SWAN彗星の生存確認 ― 2025/04/22
昨夜から今朝は概ね快晴。低空には雲が流れていましたが、雲が無いところは透明度が高かったので、明け方のSWAN彗星(C/2025F2)に望遠鏡を向けました。
左画像は今朝(22日)のSWAN彗星。隣家の屋根(左下の影)から出た3:52頃から10分間(10秒×60コマ)露出したところで薄明に飲み込まれました。核周囲の集光は感じられず、10等を下回るぼんやりしたコマ?尾?があるだけでした。400mm+APS-Cなのでこんなもんですかね。右下画像は白黒反転したものですが、北西(右上)に向かう弱々しい尾があるような、ないような…。PCから3メートルほど離れて見ると良いかも?
高度7°から8°という低空のせいでメトカーフコンポジットした恒星の軌跡が湾曲し、流れの向きがバラバラです。ステライメージのアラインメントやメトカーフ法は低空の大気補正によるズレまで考慮してないと思うので、きちんと合成できてないかも知れません。
明日晴れて同じ時間に撮ったとしても屋根から出る前に薄明に負けてしまうため、我が家から明け方SWAN彗星を狙うのは今朝が最後です。ひとまず生存確認できて良かった…。さて、この暗さで夕方見えるでしょうか?
左画像は今朝(22日)のSWAN彗星。隣家の屋根(左下の影)から出た3:52頃から10分間(10秒×60コマ)露出したところで薄明に飲み込まれました。核周囲の集光は感じられず、10等を下回るぼんやりしたコマ?尾?があるだけでした。400mm+APS-Cなのでこんなもんですかね。右下画像は白黒反転したものですが、北西(右上)に向かう弱々しい尾があるような、ないような…。PCから3メートルほど離れて見ると良いかも?
高度7°から8°という低空のせいでメトカーフコンポジットした恒星の軌跡が湾曲し、流れの向きがバラバラです。ステライメージのアラインメントやメトカーフ法は低空の大気補正によるズレまで考慮してないと思うので、きちんと合成できてないかも知れません。
明日晴れて同じ時間に撮ったとしても屋根から出る前に薄明に負けてしまうため、我が家から明け方SWAN彗星を狙うのは今朝が最後です。ひとまず生存確認できて良かった…。さて、この暗さで夕方見えるでしょうか?
SWANカメラが見たSWAN彗星 ― 2025/04/20
話題のSWAN彗星は崩壊しつつあるかも知れないということがSpaceweather.com4月18日冒頭で語られています。実際にCOBS(Comet Observation database)などを参照すると、4月7-8日にかけて7.5等級に増光したのち9-10日までには1等級落ちて、13日以降は9等以上の観測例がありません。
近日点通過は約10日後ですし、近日点距離も0.3335AUでアトラス彗星(C/2024 G3)よりずっと遠く、紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)より少し近い程度ですから、崩壊を論じるのは尚早かも知れません。でも予想光度(本日時点で6.0等)よりずっと暗いのは事実です。私が観てきた印象では「低空のモヤでコマの広がりが見辛いせいかな」と思っていたのですが、それだけではないようです。
SWAN彗星を見つける発端となったSOHO-SWANカメラではどうでしょうか?大気越しではなく宇宙から観てますので、もし順調に増光しているなら地上よりはっきり写るでしょう。というわけで4月8日記事にも一度載せたSWAN画像のGIF動画を17日ぶんまで拡張して左上に掲載しました。クリックして再生してください。またご覧の通り公開されているSWAN画像は黄道座標系のサンソン=フラムスティード図法にマッピングされているため彗星位置が合ってるかどうか直感的に分かり辛いので、星図としても描き起こしてみました(右下図/縦横比は図法本来の比率に戻しています)。うん、間違いないようですね。
詳しく追ってみると、SWAN画像でも8日あたりがいちばん明るく、その後は暗くなっています。ここ数日はホットピクセルのように写っているβAndに重なってしまいよく分かりませんが、のびていた尾も見えなくなったので光度が落ちたことは間違いないでしょう。ちなみにSWANカメラがとらえるのは波長115nmから180nmまでの遠紫外線で、地上から可視光で見る光景とだいぶ違いますのでご注意。また、元々1°角あたり5×5ピクセルの小型センサー2台で全天をマッピングするという無謀なことを30年近く続けています。1990年代の技術を考えればこの荒さでも称賛に値する仕事っぷりでしょう。
せっかくなので、SWANカメラがとらえた他の彗星もご覧いただきましょう。当たり前ながらSWANにはSWAN彗星しか写ってない訳ではなく、歴代の大彗星もバッチリ写っています。いくつかセレクトしたので、星図とともに記事下にGIF動画を掲載しました。彗星マーカーは付けませんので、星図で移動位置を覚えてから動画再生すると良いでしょう。(まぁ、星図を見なくてもはっきり分かる彗星を選んでいますが…。)
私たちは地上から見た彗星の姿しか見ることができず、夜の間に地平から上がってこなければ絶対に見えません。でもSWANカメラは全球を飛び交う彗星を、天気や遮蔽物を気にせずいつでも見ることができる『唯一の視点』と言って良いでしょう。HSTやJWSTほど高解像度でなくとも良いから、こうした「リモート全天球カメラ」をもっとたくさん打ち上げればいいのにと思いました。リコリモ宇宙版でTHETAを飛ばしてくれませんかね?
近日点通過は約10日後ですし、近日点距離も0.3335AUでアトラス彗星(C/2024 G3)よりずっと遠く、紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)より少し近い程度ですから、崩壊を論じるのは尚早かも知れません。でも予想光度(本日時点で6.0等)よりずっと暗いのは事実です。私が観てきた印象では「低空のモヤでコマの広がりが見辛いせいかな」と思っていたのですが、それだけではないようです。
SWAN彗星を見つける発端となったSOHO-SWANカメラではどうでしょうか?大気越しではなく宇宙から観てますので、もし順調に増光しているなら地上よりはっきり写るでしょう。というわけで4月8日記事にも一度載せたSWAN画像のGIF動画を17日ぶんまで拡張して左上に掲載しました。クリックして再生してください。またご覧の通り公開されているSWAN画像は黄道座標系のサンソン=フラムスティード図法にマッピングされているため彗星位置が合ってるかどうか直感的に分かり辛いので、星図としても描き起こしてみました(右下図/縦横比は図法本来の比率に戻しています)。うん、間違いないようですね。
詳しく追ってみると、SWAN画像でも8日あたりがいちばん明るく、その後は暗くなっています。ここ数日はホットピクセルのように写っているβAndに重なってしまいよく分かりませんが、のびていた尾も見えなくなったので光度が落ちたことは間違いないでしょう。ちなみにSWANカメラがとらえるのは波長115nmから180nmまでの遠紫外線で、地上から可視光で見る光景とだいぶ違いますのでご注意。また、元々1°角あたり5×5ピクセルの小型センサー2台で全天をマッピングするという無謀なことを30年近く続けています。1990年代の技術を考えればこの荒さでも称賛に値する仕事っぷりでしょう。
せっかくなので、SWANカメラがとらえた他の彗星もご覧いただきましょう。当たり前ながらSWANにはSWAN彗星しか写ってない訳ではなく、歴代の大彗星もバッチリ写っています。いくつかセレクトしたので、星図とともに記事下にGIF動画を掲載しました。彗星マーカーは付けませんので、星図で移動位置を覚えてから動画再生すると良いでしょう。(まぁ、星図を見なくてもはっきり分かる彗星を選んでいますが…。)
私たちは地上から見た彗星の姿しか見ることができず、夜の間に地平から上がってこなければ絶対に見えません。でもSWANカメラは全球を飛び交う彗星を、天気や遮蔽物を気にせずいつでも見ることができる『唯一の視点』と言って良いでしょう。HSTやJWSTほど高解像度でなくとも良いから、こうした「リモート全天球カメラ」をもっとたくさん打ち上げればいいのにと思いました。リコリモ宇宙版でTHETAを飛ばしてくれませんかね?
- 星図は自作プログラムによります。惑星は表示していません。彗星位置はSWANカメラ視点での計算ですが、カメラ位置を厳密に算出するのは困難なので、平均的なSOHO位置としています。
- 当たり前ですが上記計算と地心計算とを比較すると、視点によって彗星位置が少し変わることが分かります。
- SOHO-SWAN画像は原寸のままGIF加工しました。黒くなっている部分は太陽付近(前方)および地球方向(後方)を避けているせいと思われます。
- サンソン図法では通常の縦横比が1:2ですが、SWAN画像はだいたい2:3になっており、横方向が縮められています。もともと等積図法ではないため、同じ大きさの星像が同じ等級とは限りません。描画位置で変わってしまいます。
- SWANは原則1日1回の全天観測のようですが、必ずしも毎日ぶん揃っている訳ではありません。
- サンソン図法に投影するための元画像がどこかにあると思われますが、一般公開されているかどうか分かりません。元画像ではもっと詳しい挙動が分かると思われます。
弱々しいSWAN彗星 ― 2025/04/17
昨夕から今朝にかけて透明度の落ちた快晴夜。夜半に昇った月がオレンジ色で、低空には薄い雲もかかっていました。SWAN彗星(C/2025F2)をとらえるのは難しいかなと感じつつも、向こう一週間の天気がかなり不安定なため、明け方はこれで最後かも知れないという思いで準備。
案の定、低空は恒星すら弱々しく、PC画面でコントラストを上げても彗星が全く見えません。手間取りつつもどうにか見える恒星配置から彗星位置を絞り込んで撮影開始。メトカーフコンポジットしてやっと彗星像が見えました(左画像)。いやぁ、弱々しい…。撮影機材や条件は毎回ほぼ一緒ですし、最微等級が一晩前より明らかに上がってしまったので、今朝の減光は彗星単独ではなく、単純に雲やモヤによる写りの悪さだろうと思われます。同時刻に昇ってきた金星もかなり暗かったです。
尾のPA(Position Angle/方向角)が変わってきたようで、だいぶ北に寄ってきましたね。PA=310〜320°あたりでしょうか?10日後には真北を向き、夕空ですばるに接近する頃は北東向き(PA=60°あたり)になる予定です。
案の定、低空は恒星すら弱々しく、PC画面でコントラストを上げても彗星が全く見えません。手間取りつつもどうにか見える恒星配置から彗星位置を絞り込んで撮影開始。メトカーフコンポジットしてやっと彗星像が見えました(左画像)。いやぁ、弱々しい…。撮影機材や条件は毎回ほぼ一緒ですし、最微等級が一晩前より明らかに上がってしまったので、今朝の減光は彗星単独ではなく、単純に雲やモヤによる写りの悪さだろうと思われます。同時刻に昇ってきた金星もかなり暗かったです。
尾のPA(Position Angle/方向角)が変わってきたようで、だいぶ北に寄ってきましたね。PA=310〜320°あたりでしょうか?10日後には真北を向き、夕空ですばるに接近する頃は北東向き(PA=60°あたり)になる予定です。
ひとまわり暗くなったSWAN彗星 ― 2025/04/16
昨夜から今朝にかけて一部雲があったものの、快晴夜でした。風が強かったけれど気温が下がったせいか透明度とシーイングが良く、明け方低空のSWAN彗星(C/2025F2)を観るには最適でした。
左は今日(16日)明け方の撮影。高度8°あたりから20分あまり撮影したところで薄明のため終了。今後は急激に露出可能時間が減ってしまうので、一週間もしたら明け方の観察は無理でしょう。
多くの人が指摘しているように、彗星光度は当初の予報より下回っている印象を受けました。コマ直径が小さくなっています。Spaceweather.com・Mike Olason氏のリポートにありますが、4月4-6日ごろバーストした後に1等ほど暗くなったようです。私が撮影した5日、8日、9日、そして今朝の4枚のなかでは8日が一番大きくて明るく写りました。低空の気象条件でも大きく左右されるけれど、増光の理由がバーストなら今あまり良く見えないのも頷けます。
これから近日点を通過(5月1日)しますので、再バーストの可能性もあるでしょう。期待して観察を続けるのみです。
左は今日(16日)明け方の撮影。高度8°あたりから20分あまり撮影したところで薄明のため終了。今後は急激に露出可能時間が減ってしまうので、一週間もしたら明け方の観察は無理でしょう。
多くの人が指摘しているように、彗星光度は当初の予報より下回っている印象を受けました。コマ直径が小さくなっています。Spaceweather.com・Mike Olason氏のリポートにありますが、4月4-6日ごろバーストした後に1等ほど暗くなったようです。私が撮影した5日、8日、9日、そして今朝の4枚のなかでは8日が一番大きくて明るく写りました。低空の気象条件でも大きく左右されるけれど、増光の理由がバーストなら今あまり良く見えないのも頷けます。
これから近日点を通過(5月1日)しますので、再バーストの可能性もあるでしょう。期待して観察を続けるのみです。