明日は笹の節句2015/07/06

節句というと3月や5月ばかり印象が強いですが、五節句と言われるように1月も7月も9月も節句がありますね。年齢によって節句のとらえ方や感じ方は大きく違うのでしょう。特に若い世代は「七夕」という言葉は使っても、笹の節句(竹の節句)は使いませんよね。それぞれ季節の植物に絡んだ和名だったり、いろいろ面白いんですけれど。とりわけ公式な(?)願掛けという点で、七夕は初詣にも勝る日本行事ではないでしょうか。
笹飾り
他の季節・節句行事はお祝い・感謝・挨拶の意味合いが強いですから。七夕はこれらにあまり当てはまりません。星に願いをかけるなんて何だか洋風ですが、歴とした伝統文化(起源は中国)。神仏でなく星(天)が対象というところも独特です。

昔の人々は芋(里芋:右下画像)の葉にたまった朝露を集めて墨をすり、それで短冊に願いを書いたとのこと。こうすると願いが叶うとの伝承があったようです。一度これを本気でやってみましたが、叶ったような叶わなかったような…(笑)

里芋の朝露
季節の節目と言っても誤解してはならないのが、「今と昔は暦が違う」こと。記事末尾に節句一覧表を載せましたが、日付はもちろん旧暦です。例えば俳句や短歌で「七夕」は初秋の季語でした。旧暦7月から9月は「秋」なので当然です。お正月の挨拶を「新春のお慶びを云々…」と交わすんだったら、七夕だって「初秋の慶び」で然るべき。

明治以後使っている現在の暦とそれ以前の旧暦とはズレがあり、そのずれ方も毎年違います。だからこのブログ記事のタイトルも、本来は違うのです。現代からすれば「昔の暦はズレてて面倒くさい」って感じますが、もし昔の人が現代暦を見たら「そんなややこしい暦は使えないよ」「なんで秋始めの七夕祭りを五月雨時にやるんだい?」と思うでしょう。(※旧暦5月は今で言う梅雨時。)どっちもどっち、お互い様。人間って慣れ次第で何とでもなるものです。

現代の七夕祭りは開催期日がかなりバラバラですね。きちんと七夕を行うなら、新暦7月7日でも月遅れ(8月7日)でもなく、旧暦に従ってお祝いをしたら良いと思います。こんな雨が多い季節よりもよほど「星祭り」に近づけるでしょう。旧暦七夕は毎年必ず上弦の1日ほど前。宵に美しい半月を楽しめて、月が沈む夜半からは星明かりだけの満天の空を拝めます。国立天文台でも「伝統的七夕の日」として積極的に広報していますよ。伝統的七夕がいつなのかは当ブログのアーカイブ:伝統的七夕・中秋の名月の一覧に記載(1971-2030年)しています。ちなみに今年は8月20日。本来の笹の節句はまだ1ヶ月半も先でした。

市中繁栄七夕祭
ところで、笹飾りはいつから飾るの?っていう疑問を毎年のように耳にします。松飾りやひな飾りなどは一応のルールがありますが、笹飾りはあまり聞かないのです。「当日の晩に…」という意見もありますが確たる根拠にたどり着いたことはありません。どなたかご存じならぜひ教えてください。

たとえば有名な浮世絵師の歌川広重(安藤広重)が描いた「江戸名所百景」の中に「市中繁栄七夕祭」という絵があります(左画像)。1856-1858年頃の庶民の七夕風景と考えられますが、空の表現からして夜ではないようです。(他の絵には月や星など夜と分かる表現がいくつもあります。)別の資料には前日すでに飾っていた表記もあるそうなので、現代庶民である私たちだって笹飾りは当夜にこだわることもないのでしょう。少しでも早く準備して長く節句を楽しみ、あれもこれもと願掛けする心理は、昔も今も一緒ですね。

※左画像はWikipediaパブリックドメインを利用したサムネイルのみです。元画像はWikipedia「名所江戸百景」の「秋の部」から「市中繁栄七夕祭」をご覧ください。


【節句の変遷】
主な節会(せちえ)
※奈良時代以前
日付(旧暦)節句を整理
※江戸時代
別名現在の文化
元日節会1月1日元旦
白馬節会1月7日人日(じんじつ)七草の節句七草粥の日
踏歌節会1月中旬
※十五夜頃
上巳節会3月3日上巳(じょうし)桃の節句雛祭り
端午節会5月5日端午(たんご)菖蒲の節句こどもの日
相撲節会7月7日七夕(しちせき)笹の節句七夕祭り
重陽節会9月9日重陽(ちょうよう)菊の節句菊祭り
豊明節会11月下旬
※新嘗祭最終日
勤労感謝の日


参考:
今日は旧暦七夕です(2015/08/20)

衝を迎えた冥王星と探査機ニューホライズンズの思い出2015/07/07

突然ですが、下画像から冥王星を探してみましょう。微かに写っている冥王星の位置が4日経つ間に明らかにずれていますよ。画像下、ふたつのボタンを押すと画像が切り替わります。ネット環境によっては表示変更に時間がかかることもあるので、ボタンを押して切り替わらなくても慌てず少し待ってください。画像内の日付文字が変われば大丈夫。




200505冥王星
正解は右画像の位置。どうですか、合っていましたか?分からなかった方は右の解答を覚えてから、もう一回トライしましょう。かなり見やすくしているので星探しに慣れていれば数秒で分かっちゃうけれど、大多数の方には難しいのではないでしょうか。冥王星はそれほど遠く、暗い星です。

惑星探査機「ニューホライズンズ」が一週間後の14日に最接近するとのことで、このところ話題に上っている冥王星。通信トラブルが心配されましたが、ひとまず探査続行のようです。上画像に写っていた微かな星を間近で撮影した画像が幾つも届いています。冥王星は昨日7月6日に衝を迎え、今年一番見やすい時期を迎えました。この機会に記念撮影したかったのですが、茨城は6月以来ずっと晴れ間が安定しないまま今日に至ります。仕方なく、冒頭では約10年前の衝(2005年6月)の少し前に初めて撮った冥王星画像を使った次第。当時はまだ準惑星でなく太陽系9番目の惑星で、左下に写っているへび座(尾)ξ星の近くにいました。

今回冥王星に向かっている探査機ニューホライズンズは日本時間2006年1月20日明け方に打ち上げられました(左・NASA画像より)。当時はあまり注目されませんでしたが、地球から遠ざかる姿が日本でも見えるかも知れないとのことで観察したのを覚えています。

20060120ニューホライズンズ
お見せできるようなものではありませんが、右はその時の画像。明け方5時過ぎ、残念ながら薄曇りで星がはっきりせず、該当星野へ望遠鏡を向けるのすら困難だったことを覚えています。計算上は点線○印付近にいたらしいのですが、これを含む一連の画像は雲かぶりやノイズが多く検出できませんでした。中央の明るい星はうみへび座γ星。こちらの記事でしっぽ側(スピカの下)に写っています。ここを強拡大したのが右画像ということです。偶然にも当時同じ場所で撮影してました。

あれから9年半近く経ち、この画像内にいたであろう探査機ニューホライズンズは47億7030万km彼方のゴール間際まで到達しました。もう彼の姿を見ることはできませんが、目指した星をいつかまた見てみたい…。日々実物の空をじっくり見上げ星を追い求めるというのは、こんな壮大な旅に付き添っていることだと感じます。それがどんなに拙い観察であれ、ネットニュースやNASA画像を見てバーチャルに浸っているだけでは決して感じ得ない、何ものにも代え難く貴重な深い体験です。

冥王星の軌跡(2005-2015)
※2005年頭から2015年末までの冥王星位置と、今回の記事に登場した主な位置をステラナビゲーターで星図にしてみました(左)。図の左側で11回(11年分)螺旋を描いているのが冥王星の日々の視位置。2007年には当時さそり座に見えていた木星を使ってスイングバイ(引力を利用して加速すること)しています。探査の旅路がこうしてコンパクトな星野にまとまってしまうのも、冥王星が遠い証拠なのでしょうか。

参考:
アーカイブ:2015年の冥王星と探査機ニューホライズンズに関する記事

今日の太陽は一番小さい…はず2015/07/07

2015年太陽比べ
今日も小雨続きの空。もう8日も太陽の姿を見ていません。黒点やプロミネンスなど、どうなっているのでしょうか。悪天はまだ続きそうです。

本日地球は遠日点を通過、つまり太陽から最も遠くなりました。もし太陽が見えていたら一年で一番小さく見えたはずです。調べてみると前後10日くらいは見かけが0.1秒角(1秒は1度の1/3600)ほどしか変わらないので、8日前の6月29日に撮影した太陽と、近日点通過日の1月4日に撮影した太陽とを使い、見かけの違いが分かる画像を作ってみました(左)。それぞれ機材が違うので像の写りは異なりますが、今回は大きさの比較と言うことでご勘弁を。(※本日の太陽を使ったとしても、この画像なら1ドット程度しか差がありません。)

大きく見える太陽は小さい太陽より3.4%ほど膨らんでいます。遠日点と近日点それぞれの太陽距離は毎年微妙に違いますが、ブログに載せている画像ならほとんど差が無い程度。実際の近日点・遠日点通過日の太陽画像を使ってこの比較イメージを作れたら最高なんですが、毎年の遠日点通過は7月上旬、梅雨空です。これを脱するには1000年ほど待たないとダメです……www。

運用が始まったひまわり8号2015/07/08

20150707_1100ひまわり8号・全球可視
ひまわり8号が昨日の七夕昼前から正式な運用を開始しました。遠くの惑星写真も良いけれど、最も身近な惑星「地球」の素顔も毎日ワクワクします。空が好きで、気象衛星と共に育ったと言っても過言ではない自分ですが、ひまわり8号の画像は「ついにここまで来たか」と唸るような素晴らしいものでした。

左上と右下の画像は気象庁のサイト・気象衛星のページから、正式運用開始最初の2015年7月7日11:00の画像(全球・可視画像)と、翌日8日に日本の夜明けが始まった3:00の画像(同)。見慣れていた今までの着色カラーではなく新搭載のカラーカメラで撮影されたもので、実際の見た目に近いと言います。7月4日以来注視している台風9号・10号・11号もしっかり写っていますね。配信が始まったときは柄にも無く高揚しました。8日3:00のほうはこの季節らしく太陽が北寄り(上寄り)から照りつける様子がよく分かります。数ヶ月後、あるいは半年後に比べてみると良いでしょう。

20150708_0300ひまわり8号・全球可視
願わくば、もっと大きな画像を一般に無償提供してほしいです。もちろんプロの研究者向けのアーカイブは構築されているし、やろうと思えば機材やソフトをそろえて自力受信もできます。でもそうではなく、普通の庶民がネットで扱えるレベル(例えばデジカメ1画像程度の大きさ)の取り回しやすいアーカイブは見たことがありません。気象庁サイトの画像は時代錯誤かと思うほど小さいし…。

空に親しみ、地球を称え、防災意識だって高まるほどの深いニーズがあると考えるのは私だけでしょうか。狭い征服欲で地域紛争が絶えないのも、「ちっぽけな星・地球」をちゃんと見せてないせいだとさえ思うこともあります。GONGサイトのように太陽でさえ1分おきに画像検索できる時代ですから、地球の「すっぴん写真」もぜひ検索可能になってほしい。(私が知らないだけで、存在しているのかも。どなたかご存じなら教えてください。)