土星と地球のツーショット探しに苦労する2024/09/01

202408土星と地球のツーショット1
2024年8月21日記事で、気象衛星ひまわりが金星と地球のツーショットをとらえる時期が始まったとお伝えしました。すると早速、この手の話題に詳しい古くからの星仲間Fさんから「土星はいませんか?」と問い合わせがありました。そうなんです、星図ソフトなどでご覧頂くと分かりますが、土星の赤緯も今年春からプラスマイナス8°の範囲に入っており、ひまわりから見ると地球に掩蔽される位置になっているのです。

ツーショットの計算自体は去年終えていました。まもなく衝を迎えますし、Fさんからの激を頂いたので、これを機に意を決して探してみました。そうして見つけたのが左画像および右下画像(元画像:NICT/画像処理は筆者)。それぞれ3シーンをコンポジットしています。とにかく暗いため、輝度レベルおよび背景レベルをかなり上げてあります。美しい地球が台無しですがご容赦を。また左上画像は地球の影側になって宇宙との境界が分かり辛いため、特殊な処理を施してあります(地球境界と書いてある部分)。下手にリサイズすると潰れますから、原画等倍の大きな画像で掲載します。

とにかく暗い!というのが印象でした。月や金星のようにNICTのサイトをひと目見たら分かるというものではありません。また、意外にもひまわり画像の宇宙部分にはそれなりにノイズがあります。だからノイズレベルとあまり変わらない暗い天体を「ノイズではなく該当天体だ」と言い切るには根拠が必要です。たとえば予測位置とほぼ変わらないとか、複数例から惑星の移動に沿った動きであることが分かる等々。この点、偶然最初に見つけた8月16-20日の例はラッキーでした。赤緯が徐々に南下してる様子がバッチリ写っていたからです。もちろん予測位置通りでした。8月29日11:50の画像のみ環のようなものが写って見えます。本物なのかどうか、他に実例が無いので今のところ不明。

202408土星と地球のツーショット2
この暗さ故にいままで探し渋っていました。みなさんご存知のように土星は全等級が0等前後と言われる割に単位面積あたりの輝度がかなり低いですね。しかも2018年4月18日記事の軌道図を見ると分かるように、今はどちらかと言うと遠日点寄りにいますから、衝の時期でもマイナス等級に届きません。(図の地球の春分点方向から反時計回りに約93°回った方向が土星の近日点、その180°反対が遠日点方向。)しかも環が寝ていますから、ますます等級が低めです。

位置計算プログラムも精度を上げるため改良を施しました。現在のひまわり8・9号による全球画像は10分おきに撮影公開されていますが、10分おきにパシャッと一枚撮ってるわけじゃありません。16バンドの波長撮り分けが必要ですし、一回で全球をカバーできないため、下A図に示したように23回に分割撮影し、帯状に撮って組み合わせいてるのです。ですから北極付近と南極付近で撮影した実時間が変わってしまい、それに応じて遠方の天体の位置も変わってしまいます。これをプログラムに組み込まなければなりませんでした。撮影がわずか数秒遅れるだけで1ピクセルずれますから、1、2分の差でも位置算出として致命的です。なお8月下旬は21番目のベルトにいました。9月初旬から22番目、9月末頃から23番目に移ります。

金星とのツーショット記事のときと同様に土星の赤緯変化を見てみましょう。下B図は2012年から2025年までの変化。金星では位相角を一緒にしましたが、土星はあまり位相が変わりませんから代わりに視直径を示しました。赤緯がプラスマイナス8°のレモン色部分に入ると、ひまわりから見た土星は確実に地球に掩蔽されます。今年以降はしばらく入りそうですね。今期の前は2012年ごろまで入っていたようですが、このころはまだ現在のひまわりが打ち上げられる前でした。

もっと範囲を広げたのが下C図。1980年から2059年まで描いてます。これを見ると15年ごとに約4年程度は天の赤道に近くなる様子がわかりますね。土星の環が水平になるシーズンとだいたい被っています。最も明るくなるであろう土星近日通過(2032年11月29日0:34JSTごろ)前後は全く掩蔽されない期間になり、悲しい限り。2028年には今期が終了、その次は2038年ごろからです。でももう現行のひまわりはなくなっているのでしょう。次期観測機となるひまわり10号(仮)の打ち上げ予定は2028-2029年ごろだそうですから、そのころまで土星とのツーショットは楽しめそうです。

  • ひまわりの撮影スキャンライン

    A.撮影スキャンライン
  • 2012-2025・土星赤緯

    B.2012-2025年の土星赤緯
  • 1980-2059・土星赤緯

    C.1980-2059年の土星赤緯


2024年の台風11号が発生2024/09/02


20240901-2100JST台風11号
気象庁によると、1日9時から台風になるかも知れないと告知されていた熱帯低気圧が同日21時に台風11号「ヤギ/YAGI」になりました。直前の台風10号発生から10日と18時間後の発生、10号消滅から9時間後の発生になります。

左は11号発生時である1日21:00の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。夜のため赤外バンドによる白黒画像です。赤点線円は台風中心の直径1000km円。予報によれば11号はルソン島を回り込むように北進から西進に変わり、そのまま大陸へ向かうようです。日本に影響は無さそうですが、立て続けの台風でアジア域の緊張が解けませんね。

台風名のヤギは星座名の「やぎ座」のこと。偶然ながら初秋にふさわしい?前回は2018年14号に使われました。また星座名としては2023年14号の「コイヌ」以来です。

奇跡的に見えた水平月2024/09/02

20240902水平月
不安定な天気が続く中、奇跡的に水平月を拝むことができました。

昨夜は雷が轟き、時折小雨が降る天気。雷鳴は夜半過ぎまで聞こえ、明け方の天気は絶望的に思えました。ところが2時ごろから静かになったので外を見ると晴れ間が広がっており、昇るオリオン座や木星などが見えているではありませんか。時々雲の団体が空を覆うものの、ひょっとしたら雲間の月を捉まえられるかも知れません。急きょ望遠鏡をセットしました。

月が隣家の屋根から顔を出す1時間前に周囲の星を使って「月が見えるであろう位置」に鏡筒を向けておきました。薄明が明るくなってもしつこい雲が月のあるあたりに滞留していたものの、時間になったのでふとモニターを見たらクッキリとした月が!肉眼では薄雲が邪魔で良く見えなかったのに望遠鏡はしっかり集光してくれたのです。先行して昇っていた水星は良く見えましたが、月はたまに目の端に引っかかる程度。本当に見つけ難い細さです。

左上画像はカメラの水準器で水平を出しています。朝焼けが極く淡い縦縞になっていることに気付いた方、鋭い観察眼ですね。このときたくさんの反薄明光線が空を覆っていました。太陽は月の真下ですから、月の背景は垂直方向の反薄明光線になるわけです。

下A・B画像はクレーター位置を頼りに画像水平を月撮影時の水平に合わせてあります。撮影画像のコントラストが弱過ぎて背景などにスタックムラがありますがご容赦を。こちらは4:42頃の撮影で、太陽黄経差は約346.07°、撮影高度は約6.88°、月齢は28.35、当地での弦傾斜は約マイナス1.81°(わずかに右下がり)でした。2024年7月29日記事に掲載した通り、本州南部や四国、中国地方あたりで完全な水平月、それ以南では逆転月になったはずです。

これをもって7年ほど続いた明け方の水平月シーズンは終了。2025年ごろから始まる夕方の水平月シーズンまでしばしお待ちください。

  • 20240902水平月

    A.9月2日朝の月面拡大
  • 20240902水平月

    B.9月2日朝の月面拡大(マーカー入り)


今日の太陽2024/09/02

20240902太陽
朝のうち雲が残ったものの、次第に青空が多くなりました。久しぶりの太陽です。ただ風が強くて洗濯が外に干せません。しばらく雲が多くて気温も低めでしたが、一週間ぶりに熱中症警戒アラートが出ました。暑い、暑い。

20240902太陽リム
左は10:40ごろの太陽。だいぶ動いてしまいました。中央右下のツインが13807、左下の細かく広がってるところは13806。左下リム近くに出てきた13811に続き、新たな黒点+プラージュから何か吹き出してます。かっこいいですねぇ。北極付近も植毛したみたいにフサフサですよ。

20240902幻日
【追記】夕方ベランダから太陽左の幻日が見えました。雲が少なかったので短時間で消えてしまいました…。