アーカイブ:月面の観察1971/02/01


月面地形
月は地球を回る唯一の天然衛星。比較的近くて大きいため、双眼鏡や小型望遠鏡で表面を観察することができます。昼間でさえ確認できる月面の様々な地形は、観察日時によって陰影が変わり飽きることがありません。地上の天気や風景、私たち自身のコンディションも移ろいますから、一度として同じ光景に出逢うことはないでしょう。まさに一期一会の天体です。

見どころの紹介や観察の仕方などは諸先輩が積み上げた優良サイト・ガイドブックに勝るものはありません。このアーカイブでは観察を補うデータやファインディングチャートなどを提供します。うまく組み合わせて使ってください。また日々のブログ記事にも私自身の観察リポートや考察/解説記事がありますので、併せてご利用ください。


《アーカイブ「月面の観察」概要》

このアーカイブには以下のサブメニューがあります。今後少しずつ拡充予定です。(※2019年7月現在、今までの月面地形関連コンテンツを統廃合中です。当面のあいだ予告なく記事削除やリンク変更をすることがありますのでご容赦ください。)



《地形の日照と観察のしやすさ》

月面の日照比較
月面の観察の面白味はVRさながらに「地形が立体的に感じる」ところではないでしょうか。ですが、この体験を最大限楽しむには観察日時が重要になります。行き当たりばったりで「今日は何が見えるかな?」という方針なら問題ありませんが、見たい地形が決まっているとき…例えば「月面Xを見たい」と思ったとき、観察日時を絞り込まず偶然に頼っていては一生かかってしまうかも知れません。

見たい地形を特定して観察を試みるとき、デコボコがはっきり見えるかどうかを左右するのは「月が空に登っているか」だけでなく、「対象地形に日が差しているか」「しっかりした陰影ができているタイミングか」が重要です。例えば月の西側にあるコペルニクス・クレーターや虹の入り江は、上弦前に見ることはできないし、満月前後は光って見えても影がなく、のっぺりしてしまうでしょう。1日違うだけでもずいぶん見栄えが違います(右画像参照)。鋭い人なら1時間でも陰影の変化が分かるんですよ。

そこで、いくつかの観察地形について日が差す日時/差さなくなる日時を計算できる機能を用意しました。それがユーティリティ「月面地形の日照カレンダー」です。

数年間みっちり月面観察すれば地形の配置が頭の中に出来上がり、ベストタイミングを体が覚えてくれます。でも、そこに至る前に挫折する方も多いと聞きます。どんなに詳しい月面図を眺めても、いつ見たら良いかは分かりません。そんなときは「月面地形の日照カレンダー」を参考にしてください。観察初心者が中堅レベルに成長するお手伝いをするのが当ブログの大きな目的です。


《観察地形の計算基点》

観察地形が適切に見えるかどうかは、「月面の観察地形に立ったとき、太陽が見えるか否か」「太陽高度はどれくらいか」と言う計算に帰着します。月面での日出没計算をする場合、大きなクレーターや山脈など面積のある地形では具体的な基点を定める必要があるでしょう。当アーカイブでは以下を基本に代表点を定めています。

  • 上弦と下弦の両方で見える場合は中心付近を代表点とする。…ほとんどの地形はこちらのケース。
  • 上弦か下弦か片方のみで見える地形は、その地形内で太陽の対面側(上弦なら西側/下弦なら東側)の適切な最高地点(最初に日が当たると考えられる地点)を代表点とする。…月面Xなどの文字地形は日照方向に依存するのでこちらのケースになる。
  • 極小クレーターや宇宙船着陸地などはNASAやIAUなどが公的に定める特定点とする。
  • あまりにも広い地形が対象の場合は分割して考える。…広い海や長い山脈など。

例えば地球で「○月△日、世界各国の日出時刻」を計算するとき、各国の『代表点の決め方』を最初に定める必要があるのと同じ理屈です。一国内ですらばらつきが出ますから、「日本の日出時刻」等とひとくくりに決まるわけではありません。首都で計算するのか、最高峰のてっぺんが良いか、標準時子午線上にするか、それとも東に突き出た岬に設定するのか、という議論になるでしょう。場所にかかわらず計算は可能ですから、本質的には「一意に決まるならどんなルールでも良い」のです。

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