気象衛星が見た春分満月前の月と地球のツーショット2019/03/26

20190320気象衛星からの地球と月ツーショット

静止気象衛星ひまわりが日々撮り続けている全球画像に偶然お月様が写っていることがあります。私が知る限り、一般人が見ることのできる気象衛星画像として唯一「ひまわり」のみが、わずかに写る宇宙部分も含めて公開しているようです。雲や水蒸気などを調べる以外に、月や惑星、恒星などが写っているか探すのは密かな楽しみなのです。

ところが気象衛星画像のなかの月はかなり輝度が低く、パッと見つけられるのは満月近くに限られるでしょう。しかも画像周囲の不要部分はマスクされているため、捉えている宇宙はかなり狭いです(→参考記事)。10分おきの撮影ですから狭い範囲に入ることが珍しく、写っていてもマスクによって寸断されていることもしばしば。月面が完全な状態で地球とのツーショットを発見できるのはなかなか貴重なのでした。

上画像は先週の3月20日、10:50画像(左半分)と11:10画像(右半分)に写っていた月(画像元:NICT/画像処理は筆者)。まだ雪深い北極圏越しに満月少し前の月が完全な状態で写っていました。二画像を中央でシームレスに繋いであり、ひまわりから見た20分間の月移動が分かるようにしてあります。注意して頂きたいのは、この画像の月部分は見やすいように強調・補正処理してあること。もともと明るい地球表面の気象観測が目的ですから、たまたま写る月なんて、そのままでは見るに堪えません。

20190311-0300気象衛星ひまわり画像
もちろん満月時期以外でも撮影範囲内であれば写りますが、輝度は更に落ちていますから見つけるのは極めて困難。右画像はその一例で、今月11日3:00画像。撮影時の月齢は4.08と細く、左半分のオリジナル画像では月があまりにも微かですね。言われなければ見逃してしまうでしょう。(※ちなみに月が地球に接する部分が歪んでいるのは大気の影響。)私はプログラムを自作して衛星画像に月が写るタイミング&位置を概算しているため発見できますが、それを使わずに探せと言われたらお手上げ。

それでも幾つか知識があれば、ある程度時期を絞ることはできます。気象衛星ひまわりは地球赤道面上でほぼ静止していますから、背景に何らかの天体が写る条件として「地球の画角=赤緯がプラスマイナス約8.6°内にある」必要があります。(※アーカイブ「気象衛星が観た地球」の幾つかの記事で解説してますのでご覧ください。)2019年3月の満月が春分に重なっていたことは記憶に新しいですが、実は「満月時期の月が赤緯0°付近にいるのは春と秋に限られる」のです。

2019年・月の地心視赤緯変化
月の赤緯は地球を一巡りする周期で左図のように上下します。(※この図は2019年3月18日記事の図を一部拡大したもの。)この上下とは異なる周期で満月や新月が繰り返しますが、赤緯0°近辺で満月になるのは決まって毎年3月・4月付近と9月・10月付近。念のためここ100年ほど計算してみましたが、何ヶ月もずれるようなことはありませんでした。左図で薄緑になっている範囲に月があると気象衛星ひまわりに写る可能性があり、そのとき満月に近いほど明るくて見つけやすいことになるのです。

天文カレンダーなどには「月が赤道を通過」などと書いてあるものが多いですから、そのタイミングと満月のタイミングが揃う時期を調べれば天文計算などしなくても同様の結論が導けるでしょう。満月前後が地球とツーショットになる場合、地球も「満月状態」、つまり真正面から太陽に照らされる正午近くのタイミングになることは理解できますね。つまり『満月時期の月は毎年3月・4月ごろと9月・10月ごろ、正午前後に撮影される静止衛星画像に写っている可能性が高い』ことになります。今月のツーショットチャンスは23日をもって終了しましたが、来月は4月17日から20日まで月齢11から15程度の月が写るチャンスがあるので、ご興味ある方は調べてみてください。

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