冬の超大三角形は貴重らしい2024/11/17

冬の超大三角形
冬の超大三角形(特大三角形/巨大三角形)が話題になっています。過去や未来にもこの三角形があるか調べてみました。

シリウスとベテルギウスを結び、そのまま延長すると黄道にぶつかります。この交点の黄経は約80.9°(2000年分点)。またシリウスとプロキオンで同様にすると121.9°。そこで、五つの可視惑星を対象に、黄経がこのふたつの交点プラスマイナス5°に収まる日時を1900年から2100年まで算出して調べてみました。「夜に見えること」、つまり太陽が冬の大三角形からある程度離れていることも検索条件に加えてあります。

結果は記事下表の通り。おおよそ数十年に一回という稀さで、日本の晴天率考えたら一生に2、3回見ることができればラッキーでしょうか。現在の状態は意外に貴重な光景だったのでした。次回は2036年の金星と木星が加わった超大三角形(下A図)。今の火星の位置に金星が置き換わりますから、今年の豪華さを軽く凌駕しそう。ちょうど明け方の黄道光グランドクロスも見え始まって豪華ですが、残念なことに満月期にかかっています。金星は動きが速いため、月が無くなるのを待っていると三角が崩れます。多少ずれても気にしなければ何とかなるかも…。

下表を詳しく見ると1913年と2060年は期間が重複しています。これは三角交点近くに少なくとも三つの惑星がいるということです。下B図は2060年の例。三つどころか、木星も加わって三角形の一辺が惑星で埋まってますね。今年2024年も、2036年も、2060年も、下二桁が12の倍数。どうやら木星の公転周期が超大三角形の生成に大きく関与するらしい、と気付いた方は頭が冴えていますね。素晴らしい。

ちなみに春の大三角形は黄道が横切っているから惑星が追加されても大きくならないし、夏の大三角形は黄道から離れ過ぎて、しかも頂点を黄道側に向けているためこれも大きくなりません。超大三角形は冬だけの特権です。今年はまだしばらく見えますが、木星も火星も次第にずれてしまうため一旦おやすみ。来年春には両星が戻り、宵空でふたたび超大三角形を楽しめるでしょう。併せてみつご座の様子もお楽しみください。(記事内星図はステラナビゲーターおよびStellariumを使用。)

  • 20360908冬の超大三角形

    A.2036年9月8日明け方
  • 20600906冬の超大三角形

    B.2060年9月6日明け方


【冬の超大三角形が見える期間】
惑星1惑星2開始日終了日
金星木星1908-04-201908-04-30
火星金星1913-09-021913-09-06
土星金星1913-09-021913-09-06
土星火星1914-04-271914-04-30
木星金星1953-09-021953-09-04
土星金星1972-09-041972-09-13
火星土星1975-09-111975-10-03
火星土星1975-12-071976-01-07
火星土星1976-02-031976-02-25
火星木星1991-03-051991-03-25
金星木星1991-04-261991-04-30
火星土星2006-03-192006-04-06
木星火星2024-10-262024-12-09
木星火星2025-04-092025-04-29
木星金星2036-09-022036-09-11
土星火星2060-09-012060-09-09
土星金星2060-09-012060-09-10
土星木星2062-01-162062-04-01
土星火星2090-09-102090-09-27

  • 自作プログラムによる計算です。(利用暦表:JPL-DE440)
  • 惑星が黄道に沿って移動することを利用して、「黄経が80.896プラスマイナス5°」および「黄経が121.867プラスマイナス5°」にひとつずつ可視惑星が存在する期間を探しました。
  • 時刻も正確に求めていますが、あまり精度を追求する事でもないため省略しています。


冬の超大三角形の類似性
【補足:どれくらい形が似ているの?】
「超大三角形はオリジナルの三角形に比べてどれくらい相似なのか」という主旨の質問があったので、調べてみました。ただし天球上では球面三角法の性質に則り、「平行」や「相似」はありえません。誤解を招かないよう、ここでは「類似性」という言葉を使います。倍率が少し違うだけで「見た目が似ている」ことを幾つかのパラメータで推し量ってみます。

シリウスを原点星、火星に対する基準星をプロキオン、木星に対する基準星をベテルギウスとして、右下図のような「方向角差」と「離角比」を定義します。各惑星の方向角差が同時にゼロになれば、シリウスからのびる2本の大円に各惑星が乗っていることになります。また各惑星の離角比が同時に同じ値になれば、オリジナル三角形と超大三角形の辺の比が揃うことになるでしょう。それらが同時期に起こったとき「類似性が最高」と見なします。

定義説明
それぞれ日々刻々と変化しますので、10月1日から三ヶ月間を計算してグラフ化したのが左上図。自然界の事ですから同時に四つのパラメーターが揃うことは無いけれど、例えば10月31日ごろは二惑星が同時にオリジナル三角形の延長線上に極めて近かったと言えるし、10月24日ごろは二辺の離角比が一致していました。総合的に判断すると、10月下旬がいちばん類似性が高かったと言えるかも知れません。

球面三角法では「同じ形(合同)」は存在しても「形が似ている」ということを正確に定義できません。強いて言うなら球面の直径を変えれば完全な相似になります。地球と地球儀の関係です。でも変えた球面上の形を、大きさや曲率を変えずに元の球面へ貼り付けられないですね。こうした性質を分かった上で「似ている」ことをどう表現するか、あるいは似てない度合いを数値化できるかどうかは色々な考え方があると思います。三角形以外でも通じるような考え方だってあるでしょう。他の方法を思い付いた方はぜひやってみてください。

(注:上のグラフから読み取れる「類似性が高い期間」と、記事内表の期間はズレています。表のほうは辺の延長線と黄道が交わる付近に惑星がいるかどうかで判断しており、形が類似しているかどうかは関係ないからです。)


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