り過ぎちゃってるなぁと残念に思うんです。
双眼鏡や低倍率望遠鏡でじっくり観察すると、確かに影の縁はブルーグレイに感じるんだけど、すぐ内側から広範囲にわたってくすんだ緑や黄緑が結構広がってるなって感じるんです。面積が広いだけに、私には青よりも緑のほうが目に残る。肉眼で見えるのだから色温度なんて関係ありません。色彩強調した写真よりも肉眼のほうが微妙なグラデーションが分かりやすいですね。右上画像は10年以上前、当ブログを始めたころの皆既月食で、何度も何度も実物を見て脳内記憶し、撮った画像を記憶に寄せて再現したもの。NASAの科学者がブルーと表現しなかった気持ちがとても分かりました。
月食の色再現については様々な観測を元にモデル化が進んでいます。最も優れたサイトのひとつをご紹介しましょう。Abdurrahman ÖZLEMさんのサイトにあるメニューとひとつ「TopoLuno(Topocentric Lunar Simulator)」です。(※説明ページ最下部に実行リンクがあります。)最新の研究を元にwebブラウザ上で月の色などをなるべく正確に再現するもので、月食だけでなく月出没の歪みや色変化など、たくさんのことができます。左は今回の月食を再現した作業中のスクリーンショット。「そうそう、これだよ、これ!」と叫んでしまいそうな再現性ですね。時刻経過に対する露出倍数や、ダンジョンスケールが変わったら(空気の汚れ具合が変わったら)どう見えるのか、と言ったことも再現できます。あくまでシミュレーションであることを理解した上で参考にすると良いでしょう。
このwebアプリの仕組みを学べば、月面から見た地球大気の発光シミュレーションも作れそうな気がします。元々月食に関係ない分野ですが、地球大気を薄いレイヤーの塊と見なし、大気差や蜃気楼現象などをモデル化する研究は随分前から盛んに進められており、私もいくつか論文を読んだことがありました。太陽光を地上観測者で止めず宇宙まで延ばせばいいだけの話なので、理屈上は難しくありません。問題なのは太陽が点光源ではなく面であり、また大気は三次元的に広がるため、微小な屈折光を大気全体・太陽全面について延々と積分しなくてはならない、と言った計算コストの面でしょうか。パソコンで賄えるような規模まで簡略化する必要があるでしょうね。いつか暇になったらやってみたいことです。
【補記】
通常の月面は色が無い世界のように見えます。登りたての満月や沈みかけの三日月が黄色やオレンジに見えるのは大気のせいで、月そのものの色じゃありません。ですが、カラーカメラで月を撮って大気の影響を無くすキャリブレーションをした後、これでもかと言うくらい彩度を上げると様々な色が見えてきます。これは月表面の岩石の色です。
左上画像は2022年9月の名月をノーマル処理したもの(左側)と、彩度アップしたもの(右側)。かつてNASAが月面組成を調べて疑似カラーマッピングし、「ミネラルムーン」と表現したこと(このページを参照)に倣い、2010年台からこうしたカラフルな月面表現をアマチュアもミネラルムーンと呼ぶようになりました。ちなみに皆既中の月はこのミネラル色も含んだ色調になってるんですよね。
flickrなどに素晴らしい天体写真を投稿しているManuel Hussさんなどはミネラルムーンの名手で、単純な彩度アップでは表現できないカラフルで高精細な月面はいつ見ても感動します。ひとつ言えるのは現在のミネラルムーンがNASA画像のような疑似カラーではなくて、本来の色を出そうとしているところ。静かの海は大部分が青っぽく、晴れの海は茶色っぽい。こうした違いはチタン含有量とか、風化の年代を表す指標なので、どんな色や明るさなのかが重要な意味を持つからです。彩度は変えても、意味なく色相は変えないのがミソです。
さて、この事実を踏まえた上で…。
撮影したカラー天体画像の仕上げは大きく二種類の系統に分かれます。ひとつは(1)ありのままを目指すスタンス。もうひとつは(2)科学的にできるだけ本来の色になる補正を施すスタンス。例えば夕日を撮ると太陽は茜色になりますから、(1)の人は夕日の色(見たままの色)を目指すでしょう。でも(2)の人にとって太陽光は色温度(ホワイトバランス)の基準なので、カラーで撮っても色付いてるのはNG、茜色を排除したりフラット補正やら大気差補正をしまくるでしょう。どっちが正しいとか間違いという話ではなくて、何を目指すかで立場ががらっと変わるということ。まじめに取り組むなら、どちらの視点もすごく大事です。
国内でもユーザーが増えてきたPixinsightではSPCCのような機能ができたおかげで「本来の色」にものすごくこだわって仕上げる(2)の人が多くなりました。でも月面画像に関して正確性を追求する方は少ないようです。上で述べたようなターコイズフリンジの表現も千差万別。各々が想像する「私だけのアナタ(ターコイズフリンジ)」になってしまうのはなぜでしょうか?望遠鏡でじっくり見てその通りに仕上げる(1)の人でもなければ、前述ミネラルムーンのような「本当は何色か」にこだわる(2)の人でもない。誰かがやってたから自分も真似てみたっていう方も少なくありません。趣味だからいいんだけどさぁ、月だけ扱いが適当過ぎるのヒドくない?どうして星雲並みにとことんこだわってくれないの?…などと思ったり。月面専用SPCCみたいな機能があったら良いのになぁと夢見ています。
通常の月面は色が無い世界のように見えます。登りたての満月や沈みかけの三日月が黄色やオレンジに見えるのは大気のせいで、月そのものの色じゃありません。ですが、カラーカメラで月を撮って大気の影響を無くすキャリブレーションをした後、これでもかと言うくらい彩度を上げると様々な色が見えてきます。これは月表面の岩石の色です。
左上画像は2022年9月の名月をノーマル処理したもの(左側)と、彩度アップしたもの(右側)。かつてNASAが月面組成を調べて疑似カラーマッピングし、「ミネラルムーン」と表現したこと(このページを参照)に倣い、2010年台からこうしたカラフルな月面表現をアマチュアもミネラルムーンと呼ぶようになりました。ちなみに皆既中の月はこのミネラル色も含んだ色調になってるんですよね。
flickrなどに素晴らしい天体写真を投稿しているManuel Hussさんなどはミネラルムーンの名手で、単純な彩度アップでは表現できないカラフルで高精細な月面はいつ見ても感動します。ひとつ言えるのは現在のミネラルムーンがNASA画像のような疑似カラーではなくて、本来の色を出そうとしているところ。静かの海は大部分が青っぽく、晴れの海は茶色っぽい。こうした違いはチタン含有量とか、風化の年代を表す指標なので、どんな色や明るさなのかが重要な意味を持つからです。彩度は変えても、意味なく色相は変えないのがミソです。
さて、この事実を踏まえた上で…。
撮影したカラー天体画像の仕上げは大きく二種類の系統に分かれます。ひとつは(1)ありのままを目指すスタンス。もうひとつは(2)科学的にできるだけ本来の色になる補正を施すスタンス。例えば夕日を撮ると太陽は茜色になりますから、(1)の人は夕日の色(見たままの色)を目指すでしょう。でも(2)の人にとって太陽光は色温度(ホワイトバランス)の基準なので、カラーで撮っても色付いてるのはNG、茜色を排除したりフラット補正やら大気差補正をしまくるでしょう。どっちが正しいとか間違いという話ではなくて、何を目指すかで立場ががらっと変わるということ。まじめに取り組むなら、どちらの視点もすごく大事です。
国内でもユーザーが増えてきたPixinsightではSPCCのような機能ができたおかげで「本来の色」にものすごくこだわって仕上げる(2)の人が多くなりました。でも月面画像に関して正確性を追求する方は少ないようです。上で述べたようなターコイズフリンジの表現も千差万別。各々が想像する「私だけのアナタ(ターコイズフリンジ)」になってしまうのはなぜでしょうか?望遠鏡でじっくり見てその通りに仕上げる(1)の人でもなければ、前述ミネラルムーンのような「本当は何色か」にこだわる(2)の人でもない。誰かがやってたから自分も真似てみたっていう方も少なくありません。趣味だからいいんだけどさぁ、月だけ扱いが適当過ぎるのヒドくない?どうして星雲並みにとことんこだわってくれないの?…などと思ったり。月面専用SPCCみたいな機能があったら良いのになぁと夢見ています。










