スターシップの飛行煙2024/03/15

20240314スターシップIFT-3
日本時間の昨夜(14日)22:25ごろ、SpaceX社のStarship試験機がテスト飛行に成功したとのこと。中継をご覧になった方も多いでしょう。左画像はYoutubeの中継から引用しました。今回で3度目(Integrated Flight Test 3rd)となり、ようやくここまで来たかといった感じです。個人的にはまだまだ危なっかしい気がしました。

雲が少ないほどほどの天候で高度十数kmよりも上空はクリアでしたので、これは気象衛星が捉えているかも知れないと思い探してみました。GOES-16の13:30:20UTの画像に1段目ロケット(Super Heavy)の煙がしっかり写っています。下A画像は打ち上げられた米国テキサス州ボカチカの打ち上げ施設“Starbase”を含むメキシコ湾岸付近、下B画像はA画像赤枠内の拡大、黄色円内がロケットの残した大きな煙の塊です。(画像元:RAMMB/画像処理等は筆者。)また、やや縁に寄っていますが太平洋上にあるGOES-18も13:30:22UTの撮影画像に写っています。10分おきに撮っている前後の画像に煙はありません。この1枚だけでした。

これだけ大きなロケットを打ち上げるのですから、施設規模も、開発予算も、ノウハウも、莫大なものなのでしょう。1回目のテストフライトから見ればかなり安定してきましたが、人が乗っても問題ないようになるまで、まだまだ課題は多そうです。

  • 20240314_133020UT

    A.GOES16(13:30:20UT,wide)
  • 20240314_133020UT

    B.GOES16(13:30:20UT,zoom)


スターリンク・ダンスをとらえる2024/03/11

20240310スターリンク・ダンス
少し前の話題になりますが、星ナビ3月号の記事にあった「スターリンクの舞」をブログ「もっと宇宙の話をしよう!」のTaizoさんが撮影されていました。私もやってみたかったのですがなかなかタイミングが無く、ようやく昨夜に試すことができました。

記事によれば、日没後または日出前の太陽が一定条件のとき低空を飛び交うスターリンクのフレアが起きるため、多数のフレアが何度も横切るように見えるとのこと。直線的ではありますが、蛍のように飛び交う様を「舞い」と表現しているようです。

昨夜は恒星位置で太陽方向を確認した後、4秒露出+1秒間欠で20:02から2時間ほど撮影しました。当地ではこの間に太陽高度が約-28.7°から-49.4°まで画像右下に向かって下がっています。全部を比較明コンポジットしたものが冒頭画像。また30分ずつコンポジットしたのが下A-D画像です。D画像には全く写っていません。全てがスターリンクのフレアとは限りませんが、開始直後から21:27ごろまでフレアが写っていましたので、今回は太陽高度が約-30°未満あたりで始まり、-45°に達する前に終わるという条件が分かりました。また大雑把には次のような傾向がありました。

20240310スターリンク・ダンス
  • 出現位置が高いほどフレアが暗い。低いほど明るい。
  • 出現位置が高いほど飛行経路が長め。低いほど短め。
  • 出現位置が高いほど飛行頻度が多め。低いほど頻度が少なめ。
  • 時間経過と共に次第に北へ寄る。(宵側の場合。)

宵側の場合は太陽移動に伴って出現位置が次第に低くなります。明け方側では逆向きですね。全コマチェックしたところ、概ね1分につき数回のフレアが現れ、多いときにはひとコマに四つ写っていたものもありました(右画像/黄色円内)。今回は目視観測はしませんでしたが、双眼鏡で眺めても面白そうですね。空の良いところならもっと見えると思います。分野は違うけれど、理屈は「太陽柱」に似ているのかなと思いました。(イリジウムフレアの計算を学んでいた頃のうろ覚えですが、確かフレアを起こす太陽電池パネルやボディ面の法線に対し、太陽光入射角と観測者への反射角が一致するときフレアが起こったはずです。いっぽう太陽柱は大気中にある氷結晶の法線に対し、太陽光入射角と観測者への反射角が一致します。※このとき氷結晶は六角板状であり、地面に対して平行に漂っている姿勢で、無風のことが多いです。)

地平下の太陽方位
かつてのイリジウムフレアのような派手さはないものの、空をくまなく覆っている衛星コンステレーションですから、天気に恵まれ空の方向さえ間違わなければ宵側と明け方側の一日二回確実に見えるはず。見える方位は地平下の太陽方位とだいたい同じなので、手ごろなプラネソフトでシミュレートすればすぐ分かるでしょう。

地平下の太陽到達時刻
日本経緯度原点における“夜の”太陽方位および太陽到達時刻(太陽高度が-30°と-40°の各ケース)を1年ぶん計算すると左上図および右図のようになりました。左上図縦軸は90°が真東、180°が真南、270°が真西、0°=360°が真北です。また右図縦軸はJSTです。他年度でもほぼ変わりません。

夏至プラスマイナス二ヶ月程度は太陽の沈み込みが浅いため、この計算位置では-40°まで届かず「解無し」になります。その代わり僅か1.5時間ほどの時間差で宵と明け方のフレアタイムが真夜中を挟んで接近するため、理屈通りなら北天低空に煌めくスターリンク・ダンスを連続して楽しむことができるでしょう。本州辺りだと、もしかしたら「フレアの子午線通過(下方通過)」になるかも知れませんね。興味深い現象なので、年間で撮り比べ解析してみようと思います。スターリンクは今後もっと密度が高くなりますから、このフレア群は近い将来びっしり輝くようになると予想されます。現在目立つのは高度550kmにあるスターリンク群と考えられますが、将来は低高度(高度340km)の群が圧倒する計画なので、フレアも更に高輝度・多頻度になるでしょう。ある意味「見もの」であり、「厄介者」でもありますね。

  • 20240310スターリンク・ダンスA

    A.20:02-20:31
  • 20240310スターリンク・ダンスB

    B.20:32-21:01


  • 20240310スターリンク・ダンスC

    C.21:02-21:31
  • 20240310スターリンク・ダンスD

    D.21:32-22:02


20240310ポン・ブルックス彗星(12P)とM31
スターリンク・ダンスの前には前夜と同じようにポン・ブルックス彗星(12P)とM31のツーショットを撮りました。若干長いレンズにしています。尾は1.5°あるかどうかといった程度。今夜以降はアンドロメダ銀河から離れます。

参考:STARLINK CLUSTER FLARESの関連記事(海外サイト)
SKY&TELESCOPE・BOB KING氏の記事(2023/11/01)
Jeff Warner氏の記事(2023/04/24)

地球観測衛星ERS-2が大気圏再突入2024/02/22

ERS-2
ESAが運用していた地球観測衛星ERS-2(左画像/ESAサイトから引用)が本日22日未明2:17JST(21日17:17UTC)、北太平洋上空で大気圏に再突入したとのこと。1995年4月に打ち上げられ、2011年に運用終了した衛星ですから、実に十数年デブリとして漂っていたことになります。

いまどき再突入のニュースは珍しくありませんが、昔ならではの大振りな衛星(10mを越える全長、2.5トンを越える重量)、高高度からのリモートセンシング(高度800km)、そして再突入間際の一ヶ月は何度か太陽で強いフレアが起きたことなどから、どんなふうに落ちてくるのか気になっていました。太陽活動は地球を周回する人工衛星の軌道に影響を与えるため、特に大気圏すれすれまで落ちつつある衛星にとっては落下予測を乱す原因になります。もちろん落下デブリだけでなく、運用中の全衛星が影響を受けているのです。

右下図はESAが公開しているもので、運用終了後66回に渡り徐々に高度を下げる作業が行われたようです。運用軌道を“落下”に転換する燃料を持たないロケット外壁などのデブリでこんな芸当はできませんが、再突入まで想定した移動用燃料を残した衛星なら、完全な制御下で「落としたいところへ落とす」ことが期待できます。衛星はかくあるべきと言うお手本のような運用ですね。

ERS-2大気圏再突入
今月頭には高度300km辺りを周回していました(下A図)。約三週間かけて150kmまで落とし、最後は「宇宙船の墓場(Spacecraft cemetery→Wikipedia)」付近へ向かうようなコースに沿ってアラスカとハワイの中間付近で大気圏に突入したもようです。

太陽活動の影響を受けたかどうか、受けたのならどの程度かといった研究はこれからされるのでしょう。とりあえずNOAAが公開している気象衛星GOESによる太陽X線フラックスのjsonデータを使ってグラフ化したもの(今年1月以降、本日昼まで)と、ESAによる再突入予測日時とを組み合わせてみました(下B図)。横軸はUTCです。色分けなど詳細はNOAAサイトのグラフに準じています。

XクラスあるいはM8クラス以上のフレアが度々起こっていますね。単発フレアがどうこうというより、全体的な活動の起伏が予測日時の乱れに同期しているような感じを受けます。もちろん軌道に影響がでるまでにはタイムラグがあるでしょうし、印象で物事を語る訳にもいきませんので、機会があったら実際の軌道変化とX線フラックスの相関がどれほどのものか、解析してみたいと思います。ところで…今朝8:07JSTにもX1.9クラスフレアがあったのですね。落下前なら影響あったかも知れませんが、落下後のフレアでした。関東は雨が降っており、太陽は全く見えません。

  • ERS-2遠地点/近地点高度変化

    A.遠地点/近地点高度変化
  • ERS-2再突入予報日時変化と太陽X線フラックス

    B.再突入予報日時変化と太陽X線フラックス


IM-1・Nova-Cを観る2024/02/17

20240216神酒の海、テオフィルス、アルタイ断崖
昨夕から今朝にかけてほとんどが雲の多い空でしたが、宵の時間はいくらか晴れ間がありました。ときおり風速4m/s前後の北風が吹きつけて迷ったけれど、この先少なくとも10日ほど良い天気が見込めないようだったので、思い切って月面拡大観察・撮影などを試みました。案の定ゆれが激しくて(おまけに地震もあって)仕上がりはよろしくありませんでしたが、気持ちは満足。

左はそのうちの一枚で、SLIMのおかげでお馴染みになった神酒の海エリア。テオフィルス、キリルス、カタリナはもう大部分が朝を迎え、SLIMも温まり始めたことでしょう。アルタイ断崖やピッコロミニも明るくなり、凸凹感が減ってしまいました。フラカストリウスの東壁北端にあるクローバーの葉みたいな小クレーターもよく分かります。欠け際寄りのアブルフェーダー連鎖クレーターがとても美しい。

撮影しているうちから雲が多くなり始めてしまったため、5カット程で中止。晴れ間が残っているうちに別の目標に切り替えました。

1月はSLIM着陸が月面探査ネタの中心でしたが、一昨日15日6:05UTCに打ち上げられた米国Intuitive Machines社の商用月着陸船「Nova-C(Odysseus)」が2月の話題をかっさらいそうです。今回の計画はIM-1、同社は今年立て続けにIM-2(3月)、IM-3(6月)を予定しているとのこと。民間企業、おそるべし。驚くべきは航行スケジュールの速度感。Nova-Cの月面着陸は来週22日予定なのだそうです。一週間あまりで月面にモノを届けてしまうなんてすごい時代になったものだ…。

20240216_The IM-1 mission Nova-C class
SLIMはコンパクトな機体で燃料も節約するため、遠回りなルートでした。打ち上げが2023年9月7日、月面到達が2024年1月20日と4ヶ月半もかかったのはこのためです。対してNova-Cは地球周回を数回したあと直接月へ到達します。いずれ地球スイングバイすらしなくなる将来には、数日で月にいけるかも?

まだ地球に近いうちに撮影できるだろうかと試したのが昨夜の「別の目標」でした。結果は右画像の通り。パソコンモニターでくっきり見えるくらい明るい宇宙船で驚きました。撮影時の距離は約218000km。月地球間の半分ちょいあたりです。宇宙船位置基準で合成してありますが、良く見ると機影が二つ確認できます。くっきり見えたのは明るいほう。どちらがなんなのか、プレスキットなど読んだ範囲では分かりませんでした。明るいほうは Falcon 9のペイロードフェアリング?暗いほうがNova-C本体?こんな遠くまでペイロードが行くとは思えないから違う気がする…。

飛行位置の計算はNASA-JPL Horizons Systemが使えます。Target BodyでIM-1またはNova-Cと入力してください。その他の計算パラメータは小惑星や彗星などの計算と同じです。

計算結果をもとにステラナビゲーターで星図に落とし込んでみたのが下A図。当ブログ計算基準の茨城県つくば市からみた測心視位置です。(国内ならどこでもほぼ同じような表示でしょう。)地心計算ではないため、日周による経度方向の動きがバネのようになって見えます。月は23日0:00JSTの位置。薄緑線は白道です。今日明日くらいなら十分撮影可能でしょう。

撮影終了間際に雲に覆われてしまいましたが、なんとか成果が得られて良かった…。着陸は南極域にあるマラパートA付近とのこと(下B画像/2023年12月2日撮影)。こんなにゴツゴツしたところで大丈夫なのか心配になります。吉報を待つとしましょう。

  • IM-1 Nova-C/Odysseusの位置

    A. Nova-C/Odysseusの位置
  • 20231202マラパートA

    B.マラパートAの位置