スターキャッチ★2025/06/26

スターキャッチコンテスト
映画「この夏の星を見る」のモデルケースで時の人となった岡村典夫さんとスターキャッチコンテストの話があちこちで話題のようです。

岡村さんと私は同郷・同世代。それぞれ本業の傍ら地元で長きに渡り天文普及活動をしてきました。狭く深い活動タイプ私とは対照的に、広く深い岡村さん。ご本人の情熱に加えて多くのコネクションを持ち、一を尋ねたら十の回答が返ってくるアイディアマンでもあります。氏については今更私が語るまでもないでしょうか。

駅前太陽観察会
右画像は地元茨城の某駅前広場で開催された高校生による昼間の太陽観察会。左下画像はそのとき岡村さんが持参した「投影型太陽望遠鏡」。反射鏡1枚と追尾用架台で成り立っています。遠方ビルの壁に投影することでちゃんと円形の太陽や黒点を“みんなで一斉に”観察できます。「反射式ピンホールカメラ」と言える原理ですね。追尾速度を恒星時の半分にする(いわゆる星と景色の両止めモード)ことで、像を一ヶ所に留めておけます。鏡の焦点距離は百メートルオーダーですから、ニュートン式のような放物面でなくても球面で十分、制作は簡単。近距離の人に向けたりしなければ安全で、熱で壁が焦げたりもしません。岡村さんと言ったら空気望遠鏡を思い浮かべる方も多いでしょう(→大人の科学netを参照)。これも一種の空気望遠鏡ですよね。

注目していただきたいのは機材の仕組み云々ということよりも、「自分で見るためではなく、人に見せる/学習させるための機材を作る」という発想に至る頭脳。技術は同じでも注意の払い方がかなり変わってくると思うのです。自分へのご褒美と、誰かを喜ばせるためのプレゼントを考える時の違い。あるいは自分が食べる料理と他人に振る舞う料理の想いの差。うまく言えないけれど、違うギアにシフトしている気がします。

投影型太陽望遠鏡
そんな岡村さんが10年以上前に始めたスターキャッチコンテスト(冒頭および記事末画像/岡村さん提供)は「望遠鏡を作る→導入練習→競争」がセットになった天文アクティビティ。主な対象は天文に興味がある高校生世代、基本スパンは「夏に望遠鏡を作り、秋に練習、冬にコンテスト開催」という長丁場です。市民観望会や星祭りのようなその場限りの自由観望と異なり、何かを作り、その使い方を会得して成果を上げるまでの工程は「対象者の年齢、興味の度合い、経験時間」などに依存し、主催者が想定する予定時間に全く収まらないことがとても多いのです。ヘルプの人員もたくさん必要ですね。(天文に詳しいことと、良き指導者かどうかは別モノ。)

岡村さんとは対象年齢が異なりますが、同様に何十年も観望会や工作教室を実施してきた私の感触として、競わせることが興味の持続や定着、沼堕ちに結びつくかどうかは疑問なのですが、テスト慣れしている高校生くらいだと一時的でもモチベーションアップになるのでしょう。とにかく「始めないと始まらない」のですから。

競技要素を伴った天文アクティビティで有名な「メシエマラソン」は、「月刊天文」主催で1987年に行われたのが国内最初と記憶しています。静岡在住のアマチュア天文家A・K・オクセンドルさんが提案、当地茨城県の筑波山で行われ、私も参加しました。簡単なスケッチをとることで見た証拠とするのですが、スポーツ競技のような厳密さは必要なく、「まずは楽しむ」ことを中心に据えないと一晩持たないでしょう。明け方まで残ってたのは私を入れて数名でした。

スターキャッチコンテスト
メシエマラソンの他にも、例えば歴史あるAstronomical Leagueを探すとたくさんの天文アクティビティが見つかります。星座を探す、1等星全部見る、二重星を100個巡る、全惑星を観察、主な月面クレーターを制覇etc...、望遠鏡を使うだけでなく、双眼鏡限定だったり、肉眼限定だったり。ひと晩で終わるものもあれば、毎月の観察を目標にするものもあったり、実に様々。撮影ではなくて眼視観察を主眼にしているところに好感が持てます。仲間内で競ってもいいし、毎年自分でトライして自己記録更新を目指すのでもいい。楽しく長続きすればどんな形でもOK。

日本ではスターウィークや伝統的七夕、お月見、世界一斉○○、ライトダウン、ダークナイト…といった星空に絡めたイベントを各地の科学館、プラネ館、日本公開天文台協会、日本天文愛好者連絡会などが積極的に行うようになって何十年も経ちました。効果は出ているのでしょうか?一過性でなく、リピータは増えたでしょうか?

やってみると分かりますが、自分が楽しむためにイベント組むのと、次世代育成や愛好者の裾野を広げることを目標として運営するのとでは、内容も、段取りも、必要スキルも、まるで違うんですよね。夜の行事と言うだけでハードルが高く、参加者が家を出てから帰宅するまで気を使わねばなりません。星に興味が無い人に興味を持ってもらう「ゼロから1へ」の段階と、興味がある人のレベルを上げる「1から2へ」の段階とでも、取り組みは大きく異なるでしょう。

岡村さんはスターキャッチコンテストの全国大会を行いたいとおっしゃってます。そうなれば、各地にお住まいの天文ベテランさんの協力が不可欠。みなさんだったらどんなコンテストにしたいですか?岡村さんは高校生を対象としてきましたが、もっと低い年齢層の学生や幼児さん&子育て世代の親子(私が主に面倒を見ていた世代)が対象だったらどんな工作や観察をしたらいいと思いますか?ぜひご意見をお聞かせください。

コメント

トラックバック