宵空を飾る月と彗星2024/03/15

20240314_05586月
昨夕も良く晴れて、月と木星が縦並びに輝きました。月の上にはプレアデス星団やヒアデス星団も見えました。何十回も脳裏に焼き付け、カメラに収めた光景ですが、最近はどうにも写真で切り取ることがチープに感じてしまい、なかなか食指が動きません。やはり人間の眼は偉大ですね。

左は14日19:20前の撮影で、太陽黄経差は約55.86°、撮影高度は約35.21°、月齢は4.05。このあたりの膨らむ速度は速いですね。スミス海や縁の海も良く見えます。危難の海北部には「月世界への招待」サイトで東田さんが記事にされていた光点(アラニの白斑)がやたら目立っていました。小さな光条付きクレーターとはとても思えない明るさです。似たような光点はけっこうあちこちに見つかりますから探してみてください。

ひと晩前にようやく日が差したエンディミオンも明るくなり、アトラスも夜明けを向かえつつあります。豊の海を流れ落ちるリッジが素晴らしい。レイタ谷やジャンセンの一部も見えてきました。二、三日後には南の海付近の秤動が最良になるでしょう。17日に上弦を迎えます。

20240314_ポン・ブルックス彗星(12P)
月観察に引き続き、ポン・ブルックス彗星(12P)も撮影してみました。天文薄暮終了時にはもうかなり低くて、大気減光の影響が大きいです。しっかりしたイオンテイルとともに、ここ数日は太いダストテイルも目立ってきました。街中から捕らえるのはかなり難しいですが、良い環境に出かけられる方はぜひ記録してください。

光度ピークまで残り1ヶ月余り。でも来月に入ると薄暮中に見え出す頃には高度15°を下回ってしまい、双眼鏡で探すのも写真を撮るのもかなり難しくなるでしょう。

スターリンク・ダンスをとらえる2024/03/11

20240310スターリンク・ダンス
少し前の話題になりますが、星ナビ3月号の記事にあった「スターリンクの舞」をブログ「もっと宇宙の話をしよう!」のTaizoさんが撮影されていました。私もやってみたかったのですがなかなかタイミングが無く、ようやく昨夜に試すことができました。

記事によれば、日没後または日出前の太陽が一定条件のとき低空を飛び交うスターリンクのフレアが起きるため、多数のフレアが何度も横切るように見えるとのこと。直線的ではありますが、蛍のように飛び交う様を「舞い」と表現しているようです。

昨夜は恒星位置で太陽方向を確認した後、4秒露出+1秒間欠で20:02から2時間ほど撮影しました。当地ではこの間に太陽高度が約-28.7°から-49.4°まで画像右下に向かって下がっています。全部を比較明コンポジットしたものが冒頭画像。また30分ずつコンポジットしたのが下A-D画像です。D画像には全く写っていません。全てがスターリンクのフレアとは限りませんが、開始直後から21:27ごろまでフレアが写っていましたので、今回は太陽高度が約-30°未満あたりで始まり、-45°に達する前に終わるという条件が分かりました。また大雑把には次のような傾向がありました。

20240310スターリンク・ダンス
  • 出現位置が高いほどフレアが暗い。低いほど明るい。
  • 出現位置が高いほど飛行経路が長め。低いほど短め。
  • 出現位置が高いほど飛行頻度が多め。低いほど頻度が少なめ。
  • 時間経過と共に次第に北へ寄る。(宵側の場合。)

宵側の場合は太陽移動に伴って出現位置が次第に低くなります。明け方側では逆向きですね。全コマチェックしたところ、概ね1分につき数回のフレアが現れ、多いときにはひとコマに四つ写っていたものもありました(右画像/黄色円内)。今回は目視観測はしませんでしたが、双眼鏡で眺めても面白そうですね。空の良いところならもっと見えると思います。分野は違うけれど、理屈は「太陽柱」に似ているのかなと思いました。(イリジウムフレアの計算を学んでいた頃のうろ覚えですが、確かフレアを起こす太陽電池パネルやボディ面の法線に対し、太陽光入射角と観測者への反射角が一致するときフレアが起こったはずです。いっぽう太陽柱は大気中にある氷結晶の法線に対し、太陽光入射角と観測者への反射角が一致します。※このとき氷結晶は六角板状であり、地面に対して平行に漂っている姿勢で、無風のことが多いです。)

地平下の太陽方位
かつてのイリジウムフレアのような派手さはないものの、空をくまなく覆っている衛星コンステレーションですから、天気に恵まれ空の方向さえ間違わなければ宵側と明け方側の一日二回確実に見えるはず。見える方位は地平下の太陽方位とだいたい同じなので、手ごろなプラネソフトでシミュレートすればすぐ分かるでしょう。

地平下の太陽到達時刻
日本経緯度原点における“夜の”太陽方位および太陽到達時刻(太陽高度が-30°と-40°の各ケース)を1年ぶん計算すると左上図および右図のようになりました。左上図縦軸は90°が真東、180°が真南、270°が真西、0°=360°が真北です。また右図縦軸はJSTです。他年度でもほぼ変わりません。

夏至プラスマイナス二ヶ月程度は太陽の沈み込みが浅いため、この計算位置では-40°まで届かず「解無し」になります。その代わり僅か1.5時間ほどの時間差で宵と明け方のフレアタイムが真夜中を挟んで接近するため、理屈通りなら北天低空に煌めくスターリンク・ダンスを連続して楽しむことができるでしょう。本州辺りだと、もしかしたら「フレアの子午線通過(下方通過)」になるかも知れませんね。興味深い現象なので、年間で撮り比べ解析してみようと思います。スターリンクは今後もっと密度が高くなりますから、このフレア群は近い将来びっしり輝くようになると予想されます。現在目立つのは高度550kmにあるスターリンク群と考えられますが、将来は低高度(高度340km)の群が圧倒する計画なので、フレアも更に高輝度・多頻度になるでしょう。ある意味「見もの」であり、「厄介者」でもありますね。

  • 20240310スターリンク・ダンスA

    A.20:02-20:31
  • 20240310スターリンク・ダンスB

    B.20:32-21:01


  • 20240310スターリンク・ダンスC

    C.21:02-21:31
  • 20240310スターリンク・ダンスD

    D.21:32-22:02


20240310ポン・ブルックス彗星(12P)とM31
スターリンク・ダンスの前には前夜と同じようにポン・ブルックス彗星(12P)とM31のツーショットを撮りました。若干長いレンズにしています。尾は1.5°あるかどうかといった程度。今夜以降はアンドロメダ銀河から離れます。

参考:STARLINK CLUSTER FLARESの関連記事(海外サイト)
SKY&TELESCOPE・BOB KING氏の記事(2023/11/01)
Jeff Warner氏の記事(2023/04/24)

アンドロメダ銀河に近づくポン・ブルックス彗星2024/03/10

20240309ポン・ブルックス彗星(12P)とM31
昨宵は良い天気でしたが、風が少し残っていたので長焦点ではなく短焦点でポン・ブルックス彗星(12P)を狙ってみました。ちょうど70mm-80mm+APS-Cでアンドロメダ銀河(M31)と一緒に収まりました。

左画像はまだ薄明が残っており、地上の光害もきつい時間帯での撮影です。中央右上寄りにM31、中央に対してM31と対象位置に彗星がいます。彗星から短い尾がM31の方向に伸びていますね。空の条件が良い場所で撮影すると、例えばSpaceWeather.com3月7日記事表紙のようにM31に届くほどの尾になっているようですね。でも市街地の薄汚れた空ではこれが精いっぱい。

自分の眼で見たかったということもありますが、それよりも「普段の生活に居ながら、肉眼で彗星の尾やアンドロメダ銀河が見えるような素晴らしい環境」を後世に残せないことが何よりも残念でなりません。「山奥に出かければ…」とか「海外に行けば…」といった天文環境の封じ込めが続く限り、数世代後のこどもたちにとって宇宙はパソコン画面を通してしか見ることができない「非日常の事象」になってしまうことでしょう。

約一ヶ月後の4月10日宵には、この画像と同程度の画角にポン・ブルックス彗星、木星、極細月、天王星が全て入ります。高度15°以下の低空ですが、彗星は計算上で今より2等ほど明るく、最大光度期の約10日前ですから肉眼で感じ取れるかも知れません。小型双眼鏡を片手に、ぜひ眺めてみてください。

昨宵のポン・ブルックス彗星2024/03/05

20240304ポン・ブルックス彗星(12P)
昨宵も晴れていたので、簡単設置した望遠鏡でポン・ブルックス彗星(12P)を拡大気味に撮ってみました。西空は極軸が合わせられないため、短い露出で重ねていったものの、どうしても10分を過ぎるとだんだん破綻してきます。うーむ、どうにかならないものか…。

西に傾いたベテルギウスの減光が結構目立っていました。撮影後、フラットフレームを撮っているうちに空はどんどん雲に覆われ、本日5日は昼前から雨になりました。またしばらく星月はお預けです。