急に暖かくなった夜に超新星と彗星観察2018/03/14

昨夜から今朝にかけてよく晴れましたので、夜半過ぎより超新星ふたつと彗星をひとつ撮影しました。前夜より若干透明度が良かったものの、気温が6度前後もあって、冷やしていないカメラではノイズが倍増です。2018zdは操作ミスで銀河を写野中心から外してしまいました。辛うじて写野内にいてくれて良かった…。

いずれの天体も微小な変化がありますが、光度は概ね現状維持でした。パンスターズ彗星(C/2016 N6)はやっと天の北から離れつつあり、ゆっくりと南下を始めています。

  • 20180314_2018zd in NGC2146

    2018zd in NGC2146
  • 20180314_2018aaz in NGC3158

    2018aaz in NGC3158
  • 20180314_パンスターズ彗星(C/2016N6)

    パンスターズ彗星(C/2016 N6)


今日の太陽2018/03/14

20180314太陽
朝からよく晴れています。昼頃からは風が出てきました。今日明日はたくさんのスギ花粉が飛ぶとの予報ですが、午前中観察した限りでは花粉光環は見えませんでした。

左画像は10時少し前の太陽。昨日同様、活動領域やプロミネンスは見えませんでした。よくよく見ると左上リム近くにダークフィラメントが出ていますが弱々しい…。リム画像は割愛しました。

そろそろ終末に差しかかる第24太陽周期2018/03/14

第24太陽周期の日々黒点数
人間社会のみならず地球環境に多大な影響を与える太陽。その太陽活動に「周期性」があるというお話しを聞いたことがあるでしょうか?主に黒点の増減に代表される活動状態の変化は、全体として約11年の大きな波を描くというものです。詳しい方なら、過去には黒点数が長期間減少した時期が何度も存在し、地球が大規模な寒冷気候に見舞われたこともご存じでしょう。太陽活動を知ることは私たちの未来を予測する上でとても重要なことです。

1600年初頭にガリレオ・ガリレイ、クリストフ・シャイナー、ダーヴィト・ファブリツィウスといった天文学者によって黒点が発見されて以降、日々の観測データがいくつかの天文台に蓄積されるようになります。1755年からはおよそ11年ごとに現れる極小を境界として「第1太陽周期」「第2太陽周期」…と番号が付けられました。日本で初めて黒点を観測したといわれる国友一貫斎は第8太陽周期の黒点スケッチを残していたことになります。現在私たちが見ている太陽は第24太陽周期の終盤です。左上はSILSO(Sunspot Index and Long-term Solar Observations:ベルギー王立天文台)のデータによる2015年年始から今年2018年1月末までの日々の黒点数。全体的に右下がりであることが分かるでしょうか。

ところで正確な周期を知るには「太陽活動の開始」あるいは「黒点数の極小」を統計的に決める必要がありますが、これがまた一筋縄ではいきません。図鑑や専門書、あるいは天文台のWeb解説などを調べてみてください。先日Wikipediaにどう書かれているか閲覧したら、妙な事態でした。記事末の表は日本語で書かれたWikipedia、英文のWikipedia、およびNOAAの資料による3つのソースを書き出したもの(2018年3月頭現在)。一致している年月もあれば、バラバラの年もあります。これはいったいどういうこと?「Wikiが正確だなんて保証はない」「必ず複数ソースを確認しなさいって言ったでしょ」なんていう忠告説教はどうでも良くて、なぜ異なる結果が複数存在するかという追求こそが重要です。

第24太陽周期・そろそろ終末期
調べを進めると、「平滑化」という問題に突き当たりました。「平滑化」とは、左上グラフのような細かい増減のあるデータに対して「大雑把にはどういう傾向か」を見るための方法です。大学で社会経済や生物の動向統計などを勉強した方なら必ず習ったでしょう。天気予報でよく聞く「平年値」なども平滑化されたデータのことですね。太陽黒点の統計は月毎にまとめる習わしですが、それでも凸凹が大きい。そこで、数学的に厳密なルールに基づく平滑化計算を施します。するとグラフが滑らかになって、極小極大が見つけやすくなるのです。

右図は前出グラフを月集計に直した後、いくつかの平滑化手法で均したもの(※2014年から描いてあります)。方法についての話は避けますが、「こうやって極小を見つける」「平滑化の方法によって結果が微妙に異なる」ということを理解していただければと思います。下表で時期が異なるケースは「採用した平滑化の方法が異なる」ことと「平滑化しても極小が決めにくい時期(黒点数変化が乏しい時期)」というふたつの不運が重なった結果と思われます。またWikiの値はSILSOの観測値、NOAAの値はNOAAの観測値を元データとしているため、大元からして異なります。

これ以上の解説は小難しくなるので、別途アーカイブに収めました。ご興味ある方は参考にしてください。(※アーカイブ・太陽黒点のメニューからたどってください。)そうした上で、みなさんご自身が「どの情報ソースを信頼するか」を決めるべきだと思います。名の通った情報源だからと盲信しないようにしましょう。

あらためて右上図を見ると、もう数年で…東京オリンピック前後に極小期がやってきそうな気配。寒くなるでしょうか?それともバタフライ効果的な気象変化で、逆に暑くなるでしょうか?折に触れて気にしておきましょう。異常気象の原因が必ず地球由来とは限らないですから。

【太陽周期の境界(極小時期)・情報ソースによりバラバラな件】
周期Wikipedia
(日本語)
Wikipedia
(英語)
NOAA
第1太陽周期1755年3月1755年2月1755年2月
第2太陽周期1766年6月1766年6月1766年6月
第3太陽周期1775年6月1775年6月1775年6月
第4太陽周期1784年9月1784年9月1784年8月
第5太陽周期1798年5月1798年4月1798年3月
第6太陽周期1810年12月1810年8月1810年7月
第7太陽周期1823年5月1823年5月1823年3月
第8太陽周期1833年11月1833年11月1833年10月
第9太陽周期1843年7月1843年7月1843年6月
第10太陽周期1855年12月1855年12月1855年12月
第11太陽周期1867年3月1867年3月1867年2月
第12太陽周期1878年12月1878年12月1878年10月
第13太陽周期1890年3月1890年3月1889年7月
第14太陽周期1902年2月1902年1月1901年8月
第15太陽周期1913年8月1913年7月1913年7月
第16太陽周期1923年8月1923年8月1923年7月
第17太陽周期1933年9月1933年9月1933年9月
第18太陽周期1944年2月1944年2月1944年2月
第19太陽周期1954年4月1954年4月1954年3月
第20太陽周期1964年10月1964年10月1964年10月
第21太陽周期1976年6月1976年3月1976年6月
第22太陽周期1986年9月1986年9月1986年9月
第23太陽周期1996年5月1996年8月1996年10月
第24太陽周期2008年12月2008年12月2008年10月