地球最接近にあわせて偶然見えたボリソフ彗星2019/12/29

20191229ボリソフ彗星(2I・C/2019Q4)
初の恒星間飛行彗星として発見されたボリソフ彗星(2I・C/2019Q4)が昨夜地球に最接近しましたが、日本からはかなり南に低くなってしまいました。私が天体観察に使うアパートの庭(駐車場)は南側に高い住宅があるため、12月初めに見えなくなると予想していました。事実、12月9日に見たのを最後に、天気や月齢も相まって、観察することができなくなりました。ところが…。

隣の県にお住まいの星仲間の(の)さんが二日前に低空のボリソフ彗星を撮影し、15.5等と見積もっていました。随分明るいなぁと思いつつ、今どの辺りまで南下したのか確認すると、今朝の時点で赤緯が約-34°。薄明開始頃に南中しますが、それでも我が家からの高度はたった20°。大平原ならともかく、ここじゃ無理だろうなぁと思いつつ駐車場の最北まで移動してみると、なんと南の隣家屋根から数度だけ顔を出す位置ではありませんか!この数度があれば、1時間程度の露出が可能かも知れないと急きょ機材をセット。屋根から顔を出すのを出待ち撮影しました。

結果は計算通り1時間強の露出ができました(左上画像)。強い光害と悪シーイングでザラザラではありますが、ちゃんと存在が確認できます。夜半前から氷点下で透明度が上がり、南の低空に雲があるものの彗星の高さまではやって来ませんでした。少しずつ日の出が遅くなり、また同一時刻で見れば彗星が西へ西へと日々ずれていったため、薄明開始前後に南中して最高高度になるという絶好のタイミングを生み出したわけです。ここ数日間は見えていた様で、好天に恵まれたのも幸運。こんな偶然は思ってもみませんでした。ありがたや。

今日の太陽2019/12/29

20191229太陽
朝からよく晴れています。明け方はマイナス4度近くまで下がったため、気温上昇は鈍くなりました。いよいよ冬本番ですね。

20191229太陽リム
左は11:20過ぎの太陽。南半球の活動領域12753は中央子午線を越しました。北半球の12754は右上リムギリギリ。もちろんこの画像では全く確認できません。プロミネンスは昨日に続いて右下リムに出ていますが、位置が若干違うようです。

今夜から明日いっぱいにかけて天気が崩れる予報が出ています。大晦日には今年最後の太陽が拝めるでしょうか?

今日は昼間から金星と三日月が近い!2019/12/29

20191229金星と月
本日は宵の明星「金星」と三日月が並ぶ日。夕空に仲良く輝く景色を楽しみにしていた方も多いことでしょう。でもちょっと待ってください。金星が月に近いと言うことは、「昼間のうちに青空の中で白い三日月を探し出せば、金星も一緒に見えるんじゃない?」と考えた方はいらっしゃるでしょうか?当ブログにはアーカイブ「昼間に月と金星が近い日」が掲載してありますから、これをチェックしていた方は大掃除の合間に空へ目を向けていたかも知れませんね。

実は今期…金星が宵の明星である期間(2019年8月14日の外合から2020年6月4日の内合まで)に起こる「昼間に月と金星が近い日」の中で、今回が唯一、条件が良い日なのです。(※前述アーカイブでは月が太陽から35°以上離れ、かつ月・金星間離角が5°以下が良条件としています。)金星が昼間でも見えると知っていても、機材や道具などを一切使わずに探すことは難しく、慣れないとなかなか見つけることができません。私がこれまでに知り合った数百人の星仲間やプラネタリアンのなかでも、裸眼でぱっと金星を探し出せる方は数名しかいませんでした。特に初心者や不慣れな方にとって、月を利用して昼間の金星探しを体験できる日は貴重なんです。

左上画像は月と金星が南中を少し過ぎた14:40過ぎに撮影したもの。画像上方向が天の北方向で、撮影時の両天体中心離角は約2°15′。今日の最接近は朝9:09頃でしたから、夕方より日中のほうが近いのです。晴れていれば両天体ともに肉眼で見えます。撮影しながら裸眼で観察しましたが、月よりも金星のほうがキラキラ目立ってキレイでした。

20191229金星と月
夕方日没30分後頃にふたたび観察してみました。西から雲が広がってしまいましたが、なんとか隙間から撮影できました。右は微光星や地球照まで多段階露光で写し撮った画像。2時間半ほどの間に月が金星から少し離れたのが分かりますね。

残念ながら暗くなる頃には低くなり、すっかり雲に隠されてしまいましたが、良い光景でした。来月以降も5月まで金星と月とが近くなる機会が毎月下旬にありますが、今回ほどの好条件にはなりません。今日見ることができたみなさんは本当にラッキーです。

参考:
アーカイブ:天体の接近現象一覧
アーカイブ:多天体の接近現象
アーカイブ:昼間に月と金星が近い日