薄雲越しのリニア彗星 ― 2016/04/01
4月を迎えましたが、夜になると雲が多くなってしまう日々。十日間天気予報ではずっと晴れ間がなさそうです。昨夜から今朝にかけてもほぼ曇っていましたが、明け方ごくわずかな雲の隙間があったので、とりあえずリニア彗星(252P)をひとコマでも良いから撮ろうとスタンバイ。
何しろ北極星も見えないので、勘で極軸を合わせ、ピントもデフォルトのまま、写野も大雑把にしか向けられません。雲がないように見えるところにも薄雲が常にあり、月や惑星すら時々しか見えない空で50コマほど撮影しました。その中から雲の影響が少ない連続した8枚(2分間)を合成処理したのが左画像。画角は約5.3°×3.5°、上方向が天の北方向です。中央を外しましたが、なんとかリニア彗星が写ってくれました。
画像から測ると、緑色のコマは満月の視直径程度の広がりをキープしています。薄雲の影響や下弦の月が20°あまりのところで輝いていることもあり、コマの末端がどこまで広がっているかは分かりません。次にいつ晴れるか不明ですが、もうしばらく元気に輝いてほしいものですね。
参考:
リニア彗星(252P)に関係する記事(ブログ内)
何しろ北極星も見えないので、勘で極軸を合わせ、ピントもデフォルトのまま、写野も大雑把にしか向けられません。雲がないように見えるところにも薄雲が常にあり、月や惑星すら時々しか見えない空で50コマほど撮影しました。その中から雲の影響が少ない連続した8枚(2分間)を合成処理したのが左画像。画角は約5.3°×3.5°、上方向が天の北方向です。中央を外しましたが、なんとかリニア彗星が写ってくれました。
画像から測ると、緑色のコマは満月の視直径程度の広がりをキープしています。薄雲の影響や下弦の月が20°あまりのところで輝いていることもあり、コマの末端がどこまで広がっているかは分かりません。次にいつ晴れるか不明ですが、もうしばらく元気に輝いてほしいものですね。
参考:
リニア彗星(252P)に関係する記事(ブログ内)
今日の太陽 ― 2016/04/01
今年は火星とアンタレスの接近に注目しよう ― 2016/04/04
暦の上で清明を迎えました。晴天の少なかった3月に続き、4月になってもまともな晴れ間がありません。夜半の木星や明け方のリニア彗星(252P)など毎日でも見たい対象があるのに、ずっと観察できずにいます。
3月中旬に「ひとみ」を観察したとき(左画像/3月15日明け方撮影)や、下旬にリニア彗星が見えだしたころから目の片隅に入って気になっていた天体がもうひとつありました。火星です。火星は現在さそり座頭部に輝き、他の星に対してゆっくり東へ移動しつつあります。5月下旬に衝と地球接近を迎えますから、見かけも大きくなっているでしょう。
でも実はその前にもうひとつ火星に関連した現象があるんです。現象と言うのは大げさですが、「さそり座の1等星アンタレスに見かけ上で接近」するのです。一見して地味だし、数年に1回は見られるから取り立てて貴重でもないのですが、調べてみると今年は注目に値するベストタイミングと感じました。
天文が好きな方なら星座を親しむうちに星の名前を覚えるでしょう。「アンタレス」という呼び名はアンチ・アレス、すなわち「火星に対抗する者」という意味で付けられたというお話しを聞いたことがあるかも知れませんね(アレスとはギリシャ神話に登場する戦の神で、火星に同一視されます)。同程度の明るさと赤い色合いを持つふたつの星は、近くに並ぶことで競い合うように輝いて見えます。この競争を見やすい(=衝の時期にアンタレスと並ぶ)のはいつなのか、前々から気になっていました。
右は2016年4月1日から9月末頃までの火星の動きをステラナビゲーターで作図したもの。丸印は5日間毎の位置(上が天の北/左が天の東向き)です。火星などの外惑星が恒星に対して東へ移動するのは順行、西へ戻るのは逆行と呼ばれます。
この星図を見ると間もなく4月中旬に「順行から逆行」、6月末に「逆行から順行」に転じることが分かりますね。(切り替わる瞬間を留と言います。具体的な日時は当ブログのアーカイブ:惑星カレンダーで調べてください。)そして地球が火星を追い越すとき、つまり衝や地球接近を迎える5月下旬は「2回の方向転換(留)の中間」に起こることが分かります。これは地球と火星の軌道図を描いて「トラック競技のかけっこ」を想像すれば理解できますからやってみてください。
ここまでは少し天文を知っている方には常識かも知れません。でも「時期」に関してはいかがでしょう?今回注目したのは「火星がアンタレスと接近する時期にちょうど衝になることはあるか」ということです。アンタレスの黄経は249.76°(J2000.0)ですので、太陽が正反対の黄経(249.76-180=69.76°)に到達する時期に火星が衝を迎えるかどうか、と言い換えられます。太陽黄経が69.76°に近い日付は5月31日ごろ。アーカイブ:惑星カレンダーで1980-2039年の火星のすべての衝を調べると、5月末に最も近いのはなんと!今年の衝でした。
もうひとつ、右上星図を見て気が付けるでしょうか?今年は火星とアンタレスの接近が2回ありますね。1回目の最接近は今日から3週間あまり後の4月28日ごろ(追記:4月30日の観察記事参照)。そして2回目は8月25日ごろ起こりますが、このときの接近は異様なほど近いのです。実は「ここ数十年でもっとも近い火星とアンタレスの大接近」なのでした。
近隣60年間に起こる「火星とアンタレスが見かけ上5°以内に接近する時期」を全て調べたので、記事下に掲載しました。(※離角は各日0時JSTの計算値です。)今年の2回はそれぞれピンク文字の行ですが、一年内に2回見られるのは今年が唯一のケースでした。8月の接近時は接近日数も両星の距離(離角)もずば抜けていますね。宵の南空で毎日眺められる時期ですから期待できます。
左画像は前々回の最接近二日前(2012年10月19日夕方撮影)の火星とアンタレス。今年は火星の地球接近と一緒に、今のうちからアンタレスとの競争も追いかけてみましょう。言うまでもないですが、接近現象は最接近日だけ見るのではなく「継続観察」がお勧めですよ。
【火星とアンタレスが見かけ上で5°以内に接近する時期・1970年-2030年調べ】
期間開始 | 期間終了 | 日数 | 期間中の最小離角(実現日) |
---|---|---|---|
1973年1月12日 | 1973年1月16日 | 5日間 | 4.70°(1973年1月14日) |
1974年12月22日 | 1974年12月27日 | 6日間 | 4.45°(1974年12月25日) |
1976年12月1日 | 1976年12月8日 | 8日間 | 4.23°(1976年12月5日) |
1978年11月12日 | 1978年11月19日 | 8日間 | 3.98°(1978年11月16日) |
1980年10月22日 | 1980年10月30日 | 9日間 | 3.67°(1980年10月26日) |
1982年9月29日 | 1982年10月9日 | 11日間 | 3.22°(1982年10月4日) |
1984年8月28日 | 1984年9月11日 | 15日間 | 2.23°(1984年9月4日) |
1988年1月22日 | 1988年1月25日 | 4日間 | 4.83°(1988年1月24日) |
1989年12月30日 | 1990年1月4日 | 6日間 | 4.55°(1990年1月1日) |
1991年12月10日 | 1991年12月16日 | 7日間 | 4.30°(1991年12月13日) |
1993年11月20日 | 1993年11月27日 | 8日間 | 4.07°(1993年11月23日) |
1995年10月31日 | 1995年11月8日 | 9日間 | 3.81°(1995年11月4日) |
1997年10月8日 | 1997年10月18日 | 11日間 | 3.43°(1997年10月13日) |
1999年9月12日 | 1999年9月24日 | 13日間 | 2.75°(1999年9月18日) |
2003年2月1日 | 2003年2月3日 | 3日間 | 4.95°(2003年2月2日) |
2005年1月7日 | 2005年1月12日 | 6日間 | 4.65°(2005年1月9日) |
2006年12月18日 | 2006年12月23日 | 6日間 | 4.41°(2006年12月21日) |
2008年11月27日 | 2008年12月4日 | 8日間 | 4.18°(2008年12月1日) |
2010年11月8日 | 2010年11月15日 | 8日間 | 3.93°(2010年11月11日) |
2012年10月17日 | 2012年10月26日 | 10日間 | 3.61°(2012年10月21日) |
2014年9月24日 | 2014年10月4日 | 11日間 | 3.08°(2014年9月29日) |
2016年4月22日 | 2016年5月1日 | 10日間 | 4.93°(2016年4月28日) |
2016年8月16日 | 2016年9月2日 | 18日間 | 1.79°(2016年8月25日) |
2020年1月17日 | 2020年1月21日 | 5日間 | 4.75°(2020年1月19日) |
2021年12月26日 | 2021年12月31日 | 6日間 | 4.49°(2021年12月28日) |
2023年12月6日 | 2023年12月12日 | 7日間 | 4.25°(2023年12月9日) |
2025年11月15日 | 2025年11月23日 | 9日間 | 4.02°(2025年11月19日) |
2027年10月26日 | 2027年11月4日 | 10日間 | 3.75°(2027年10月31日) |
2029年10月3日 | 2029年10月13日 | 11日間 | 3.33°(2029年10月8日) |
※調査期間は1970年1月1日から2030年12月31日までの毎日(各0時JST)です。更に広い範囲の調査(1900-2099年、3°以内)は8月24日記事中にありますので参考にしてください。
※計算はステラナビゲーター位置推算ツール+自作ソフトを使用しました。アンタレスの固有運動は考慮せず固定位置です。
※離角は各日0時JSTでの計算値(J2000.0)です。最小離角は各期間の極小に近いですが極小値そのものではありません。
リニア彗星が見やすいです ― 2016/04/06
昨日まで4、5日に渡って曇りや雨のお天気でした。昨夕に少し雲が薄くなり、夜半前には久しぶりの星空。日付が今日6日になってからまた薄雲が度々湧きましたが、リニア彗星(252P)を観察しました。
リニア彗星はだいぶ北上しました。へびつかい座の中ほど、あと4日ほどで天の赤道に到達する位置です。今朝は球状星団M14から1°あまりのところで緑色に光っていました。左は3:15頃の撮影で、画角は約5.3°×3.5°、上方向が天の北方向です。
彗星の動きが小さくなってきたので恒星位置基準で合成し、星団のツブツブが見えるようにしました。リニア彗星左上の明るい球状星団がM14、右下の恒星左側はNGC6366という暗めの球状星団です。(追記:この画角だと二日後の撮影でもリニア彗星はM14と一緒に写せました。)また右下画像は彗星位置基準で合成したものを白黒反転しています。
相変わらずコマが大きいですね。でも尻尾は見えないようです。アパートの駐車場で撮っているのですが、ここは夜間でも顔がはっきり分かるほど明るい光害地なので、山などの条件が良い場所ならば彗星はふたまわりくらい大きく感じるかも知れません。
薄雲が何度か通過していますが、月明かりに邪魔されない貴重な晴れ間に無事リニア彗星を観察できました。はてさて、次はいつになることやら…
参考:
リニア彗星(252P)に関係する記事(ブログ内)
リニア彗星はだいぶ北上しました。へびつかい座の中ほど、あと4日ほどで天の赤道に到達する位置です。今朝は球状星団M14から1°あまりのところで緑色に光っていました。左は3:15頃の撮影で、画角は約5.3°×3.5°、上方向が天の北方向です。
彗星の動きが小さくなってきたので恒星位置基準で合成し、星団のツブツブが見えるようにしました。リニア彗星左上の明るい球状星団がM14、右下の恒星左側はNGC6366という暗めの球状星団です。(追記:この画角だと二日後の撮影でもリニア彗星はM14と一緒に写せました。)また右下画像は彗星位置基準で合成したものを白黒反転しています。
相変わらずコマが大きいですね。でも尻尾は見えないようです。アパートの駐車場で撮っているのですが、ここは夜間でも顔がはっきり分かるほど明るい光害地なので、山などの条件が良い場所ならば彗星はふたまわりくらい大きく感じるかも知れません。
薄雲が何度か通過していますが、月明かりに邪魔されない貴重な晴れ間に無事リニア彗星を観察できました。はてさて、次はいつになることやら…
参考:
リニア彗星(252P)に関係する記事(ブログ内)