なにこれ?ふたたび。 ― 2024/12/15
昨夕は良く晴れていたので、久しぶりに紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)を撮影したくなり準備しました。強風が残っていたのでベランダ(室内窓際)からのズボラ撮影です。彗星は暗くなったもののすぐ手動で導入でき、順調に撮影開始。ところが、また例のものがやって来てしまいました。そう、打ち上がったばかりのスターリンク群です。
このスターリンクはトレイン状ではなく、やや間隔が空いていました。直近のものじゃないと直感、調べてみると12月4日に上がったG6-70グループに属するものでした。(その後5日、8日、13日の計3グループが打ち上げられています。)打ち上げに半月程度しか経ってないスターリンク群は似たような軌道を数十秒間隔で通過するため、狭い写野でも一旦通過が始まれば左画像のような有り様に…。今回は眼視で2等程度の明るい衛星で、地上300kmという低空を周回する群でした。
2024年11月5日記事に書いた通り11月4日撮影でも同じ目に遭いました。このときはDTC(Direct to Cell)タイプだったので青い軌跡がたくさん入りました。昨宵のものはノーマルタイプなのでオレンジです。肉眼でも色が明確に違うのは面白いですね。
今回は彗星が軌跡の間隔に収まっているので、あえて「衛星抜き」画像は作りませんでした。現在空を飛んでいるスターリンク(落下したものは除く)は6883基(うちDTCは348基)。これから紫金山・アトラス彗星はどんどん低くなるから、スターリンクが横切る可能性は格段に高くなります。もてはやされた彗星も、いまや肩身が狭い…。
このスターリンクはトレイン状ではなく、やや間隔が空いていました。直近のものじゃないと直感、調べてみると12月4日に上がったG6-70グループに属するものでした。(その後5日、8日、13日の計3グループが打ち上げられています。)打ち上げに半月程度しか経ってないスターリンク群は似たような軌道を数十秒間隔で通過するため、狭い写野でも一旦通過が始まれば左画像のような有り様に…。今回は眼視で2等程度の明るい衛星で、地上300kmという低空を周回する群でした。
2024年11月5日記事に書いた通り11月4日撮影でも同じ目に遭いました。このときはDTC(Direct to Cell)タイプだったので青い軌跡がたくさん入りました。昨宵のものはノーマルタイプなのでオレンジです。肉眼でも色が明確に違うのは面白いですね。
今回は彗星が軌跡の間隔に収まっているので、あえて「衛星抜き」画像は作りませんでした。現在空を飛んでいるスターリンク(落下したものは除く)は6883基(うちDTCは348基)。これから紫金山・アトラス彗星はどんどん低くなるから、スターリンクが横切る可能性は格段に高くなります。もてはやされた彗星も、いまや肩身が狭い…。
彗星を撮ったはずなのに…なにこれ? ― 2024/11/05
昨夕も晴れたので紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)に望遠鏡を向けました。若干雲が湧いていたので、なるべく高いうちに撮影しようと18時過ぎに露出開始。すると程なくして明るい人工衛星が次から次へと…。とんでもないことになってしまいました(左画像/恒星基準・比較明合成)。
モニターでも青い色がはっきり分かりました。これはスターリンクのDTCタイプ(Direct to Cell)のものです。調べてみると10月30日に打ち上げられたばかりのものでした。どうりで団体さんの訳だ…。それにしても酷いじゃないか。
“青く光るスターリンク”(→参考:spaceweather.comのトピックス)と話題になったスターリンクDTC(Direct to Cell)は直接携帯電話と通信する衛星のため、通常より高度が低めで明るく見えます。今年になって加速度的に衛星コンステレーションへ投入されており、今朝時点のDTCは合計258基も打ち上げられています。今後も爆発的に増える予定。緑色の衛星軌跡は不明。これも気になりますね。短波長の光は強いし目立つし、避けようがありませんね…
気を取り直して、衛星軌跡を目立たなくしたコンポジットが右画像です。これでもうっすら見えちゃってますね。TA彗星の尾はだいぶ淡くなったので、尾を引き上げようとすると衛星痕も目立ってしまいます。
個人的にはこうした加工は嫌いです。現在の惨状を「無きもの」にするんじゃなくて、きちんと記録しておくことも大事なことと思います。飛行機も衛星も光害も、「20○○年はこれくらいだった」「20△△年はこんなふうになった」と分かるような記録は天文屋の使命だし、天文屋にしかできません。
それにしても…本当に共存できるのかな?
星仲間の(の)さんからの情報で、明け方しし座の足元で輝くシュワスマン・ワハマン第1彗星(29P)がバーストしているとの情報を頂き、今日未明に撮ってみました(左画像)。
そこにはぼんやり広がる彗星の姿は無く、恒星みたいな光が輝いていました。本当にこれが彗星?何があったのでしょうか?
モニターでも青い色がはっきり分かりました。これはスターリンクのDTCタイプ(Direct to Cell)のものです。調べてみると10月30日に打ち上げられたばかりのものでした。どうりで団体さんの訳だ…。それにしても酷いじゃないか。
“青く光るスターリンク”(→参考:spaceweather.comのトピックス)と話題になったスターリンクDTC(Direct to Cell)は直接携帯電話と通信する衛星のため、通常より高度が低めで明るく見えます。今年になって加速度的に衛星コンステレーションへ投入されており、今朝時点のDTCは合計258基も打ち上げられています。今後も爆発的に増える予定。緑色の衛星軌跡は不明。これも気になりますね。短波長の光は強いし目立つし、避けようがありませんね…
気を取り直して、衛星軌跡を目立たなくしたコンポジットが右画像です。これでもうっすら見えちゃってますね。TA彗星の尾はだいぶ淡くなったので、尾を引き上げようとすると衛星痕も目立ってしまいます。
個人的にはこうした加工は嫌いです。現在の惨状を「無きもの」にするんじゃなくて、きちんと記録しておくことも大事なことと思います。飛行機も衛星も光害も、「20○○年はこれくらいだった」「20△△年はこんなふうになった」と分かるような記録は天文屋の使命だし、天文屋にしかできません。
それにしても…本当に共存できるのかな?
星仲間の(の)さんからの情報で、明け方しし座の足元で輝くシュワスマン・ワハマン第1彗星(29P)がバーストしているとの情報を頂き、今日未明に撮ってみました(左画像)。
そこにはぼんやり広がる彗星の姿は無く、恒星みたいな光が輝いていました。本当にこれが彗星?何があったのでしょうか?
今度はSOHOに写り始めた紫金山・ATLAS彗星 ― 2024/10/08
見かけの上で太陽に近づく紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)が、ついに太陽観測衛星SOHOのLASCO-C3カメラ写野に現れ始めました。日本時間で日付が8日に変わる少し前からです。左画像はSOHOサイトからの引用で、7日20:06UTC(8日5:06JST)の画像。今後どんどん全体が見えてくるので、もう少し溜まったらアニメーションにしてみましょう。約三日後に写野を脱し、宵空へステージを移します。
画像内の日付マーカーは2024年10月5日記事掲載の進路予報を組み合わせたもの。UTC表記で2時間おきにマークしてあります。また、10月8日0:00JST現在の軌道要素で計算すると次の通り。
SOHOのカメラに写るほど太陽に近いと言うことは「位相角」が180°に近いと言うこと(下A図)。位相角とは「彗星」ご本人から見た太陽と地球の離角です。つまり「地球-彗星-太陽」の順に直線状に並んでいるのです(下B図・リンク)。金星で言うと内合に近い状態ですね。地球はしっぽ側から彗星を見ていることになり、その先に太陽があります。
太陽や地球に接近する彗星が明るく見えるのは「天体が光源に近い」「観察者が天体に近い」といった距離の効果が大きいおかげですが、もうひとつ、今回のような合の位置に近い彗星は身に纏った粒子が「前方散乱」を起こすことによって想定より光度が増す事例が少なからずあるようです。現在の紫金山・ATLAS彗星が予報を大きく上回っているのもそのせいではないかと言われます。いずれ観測と研究が進んで諸々判明したら嬉しいですね。
なお「前方散乱」と「衝効果」は似て非なるものですからお間違え無きように。そもそも彗星は今「衝」にいません。(衝および外合は位相角がゼロに近い。)衝効果を引き合いに出すなら寧ろ「後方散乱」で、視線方向は真逆です。
画像内の日付マーカーは2024年10月5日記事掲載の進路予報を組み合わせたもの。UTC表記で2時間おきにマークしてあります。また、10月8日0:00JST現在の軌道要素で計算すると次の通り。
・近日点通過日: 2024年9月27日 17:45:36 UTC(0.391411 AU)
・地心太陽離角最小: 2024年10月9日 09:56:54 UTC(3.497°)
・地球最接近: 2024年10月12日 15:11:30 UTC(0.472419 AU)
・地心太陽離角最小: 2024年10月9日 09:56:54 UTC(3.497°)
・地球最接近: 2024年10月12日 15:11:30 UTC(0.472419 AU)
SOHOのカメラに写るほど太陽に近いと言うことは「位相角」が180°に近いと言うこと(下A図)。位相角とは「彗星」ご本人から見た太陽と地球の離角です。つまり「地球-彗星-太陽」の順に直線状に並んでいるのです(下B図・リンク)。金星で言うと内合に近い状態ですね。地球はしっぽ側から彗星を見ていることになり、その先に太陽があります。
太陽や地球に接近する彗星が明るく見えるのは「天体が光源に近い」「観察者が天体に近い」といった距離の効果が大きいおかげですが、もうひとつ、今回のような合の位置に近い彗星は身に纏った粒子が「前方散乱」を起こすことによって想定より光度が増す事例が少なからずあるようです。現在の紫金山・ATLAS彗星が予報を大きく上回っているのもそのせいではないかと言われます。いずれ観測と研究が進んで諸々判明したら嬉しいですね。
なお「前方散乱」と「衝効果」は似て非なるものですからお間違え無きように。そもそも彗星は今「衝」にいません。(衝および外合は位相角がゼロに近い。)衝効果を引き合いに出すなら寧ろ「後方散乱」で、視線方向は真逆です。
彗星と関係ありませんが、朝に太陽データをまとめていたらXクラスフレアが発生していました。右下に活動領域が密集し過ぎて位置特定が困難ですが、活動領域13839かな?
NOAAによるX線フラックスは下C図の通りです。途中M7クラスまで落ちてはいますが、トータル2時間以上強い状態が続きました。SDOやSOHOの画像でも激しい爆発の様子が確認できます。これ、彗星にぶつかる???
NOAAによるX線フラックスは下C図の通りです。途中M7クラスまで落ちてはいますが、トータル2時間以上強い状態が続きました。SDOやSOHOの画像でも激しい爆発の様子が確認できます。これ、彗星にぶつかる???
STEREO-A写野に戻ってきた紫金山・ATLAS彗星 ― 2024/10/06
太陽観測衛星SOHOよりひと足早く、STEREO-Aの写野に紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)が再登場。8月以来です。
左は本日6日14:17JSTごろの画像。ディティールが全く分からないほど明るい彗星が横切りつつあります。上向きの白い縦線(スミア+ブルーミング)が出てしまうほどの明るさなんですね。背景がノイズやコロナ、CMEなどの影響で見辛いけれど、星を特定してみました。明るい星が暗かったり見えなかったり逆転現象が起きてますが、特定できた恒星の位置関係は合っています。
ご存知の通り10月に入り太陽面で強いフレアが度々発生、やや大規模なCMEが地球付近まで飛んできている最中なんですね。下A図はNOAAのWSA-ENLIL SOLAR WIND PREDICTION、要するに太陽風予報です。コロナ放出の度にプラズマの大波となって地球軌道まで押し寄せる訳ですが、同じ地球軌道を回るSTEREOたちにとっても機器エラーを起こすほど影響があります。実際STEREO-Aの画像は2日から4日の間が空いてしまい、しかも復旧後はご覧のようにすり切れて壊れかけたビデオ映像みたいな画質になってしまいました。下B図は4日から5日にかけての画像を使ったGIFアニメ。太陽“風”とは言うけれど、本当に波のようですね。※タイムマークはUTです。
もうほとんど壊れてしまったSTEREO-Behind(L5に配置)のぶんまで頑張るSTEREO-Ahead(L4に配置)は、地球より少し先を回っています。(Lはラグランジュ点。)振り返るとてんびん座やさそり座の広がる位置に地球と彗星、それに金星が輝いている訳ですね。ううっ、見てみたい!しばらく大海原は時化ているから鮮明に見える日が来るかどうか分かりませんが、あたたかく見守りましょう。
左は本日6日14:17JSTごろの画像。ディティールが全く分からないほど明るい彗星が横切りつつあります。上向きの白い縦線(スミア+ブルーミング)が出てしまうほどの明るさなんですね。背景がノイズやコロナ、CMEなどの影響で見辛いけれど、星を特定してみました。明るい星が暗かったり見えなかったり逆転現象が起きてますが、特定できた恒星の位置関係は合っています。
ご存知の通り10月に入り太陽面で強いフレアが度々発生、やや大規模なCMEが地球付近まで飛んできている最中なんですね。下A図はNOAAのWSA-ENLIL SOLAR WIND PREDICTION、要するに太陽風予報です。コロナ放出の度にプラズマの大波となって地球軌道まで押し寄せる訳ですが、同じ地球軌道を回るSTEREOたちにとっても機器エラーを起こすほど影響があります。実際STEREO-Aの画像は2日から4日の間が空いてしまい、しかも復旧後はご覧のようにすり切れて壊れかけたビデオ映像みたいな画質になってしまいました。下B図は4日から5日にかけての画像を使ったGIFアニメ。太陽“風”とは言うけれど、本当に波のようですね。※タイムマークはUTです。
もうほとんど壊れてしまったSTEREO-Behind(L5に配置)のぶんまで頑張るSTEREO-Ahead(L4に配置)は、地球より少し先を回っています。(Lはラグランジュ点。)振り返るとてんびん座やさそり座の広がる位置に地球と彗星、それに金星が輝いている訳ですね。ううっ、見てみたい!しばらく大海原は時化ているから鮮明に見える日が来るかどうか分かりませんが、あたたかく見守りましょう。