11月3日宵のLemmon彗星2025/11/04

20251103_Lemmon彗星(C/2025 A6)
東京で木枯らし1号が吹いた昨宵、茨城もやや強い風ながらよく晴れて、Lemmon彗星(C/2025 A6)を拝むことができました。

二日前と比べるとイオンテイルがますますダストから離れてしまいました。尾全体の方向角も反時計回りにどんどん増えています。中央付近、イオンテイルがバラバラと分岐している様が素晴らしい。左下は球状星団M12。彗星恒星両止めスタックにすれば美しいのでしょうが、時間がなくて速報仕上げなのでがまんがまん。月明かりの影響が強いので色転びやムラはご容赦を。

3cm双眼ではそらし眼で何とか見える程度。月明かりがなければまだまだ見えると思いますが、昨宵ついに赤緯がマイナスへ入ったため、高度はどんどん下がるでしょう。天気と透明度次第ですが、下弦ごろまで、あと10日間程度は楽しめそうですね。

11月始めのLemmon彗星2025/11/02

20251101Lemmon彗星(C/2025 A6)
昨夕は急に晴れ渡り、急遽二階の窓辺からLemmon彗星(C/2025 A6)を観察。意外に透明度が良く、尾がしっかり写りました。3cm双眼鏡でもすぐ見つけられます。

近くに明るい星が無いから、明るいうちからのホッピングが難しい。昨宵は運良くαBooが見つかったので、αBoo→κSer→αSer→ωSer→彗星とたどれました。そろそろアルクトゥルスが低すぎなので、今後この道は使えませんね。早い段階でラスアルハゲ(αOph)が見つかると良いのだけれど、薄暮中の一等星と二等星は雲泥の差…。

画像左上、イオンテイルの途中に大きなコブがあります。ひとまわり外側まで写してる方の画像では、この先のテイルが激しく乱れていました。イオンテイル・頭部側には、メインストリームと平行な複数の線が見えます。当初は何のアーティファクトかと疑問でしたが、何人もの画像を拝見して皆写ってたので、実体のある構造と思われます。そう言えばまたダストとイオンの向きがずれましたね。10月30-31日あたりに一致してたのは偶然だったのかな?ダストテイルは安定してるようなので、イオンテイルのほうが一時的に曲がりくねったからかな?先端を持たない水道ホースが暴れるような動きを想像してしまった…。

Lemmon彗星とスターリンク・ダンス2025/11/01

20251030Lemmon彗星(C/2025 A6)とスターリンクダンス by NK
秋田の星友NKさんから10月30日に撮影したLemmon彗星(C/2025 A6)の原画が大量に送られてきました。2025年10月27日記事に書いた「日本海からそそり立つ彗星の尾」を狙ってくれたそうですが、残念ながら低空の雲に阻まれたとのこと。

一連の画像を拝見すると面白いことに気付きました。低空撮影のため例のごとくたくさんの衛星コンステレーションが写り込むのですが、明らかに明るい衛星が多かったのです。あ、これは正に「スターリンク・ダンス」じゃないですか。彗星が雲に飲まれるまでの75分あまりに撮影された全画像を比較明合成すると左画像のようになりました(55mm+APS-C)。どこに何が写ってるかは記事下A画像をご覧ください。青い筋はDTC(Direct to Cell)タイプのスターリンクですね。

前出記事を書いたときは気にも留めませんでしたが、「彗星の尾がそそり立つ」→「太陽が彗星の真下にいる」→「彗星周囲がスターリンク・ダンスの発生条件に一致」という図式が成り立ちます。星ナビ2024年3月号にあったようにスターリンク・ダンスの発生条件とは以下の通りです。(※実際に測ってみるとこれより広い範囲で見えてます。)

  • 太陽高度が地平下30°から45°付近にあるときに起きやすい。
  • スターリンクのフラッシュは太陽の上方、45°から50°付近で明るく見える。

20251030Lemmon彗星(C/2025 A6)
NKさんが撮影された秋田県で考えると下B図のようになります(Stellariumによるシミュレーション)。彗星周囲が見事にスターリンク・ダンス位置と被っていることが分かりますね。細かく見るとスターリンク・ダンスの位置は徐々に変化しており、また彗星が低空になるほど明るいフラッシュが彗星近くに見えてます。

雪国では太陽の上下に「ダイヤモンドダストによる太陽柱」(下C画像/wikiコモンズより)が見られますが、これと似た状況なんですよね。衛星の太陽電池パネルやボディがダイヤモンドダストにおける氷片の役割をして、太陽上方に差しかかったときだけ明るく光る(フラッシュ)、言うなれば『宇宙規模の太陽柱』なわけです。彗星だって太陽光によって発光してますから、奇跡のコラボといったら大げさでしょうか。画像を拝見するまでは気付けなかった視点なので、NKさんに深く感謝。

誤解が無いように書いておくと、記事冒頭画像は天の北が右方向です。したがって水平線は左上から右下の向きに広がっていて、画像左下からせり上がってくるようにフレームインしてます。画像を左回りに50°くらい回転すれば上下左右が地平座標と一致するでしょう。合成にあたり、中央を含む同高度の位置の恒星で位置合わせしたので、画像の右上と左下の恒星は大気差で伸びていますね。この伸びてる方向が「上下の向き」。そしてスターリンク・ダンスはこの上下方向に沿って分布しています。彗星位置は総露出75分間の移動に大気差が加わるため、かなり複雑な曲線になっています。10°を下回るような彗星撮影では通常のメトカーフ合成でこの大気差の非線形な動きが相殺し切れないため、うまくいかないことがありますからご注意。

NKさんは雲が多くて失敗だったと嘆いておられましたが、こんな面白画像を拝見できただけでも私は大満足。彗星と太陽が縦並びになるこの日でなければ撮影できなかったでしょう。試写で撮った画像(右上画像)が唯一彗星らしく写ったとのこと。関東人にはなかなかお目にかかれない「海に沈みゆく天体」が拝める環境にあるだけでも羨ましいと思います。ということで、たなぼた的(?)なLemmon彗星とスターリンク・ダンスの競演でした。

  • 20251030Lemmon彗星(C/2025 A6)とスターリンクダンス by NK

    A.Lemmon彗星と
    スターリンク・ダンス
  • スターリンク・ダンスの位置

    B.スターリンク・ダンスの
    位置関係
  • Losvåttån Løkken Verk 2

    C.ダイヤモンドダスト
    による太陽柱(下位)


参考:
石垣島天文台でのスターリンク・ダンス(2024/07/12)
スターリンク・ダンスをとらえる(2024/03/11)

土星も見てね2025/10/31

20251030土星
世間は彗星の話題で持ちきりですが、「土星の環の準消失」まで一ヶ月を切っているのでぜひ見ておきましょう。

左画像は昨夜の土星。宵は晴れていたので彗星撮影後に急いで準備、いざ撮影開始と思った途端雲に覆われてしまいました。30分後にようやく再開、雲を避けつつ障害物競走的な撮影となりました。シーイングは悪かったけれどそこそこ写ってくれたようです。

土星の環の傾斜は10月15日にマイナス1°より小さくなり(土心緯度換算)、昨夜の時点でマイナス0.625°。約二ヶ月前の8月31日と比べると一目瞭然ですね(下A画像)。太陽光は南面に十分当たっているはずですが、見えている面積が小さいため明るいとは感じません。やはり衝のころのほうが明るくて見やすかったです。土星そのものも結構小さくなりました。もちろんカッシニの間隙は全く分かりません。

傾斜が最小になるのは11月24日18時UT(25日3時JST)ごろのマイナス0.368°(下B図)。24日宵に晴れればいいのですが、今年秋の天候不順を考えるとあまり期待できません。環が細くなる様子は当日だけ見ても分からず、途中経過を知らなければ面白味が半減します。彗星観察のついでに5分間でいいですから、土星に望遠鏡を向けて変化を目に焼き付けてください。環の傾斜がマイナス1°より大きくなるのは来年1月2日から。以降、どんどん環が目立つようになり、「いつもの土星」が戻ってくるでしょう。

  • 土星比較

    A.土星の比較
  • 土星の環の傾斜

    B.土星の環の傾斜


20251030Lemmon彗星(C/2025 A6)
時間は遡り、右画像は昨宵のLemmon彗星(C/2025 A6)。白っぽい空でコントラストが出ませんでしたが、それなりに高さがあったためか光害地から16分露出でこれだけ写ってくれました。尾の方向角が45°近辺なので構図に困りますね。あと何回お目にかかれるでしょうか。