桃の節句なのに大粒の雪 ― 2025/03/03
大規模火災はいつでもどこでも起きる ― 2025/03/01
近年の国内では最大規模となってしまった岩手県の森林火災。乾燥する上に季節風も強い時期でとても心配しています。日本の火災(制御できている野焼きなどは含まない)ケースで人工衛星からはっきり見える規模は初めてではないでしょうか。森林火災の主原因は野焼きの燃え移りやタバコのポイ捨て、焚き火の不始末が大半を占めると言うのが悲しいところ。
左画像は米国の気象衛星NOAA21による2月27日UTの画像(画像元:NASA-WorldView)。気象衛星ひまわりでも同様の画像が撮影されていますね。太平洋側に向かう煙は東北地方の東西幅を越すほどなので、最低でも150kmは伸びていると言うことです。右下画像は気象衛星ひまわりのバンド7による本日3:00JSTの画像(画像元:RAMMB、画像処理や地図は筆者)。暗いところは表面温度が低く、明るいところは熱いところです。火災位置がひと目で分かります。この時期に多い人為的な野焼きでもこのように見えますが、国内の森林火災でここまではっきり見えたのは初めてかも。
1992年(平成4年)11月2日に北海道釧路市で大規模森林火災が発生、1030haが焼損しました。今回はこれを上回っているとのことで、平成以降で最大とニュースで表現されています。平成以前を含めるともっと広域の森林火災もあって、例えば同じ釧路平原の事例では1975年(昭和50年)5月12日の2700ha、1985年(昭和60年)4月30日の2200haなどもありました(北海道釧路市消防本部の資料)。
森林火災に限らずに調べると、大きな災害だった阪神・淡路大震災でも、いくつかの資料を見た限りでは火災による消失(大半が住宅地)は総計100haを越えないようで、東日本大震災でも各地での単発火災は一ヶ所につき15haを越えた事例は見つかりませんでした。火災が森林に及ぶとあっという間に大規模になってしまうのですね。
つい半月前にも地元の茨城県で大きな火災がありました。過去には1991年(平成3年)3月7日に日立市で216haが消失する火災も起きています。これは決して「対岸の火事」ではありません。雨の多い少ないに関わらず、気を引き締めて参りましょう。
左画像は米国の気象衛星NOAA21による2月27日UTの画像(画像元:NASA-WorldView)。気象衛星ひまわりでも同様の画像が撮影されていますね。太平洋側に向かう煙は東北地方の東西幅を越すほどなので、最低でも150kmは伸びていると言うことです。右下画像は気象衛星ひまわりのバンド7による本日3:00JSTの画像(画像元:RAMMB、画像処理や地図は筆者)。暗いところは表面温度が低く、明るいところは熱いところです。火災位置がひと目で分かります。この時期に多い人為的な野焼きでもこのように見えますが、国内の森林火災でここまではっきり見えたのは初めてかも。
1992年(平成4年)11月2日に北海道釧路市で大規模森林火災が発生、1030haが焼損しました。今回はこれを上回っているとのことで、平成以降で最大とニュースで表現されています。平成以前を含めるともっと広域の森林火災もあって、例えば同じ釧路平原の事例では1975年(昭和50年)5月12日の2700ha、1985年(昭和60年)4月30日の2200haなどもありました(北海道釧路市消防本部の資料)。
森林火災に限らずに調べると、大きな災害だった阪神・淡路大震災でも、いくつかの資料を見た限りでは火災による消失(大半が住宅地)は総計100haを越えないようで、東日本大震災でも各地での単発火災は一ヶ所につき15haを越えた事例は見つかりませんでした。火災が森林に及ぶとあっという間に大規模になってしまうのですね。
つい半月前にも地元の茨城県で大きな火災がありました。過去には1991年(平成3年)3月7日に日立市で216haが消失する火災も起きています。これは決して「対岸の火事」ではありません。雨の多い少ないに関わらず、気を引き締めて参りましょう。
【付記】
3月1日9:00JSTの気象衛星ひまわり・バンド7画像を見ると(左画像)、関東の真ん中に白(赤)表示があり、大きな“火事”が起きいてることが分かります。ただしこれは制御下にある恒例の「渡良瀬遊水地の野焼き」です。遊水池を覆っている広大な葦原を焼くことによって害虫駆除や健全な動植物の成長、世代交代を促します。広報によると約1200haを焼いたとのことで、昨日朝時点の岩手の消失面積と同等の規模だったようです。
3月1日9:00JSTの気象衛星ひまわり・バンド7画像を見ると(左画像)、関東の真ん中に白(赤)表示があり、大きな“火事”が起きいてることが分かります。ただしこれは制御下にある恒例の「渡良瀬遊水地の野焼き」です。遊水池を覆っている広大な葦原を焼くことによって害虫駆除や健全な動植物の成長、世代交代を促します。広報によると約1200haを焼いたとのことで、昨日朝時点の岩手の消失面積と同等の規模だったようです。
束の間の空の彩りと彗星 ― 2025/01/16
左画像は昨夕(15日)日没10分前のアトラス彗星(C/2024 G3)。様々な色彩が溢れる中でキラキラ瞬いています。
昨日は午後に雲が広がる予報だったため、何とか昼までに彗星を撮影できないか頭をひねりました。諸事情で屋外に望遠鏡を設置できないため、窓際の限られたスペースが唯一の観測地。遮光しつつやっとの思いで組み上げたものの、1cmも移動できない究極の陣取り。
ところが、午前の早いうちから雲が湧き出し、なぜか天頂より南に居座ってしまいました。彗星は導入できたしピントも合わせたのに、薄雲が容赦なく通過します。適当に撮影したけれど画像処理で救える見込みはありませんでした。機材を移動するスペースも気力も無く、万事休す…。
午後は予報通り雲が増えました。でも夕方天気をチェックしにベランダへ出ると、太陽付近から晴れ間が広がりつつあるではありませんか。慌てて準備、西窓へ移動してあった望遠鏡を彗星に向けました。自分目線では日没前だったけれど、それより低い望遠鏡から見ると太陽が街並みに隠れつつあり、自然の遮光になりました。
モヤが濃かったので無理かなと思いましたが、彗星はすぐ見つかりました。しかも日々太陽から離れつつあるためか、驚くほど見やすい。17分角ほどの尾も確認。ですがのんびり眺める猶予はありません。ささっと観察・撮影。数分もすると彗星はがくっと暗くなり、モヤにのまれてゆきました。一握り=指四本分の幅を束と言いますが、昨夕の彗星-太陽離角はちょうど腕を伸ばして1束ぶん。正に束の間の空模様に魅せられました。
昨日は午後に雲が広がる予報だったため、何とか昼までに彗星を撮影できないか頭をひねりました。諸事情で屋外に望遠鏡を設置できないため、窓際の限られたスペースが唯一の観測地。遮光しつつやっとの思いで組み上げたものの、1cmも移動できない究極の陣取り。
ところが、午前の早いうちから雲が湧き出し、なぜか天頂より南に居座ってしまいました。彗星は導入できたしピントも合わせたのに、薄雲が容赦なく通過します。適当に撮影したけれど画像処理で救える見込みはありませんでした。機材を移動するスペースも気力も無く、万事休す…。
午後は予報通り雲が増えました。でも夕方天気をチェックしにベランダへ出ると、太陽付近から晴れ間が広がりつつあるではありませんか。慌てて準備、西窓へ移動してあった望遠鏡を彗星に向けました。自分目線では日没前だったけれど、それより低い望遠鏡から見ると太陽が街並みに隠れつつあり、自然の遮光になりました。
モヤが濃かったので無理かなと思いましたが、彗星はすぐ見つかりました。しかも日々太陽から離れつつあるためか、驚くほど見やすい。17分角ほどの尾も確認。ですがのんびり眺める猶予はありません。ささっと観察・撮影。数分もすると彗星はがくっと暗くなり、モヤにのまれてゆきました。一握り=指四本分の幅を束と言いますが、昨夕の彗星-太陽離角はちょうど腕を伸ばして1束ぶん。正に束の間の空模様に魅せられました。
【検算】
予想通り15日15時JST前にアトラス彗星(C/2024G3)の核はSOHO写野から外へ出ました(下A画像)。尾はもう少し残るようです。 SOHO写野内を通過するアトラス彗星の位置予測を2024年12月24日記事に出していましたが、実際の彗星位置と1時間内外相当の移動ズレで済んだようです(下B画像/予測図に12-15各日0:30UT画像を合成)。このずれは誤差やミスと言うよりも、計算の際にSOHO実位置ではなく平均位置で計算していることや、写野中心と太陽が合っていない(SOHO側の運用姿勢で変わってしまう)ことによるものと考えています。またカメラの周囲では収差も大きいようです。検算することで、より良いプログラム開発に活かせます。
※A画像内にある四つの赤丸は、いて座のアステリズム「テレベルム」です。
予想通り15日15時JST前にアトラス彗星(C/2024G3)の核はSOHO写野から外へ出ました(下A画像)。尾はもう少し残るようです。 SOHO写野内を通過するアトラス彗星の位置予測を2024年12月24日記事に出していましたが、実際の彗星位置と1時間内外相当の移動ズレで済んだようです(下B画像/予測図に12-15各日0:30UT画像を合成)。このずれは誤差やミスと言うよりも、計算の際にSOHO実位置ではなく平均位置で計算していることや、写野中心と太陽が合っていない(SOHO側の運用姿勢で変わってしまう)ことによるものと考えています。またカメラの周囲では収差も大きいようです。検算することで、より良いプログラム開発に活かせます。
※A画像内にある四つの赤丸は、いて座のアステリズム「テレベルム」です。
2025年で日の出が最も遅いシーズンです ― 2025/01/07
一年で最も日の出が遅い時期になりました。左に示したのは2025年の「日出最遅日マップ」。これによると1月2日に北海道道北を出発し、1月7日までに本州南部まで南下しています。みなさんの住む街も、ここに書いた翌日からは日の出時刻が早まり始めますよ。日没最早日は約一ヶ月前に過ぎていますから、この後は夏に向かって日の出・日の入り共に昼が長くなるほうへ変化します。
ところで、毎年同じ日付の日の出位置は変わらない様に感じます。小中学校でもそれ以上深くは学びません。ですが、太陽が画面いっぱいに写る程度の拡大率で全く同じ場所から撮影すると、年ごとに少し違うことが分かるでしょう。
特に今年1月の日の出を去年の同じ日と比較すると、右下図(1月7日・日本経緯度原点の例)のようにかなり変化したことが分かります。実写で確かめたいことのひとつですが、生憎私は撮影に適した「浜辺の家」みたいなロケーションを持ち合わせていないので、ここではStellariumによるシミュレーションで代用しました。
どうして2024年と2025年の変化が他の年のペースと違うかと言うと、日数が1日多いからです。つまり「閏日」のぶんだけ太陽黄経が進んでしまい、閏年の翌年1月の同じ日は4年分の遅れを取り戻すように動いて見える訳です。日本から見ると、この動きは日出の方位角のずれとして顕著に現れるのです。当然、方位がずれれば日出時刻も変わります。
かくして4年に一度、閏年翌年は日の出の状況が一変するため、つられて日出最遅日分布も大きく変わることになります。昨年の最遅日マップは2024年1月5日記事内に掲載してありますから、本記事の地図と比較してどれくらい変わったかみてください。パッと見て毎年似たような地図に見えますが、詳しく見るとこのような秘密が隠されているのです。せわしない私たちの日常ではなかなか感じ取れない変化ですね。
多くの方にとって天文や地学の知識は小中学校止まりではないでしょうか。大学受験で地学を選択した私も、高校で地学教師がいなかったため独学受験し、以降もずっと自分で勉強を続けました。ここでお話ししたように、義務教育範囲の知見は詳細を省いた、いわば解像度の低い広角レンズで切り取った宇宙観。閏日補正の意味すら気付けない、住んでる土地の降水量変化や火山・断層分布すら知らない、荒いザルの目で見た自然観のまま一生を過ごすことになるでしょう。
天文・地学に限りませんが、世間を細かく正確に観る目を養えば世の中の歪みもはっきり分かって、何をすべきか判断しやすくなると言うもの。人間としての解像度を上げることは、お高い望遠鏡を買うため腐心するよりずっと安上がりで価値あることです。老若男女問わず、今日からでも始められます。ぜひ今後の目標のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)
ところで、毎年同じ日付の日の出位置は変わらない様に感じます。小中学校でもそれ以上深くは学びません。ですが、太陽が画面いっぱいに写る程度の拡大率で全く同じ場所から撮影すると、年ごとに少し違うことが分かるでしょう。
特に今年1月の日の出を去年の同じ日と比較すると、右下図(1月7日・日本経緯度原点の例)のようにかなり変化したことが分かります。実写で確かめたいことのひとつですが、生憎私は撮影に適した「浜辺の家」みたいなロケーションを持ち合わせていないので、ここではStellariumによるシミュレーションで代用しました。
どうして2024年と2025年の変化が他の年のペースと違うかと言うと、日数が1日多いからです。つまり「閏日」のぶんだけ太陽黄経が進んでしまい、閏年の翌年1月の同じ日は4年分の遅れを取り戻すように動いて見える訳です。日本から見ると、この動きは日出の方位角のずれとして顕著に現れるのです。当然、方位がずれれば日出時刻も変わります。
かくして4年に一度、閏年翌年は日の出の状況が一変するため、つられて日出最遅日分布も大きく変わることになります。昨年の最遅日マップは2024年1月5日記事内に掲載してありますから、本記事の地図と比較してどれくらい変わったかみてください。パッと見て毎年似たような地図に見えますが、詳しく見るとこのような秘密が隠されているのです。せわしない私たちの日常ではなかなか感じ取れない変化ですね。
多くの方にとって天文や地学の知識は小中学校止まりではないでしょうか。大学受験で地学を選択した私も、高校で地学教師がいなかったため独学受験し、以降もずっと自分で勉強を続けました。ここでお話ししたように、義務教育範囲の知見は詳細を省いた、いわば解像度の低い広角レンズで切り取った宇宙観。閏日補正の意味すら気付けない、住んでる土地の降水量変化や火山・断層分布すら知らない、荒いザルの目で見た自然観のまま一生を過ごすことになるでしょう。
天文・地学に限りませんが、世間を細かく正確に観る目を養えば世の中の歪みもはっきり分かって、何をすべきか判断しやすくなると言うもの。人間としての解像度を上げることは、お高い望遠鏡を買うため腐心するよりずっと安上がりで価値あることです。老若男女問わず、今日からでも始められます。ぜひ今後の目標のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)