8月の皆既日食で月影は気象衛星から見えるかな?2017/06/25

20170821日食図
昨日に月が新月を迎えました。この月が地球をもうふた巡りすると…つまり2回後の新月(2017年8月21日UT、日本時間で22日になりたての頃)のとき、北アメリカ大陸を横断する皆既日食が起こります。気軽に旅行へ行ける土地での条件良い皆既日食…ということで、日食ファンのみならず期待を寄せる方も多いでしょう。

左は今回の日食図(元画像:NASA Eclipse Web Site)。アメリカを横断する日食としては約100年ぶり、という報道を見かけました。横断の定義が曖昧ですが、経路が北アメリカ大陸にかかっていたり、金環日食まで含めると結構な件数あります。

右下図は1901年以降2020年までに起こった(起こる)北アメリカ付近の日食図(引用元同じ)。もはやどこがどれだか分からなくなってますが…青ベルトが皆既、赤ベルトは金環です。まぁ、「合衆国を太平洋から大西洋まで横断する皆既日食」ということなら、1918年6月8日以来でしょう。ちなみに全く関係ないけど「アメリカ横断ウルトラクイズ」初回は1977年だそうですから、そこから40年ぶりですね。

北アメリカ付近でこの100年あまりに起きた日食
アメリカ国内でも多くの天文ファンが活動していますから、大盛り上がりが予想されます。豊富な機材を駆使して素晴らしい映像記録が期待できるでしょう。ドローンが大流行のご時世なので、上空から観察旅行者の様子や移動してくる月の影を撮影する強者がたくさんいそうです。ただ心配なのは、現在合衆国の西半分が異常高温に見舞われていること。気温が40度を軽く超す毎日だそうで、人も機材も壊れそうです。高気温だと航空機が飛べないので、移動も大変。8月までに解消しているとよいのですが…。

20170821a
さて日食旅行に行ける方はいいのですが、行けない場合はテレビやネット中継で見ることになるでしょう。当ブログでは毎度お馴染み「気象衛星」を通した月影の観察も併せてお勧めしたいところです(関連記事1関連記事2)。でも、このアメリカ日食による月の影、日本の気象衛星から捉えられるのでしょうか?そう思って計算したのが左図。気象衛星ひまわり8号からは日食開始1時間程度なら見えそう。ただ、この頃は地球そのものの影と入り交じってはっきり見えないかも知れません。うむむ…。

そこで考えたのは、他国の気象衛星が使えないかと言うこと。例えばアメリカが管理するGOESシリーズはちょうど日食エリアをカバーしています。ひとまず地球を監視する多数の静止気象衛星のなかから4つ選び、日食図を衛星可視範囲に変換描画するプログラムを作りました。一例ですが、右下図は緯度経度とも0°上空に位置するヨーロッパのMeteosat-10による今回の日食図。大西洋まで伸びる皆既日食帯を見事にカバーしていますね。色々興味が湧いたので、2015年以降今回までの全日食についてシミュレートも行いました。
20170821c
結果は別途アーカイブにまとめましたので、興味のある方は参考にしてください。時間があれば将来の日食でも行ってみようと思います。なお紫線は中心食帯(※月影の中心は必ず紫線のどこかに存在)、オレンジ線は内部で太陽がわずかでも欠けて見える範囲。日食図は何本もの曲線で構成されますが、一本一本意味があります。これも前出アーカイブの解説図をご覧ください。

原理上は衛星が静止してなくても、撮像範囲が日食エリアを向いているならば写るはず。でも周回衛星は直前にならないと正確な位置計算ができません。よって今回のシミュレーションは静止衛星のみとしました。宇宙からなら現地の天気に関係なく安心して見ることができますね。

はやぶさ2は小惑星を見つけられるかな?2017/04/21

はやぶさ2位置(回転座標系)
小惑星リュウグウに向かって順調に飛行を続けている探査機「はやぶさ2」ですが、先日ニュースで「飛行中に別の小惑星発見をもくろんでいる」と耳にしました。う、浮気者ぉぉ(笑)。

詳しくはJAXA「はやぶさ2プロジェクト特設ページ」のトピックスをご覧いただければ理解できるでしょう。現在はやぶさ2は地球のL5(ラグランジュ点のひとつ)付近を飛行中で、ここには地球トロヤ群小惑星の存在が期待できます。リュウグウ接近に向けてのカメラテストを兼ねてあちこち写し、あわよくば小惑星を見つけてしまおうということです。

前出記事中に太陽−地球固定系(回転座標系)で描いた分かりやすい図が出ていますが、なにぶん小さい画像なので、自分であらためて描いてみました(左図)。ただし各天体の位置は当初計画されたものを使っており、飛行中の微調整は反映してませんのでご了承ください。またZ軸(黄緯方向/図に垂直な軸)のずれは微少なので無視して描いています。

この図は地球公転を止めてしまう代わりに、その他の天体を公転と逆回りに回転させています。こうすると図上の地球は固定されるため、太陽・地球に対する探査機・小惑星の相対位置関係がひと目で分かります。縦横の目盛り数値は天文単位(1AU=149597870700.0m)。地球のL4とL5は図の位置にあり、地球から見れば黄道に沿ってそれぞれ太陽の60°西と60°東になります。

20170421日没時の星図
小惑星とはやぶさ2のプロットは毎月1日、11日、21日の位置をやや大きく描きました。今日(4月21日)はL5近くでオレンジ正三角形から右へ抜けた最初の太青丸印の位置になります。うまくトロヤ群小惑星が見つかると良いですね。

「今日の日没の瞬間に星空が見えたとしたら」という想像図をStellariumで描いたのが右図です。L5は黄道に沿って太陽から60°東ですから、ふたご座の足元あたりですね。実際の探査機は黄緯方向のずれがあるので、黄道から南に少し離れた「オリオンの棍棒」付近になります。更にざっくり言うと、黄道十二宮のひと星座幅を30°と考えて、現在のはやぶさ2は太陽から黄道星座ふたつぶん離れたところ、という超アバウトな言い方もできるでしょう。

ちなみに右図の黄道に沿ってボーッと薄明るくなっているのは、小惑星の成れの果てとも言われる「黄道光」。環境悪化と春の気象条件よって日本では夕空の黄道光がほとんど見えないかも知れませんが、黄道が高くそそり立つ2月から4月頃は夕方の黄道光が見やすい時期でもあります。万が一透き通るような夕暮れに遭遇できたら、薄暮が終わる頃に探してみてください。その黄道光が伸びる先端に「はやぶさ2」が飛んでいますよ。

参考:
はやぶさ2、打ち上げ二周年(2016/12/03)

夕空の月惑星、やっと見えたエンケ彗星2017/01/30

20170130月・金星・火星・ISS
夕方近くまで雲が多かった空でしたが、日没頃から次第に青空が広がり始めました。雲が完全に無くなったわけではありませんが、暮れゆく西空の細い月や金星を眺めるには十分です。今夕の月は月齢2.4。まだ三日月ではありません。

やがて火星も見え始め、運良く通りかかった国際宇宙ステーションと一緒に画像に収めました。(ISSは全く予定せずに彗星の撮影準備をしてました。直前にISS通過が分かり、既に見えていたので慌ててカメラを向けた次第…。)この後ISSは北極星のほうへ飛行し、金星より明るく見えました。

20170130エンケ彗星(2P)
さて運良く晴れたので、エンケ彗星(2P)も狙いました(こっちがメインです…)。これまで何度かトライしたのですが全く写りませんでした。でも今日はバッチリです(右画像)。彗星自体が明るくなってきたし、空の条件も申し分なし。今夜のエンケ彗星は上画像で言うと金星の右上、角距離は金星−火星間距離と同じ程度のところにいました。

まだ薄明と光害が明るかったためセンターへの導入は外しましたが、中央少し上に青緑色のコマがはっきり見えますね。左端下の明るい星はうお座ι星。よかった、1月中に見ることができました。

地球と金星のツーショット期間です2017/01/27


夕空の金星と火星が接近していますが、星図を見てふと気付いたことがありました。この時期、金星や火星が「気象衛星ひまわり」の画像に写っているかも知れないことを。

気象衛星の可視範囲
理屈は次の通り。気象衛星ひまわりは地球の赤道上空でほぼ静止しています。ひまわりから見ると視野の中心に地球の赤道が見え、それに重なるように「天の赤道」が左右へ伸びているわけですね。(※もちろん線が見えるわけじゃないですよ。)ひまわりは地球よりほんの少し外まで撮影していますが、つまりは天の赤道をはさんでプラスマイナス地球半径+α(→天の座標に換算すると赤緯がプラスマイナス約9°)の「宇宙」が地球の後ろを1日に約1回横切るわけです。模式的には右図のようになるでしょう。

もしこの範囲に月や明るい惑星・恒星が入っているときに気象画像を撮影すると、地球と天体のツーショットになるということなのです。(→関連記事)ただし金星の場合は太陽からあまり離れないため、右図のような「日本が昼の地球」と一緒に写ることは絶対にありません。昼間は太陽と共に衛星の後ろ側にいますからね。ひまわりから金星が見えるのは日本が夜中の時間帯なんです。金星が「宵の明星」のときは夜半過ぎ、「明けの明星」のときは夜半前となります。私たちの知識とは逆になりますよ。

これまでも当ブログで月・惑星・恒星が写っていることを紹介してきました。これらの天体のなかで月と惑星は黄道や白道が天の赤道に対して傾いているため、視野角内に入らず物理的に写らない期間があります。計算したところ金星は昨年9月下旬からずっと南に低かったのですが、今年1月12日の東方最大離角の頃からいよいよツーショット期間が始まっていたのです。

20170112地球と金星
1月12日の金星はちょうど南極側を通過し、2:30、2:40、2:50の衛星画像に写っていました。3枚を合成したものが左画像です(画像元:NICTサイエンスクラウド/画像合成は筆者)。大きな画面で見ると臨場感たっぷり。残念ながら最大解像度でも半月状の形までは見えませんが、内合近くだとちゃんと三日月状に見えますよ。

なおこの理屈だと火星とのツーショットも期待できそうですが、2016年春の地球接近から随分経ってしまった今の火星は最も暗い時期を迎えています。ダメ元で探してみたのですが、残念ながら発見できませんでした。でも金星は6月頭までこの範囲に入っています。(※ただし2月下旬から3月下旬まで一時的に逸脱します。)もしひまわり画像をじっくり眺めるチャンスがあれば探してみてください。