虹継続のギネス記録と低い虹のこと2018/03/19

20160802低い虹
天気雨の空に高く架かる虹のアーチを「橋」に例えることがあります。では「地面にくっつきそうな低い虹」をご覧になったことはありますか?それはどれくらい低かったでしょうか?主虹頭頂が10度を下回るようなものを見た私の経験は、片手で数えるくらいしかありません。

左画像は星仲間のdocanさんが2016年8月2日朝に撮影した低い虹。景色に重なって、なんとも幻想的。山のすぐ上の空には副虹も見えています。右下は主虹左側の拡大。良く見ると虹が大木の手前を通っています。この虹を作る雨粒が、山や木々より手前にあると言うことですね。

20160802低い虹
この画像が撮影されたとき太陽高度は36°あまり。太陽高度から主虹半径(=約42°)を引くと撮影時の主虹頭頂高度が計算できます。上画像の主虹は最高高度が6°程度という結果ですね。もう30分も経てば太陽は高くなり虹は低くなって、太陽高度が主虹半径に一致すると主虹は地平線上に見えなくなります。…理屈では。

一昨日17日、台北にある中国文化大学(Chinese Culture University/CCU)で「連続虹記録8時間58分」という記録のギネス認定式が行われたそうです。この記録は2017年11月30日6:57から15:55に撮影されたもの。なんという長時間でしょうか。幸運にも一日中お天気雨が続いたと言うことですが、気象面だけでは説明が付きません。前述したように、太陽高度がある程度高くなると主虹は水平より下がってしまうからです。つまり、この記録は高い山に建っている大学から「見下ろす」ことでしか叶えられないことでした。

下のグラフは今年2018年を例に、自作プログラムで太陽の出入りや高度から「昼の時間」と「主虹可視時間」を計算したもの。場所は当ブログ基準の茨城県つくば市と、北海道札幌市、沖縄県那覇市、それに、ギネス記録を出したCCUの四ヶ所。ここで言う可視時間とは「主虹頭頂高度が地平より高い」という意味です。ご覧いただくと分かるように、一年のうちお正月を挟む冬期(太陽の南中高度が主虹半径より低い時期)は、日中いつでも虹が地平より上に見える可能性があります。でも春から秋は急に可視時間が減ってしまいますね。これは「日の出から主虹半径に達するまでの時間が短い」ことを意味します。なかなか頭では理解し辛いのですが、「夏場はあっと言う間に太陽が高い所にいる」という実体験をしている方は感覚的に分かるのではないでしょうか。

  • 主虹可視時間・札幌

    A.札幌
  • 主虹可視時間・つくば

    B.つくば
  • 主虹可視時間・那覇

    C.那覇
  • 主虹可視時間・台北

    D.台北

見つけ易さ、撮影チャンスの多さから言えば、なるべく地平より上にあったほうが良いので、緯度が高い(=太陽高度が低い時間が長い)ほど有利と言えるでしょう。CCUの記録更新までギネス1位だったイギリス・シェフィールドの観測は北海道よりずっと北、北緯約53.5°で1994年3月14日の6時間連続でした。CCUのグラフを見るとギネス記録を出した11月30日は主虹が地平線下になる時間が1時間程度と短かったことが幸いしたと考えられます。もしこれが夏だったら虹が下がりすぎて視界から消えてしまったり、俯角が大きすぎて雨粒密度が低くなり虹が途切れる可能性が高かったでしょう。観察立地条件にもよりますが、一般には「昼の時間が長い=虹が長時間見やすい」とは言えません。

一連のことは、全く関連がないように思える当ブログ記事「虹星カペラと星の瞬き」part[2]に関係しています。記事内で「恒星高度・滞空時間・緯度」の関係を述べていますが、恒星を太陽に置き換えて考えれば、今回の虹高度の理屈と同様になるでしょう。ご興味ある方はぜひお読みください。ところで……地平より低い虹は何に例えたら良いのでしょうね?

【参考】
ギネス記録が出た当日の気象庁による地上天気図(E図)、および、西日本から台湾にかけての気象衛星ひまわり画像(F画像/画像元:RAMMB/Natural Color処理・地図等は筆者)を掲載しておきます。

  • 20171130-0900JST天気図

    E.9:00JST  天気図
  • 20171130-1200JST気象衛星

    F.12:00JST  気象衛星