気象衛星がとらえた日食による月の影 ― 2016/03/09
本日日中に部分日食が起こりました。日本の多くの地域で悪天に見舞われたようですが、一部の地域では見えたようですね。当地茨城は分厚い雲から時々雨が降る天気で、太陽はチラリとも見えませんでした。
二日前の記事で触れましたが、去年から稼働して素晴らしい成果を上げている気象衛星ひまわり8号が、日食によって地球面に投影された「月の影」を見事に映し出しました。NICTサイエンスクラウドから公開された可視画像を使い、8:00(日本時間)から14:00まで、10分おきに閲覧できるよう下記に掲載します。画像下のボタンで手動アニメーションできます。原画そのものではなく、影が見やすいよう画像処理しました。(※11:40画像はありません。)
インド洋東側付近から次第に北アメリカ西海岸方面へ移っていく影がよく分かりますね。これを見て「なぜ縁がハッキリした影じゃないのかな?」と不思議に感じる方も多いでしょう。この理由を理解するため、地球・月・太陽の中心が一直線に並んだ簡単なモデルを思い浮かべてください。左図はかなりデフォルメして描いています。図のように太陽と月の縁を使ってオレンジ線が4本引けますね。線が地球にぶつかるところ(A、B、C、D)を想像してみましょう。
AとBにはさまれた地域では、自分と太陽を結ぶ直線が全く引けません。月が邪魔で太陽の光が届かない…つまり「皆既日食」が見えているところです。ところがAとC、またはBとDにはさまれた場所では、太陽のどこかと直線で結べるでしょう?どこでも自由に結べるわけではないので、太陽の一部が見えない…つまり部分日食のエリアです。AからCに向かうほど、またはBからDに向かうほど、太陽光がたくさん届きます。だからABの中心から外へ向かって明るくなる(=影がぼんやりする)のです。ハッキリした月の影が地球に映るわけではなかったのですね。
実際は太陽と月の中心を結ぶ線(図の黄色点線)が地球中心を通ることはなく、かなり地球の縁側にずれることもあります。今回は10:30頃にかなりこの図に近い状態で、しかも気象衛星ひまわりの真正面でした。地球に投影された影の形を求めるのは三次元の計算なので難しいけれど、地球近くでどれくらいの直径かは左上図から三角形の相似の知識で概算できるでしょう。中学生でも可能ですからやってみてください。
月の影がぼやけるのに似たような現象は、電球や蛍光灯などの「点光源ではなく大きさを持つ照明」などで日常的に体験しています。でも日食のとき観察するといっそう楽しいですよ。例えば、できるだけ高いところに立って遠くの壁や地面に自分の影を映してみると、縁がぼやけたり、所々に日食型の光が見えます(右画像)。今回見られなかった方も、ぜひ次の機会にご覧くださいね。(次回は2019年に2回起こります。)
宇宙のなかの太陽、月、地球は、A−B間が極めて狭くなる位置関係です。そりゃもう奇跡と言っても良いレベル。時にはAとBが逆転してしまい、皆既日食ではなく金環日食になることもありますね。私たちは本当に面白い星に生まれたものです。
参考:
アーカイブ:日食の一覧