新月1日前の月と久しぶりのパンスターズ彗星2017/06/23

20170623_34139月
昨夜は夜半まで薄雲に覆われていた夜空でしたが、今朝方薄明前に確認すると意外にも晴れていました。この時間から準備して観察できそうなものは…そう悠長に考える暇もなく準備に取りかかりました。

月は明日24日に新月を迎えますが、ひょっとしたら今日の日の出前に見えるかも。計算すると日の出10分ほど前に近隣の住宅から顔を出しそうです。登ってきた金星を頼りに月が登る位置を見積もり、望遠鏡をいつでも観察できるようにセットして待ちました。

思ったよりも早くに顔を出した月でしたが、いかんせん低空の電線に邪魔されてなかなか撮影できません。結局予想通り、日の出10分前に左画像を撮影した次第。この月は太陽黄経差341.39°、撮影高度は約8.5°、月齢27.98です。新月の約31時間あまり前ですね。背景があまりに明るく、仕方がないので月が光っている部分以外はマスク処理で暗くしてあります。西から天頂にかけて巻雲が覆い始めていたため、ギリギリセーフでした。

20170623パンスターズ彗星(C/2015ER61)
月を撮影する少し前にはパンスターズ彗星(C/2015 ER61)も狙ってみました。月もそうなのですが、東側に建っていた建物群が宅地整理で先週までに取り壊され、一時的ですが視界が開けていたのです。もう見えないだろうと諦めていたパンスターズ彗星が撮れそうだと分かったのでした。

右が3時前頃のパンスターズ彗星。久しぶりに姿を拝めました。こちらもやはり電線があって、わずか10分足らずの撮影中に何度も横切ってしまいましたが、無理矢理コンポジットしています。満足できる画質ではないけれど、緑色のコマや右(西)に向かって伸びる尾が確認できました。最盛期はとても立派だったようですが、今もまだ立派ですね。もうしばらくチャンスを伺おうと思います。

参考:
アーカイブ:月の形(黄経差324度以上、360度未満)

すっぱいイチゴの満月夜2017/06/09

20170609_18068月
今夜9日は満月夜。夕空湧いた雲がしつこく残り、22時過ぎの満月の瞬間は雲の中でした。でも1時間ほど待つと雲も途切れ、ちょうど南中を迎えた素晴らしい満月を拝むことができました。左画像は23:35頃の撮影で、太陽黄経差180.68°、撮影高度35.5°、月齢は14.79。低空ではありましたが、色彩が感じられる初夏の満月でした。満月であっても南側(下側)が欠けているのが分かりますね。撮影中に「とても小さいなぁ!」と感じたのですが、後ほど計算したら今年最小の満月だったんですね。(ちなみに今年最大は12月4日の満月です。)

『今回の満月はストロベリームーン』というニュースをあちこちで耳にしました。2016年6月21日の記事に様々な満月の呼称を載せたのですが、年に関係なく6月の満月は「Mead Moon」「Strawberry Moon」「Rose Moon」「Thunder Moon」と言った呼び方があります。

『6月の満月は高くならず、夕日のように赤く見えるからストロベリーなんだよ』といった解説もまことしやかに流れていました。本当でしょうか?月は出没するとき必ず低い所を通るから、日時や月齢に関わらず赤味を帯びた時間が必ずありますからね。満月の呼び名は農事暦のニュアンスを含むので、本来は月が赤いかどうかではなく、苺の収穫期やバラの開花シーズンを表現したのだと思います。ただ「6月の満月は空高くまで登らない」というのは本当のこと。それを解説しましょう。

南北がひっくり返るとややこしいので、ここでは日本など「北半球中緯度」で考えます。南の空を通過する(天頂より南側にある)恒星の高度が最大となるのは空の南北を結ぶ線(子午線)に到達したとき、つまり南中の瞬間。それ以外では必ず南中高度より低くなります。この場合、「最大高度=90度−観察地緯度+天体赤緯」となることが知られています。例えば北緯35°で見た赤緯+20°の天体は高度75°より高くなりません。

現在は月齢に関わらず月の地心赤緯が30°を越えることはなく、従って奄美・沖縄地方を除く日本の大部分で天頂より南側を通ります。空を通過する半日ほどの間に月の公転による赤緯変化がありますが、日周のほうがはるかに速いので恒星と同様に考えて良いでしょう。すなわち、満月の瞬間の赤緯を計算することで「満月がこれ以上高く見えない」という限界を知ることができるのです。

満月時の地心赤緯
そこでプログラムを作って1900年から2100年に起こる満月(全2486回)の赤緯を計算、一年という期間の中でどんな分布になるかグラフにしました。それが右図です。例えばある年の1月4日(年始との日差=3)に赤緯+20°で満月となった場合、座標(3,20)にドットを描く、といった具合。ドットは約50年ごとに色を変えました。前述の公式から、右図の縦軸に「90度−お住まいの緯度」を加えれば、みなさんが住む街で満月が最大何度まで登るかというグラフになります。

図から分かるように、年号に関わらず175日目付近で赤緯が極小、350日目付近で極大という分布になりました。月日に直すと6月下旬と12月中旬ですね。6月下旬前後に起こる満月が年間でいちばん低く、12月中旬前後ではいちばん高くなる傾向が統計的結果でした。またひとつの時期に注目すると約10°の赤緯幅があります。「低い」といわれる6月満月にも、年によって上下差があるわけです。

ストロベリームーンの高度差
ひとつの基準としてさそり座のアンタレス(赤緯約−26.5°)と比べると、近年では2004年から2008年の初夏満月がアンタレス以下の赤緯でした。(※その近くの期間に月がアンタレスを隠す掩蔽現象が何度も起こっています。)今年の6月満月はアンタレスより8°近くも高い赤緯。だからもし「低空で赤い」ことがストロベリームーンの理由だとしたら、今夜の満月は「まだ熟してなくて酸っぱい」はず!?こうした上下変動があるので、恒星掩蔽が起こる時期と起こらない時期とが長い周期でくり返されるのです。

次に赤緯が低くなるのは2023年から2027年ごろ。一例として左にStellariumによる今夜と2025年6月満月の比較星図を載せました。同じストロベリームーンながら、高度差が歴然です。そうそう、くだらない(?)疑問なのですが、6月満月が「ブルームーン」だった場合、月は何色と表現したらいいのでしょうかねぇ…?赤+青でブルーベリー色かな!?(※2007年6月30日が月間重複のブルームーンでした。)

20170609月の南極
【余談】
満月とは全く関係ありませんが…今回の満月の欠けた側、つまり南極側をつぶさに観察すると、南極探検で名を馳せたアムンゼンさんとスコットさんの名を冠したクレーターが見つかりました。撮影時の月面中央緯度(測心)は−5.6°であり、かなり月の南極側をのぞき込んだ状態だったため、ふだん全く見えないアムンゼン・クレーターまで見ることができたのです。これらの話題は2015年8月31日の記事に詳しく書いてあります。ご興味ある方はどうぞ。

月と木星の接近を日没前から楽しむ2017/06/04

20170604日の入り前の月と木星
金星に次いで明るい星である木星は、衝をはさんで前後数ヶ月もの期間-2.0等星より明るくなります。この明るさは透明度の良い空なら肉眼で見えるほど。とは言え目標物がないと金星よりはるかに難物なわけですが、近くに月がやって来るチャンスを活かして挑戦できます。

今日の木星は-2.2等。しかも5°ほど離れたところに月があり、昼間探すのには絶好の条件でした。月がある程度高くなる時間は雲が多めだったのですが、日没が近づくに連れて南側が晴れてきました。南中前の月が青空の中で煌々と輝き始めています。

日没30分前。まず小さな3cm双眼鏡で月を見ると、同じ視野に輝く木星はすぐ見つかりました。機材を使えば昼時でも木星は余裕です。次にアタリを付けて肉眼で挑戦。でも薄雲が流れて、なかなか見つかりません。間をおきながら何度か挑戦…やっと日没15分ほど前に裸眼で確認できました。左画像は日没約6分前の撮影です。画像右寄りに木星が写っていますね。ちょうど双眼鏡で見たイメージに近いです。この撮影時、まだ正面にあった隣家の壁に夕日が差していました。

20170604月と木星
暗くなった20時過ぎ。空に淡い雲が流れ始めましたが、月と木星の接近を観察しました。両星の最接近は今朝9時過ぎ(月が昇る前)だったので、今夜の月はだんだん木星から遠ざかっています。

近くにはスピカもいました。また木星の近くには約1ヶ月前の5月8日に掩蔽のあったポリマも輝いていました。ここは月の通り道に当たるため、いまは毎月のようにポリマ掩蔽が起こります。今月は中央アジアからヨーロッパで、そして来月7月頭にはアメリカ付近、更に7月28日に日本で見ることができます。

参考:
アーカイブ:昼間に月と金星が近い日
アーカイブ:天体の接近現象一覧

今日の月(宵)2017/05/29

20170529_05082月
暗くなった夕空に三日月が輝いていましたので、久しぶりに撮影しました。この形は良く見るのに、長いこと撮影できなかった位相なのです。

左画像は19:40頃の撮影で、太陽黄経差50.82°、撮影高度29°あまり、月齢3.61です。背景はまだ完全な夜ではなく、辛うじて道行く人の顔が分かるくらいの明るさでした。三日月と言う割にはちょっぴり太めですね。

日中かなり暖かかったので、大気はとても揺らいでいました。望遠鏡も十分気温に馴染んではいません。でもそこそこの像に写ってくれました。アーカイブ「月の形」では太陽黄経差3°刻みで全位相の撮影にチャレンジしています。まだ撮影できてないのは、黄経差プラスマイナス20°以下の極細の月と、左画像ひとつ前の48°のみとなりました。あと何年かかるでしょうか…。

参考:
アーカイブ:月の形(黄経差36度以上、72度未満)