今日の太陽2018/08/17

20180817太陽
昨日は時折小雨の舞う強風の一日で、夜に雨が上がったものの全く晴れませんでした。今日は朝からカラッと晴れています。真夏の青空と似たように見えますが、完全に秋の空ですね。昨日の名残のような強風が時々吹くけれど、概ね静かです。

20180817太陽リム
左は13:30過ぎの太陽。大気が大きく揺れていて、夏の安定した様子とは違うことがここからも分かります。小さな黒点を伴う活動領域12718は中央左下。北半球のダークフィラメントはまだ消えずに残ってます。プロミネンスは小さなものだけでした。まだ時々トンボが横切るのが見えます。

織姫星と彦星はどれくらい遠距離恋愛か2018/08/17

今日2018年8月17日は旧暦の七夕(伝統的七夕)です。新暦や月遅れの七夕は随分前に終わってしまい、お盆さえ過ぎてしまいましたので、よほど関心を持っていらっしゃる方でもなければ忘れられているかも知れません。幸い、一部の地方を除いて概ね晴れ間が広がっていますので、宵空の織姫星や彦星を仰いでみてください。

  • 織姫星(ベガ)

    織姫星(ベガ)
  • 彦星(アルタイル)

    彦星(アルタイル)

ところで、よく星の話題に取り上げられるのが「織姫星と彦星は実際どれくらい離れているか」という、全くロマンの無いネタです。先日ネット上でどれほどの値が使われているのか調べたところ、あまりに大雑把で驚きました。両星間が16光年と言うものもあれば25光年というのもあります。15光年や14光年というのもありました。いい加減過ぎやしませんか?

引用が何重の曾曾曾曾・・・曾孫引きが分からないような値が平気で使われているサイトの多いこと多いこと…。ネット検索はデータの新旧優劣関係なく出てくるので、「それっぽい値」が見つかると吟味することなく引用することが多いのでしょう。書籍かネットかに関わらず、そのデータが算出された時代と当時の精度、その後に値が改善されたかどうか、あるいは誤植や表示ミスなど、データエラーには様々なケースがあります。違う方法で求められた「競合値」が存在する場合もあります。サイト主は引用する前に十分な下調べをしてほしいなぁと感じました。

織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)について、SIMBAD(the Set of Identifications, Measurements, and Bibliography for Astronomical Data)のデータから現時点の距離を求めてみました。SIMBADから幾つもの天文データベースを調べることができ、それぞれの天文カタログが創られた時点の値や誤差も分かります。以下の計算で使ったのは両星のトップページ・Basic dataに書いてある数値です。

    ベガ(データの引用元ページ

  • 赤経:18h 36m 56.33635s (J2000.0)
  • 赤緯:+38° 47′ 01.28″ (J2000.0)
  • 固有運動(赤経):200.94 mas/年
  • 固有運動(赤緯):286.23 mas/年
  • 年周視差:130.23 mas
  • 視線速度:-20.6 km/s
  • 地球からの距離:25.0446 光年 (J2000.0)
    アルタイル(データの引用元ページ

  • 赤経:19h 50m 46.99855s (J2000.0)
  • 赤緯:+08° 52′ 05.95″ (J2000.0)
  • 固有運動(赤経):536.23 mas/年
  • 固有運動(赤緯):385.29 mas/年
  • 年周視差:194.95 mas
  • 視線速度:-26.6 km/s
  • 地球からの距離:16.7303光年 (J2000.0)


各位置は2000.0年基準の値です。固有運動と年周視差に出てくる単位「mas」は1秒角を1/1000したもの、つまり「ミリ秒角」。地球からの距離は年周視差から自己計算しました。ただし1天文単位を149597870.7kmとします。

織姫星と彦星の実距離
いっぽう、位置情報から両星の見かけの離角は約34.195186°ですので、三角形の余弦定理を使うと「ベガとアルタイルは西暦2000年現在、14.6286光年離れている」と計算できます。これが現時点で最も確からしい値と考えられますね。今回は省略しますが、SIMBADに載っている誤差範囲まで考慮すれば、各値の誤差範囲も計算できるでしょう。また固有運動と視線速度まで考慮すると、(変化しないと仮定して)何万年前や何万年後の位置・距離まで計算できます(右図は概算例)。もっとも現状の精度が高々少数以下1桁や2桁なので、何十万年単位だと誤差はかなり大きいと思いますが…。

権威ある天体解説書でさえ、何十年も前に書かれたものは引用されているデータが古く、現在知られている理論や値と異なる場合もあるかも知れません。天文に限らずあらゆる学問は日進月歩ですが、科学者・技術者はデータ精度を一桁でも上げるため常に探査装置やノウハウ改良をしています。「円周率は3で良い」なんて思う人はひとりもいません。この記事で計算した値だって十年も経てばすっかり古くなるでしょう。古い情報をコピペ・リツイートして満足するような風潮は消え去ってほしいなぁ…と七夕さまに願うのでした。

夕空に並ぶ惑星たちと月2018/08/17

20180817夕空の月と惑星たち
珍しいことに、そして有り難いことに、夕空にはほとんど雲がありませんでした。強風もおさまり、絶好の天体観察日和。折しも今日は「旧暦七夕」です。重病患者なので無理しない程度に、星空を楽しむこととしました。

晴れたらやってみたかったことがありました。夕空に並んでいる惑星たちと街並みとを一緒に撮影することです。近くの陸橋から全体が撮れそうだったので、日暮れと共にカメラを担いで歩いて行きました。現地で広角カメラを組み立て、ファインダーに全景を捉えて「しまった!」と思いました。全く予期してなかったのですが、陸橋には至るところに水銀灯があって、広角だと天頂方向にすっかり入ってしまうのです。これは迂闊でした。

20180817夕空の月と惑星たち
何とか影響の無いアングルを定め、どうしてもかぶる光は手で覆い隠して撮影しました。どうにか目立たないよう仕上げたのが左上画像です。どこに何が写っているかは右のマーカー付きをご覧ください。広角なので分かりませんが、金星の下のほうには富士山も見えました。

道路際かつ線路の上なので、タイミングによっては強烈なゴーストが入ってしまいますが、これは入念にタイミングを外すことで回避できました。ただもうひとつ盲点だったのは街頭に集まる虫たちです。たくさんの虫の軌跡が画面にUFOのごとく写ってしまうのでした。なんだか面白くも感じましたけど。上に向けられなくて七夕の星のうち織姫星が入らなかったのは残念。また方策を考えようと思います。

20180817月と木星
今夜は上弦前の月と木星とが接近していました。離角は3.5°あまりです。できるだけ拡大して撮影したのが左画像。なんとか四大衛星が全て分離して写りました。木星左側にカリスト、右側には木星から近い順にイオ、エウロパ、ガニメデです。左画像でははっきりしませんが、月にはごく淡い地球照も見えました。

来月9月14日にも宵空で月と木星とが接近します。今日はお天気が悪かった、という方は、来月を楽しみに待っていてください。なお「曜日の星々」が並ぶ光景はだいたい10月頭のタイミングでいったん終了です。お早めにどうぞ。

参考:
曜日の星々の、特別な一週間(2018/07/19)