台風…じゃないのか!?2017/07/01

20170701-0000衛星画像
2017年7月1日 0:00

20170701-0200衛星画像
2017年7月1日 2:00

20170701-0400衛星画像
2017年7月1日 4:00

20170701-0600衛星画像
2017年7月1日 6:00

7月最初の日。前夜に続き、昨夜から今朝にかけても全国のあちこちで局所的な大雨の様子です。鹿児島県指宿市では2時までに120mmという記録的短時間大雨でした。記事下A図は気象庁サイトの高解像度降水ナウキャストからの引用で、1日1:45の画像。2014年6月下旬の大雨による土砂崩れでJR指宿枕崎線に脱線事故があったことは記憶に新しいところです。

また夜中から朝までの時点では四国南岸や能登半島周辺などにも大雨になっている地方があります。このうち高知県大栃では3:50までの1時間降水量が87.5mm、4:40までの3時間降水量が205.0mmという観測史上最大値を記録しました(いずれも速報値)。

ところで九州の雨が「円形」になっていたので気になって調べたところ、衛星画像を見て驚きました。九州南東部にまるで台風のような丸い雲のかたまりが見えるではありませんか。ここに熱帯低気圧がいることは知っていましたが、少なくとも昨日夜半前までこんなかたまりは見えませんでした。

熱帯低気圧が地上天気図に現れたのは記事下のB図(気象庁サイト/着色等は筆者)に引用した6月29日9:00からです。沖縄の南海上にある中心気圧は1010hPaで、強い雨雲は見えていませんでした。台風のように北上するコースでしたが、もう温帯地域に入ってきたこともあり梅雨前線に取り込まれて終わるだろうと思っていました。

右画像は0時から6時まで2時間おきの気象衛星ひまわり画像(バンド7/画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。数時間で急速に発達した様子が見て取れます。小規模なものは何度も見たことありますが、こんな大きくもなるのですね。強くは無いけれど渦を巻いているような流線が外周付近に見えます。全体の直径はおよそ500kmと言ったところでしょうか。台風は雨量でなく最大風速によって定義されるものだから、こういった雨を降らす低気圧は台風に入らないのも分かりますが、防災の観点からは区別すべきじゃありませんね。

この熱帯低気圧とは関係ないけれど、0時の画像では室戸岬付近にテーパリングクラウド(にんじん状の雨雲帯)も見えています。一昨日に壱岐島に大雨を降らせたものと同じ状況ですね。幸い強まったのは一時的で長時間滞留することはなかったようですが、冒頭に書いたとおりこの地域の雨量はかなりのものでした。

梅雨も折り返しとなりますが、まだまだ雨が降りそうです。と言っても、今のところ西日本が中心のようで、東日本では雨不足が目立ってきました。なんだかバランス悪いですねぇ…。

  • 20170701-0145降雨

    (A) 2017年7月1日1:45の降雨
  • 20170629-0900地上天気図

    (B) 2017年6月29日9:00 地上天気図

参考:
アーカイブ:記録的短時間大雨情報のリスト

梅雨の束の間に月と木星を見る2017/07/01

20170701月面X
7月初日も小雨の降りしきる一日。この分では今夜も収穫無しか…そう思っていましたが、夕方に空を見ると、南の一角だけ青空が顔をのぞかせ、夕焼けに染まる巻雲越しに上弦の月が見えるではありませんか。今夕は確か月面Xが見えるはず。天気が宵まで持ってくれれば見ることができるでしょう。さっそく望遠鏡を組み立てて待つことにしました。

西・北・東はどんよりとした雲が垂れ込めていましたが、月が見える辺りは日が暮れても何とか晴れていました。西の雲はだんだん南にせり出してきたので、撮影可能な時間になったら夢中でシャッターを切りました。月面Xの状況など考慮する余裕はありません。

左は19:10過ぎの撮影で、太陽黄経差94.50°、撮影高度48°、月齢7.32です。日没から10分しか経ってないのでまだ空は明るいのですが、画像処理で背景を暗く落としています。月面上のX地形から見た太陽は地平に対して約-0.6°の方向(つまり水平よりわずかに下側)にあって、地形を照らし始めていた計算になります。太陽が-1.0°より高ければX地形のほとんどが照らされて見えてくるので、この画像でもはっきり写っていますね。ただし淡い雲越しなので、元画像はかなりコントラストが悪くなりました。晴れただけでもラッキーでしょうけれど…。今年は月面Xイヤーとでも言えるくらいチャンスが多いのですが、天候不順でなかなか観察できませんでした。まさか、梅雨のこの時期に見えるとは!

20170701月と木星
見ると、月のすぐ南側に木星が輝き出していました。月中心との離角は2°弱とかなり近く、晴れていたらみんな注目するだろうなと思いました。右画像は望遠鏡を小さいものに換えて撮影した月と木星。きれいに画角に収まってくれました。繰り返しになりますが、まだ空は明るい状態です。

衛星も写るだろうかと露出オーバー気味に撮った画像を後から処理してみると、微かですが四大衛星全てが写っていました。左下は元画像を等倍で切り出したもの。

20170701木星の衛星
さすがに衛星に露出を合わせると青空であることがバレますね。イオは木星のすぐ側で、タイミングギリギリでした。1時間後だったら木星に隠れてしまったでしょう。もっとも、1時間後には小雨がぱらつき始めましたけど…。

梅雨期間ですからなかなか晴れませんが、思わぬタイミングで束の間の天体ショーを楽しむことができ、幸せな気持ちでいっぱい。次の月面Xデーは8月29日です。

参考:
アーカイブ:月面Xの一覧

2017年の半夏生、台風発生2017/07/02


【半夏生の日時】
  • 各年での太陽黄経が100度になった瞬間の日時です。
  • 下表は自作プログラムによります。公的発表値とは時刻が最大数分程度異なる場合があります。
日時夏至との
日差
2015年7/2(木)  13:2010日
2016年7/1(金)  19:1510日
2017年7/2(日)  00:5811日
2018年7/2(月)  06:5011日
2019年7/2(火)  12:3210日
2020年7/1(水)  18:2110日
2021年7/2(金)  00:1611日
2022年7/2(土)  05:4911日
2023年7/2(日)  11:3810日
2024年7/1(月)  17:3310日
2025年7/1(火)  23:1510日
2026年7/2(木)  05:0611日
2027年7/2(金)  10:5011日
2028年7/1(土)  16:3810日
2029年7/1(日)  22:3210日
2030年7/2(火)  04:0811日
2017年の雑節のひとつ、半夏生(はんげしょう)を迎えました。天文学的には「地球から見た太陽が、原点である春分(黄経0°)から出発して黄経100°に到達した日」。去年は7月1日でしたが、今年は2日です。

右に2015年の半夏生の記事に掲載した表を再掲載しましたが、年ごとに日付や時間が変わります。ずれてしまう大きな要因は人が作った「うるう日」というシステムであるわけですが、複雑な自然の周期を暦というデジタルに押し込めた時点で、様々なずれが生じるのは当たり前と言えば当たり前ですね。

ハンゲショウの群落
当地・茨城は今日もパッとしない空模様。でもこういった気候は植物のハンゲショウにとってありがたいのでしょう。ハンゲショウは「一輪咲いている」タイプの植物ではなく、左画像のように薄暗い適度な湿地で群落を作ることが多いのです。葉に白い斑が入っているため、日陰でも明るく見えてしまうところが面白いですね。

空模様を見てみましょう。左下画像は昨日7月初日12時の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。良く見ると、ABCというマーカー近くの赤点丸の位置に渦が見えます。Aは昨日の記事で取り上げた、九州・四国に大雨を降らせた熱帯低気圧。Bは太平洋上にある低気圧。そしてCは昨夜気象庁から「台風になる可能性がある」と発表があった熱帯低気圧です。2日9時の時点ではかなりしっかりした渦になってきました。(※台風になりました→記事末参照。)

20170701-1200気象衛星画像
台風1号の発生が観測史上二番目に遅かった2016年は、その発生日が7月3日でした。今年は6月までに既に2つ発生していますが、いずれも日本に雨をもたらすものではありませんでした。

現時点で西日本を中心にしっかりした降雨が度々ありますが、関東をみるかぎり全般的に降水不足です。関東の水がめであるダムも貯水率80%前後。これから梅雨が明けて暑くなるので、潤沢とは言えないでしょう。右は当ブログ基点・茨城県つくば市のアメダスポイントデータによる6月末までの積算降水量グラフ。

2017年つくば市・積算降水量
平年値と比べて2ヶ月分くらい足りないですね。みなさんのところはいかがでしょうか?曇りが多いのに雨はたいして降ってない、という状況に陥ってないでしょうか?

あれこれ贅沢は言わないから、せめてハンゲショウも人間も、もちろん他の動植物も適度に潤うような気候であってほしいですね。

20170702-0900台風3号
【10:30追記】
上記の熱帯低気圧は本日9:00に台風3号「NANMADOL」になりました。ひとつ前の台風2号発生から20日18時間後、消滅からは19日後の発生となります。NANMADOL(ナンマドル/ナン・マトール)はポンペイ島にある遺跡の名ですね。

左は9:00の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。画像上端から中央に向かって九州南部や南西諸島が見えます。赤点円は台風中心の直径1000km円。現在北西に向かって進んでいます。気象庁の予報によれば3日には先島諸島、4日から5日にかけて九州や本州に接近する見込みとのことです。1日から2日にかけて大雨だった地域に接近・上陸する可能性も高いので、十分ご注意ください。

参考:
アーカイブ:茨城県つくば市の気象傾向(2013年−2016年)

今日の太陽2017/07/02

20170702太陽
午後になって日差しが出てきました。と言ってもぼんやり広がった雲越しですが…とにかく久しぶりに太陽観察ができると思い、機材をセットしました。6月24日以来ですから、実に8日ぶり。その間まったく晴れなかったわけではありませんが、観測可能な時間はいつも曇りか雨でした。

20170702太陽リム
左は14:10過ぎの撮影。8日前に見た太陽面の領域はもう西の縁へ追いやられ、辛うじて活動領域12664が確認できます。中央左上には立派なダークフィラメントが見えますね。他に活動領域は無さそうです。プロミネンスは右上に小さなものがちょっと見える程度。二日後には地球が遠日点に到達し、今年の中では太陽が最も遠くなります。果たして晴れるかな?