火星大接近!彗星たちも明るい!2018/08/01

20180801火星
昨夜、火星が地球にもっとも近くなりました。2年2ヶ月前の前回の接近よりも地心距離が1769万kmほど近く、視直径は約5.72″大きく見えました。5.72″の差というのは昨夜撮影した天王星の視直径の1.5倍程度です。よほど拡大しない限り違いが感じられませんが、例えわずかの差でも地上から天体観測する人々にとって大事な意味を持ちます。なお次回2020年10月の接近も今回ほどではないにしろ、2016年の接近よりは近いです。涼しい秋空で十分楽しむことができるでしょう。

昨夜から今朝は信じられないほどの快星夜。体力さえあればいくらでも星が堪能できるような好条件でした。左は8月1日になって30分ほど経ったころ撮影した火星。残念ながらここ数日ではもっとも大気が揺らいでいて、撮影条件はよくありません。それでも模様などひと通り確認できるのは大接近のおかげですね。

20180801火星図
右図は撮影時刻のGuideによる火星図。三日連続で撮っていますが、また少し地物が移動している様子が分かります。この火星では小シルチスが中央にあり、大シルチスが左上、キンメリア人の海が右に広がっています。相変わらず南半球の明るいヘラスや南極冠は目立ちますね。

大接近に併せて各地で観察会などが催されたと思います。でも4ヶ月前の記事に書いたように、接近した火星を見ただけでは事の重要さ、貴重さが理解できないでしょう。ひと月に1回でも良いから、継続して観察することで、明るさや大きさの変化が身を持って納得できるのです。これまでの火星を見ないでいきなり大接近を見てしまった方は、今からでも遅くありません。秋が終わる頃まで時々火星を眺めてください。望遠鏡を使っても良いし、肉眼でも構いません。「変化を見る」という惑星観察の一番美味しいところを味わってくださいませ。

さて、よく晴れていたので、引き続き彗星をふたつ観察しました。ひとつは二晩前にも撮影したジャコビニ・ツィナー周期彗星(21P)。前回は雲が度々流れていたので露出を伸ばせず心残りでした。今回はたっぷり45分ほど露出し、立派な尾のディティールを写し取ることができました(下A画像)。うーん。カッコイイですねぇ。

もうひとつはパンスターズ彗星(C/2017 S3)。初撮影した7月14日のころは9等台でしたが、翌日頃にバーストを起こし、一気に7等まで明るくなったそうです。その後再び暗くなったのですが、どんな状況か気になっていました。薄明がかなり進んでいたのですが、ちょうど隣家の屋根上に顔を出したので無理に撮影し、使えそうな15分ぶんのコマを彗星基準でコンポジットしました(下B画像)。ビックリするほど明るく大きく広がっており、尾もしっかりしています。これから低くなってしまうのがもったいない!北東の低空を観察可能な方はぜひご覧になってください。(※彗星画像はいずれも白黒。)

  • 20180801ジャコビニ・ツィナー周期彗星(21P)

    A.ジャコビニ・ツィナー周期彗星(21P)
  • 20180801パンスターズ彗星(C/2017 S3)

    B.パンスターズ彗星(C/2017 S3)


【付記】
このパンスターズ彗星(C/2017 S3)については、バーストまでしっかり見えていた彗星核が写らなくなったことから、「本体が蒸発してしまった」かも知れないという見方があります。もしそうなら、上画像に写っているのは「彗星の残骸」と言うことになるでしょう。残骸がこれだけ明るいのも不思議です。いずれにしても今後の詳しい観測が待たれます。


参考:
2018年火星の地球接近に関する記事(ブログ内)

今日の太陽と気温上昇2018/08/01

20180801太陽
8月がスタートしました。夜中から快晴でしたが、朝からもうなぎ登りの気温は9時台に30度を越え、昼過ぎには猛暑日確定です。一週間後は暦の上で立秋ですが、酷暑は9月まで継続しそうですね。

20180801太陽リム
左は13:20過ぎの太陽。活動領域はありませんが、昨日も見えていた左側の明るい部分がまだ残っています。黒点はまだできないのでしょうか?左下リムのプロミネンスも続いています。その上のほうにも結構大きいものが出てますね。

2018年真夏日と熱中症(途中経過)
さて、昨日までに気象庁と消防庁からそれぞれ7月までの真夏日地点数と6月までの熱中症搬送人数の確定値が発表になったので、7月分の熱中症搬送速報と併せてグラフを描いてみました(右図)。6月下旬以降、西日本豪雨や台風12号などの期間を除いて500地点以上をキープし続ける真夏日地点数。その変動に併せるかのように熱中症搬送も増減をくり返しています。

アーカイブ:真夏日と熱中症をご覧いただくと分かるように、2011年以降去年までの統計で一日当たりの搬送人数が3000人を越えたことはありません。最高値は2013年の2793人(8月10日)、次いで2015年の2762人(8月1日)。いずれも8月に入ってからの記録でした。昨日・今日と真夏日地点は750点を越え、当分は同じ状況が続くだろうと思います。みなさん、どうか十分な対策をお願いします。

火星の衛星撮影に挑戦2018/08/02

20180802火星と衛星
昨夜から今朝は夜半過ぎまで雲が多く、予定していた観察が思う様にできませんでした。それでも低くなった火星に望遠鏡を向ける時間があったので、念願の「火星の衛星」撮影にチャレンジしました。

前夜までより透明度が落ち、また大気の揺らぎも最悪です。練習のつもりで撮影、画像処理を施してなんとか像を取り出しました(左画像)。火星の衛星であるフォボスとダイモスは共に約11等で、撮影中は全く見えませんから、全ての処理が終わるまで写ってるかどうかも分からないのです。撮影は火星の位置と計算した画角のみが頼りです。

右下図は撮影時刻のGuideによる火星周囲星図。近くにあった同光度程度の恒星も一緒に写り、位置関係も合っていますので、ノイズなどではないことが確認できました。なお衛星像は白黒撮影で、直後に撮影した火星のカラー画像を合成しています。火星から斜めに伸びる筋は望遠鏡の副鏡スパイダーによる回折光条、また格子状に出ているゴーストは撮像素子から投影された回折パターンの内部反射像と思われます。

20180802火星周囲の星図
2年あまり前の前回の接近時にも衛星撮影に挑戦しました。光学系も画像処理方法も全く違いますが、毎回それなりに苦労し、また楽しくチャレンジしています。火星本体が地球から遠い時期は衛星光度も4等級以上暗くなってしまい、また火星に近いため分離撮影が難しくなります。まさに大接近時ならではのテーマと言えましょう。

もう少し早く晴れていたら火星南中と両衛星最大離角のタイミングがバッチリだったのですが、曇っていてダメでした。このような良いチャンスはなかなかありませんが、火星が離れてしまう前に機会があれば、今度は衛星の動きも併せて観察したいと思います。

【付記:両衛星を同時に撮影できる条件とは?】

2018年8月一週目・フォボスとダイモスの動き
「フォボスとダイモスを同時に撮影する」ときの条件を考えてみましょう。例えば両衛星の火星に対する位置は2018年8月最初の六日間なら左図のようになります。火星中心が原点(赤経差=0)にあるものとし、赤経方向=天の東西方向の離角をグラフにしました。

火星の視直径は8月いっぱい20秒角を越えているので、赤経差が0プラスマイナス10秒角内なら間違いなく衛星と火星が重なって見えません。また火星のすぐ側も眩しいため、20秒程度離れていても検出は困難と考えたほうが良いでしょう。できるだけ離角が遠い時期を狙う必要があるのです。火星は衝から日があまり経っていませんので、8月内なら日本全国だいたい真夜中の1時間前から数時間前に南中するでしょう。南中のころ一番高く見えますから、天気の心配さえ無ければ一番鮮明に写せる時間帯です。

2018年8月3日 22:20 - 23:10
2018年8月6日 22:50 - 23:00
2018年8月7日 22:10 - 22:30
2018年8月8日 22:10 - 22:20
2018年8月10日 22:30 - 22:50
2018年8月12日 21:50 - 22:00
2018年8月15日 21:40 - 22:30
2018年8月19日 21:20 - 22:00
2018年8月22日 21:40 - 22:00
2018年8月27日 20:50 - 21:30
2018年8月31日 20:40 - 21:00
この時間帯にちょうど両衛星が火星から離れてくれないと、火星の明るさに負けてしまいます。輝度差が極端に大きな三重星を写す感覚ですね。(※南中時刻は観測地経度に左右されますが、日本は135度プラスマイナス十数度に収まるので、南中時刻のずれ幅は中央値プラスマイナス1時間を越えません。)

ということで「南中時刻プラスマイナス30分に、フォボスが火星から25秒角以上、ダイモスが50秒角以上離れるチャンス」を探すことになります。フォボスが写ればダイモスも問題ないので離角条件を同じにしても構わないのですが、より遠くにあるほうが写しやすいのでこの条件にしました。

概算した結果は右表の通りです。10分刻みの大雑把な計算ですが、ひとつの目安になるでしょう。9月以降でも大丈夫だとは思いますが、だんだん火星も衛星も遠くなり、南中時刻も早くなってきます。チャレンジする方はお早めにどうぞ。

  • 右表の南中時刻は関東基準ですが、日本国内なら問題ないでしょう。
  • 赤経差のみの考慮なので、赤緯差まで考えると離角が若干大きく見込めます。
  • 2つ同時、あるいは南中時にこだわらなければ、ほぼいつでも可能と思います。


参考:
2018年火星の地球接近に関する記事(ブログ内)

またしても台風のたまご→台風13号発生2018/08/03


20180803-0300気象衛星画像
昨夜2日21時に「台風になるかも知れない熱帯低気圧」が発生したと気象庁から発表がありました。グアムやサイパンの近くですが、今後は小笠原諸島や関東沿岸などに接近する可能性があります。数日内に夏休みを南の島で過ごす方は特に注意が必要です。

左は発生から6時間経った本日3:00の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。右下の赤点円が熱帯低気圧、左の赤点円はまだ存在し続けている台風12号で、それぞれの中心から直径1000km円を示しています。もうパッと見た目には「たまご」どころか、立派な台風に孵ってるみたいな風体ですね。

南西諸島を除き日本は広く高気圧に覆われ、雲らしい雲はほとんど見当たりません。この影響か、熱帯低気圧の速度もゆっくりです。ただ、今後は日本に向かう可能性が高いので注意しましょう。

異例尽くしだった台風12号は九州南西の海上で小さく二回転したあと、ようやく日本から離れつつあります。それでもまだ沖縄付近に雨雲の影響が出ていますね。この画像の時点で発生から丸9日経ちました。今年発生した台風としては余裕で継続期間トップです。

20180803-0900台風13号
【10:30追記】
気象庁によると、この熱帯低気圧は本日3日9:00に台風13号「サンサン/SHANSHAN」になりました。直前の台風12号発生から9日と6時間後、台風12号はまだ活動中なので、現時点ではダブル台風となっています。

右は発生した9:00の気象衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。ナチュラルカラー処理のため、水色の雲は活発に上昇した氷粒状態、白やグレイの雲は低層の水粒状態を表します。赤点円は台風中心の直径1000km円。

台風13号は5日から6日にかけて暴風域を伴う強い台風になる見込みとのことで、8日頃には関東近海までやって来る様です。ご注意ください。