長崎に上陸した台風3号2017/07/04


20170704-0900台風3号
台風3号「NANMADOL」は本日8時ごろ長崎に上陸しました。明日朝までに本州南部に沿って東に進む見込みとのことです。

左は9:00の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。赤点円は台風中心の直径1000km円。活発な活動を見せる梅雨前線と共に日本の大部分を雲が覆っていますね。台風に覆われた九州・四国や、前線が横切る北陸・東北南部にかけて大雨になっているところがあります。

降水量10日間合計(2017/7/3)
右図(気象庁サイトから引用)のように、この10日間合計で200mm以上の雨を記録した地域が、更に追加の大雨に襲われている事態なのです。お近くのみなさん、どうか気を付けてお過ごしください。

太陽面の「向き」のお話し2017/07/04

2017日面中央緯度

(A) 2017年・日面中央緯度

2017日面中央経度

(B) 2017年・日面中央経度

2017日面方向角

(C) 2017年・日面方向角
今日は地球が遠日点を通過する日。2017年のなかでは太陽からもっとも遠ざかり、太陽が小さく見える日です。毎年この日に近日点通過日(太陽にもっとも近い日・今年は1月4日)との太陽比較をするのですが、あいにく台風接近中で全く晴れそうにありません。そこで、太陽に関する別のお話をしましょう。

ご存じのように太陽は丸く見え、黒点が見えていれば数日間表面を観察するだけで位置を変えることが分かります。地球同様に「自転」しているのですね。ただ、地球上の固い地形が自転する「剛体回転」と違って、太陽はガスのかたまりです。詳しく観察すると黒点の場所によって移動速度が異なることが分かります。(※微分回転とか差動回転と言います。)中学や高校の理科、あるいは天文クラブなどで継続黒点観察をした経験がある方は実感できるでしょう。当サイトで頻繁に掲載している太陽画像でもうかがい知ることができますよ。

太陽自転を調べるには黒点位置を記述する何らかの方法を考えなくてはいけません。ところが目印など何も無い太陽で正確な位置を定義することは、実を言うとなかなか難しい問題です。今でこそ自転周期や自転軸の傾き、その変化が分かっていますが、全く知らない状態から調べるのはとても大変でしょう。海のど真ん中で漂流する小舟を追うような話だからです。

右に並んでいる図は現在分かっている太陽自転をもとに数式を立てて描いた2017年のグラフ。太陽の向き、つまり太陽面に定めた座標や自転軸が地球から見てどんなふうに見えるかは、「太陽中央の緯度と経度、自転軸と天の北極方向とがなす角」という3つの角度で示すことが通例です。(→参考:国立天文台サイト「太陽の自転軸」。)便宜上の緯度経度を設定し、それを使って黒点の場所を記録すれば、位置の変化を追ったり他の黒点との相対関係が分かりますね。言うまでもありませんが、緯度経度が0°の地点に何かがある訳ではないのです。地球上の地物と決定的に違うのは「黒点やフレアの位置は動く」ということ。ひょっこりひょうたん島みたいな感じです(古っ!)。

太陽の自転軸は地球の軌道面に垂直ではなく、7°あまり傾いています。このため1年周期で太陽北極側が地球側に傾いたり(中央緯度がプラス)、太陽南極側が地球側に傾いて(中央緯度がマイナス)見えます。A図はそれを表しています。いっぽう自転は地球から見て約27日周期なので、中央経度はこの周期で0°から360°まで変化します。B図を見ると中央経度が減る回転ですから、自転軸の北を上にすると左側から右側へ回って見えます。C図の角度は少しややこしいですが、赤道座標系に対して自転軸がどれだけ傾いているか、ということです。ブラスマイナス26°あまりの振れ幅ですが、大きな原因として地球の自転軸が23°あまり傾いていることが挙げられるでしょう。3つの図のうちB図は毎年変わりますが、他の2つは小さな変化です。

見た目にどれくらい違いがあるか、中央緯度を例に見てみましょう。昨年2016年の例ですが、プラスマイナスのピーク近くで撮影した3月6日と9月7日の太陽像に、経度緯度を描いて下に掲載しました。私のブログでは特に断りがない限り太陽画像の自転軸を上下方向に揃えています。このためNと書いてある赤線方向が天の北方向になります。(※C図とプラスマイナスの方向が逆転するのでご注意。)また中央の青い+印は太陽中央。+印の目盛を読むと当日の中央緯度経度になっています。

「つるっとして目印が無いもの」に基準を定める小難しさを少し感じていただけたでしょうか?ひとくちに自転と言っても実体は様々。表面の模様の変化に留まらず、例えば木星のように表層と内部(磁場)とで自転周期が異なる天体もあります。天体のみならず、社会とか、人の心とか、あらゆる場面が漠然として、目印がありませんね。そんなとき、みなさんだったらどのような方法で「基準と向き」を定めてゆきますか?

  • 20160306太陽

    (D) 2016年3月6日の太陽
  • 20160907太陽

    (E) 2016年9月7日の太陽