三日月?四日月?2025/05/01

20250430_03677月
4月もあっという間に末日を迎えました。5月最初はずいぶん天気が不安定のようなのでどこまで空の観察ができるか分かりませんが、ひとまず暮れ行く空に4月最後の月を見上げました。

左画像は30日19時過ぎ頃の撮影で、太陽黄経差は約36.77°、撮影高度は約27.10°、月齢は2.61。月齢を四捨五入して考えれば四日月(ゼロが初月=一日月)ですが、新月日から数えれば三日月です。まぁ、典型的な三日月型には違いありません。さすがは水平月シーズン、日毎あっという間に高い位置へ駆け上がってしまいました。

欠け際に並ぶ四大火口列が美しい。ラングレヌスの中央丘がネコ耳型の影を作っていました。いつも下弦側で東向きのネコ耳を観ている(2023年11月30日記事や、同年12月30日記事参照)から、この向きは新鮮です。秤動が良かったのか、滅多に見えないフンボルト・連鎖クレーターが写っているようです。逆に北側は秤動が悪く、フンボルト海が縁に追いやられてますね。エンディミオン周囲の山々が結構険しくて複雑な表情を見せています。

このあとも低空に薄雲があった程度で良い天気が続いてましたが、明け方に土星を見ようと準備していたら全天曇ってしまいました。

今日の太陽2025/05/01

20250501太陽
明け方から雲が出始めました。明日は終日雨になる予報で、天気はゆっくり下り坂。

20250501太陽リム
左は13:30前の太陽。午前に一度撮影したのですが、雲が度々通過したので午後の晴れ間に撮り直しです。左上の活動領域14079にある大きな黒点がやっと肉眼+太陽観察グラスで確認できました。はっきり分かりますからお持ちの方は試してください。北半球にあった長いダークフィラメントがはっきりしなくなりました。プロミネンスも少ないですね。

ここ数日のお月様が最高だったワケ2025/05/03

20250428日没時の月位置
先月末から今月頭にかけて観察した上弦前の月は、いつもより高高度だったためかシーイング良く楽しめました。これは水平月シーズンならではのメリットです。

天文ファンならば、春の宵に見える細い月は「杯のように寝ている」、秋の宵は「帆掛け船の帆のように立っている」ということをご存知でしょう。秋の宵ならばそれぞれ逆になります。手抜きで簡単に説明するなら『概ね黄道に沿って日々移動する月は、黄道がそそり立つ春に天頂へ向かうごとく急上昇するため』と言えるでしょう。(※ここで言う上昇は公転移動のことで、日周で沈む動きと分けてお考えください。)

左上図は先月4月28日から6日間、日没時の月位置と天の赤道・黄道との位置関係を示したもの(Stellariumによる/日本経緯度原点基準)。月は実際の6倍の大きさにしてあります。地面に沈む太陽に対して急角度で公転移動する月は水平月のシーズンであることも意味していて、同時期に細い月が高度的に有利なことと密接に結びつきます。

さて、この理屈だと春の月は毎年水平月で好シーイング…ということになりそうですが、実際は違います。右下図は9年後の2034年4月19日からの6日間、前出同様に描いたもの。正直なところ「えっ、こんなに違うの!?」と思いました。ほぼ同じ時期なのに、月の公転移動が「黄道の南側」になっていて、高度上昇的に損をしています。なぜこんなことが起こるのでしょうか?

20340419日没時の月位置
月が天球を移動するルートは「白道」と呼ばれます。赤道や黄道と同じ感覚で捉えると短期的には変わらないもののように思えますが、さにあらず。実は地球を一周する間にも変化があるほど優柔不断な道なのです。

分解して考えると、白道の立ち角(地平面とのなす角)とは「黄道の立ち角」に「黄道に対する白道の傾斜」が上乗せされたものです。このうち黄道の立ち角(→2024年9月29日記事参照)は下A図に示したように100年ぶん計算してもグラフはほぼ重なり、変化が極めて微小です。いっぽう、黄道に対して約5°の傾斜を持つ白道面は、この傾斜角ひとつ取っても下B図のように短周期での変化があります。

ただ、この軌道傾斜グラフの振幅程度では宵空の月が黄道の北を通ったり南に向かったりする大きな変化は生まないでしょう。そもそも白道は黄道に近いから、黄道位置を白道の代理説明に使う天文解説者は山ほどいらっしゃいますからね。ではいったいどんな理由が大きな変化を生む?

答えは、月が黄道を横切る“タイミング”です。良く耳にする言葉を使うと「昇交点」「降交点」の位置がどんどん変わるということ。白道と黄道の交差点のことですね。これを直感的に分かるよう描くのはなかなか難しいのですが、下C・D図を用意しました。2025年と2034年それぞれの月位置(黄道座標系)と新月のタイミング(赤い数字)を図化したものです。黄緯0°の横線は黄道自身。サインカーブのような薄茶の曲線一本一本が1朔望月の月位置を示し、プラスマイナス5°余りの間を行き来していることがB図の軌道傾斜を反映しています。

2025年は4月→5月→6月の新月期に黄緯が最も高くなる=黄道の北側に最も離れて公転することが分かります。いっぽう2034年の場合、4月→5月→6月の新月期は逆に黄緯が下がっており、黄道の南に離れたところを公転すると分かるでしょう。新月後の数日間に見える極細月は1°でも高いほうが有利なので、日本では今春のように黄道がそそり立ち、かつ白道が黄道の北へ大きく離れる時期を狙ったほうが良いのです。

黄緯0°の線を下から上に横切るときが昇交点通過、上から下へ横切るときが降交点通過です。昇交点・降交点通過日は年々どんどんシフトし、約18.6年経つと概ね元に戻ります。この半分、9年余りの周期で状況が一変するということを、今回の図やグラフで示したかったのでした。この周期は水平月の好機や細い月の見つけ易さに影響するだけでなく、日食のタイミングが年々ずれたりするなど幅広く天文現象に影響しています。

  • 黄道面の立ち角(日没時/日本経緯度原点)

    A.黄道面の立ち角(日没時)
  • 月の軌道傾斜角

    B.月の軌道傾斜角


  • 2025・月位置(黄道座標系)

    C.2025年の月位置と新月日
  • 2034・月位置(黄道座標系)

    D.2034年の月位置と新月日


今日の太陽2025/05/03

20250503太陽
昨日から今日未明にかけて曇り時々雨。明け方からゆっくり回復し、日が高くなると快晴になりました。

20250503太陽リム
左は9:30ごろの太陽。活動領域14079の大きな黒点が目立ちます。もちろん肉眼黒点として見えました。右リム近くの活動領域がいくつか裏へ消えたため、全体的に寂しくなってきました。次の黒点はまだかな?中央上の太いダークフィラメントが素晴らしいですね。プロミネンスは4時方向の樹木状のものや、8時方向の低くて幅のあるものが目立っています。