土星に大接近した国際宇宙ステーション2021/04/23

20210423土星と国際宇宙ステーションの接近
なんだ、この真っ黒な画像は!…と訝しがらないでほしい。これは今朝薄明中に見ることができた土星と国際宇宙ステーションのツーショットなのです。

予報では23日4:14:53ごろ土星の下方、40′角弱ほど離れた位置を通過するということでしたが、自作プログラムの最小位置計算では、通常TLEで4:14:53.6に37.186′角、CelesTrakのSupplemental-TLEだと4:14:53.9に39.419′角と出ました。先日のISS太陽面通過検証から経験的にCelesTrakのほうが実際に合っていると分かったので、「通常予報より幾分遠い」ことを意識して撮影に臨みました。

とは言え、ISSをピタッと止めるにはかなり高速シャッターを切る必要があり、いっぽうの土星は可視惑星の中ではかなり暗いので、露出を伸ばす必要があり…相容れません。シーイングもかなり悪く、心配になりました。ともかくシャッター速度は決め打ちにして、感度とF値をあれこれ試写してるうちに通過時間到来。カメラ単体でのワンショット撮影ですが、両方とも無事写ってよかった…。なお画像上が天頂方向です。

ISSのほうはソーラーパネルが見えず、なんだか不格好ですね。南東の空だから、裏側(影側)になってしまったのかな?辺りはもうかなり明るく、空の星々も消えかかっています。ISSと木星だけがギラギラしていました。本来なら星出彰彦宇宙飛行士がISS船長としてもう宇宙に向かっていたはずでしたが、天候の影響で打ち上げが本日夕方(日本時間)に延期されています。向こう一週間は日本各地で夜明けの空を飛行するISSが楽しめるでしょう。

ISS太陽面通過のずれを検証する2021/04/05

20210401ISS太陽パス検証図1
4月1日の国際宇宙ステーション太陽面通過は星仲間のみなさんの助けと天気に恵まれ、満足のいく観察でした。ただISSが太陽中心を通るはずの位置で見たのに、かなり外れたことが腑に落ちません。観察は「ISS TRANSIT FINDER」の直前情報(観察2時間前)を頼りに計画しましたが、なにが間違っていたのでしょうか?しばらく考えたけれど分からなかったため、自分でプログラムを組み、太陽とISSの位置関係をできるだけ精密に再現することにしました。

左は赤道座標系で太陽中心を原点に固定した図で、4月1日13:31:40過ぎから数秒間の国際宇宙ステーション位置を描いてあります。視位置は私が実際に観察した場所(ほぼ予報中心線上)を設定しました。太陽中心に対してISSの赤経赤緯がどれだけずれていたか、角度の分(arcmin)で読み取れます。正確には直交座標では赤緯に応じて歪みが生じますが、太陽は春分から10日あまりしか経っておらず、赤緯が高くないので、大きな歪みは無いものとして無視します。

太陽面通過は1日昼過ぎの現象だったので、この図では現象を含む前後のISS軌道要素(TLE)の過去データを入手し、前日21:00ぶんから6時間おきに四種の元期(=エポック…記事末参照)の軌道要素について計算しました。0.1秒おきに小さなドットを示してあります。中央近くの秒数表記は、13:31:〇〇の秒に相当し、各ラインにおける太陽中心に一番近いドットの秒数値を書いてあります。

20210401_ISS日面通過パス観察機材
結果はご覧の通り。これを見て愕然としました。中心線上で見るならISSは太陽中心を通るはずなのに、一本も通っていません。そもそもの予報地図が間違っていたことになります。日々の軌道変化があることは15年近く前に初めてISS天体通過を観察して以来知っていたことで、数日間の予報傾向を見ながら南下や北上のペースを予見し、なるべく天体中心を通るように観察位置ずれを見越して決めてました。今回もそうしたのですが、予報地図からして既に違っていたようです。(※通過時刻予想は41.9秒だったので、時刻違いは無さそう。)

本来人工衛星を表示するソフトウェアは最新の軌道要素をオンラインで取り込み、なるべく現在に近い状態を再現するのが基本フロー(のはず)。過去の軌道要素は上書きされてアプリ内に残ってないケースが多いため、過去を検証するにはその当時に使用した軌道要素を使う必要があり、軌道要素履歴を管理できるソフトウェアも必要です。言い換えると、今現在の最新軌道要素しか表示できないソフトウェアで過去を検証することはできません。

地図描画を間違えたのか、途中の計算から違うのか、天体通過表示だけが違うのか、はたまた最新軌道要素がDLされず、古いまま計算したのか…原因は多岐に考えられますが、Webアプリやソフトウェアパッケージはブラックボックスなので特定できません。私自身は過去に「ISS TRANSIT FINDER」を使った観測経験が無いため、今までこんなトラブルがあったのかどうかも分かりません。昔、CalSkyで計画していた頃は一度もミスはありませんでした。何も判断できずもどかしい…。予報に頼り切らず、最終的に自分で検算しておけば良かったと反省しました。

20210401ISS太陽パス検証図2
自身の計算結果が合っているかも気になるため、当日に撮影した画像を重ねてみました。撮影時に画角が約2°傾いていたのを修正し、最初の図に重ねたのが右画像。観察は13時台だから赤線とオレンジ線に挟まれた中間を通るはずで、0.5分角内外のずれがありますが大きくは外れてないようです。また画像は毎秒30コマの動画ですから、0.1秒間隔内に3つずつISSシルエットが写っています。それなりに正確っぽい。太陽最接近時の観測地・ISS間距離はEpoch=9:00で541.8km、Epoch=15:00なら542.1kmでした。

ちなみに元期9:00の状態で、観察地を同経度のまま南へ1.22km(=4000フィート)移動したら、青緑線のようにISSが太陽中心を通ったことになりました。これはおそらく関東全域に言えることでしょう。何らかの原因で予想地図中心線が4000フィート北上して描かれてしまったと考えれば辻褄が合います。それが今回限りのことなのかどうかまでは分かりませんが…。

ISSに限らず、どの衛星も絶対に軌道要素どおりに飛ぶわけではありません。軌道要素そのものが元期時点の近似値に過ぎず、周回ごと緩やかに遷移しますから。それに元期と元期の間に軌道修正…ISSの場合は補給機ドッキングや衛星放出など…が入ることもあり、このときは本来の予測軌道からかなり変化します。次回計画するときはこの検証法を発展確立させて、自分でも確かめようと思います。

20210401ISS太陽パス検証図3
【追記・更に混乱する事態に…】

上の検証で使った軌道要素は4月2日にCelesTrakサイトを通じて見つけ出した過去データを使いました。念のために書くと、現象前に保存しておいたものではありません。

これとは別に今日探し当てたHeavens-Above過去ログ記録をたどって、1週間あまり前までのTLEを見つけたので、あらためて計算してみました。すると…なんと、左図のようになったのです。これは予報直前まで見ていた状態とほぼ同じものでした。ちゃんと中心近くを通ることになっていますね。

どういうことでしょうか?軌道要素が2系統存在するってこと?現実に近いけれど予報サイトで使われてない(かも知れない)CelesTrakのものと、現実から程遠くなってしまう予報サイトTLE。出どころはNORAD一ヶ所だと思いますが、どちらかが嘘をついているとも思えません。大元から派生した別流派が存在するのでしょうか?

今回はSGP4アルゴリズムで位置予報を算出しましたが、計算法によってもわずかながら差が出ますし、もともと結果にも若干の誤差が含まれることが前提の手法です。TLEは見た目に区別がつかないため、正しいと思うものを使ってしまうでしょう。素人が何かを判断するのは荷が重すぎますね…。

20210405-0000_ISS高度
人工衛星はいつも同じところを同じ形で周回するようなイメージを持たれますが、実際は常に軌道を変えています。『自発的』に変える、つまりエンジンに点火して強引に変えるケースもありますが、一般的には地球周囲にごくわずかに広がる大気の抵抗や太陽活動、あるいは地球の自転斑や重力の偏りなど、自然由来の原因で徐々に変わってしまうと聞きます。

もちろん位置を変えてはいけない人工衛星は軌道修正機能が必要になります。たとえば気象観測や放送通信に使われる静止衛星は赤道上空の一定経度上にいなければ困りますよね。一番大きな人工天体である国際宇宙ステーションも常時高度が下がってしまうため、時々持ち上げて(=リブースト)います。(左上図はHeavens-Aboveで公開されているISS高度変化グラフ。)

デブリを含む全ての人工衛星は監視されており、ある時点の軌道の形は「軌道要素」と言われる数値群で簡略的に表現します。この「ある時点」のことを「エポック/Epoch/元期」と呼び、一定時間おきにエポックを設定して軌道要素を算出することで、軌道の変化を模式的に追うことができます。後日に衛星の軌道要素(TLE/Two Line Element)を入手するのは私のような一般人では困難なので、何らかの衛星現象を観測した際にはその時点のTLEを必ず保存しておくことをお勧めします。(→たとえば前出Heavens-Aboveで、通過予報一覧の「軌道」をクリックすれば、その予報に使われたTLEが表示されます。)


今日の太陽と国際宇宙ステーション太陽面通過2021/04/01

20210401_国際宇宙ステーションの太陽面通過
4月初日は“太陽漬けの一日”になりました。

まず、本日昼過ぎに近所で「国際宇宙ステーションの太陽面通過」があることをphoto.nomataさんのブログ経由で5日ほど前に知り、これは久々に見たいと思ったのが始まりです。身体障害のため自力移動は困難なので、星仲間のdocanさんに声をかけて総勢ふたりの観測隊を結成、通過予定の場所まで連れて行ってもらいました。

午前中の曇り空はどこへやら、昼からはカンカン照りの空。汗ばむくらいの陽気です。霞ヶ浦湖畔の予報中心線至近にちょうどよい空き地を見つけ、機材を構えました。ふたりとも軽量赤道儀に高倍率ズームという、「一見して天体観測に見えない」「鳥でも撮ってるんじゃない?」というデジスコ未満のスタイル。これでも太陽フルディスクがセンサーいっぱいに写るのですから、時代の進歩は容赦ないですね。

20210401国際宇宙ステーションのシルエット
今回は個人的に初めて4K動画で記録しました。画像上方向が概ね天の北方向です。霞ヶ浦を渡る東風が機材を揺らしたものの、なんとか傘を使ってブレを最小限に抑えました。結果は良好で、左上画像のように通過するISSを鮮明に捉えました。ただ、直前の予報を確認の上で中心線位置に陣取ったのに、結果として数百メートル北側で撮ったかのように、ISSが南にずれたのが不可解です。(予報はISS TRANSIT FINDERサイトによる。)

数日間は軌道変化をトレースしてたので南下しているのは分かっていましたが、直前予報に対してここまでズレてしまったのは初めて経験しました。高度調整やドッキング時期などの際は大幅に高度が変わるので、何かがバッドタイミングだったのかも知れません。(※ISSは常に大気抵抗にさらされているため、時々高度を持ち上げてやらないと落下してしまいます。この「持ち上げる」ときに軌道が少し変化します。)

20210401太陽
帰宅後のころ雲が増えてきましたが、雲間を縫っていつもの太陽観測を行いました。左は15:10頃の撮影。活動領域12811・12812は健在ですが、12811はほぼリムに到達し、12812も数日内に裏へ回るでしょう。ところどころに小さなプロミネンスも見えました。

20210401太陽リム
上のISS通過画像でも無黒点なのが分かりますが、12811・12812の白斑は薄く見えています。ご注意いただきたいのは、「太陽自転軸の見かけの方向は天の南北に対して揺れ動いてる」という事実(下A図参照)。

この太陽Hα画像が太陽北極を画像上にしているのに対し、ISS通過画像は天の北が上なので、26°あまりISS画像を反時計回りしないと双方の向きが一致しません。今は天の北と太陽自転軸の方向角ズレが一番大きい時期なのです。一見して“のっぺらぼう”が故に向きが分からないという悩み。正確な対比の際に注意しなくてはいけません。

夕方には淡く広がった巻雲が幻日を映し出しました。左右とも見えていましたが(下B画像)、右画のほうがはっきりしていました(下C画像)。まさに何人もの仲間に支えられて太陽づくしの一日を楽しむことができました。これでビタミンDも万全かな!?…ともあれ、ご協力いただいた全ての方に深く感謝いたします。

  • 2021年・日面方向角の変化

    A.2021年・日面方向角の変化
  • 20210401_夕空の幻日

    B.夕日と幻日
  • 20210401_幻日(太陽右側)

    C.右の幻日


参考:
アーカイブ:ISSの天体面通過

天体大集合にスマイル2021/03/19

20210319六日月
夕空の月を追って、とうとう月齢6まで来てしまいました。思い返せば三年前…って、まだ6日目ですが!

さすがに六日月ともなると上弦一歩手前ということで、面積が広くなってかなり明るいですね。静かの海や晴れの海のリンクルリッジがよく見えています。テオフィルス・クレーターのお隣、キリルスとカタリナの間の谷がエグい。こんなに深いのかというくらい見えていました。アルタイ断崖も見頃を迎えつつあります。

今夜の月は既に集会をしているヒアデス星団・プレアデス星団・火星に一段と近づいています。月が明るすぎるので多段階露光コンポジットで仕上げたのが下A画像。アルデバラン・火星・月がスマイルマークを作っていますね。アルデバランと火星は月に比べてかなり暗いので、2008年の月・金星・木星によるスマイルマーク(下B画像)に比べるとインパクトが足りないけれど、にこっと笑う表情は癒やされますね。

19時前には近くを国際宇宙ステーションが通りました(下C画像)。レリーズ不調のためISS軌跡が等間隔でないのはご愛嬌。このとき既に薄雲が空を覆い始めており、厚めの雲も迫っていたことを考えたら、観察できただけでも奇跡と言えましょう。

  • 20210319ニッコリ天体集合

    A.天体集合(2021年3月19日)
  • 20081201・月・金星・木星

    B.月・金星・木星(2008年12月1日)
  • 20210319天体集合+ISS

    C.天体集合+ISS(2021年3月19日)


参考:
夕空低空で月・金星・木星が並びました(2019/11/30)