夕空を彩る幾つもの光たち2018/07/15

20180715夕日と反薄明光線
午後から晴れ渡った空は、夕方まで雲があまり湧きませんでした。日没の頃ベランダに出ると、遠くに見える雲を真っ赤に染めた夕日から薄明光線が何本も伸びています。

雲の影が強調され、反薄明光線として東の空まで届いていました。暑苦しい空気とセミの声も一緒になって、久しぶりに見る夏らしい光景です。

20180715月と金星
日が沈む前から金星と二日月が見えていましたが、日没後30分も経つとはっきりして、とても美しい光景でした。

今夕の金星と月は10°ほどの離角がありましたが、明日の夕方は3°弱まで大接近します。晴れたら多くの人の心をわしづかみにすることでしょう。

20180715月と金星
西空には金星と月だけでなく、三日前に東方最大離角を迎えた水星と、しし座の1等星レグルスも輝いていました。水星はだいぶ低かったので、どうしても近所の電線が構図に入ってしまいます。どこに何があるかは右のマーカー付き画像をご覧ください。明日の夕方も楽しみですね。

ガリレオ衛星の珍現象2018/07/15

木星の衛星現象としては、滅多に見られない珍しいイベントが間もなく起こるのでご紹介しましょう。積極的に紹介された事例を見たことがないのですが、自分ではとても面白い現象と思っています。

20180728エウロパの現象

A.エウロパの珍しい現象
木星は先週の7月11日に「留」を迎えました。留とは字の通り「留まる」ことを意味します。ご存じのように地球から見た外惑星は、経度が増加するように移動する「順行」と、経度が減少する移動「逆行」があります。留はこの移動が切り替わる瞬間ということです。

留の時期はこの見た目の変化以外にネタとして取り上げられることはほとんどありませんが、冒頭で述べた「珍現象」が起きる時期の目安として役立ってくれます。どんな現象か、まずは左のA図をご覧ください。これは今月28日宵の木星を描いたStellariumによるシミュレーション(天の北が上方向)。10分おきに3枚の図が並んでいますね。木星近くに四大衛星のイオとエウロパがあり、イオは木星手前を右へ、エウロパは木星背後を左へ動いています。

木星に隠れていたエウロパは19:40過ぎに姿を現しますが、そのままずっと見え続けると思いきや、何と19:55ごろにいきなり消えてしまうのです。「何事!?」と思ってしまう現象でしょう?これは「掩蔽現象」が終わった後、あまり時間が経たないうちに「食現象」が起こったのです。このような状況はいつでもまんべんなく頻発する訳ではなく、留や東矩、西矩といった時期に集中します。しかも観察場所を固定…例えば「日本の夜空で見える」と限定した場合、回数は激減するのです。現象名を正式に何と呼ぶのか聞いたことがありませんので、このブログでは「衛星の連続出没イベント」と呼ぶことにします。

2018木星の位置

B.今期の木星位置
どうしてこんな現象が起こるか、順を追って説明しましょう。まずは言葉の確認。地球から見た外惑星は前述の通り順行や逆行があって、移動幅は地球に近いほど大きくなります。今回取り上げる木星について、前回の合(2017年10月27日)から次の合(2018年11月26日)までの一周期を星図にしたものが右のB図(ステラナビゲーター使用)。

留は「順行→逆行」と「逆行→順行」の切り替わりに一回ずつ起こり、その中間に必ず「衝」がやってきます。また一回目の留の前に「西矩」、二回目の留の後に「東矩」があります。改めて時系列に書くと「合→西矩→留→衝→留→東矩→合」の流れです。

一連の状況を、第三者視点で見てみましょう。左下C図は太陽系を北側から見たもの。話を簡単にするため、惑星は円軌道で描いています。どのような位置関係のとき何と呼ばれるか、一目で分かるでしょう。西矩・東矩の「矩」というのは直角という意味で、文字通り「太陽・地球・外惑星」が直角を作っています。簡単に言うと、東矩の惑星は日が暮れたとき太陽の90°東側で南中しており、西矩では日の出のとき太陽の90°西側で南中しています。

地球と外惑星の位置関係

C.地球と外惑星の位置関係
連続出没イベントで重要なのは、この図に出ている「位相角」。位相角は「地球・惑星・太陽」がなす角で、地球から見た惑星の「光の当たり方」や「欠け具合」を決定づけていますね。この角度は惑星がどこにいるかによって変化します。合や衝の近くではほぼゼロになり、また図中のA位置とB位置では位相角が明らかに違うことも分かるでしょう。

色々作図すると分かりますが、位相角が次第に大きくなるのは正に西矩や東矩のころ。この時期は観察者の視線と太陽光の向きが異なる訳ですから、外惑星でも少し欠けて見えます。また位相角がゼロでないということは惑星本体から伸びる影の向きが視線からずれていることを意味します。

外惑星がどれくらい太陽から離れているかによって位相角は変わりますが、「太陽から遠い惑星ほど位相角の最大値は小さい」ということが直感的に分かるでしょうか(→記事末の付記参照)。これらを踏まえ、衛星連続イベントのとき惑星と衛星に何が起こっているか、拡大図で見てみましょう(右下D図)。この図も木星を北側から見ていることを想定しています。一般に天体が別天体に隠されることを「掩蔽」、また、天体が別天体の作る影に隠されることを「食」と言います。一見同じような「隠される現象」ですが、明らかに原因が違うので区別しましょう。(※この理屈だと、月食は食ですが日食は掩蔽です。)

木星の衛星現象

D.衛星の連続イベント
木星の場合、衝前後の期間は観察者視線と太陽光がほぼ一致するので、惑星本体が作る影も一致し、食と掩蔽との時間差はほとんどありません。でも位相角がだんだん大きくなるとD図のようにズレが生じ、掩蔽が終わってから食が始まるまで時間差が生まれます。この時間差は惑星の大きさ、位相角、衛星軌道半径などによって様々。もちろん衝の前と後とでは影の向きが東西反転するので、現象が見える位置や順番も変わります(下E図参照)。

位相角が最大になると惑星から遠い衛星では食・掩蔽の隙間が数時間以上に及ぶ場合もあって、「連続」とは言い難いこともあるでしょう。逆に木星のイオのように惑星に近い衛星では、掩蔽が終わってもそのまま食に移行してしまい、隙間時間が全く無い場合もあります。一般に衝や合に近いほど隙間は小さいですから、イベントがごく短時間で終わり易いことが分かるでしょう。(例:日本では見えませんが、2019年9月21日4:38JSTのエウロパでは掩蔽終了と食開始がほぼ同時!)回数もグッと減りますから、レア度が増しますね。

もちろん、地球公転面に対して衛星軌道や惑星自転軸の傾斜が大きかったり逆転しているケースでは食も掩蔽も起こらない等の複雑な状況があります。小型望遠鏡でも楽しめる木星の四大衛星でこの現象が起こってくれることは奇跡とも思える天界からのプレゼントと言えましょう。

1時間以内に収まる連続出没イベントを実際に計算すると、1会合周期平均で何十回かは世界のどこかで見えます。そのうち日本で暗い空に条件良く見えるのは2、3回あれば良いほうです。最初のA図のような機会は極めて貴重なのですね。緯度(南北)方向への影のずれも影響するため、今年はエウロパでよく起こるけれど来年はガニメデが…という具合に傾向が変わることもあります。下F図は今期の木星の位相角を示したグラフ。木星では位相角がだいたい5°以上になると連続出没イベントがだんだん多くなります。滅多に見ることができないこの現象、機会を見つけてぜひご覧になってくださいね。なお今回計算した現象日時はアーカイブ:木星の衛星現象一覧の一項目として登録しておきました。どうぞご利用ください。

  • 位相角と衛星現象の位置や順

    E.衛星イベントの位置や順
  • 2018木星の位相角

    F.木星の位相角


【付記】
参考までに、今期における火星と土星の位相角グラフも描いたので掲載しておきます。火星の位相角は最大の頃で40°を越しており、お月様に例えると「十日月」くらいの欠けた形に相当します(下の火星画像参照)。土星も最大5°以上ありますから、「満月半日前の月」程度欠けている時期もあるわけです。上記記事で「西矩・東矩頃は位相角が大きい」と書きましたが、ピッタリ極大期ということではありません。また火星のグラフから分かるように衝を軸として左右対称…という訳でもないですね。惑星軌道は楕円であること、軌道傾斜角があるため南北にもずれること、等が原因になるようです。完全にゼロにならないのも同じ原因。位相角は惑星の立場で見ると「地球と太陽との離角」に相当しますから、例えば衝効果(→2015年5月19日記事参照)の目安にもなります。

細かいことですが「見かけの位相角」とわざわざ書いてあるのは、「本当の位相角」と区別するためです。地球と惑星とは距離があるため、光が届くのに時間がかかります。つまり「今見えている惑星は少し前の姿」であって、当然そのときの位相角も少し前の状態です。ごくわずかな違いですが無視することもできない大事な事項なので、敢えて表記しました。

  • 2018火星の位相角

    G.火星の位相角
  • 2018土星の位相角

    H.土星の位相角
  • 20180511火星

    欠けた火星(2018/5/11撮影)


薄曇りながら、火星と彗星に挑戦2018/07/14

20180714火星
昨夜から今朝にかけて一応安定した晴れ間がありましたが、空全体は薄雲に覆われて透明度がかなり落ちていました。悩みましたが、なかなか晴れ間がやってこない時期でもありますので、がんばって重機材での観察に臨みました。

まず夜半過ぎに南中する火星です。もう二週間あまりで大接近当日を迎えますが、既にとても大きく見えます。眼視でも南北の明るいエリアや南半球が少し暗いことは分かりましたが、砂嵐がまだ収まってないようで詳細は分かりませんでした。

20180714火星図
右はGuideによる撮影時の火星図ですが、ちょうどマリネリス渓谷が正面に来ている辺りで、本来ならかなり様々な濃淡が確認できるはず。嵐が明けるのは大接近に間に合いそうにありませんが、せめて遠ざかる中秋の前にクリアな火星を見たいものです。

20180714パンスターズ彗星(C/2017S3)
もうひとつ、長いこと挑戦できなかったパンスターズ彗星(C/2017 S3)にもチャレンジしました。明け方の北東、きりん座の足元に9等台で見えており、8月には3等台になることが期待されている彗星です。(※日本からはピーク時期の前に見えなくなります。)

少しずつ高度を下げているため、早く見ないとお手上げでした。ところが、自宅の目の前に造成された新住宅街が明るく、また電線も多い方向のため、晴れたとしてもかなり困難を極める対象だったんです。

昨夜は透明度の悪さに加え住宅の光害がひどく、やっと写野に導入できたのが薄明開始後でした。オートガイドも全く効かず、ほったらかし撮影のためガイドエラーや背景ムラもひどいですが、何とか仕上げてみました(右画像)。淡い緑色のコマがかなり大きくなっており、短い尾が伸びているような気がします。我が家からはもう一週間もすると見えなくなりそうなので、写って良かった…。

観察好期を迎えた火星2018/07/09

20180709火星
昨夜から今朝にかけ、夜半前は雲多めでしたが夜半を過ぎる頃には七夕の星々がたどれるほど回復、明け方まで断片的ながら比較的落ち着いた星空の時間が訪れました。ただ、明け方に雨の予報も出ていたため、慌ただしく望遠鏡を組み立てました。

火星と彗星観察を予定しましたが、前触れ無く横切る雲が多く、難儀しました。結局彗星は諦め、撮影できたのは火星のみ。それも、雲にせき立てられるような撮影でピントや方向角を精度良く合わせる時間がなく、少し狂っているかも知れません。南半球に模様らしきものが見えるのですがはっきりしませんね。砂嵐はまだ続いているのでしょうか?右下はGuideによる撮影時の火星図です。

20180709火星図
火星が大接近するのは7月31日ですが、その日に晴れるとは限りませんし、そこまでの二十日間あまりに穏やかな晴れが来る確率もそう高くはないでしょう。数回見ることができればラッキーてなもんです。視直径は22″を越えましたので、最大時とたったの2″しか違いません。もう十分に観察絶好期。ぜひチャンスを逃さずご覧くださいね。

(その後天気が急変、朝から午前中は時々雷雨となりました。)