カシオペア座の新星が増光中2020/08/05

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8月2日夜に撮影したカシオペア座の突発天体(カシオペア座の新星)について、星仲間の(の)さんから増光しているとの情報がありました。撮影時に焦点距離が短かった心残りもあたので、今朝未明に大きい機材で再度撮ってみることにしました。

満月過ぎの月が透明度の悪い空を照らす白っぽい夜でしたが、何とか撮影成功(左画像)。7月下旬の発見時は12.9等でしたが、今は10等台で輝いています。このクラスなら月夜でも難なく写るから嬉しい。今後どうなるでしょうか。

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ひととおり撮影が終わった時点で月がまだ屋根に隠れてなかったので、望遠鏡を向けてみました。一晩前の満月時よりシーイングが悪かったけれど、ひとまず撮影(右画像)。撮影時の高度は30°を割り込んでいたため、かなり眠い画像になりました。

秤動で東側が見やすく、危難の海がかなり丸く感じます。フンボルト海は見えますがフンボルト・クレーターはほぼ影の中。ダブル・フンボルトにはなりませんでした。2日後あたりに月面Kが明暗縁に達しますが、今月は月の出前になってしまうようです。

久しぶりの満月、火星も堪能2020/08/04

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昨夕は雲が多かったので彗星たちは早々に諦めましたが、夜半になると快星になりました。前夜より気温が2度高く、透明度がやや悪いものの、シーイングはかなり安定しています。

楽しみにしていた8月の満月とご対面。左は満月時刻(4日1時前)頃を狙って撮ったものです。高度が30°しかなかったのに大気はとても安定していました。彩度をかなり上げてミネラルムーン色調にしても破綻が見られません。クレーターや海の色彩の違いまでよく分かります。

今回の満月は北側が欠けています。秤動によって月面が左下を向いているため、北側や東側の地形がよく見えますね。北極付近にあるヘルミットやピアリーなどのクレーターも容易に見つけられるでしょう。

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少し時間をおいて、3時過ぎに高くなった火星にも望遠鏡を向けました。火星の地球最接近まで残り2ヶ月、もう小接近程度の視直径に達しています。高いおかげでとても見やすく、川底を見ているような像ではありません。これは嬉しい!

位相角が43°近くもあるため、本体が大きく欠けています。それでも地形らしき模様が判別できますね。中央の大きな影はオーロラ湾付近、欠け際にはアリンの爪の一部。南極冠が眩しい。火星はこれからどんどん大きくなりますよ。秋の長雨に見舞われる前にぜひ観察してください。

久々に月や彗星を心ゆくまで観察2020/08/03

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昨夕は日没前から雲がくすぶっていましたが、空の7割ほどは晴れていたので久々の星空を期待して機材をセットしておきました。宵空の彗星を観察(後述)していた頃は頻繁に雲が横切って散々でしたが、夜が更けると次第に晴れ渡りました。

左の月面は3日1:00頃の撮影です。何ヶ月ぶりかに見上げる快晴の月夜にうっとり…。夏の満月期なので南に低いものの、大気は比較的安定していました。ちょうど木星と土星に挟まれるように月が光ってました。おなじみのクレーターたちはもちろんのこと、明暗境界から随分離れたリュンカー山のささやかな盛り上がりがまだ確認できるのには驚かされました。

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日付が変わる頃に月面Aの出現が見えたはずですが、夜半まで目一杯観測していたため機材の準備が間に合いませんでした。でも1時の段階でもちゃんと確認できました(右画像)。秤動による月面中央経度がプラス4.3°もあったため、A地形の位置はずいぶん左リムに寄って横幅が潰れています。います。以前に紹介した月面ツインAも見えていますね。お月さまはこの画像からほぼ24時間後に満月となります。梅雨入り前からお天気が芳しくなくてずっと満月を拝めていませんが、今夜こそ晴れるでしょうか?

さて、宵のうち観察した天体も載せておきましょう。最初にお断りしておきますが、いずれも度々雲の通過に見舞われて良い画像になりませんでした。どうかご容赦を。

まず、すっかり“終わった感”のネオワイズ彗星(C/2020 F3)。いやいや、まだ終わってませんよ。5等台ですから、街中で直接見えなくても立派な肉眼彗星です。何にもない夜に5等の彗星が出たら多くの人が望遠鏡を向けるのに、1等台で輝いた後に5等まで減光した彗星は見向きもしないってあんまりです。観察条件は良いのだから、もっと見てあげましょうよ。

雲だらけ+光害地の悪条件下で撮っても、まだ下のように立派な尾が写りました。B画像はA画像の白黒反転ですが、細長いイオンテイルは画像の縁まで届いています。

  • 20200802ネオワイズ彗星(C/2020F3)

  • 20200802ネオワイズ彗星(C/2020F3)



次のターゲットも彗星です。ネオワイズ彗星から東へ十数°離れたところでパンスターズ彗星(C/2017 T2)とレモン彗星(C/2019 U6)が1°あまりまで大接近していたのです(下C画像)。ネオワイズ彗星を撮影した機材そのままなので拡大率は低いですが、明るい彗星たちだから存在はすぐ分かりました。3日宵もまだ近いままなので、晴れたらぜひご覧ください。

もうひとつ、7月27日にロシアで発見されたカシオペア座の突発天体。発見光度は12.9等、その後の観測で新星と確認されました。明るいうちに撮っておこうと望遠鏡を向けたとたんに雲が…。1時間ほど攻防を繰り返した後、夜半前にようやく撮影できました(下D画像)。右半分が随分赤いなと思って調べたら、Sh2-171という大きな散光星雲に覆われていました。

他にも惑星など見たいものはたくさんあったけれど、さすがに体力切れ。腹八分目でも大満足のまま観察を終えることとなりました。あ、そうそう、明け方に見え始まったベテルギウス。今朝見たらやはり暗い印象でした。再減光が本当かどうか、今度測ってみようと思います。

  • 20200802パンスターズ彗星(C/2017T2)とレモン彗星(C/2019U6)

  • 20200802_TCP J00114297+6611190



衛星がとらえた6月21日の日食月影2020/06/21

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本日に夏至を迎えた日本では、全国的に部分日食を見ることができました。でも多くの地域は梅雨空で、雨は降らずとも太陽が見えないほど曇ってしまったようですね。当地・茨城も朝からどんよりで、そろそろ日食開始という時刻には小雨が降り出す始末でした。

気を取り直し、当ブログではいつものように日食そのものではなく「静止気象衛星がとらえた日食月影画像」を追いかけてみました。今回の日食はアフリカ・インド・台湾などをまたぐ広範囲で金環日食になるため、月の影が地球の一部を暗くし、その様子を気象衛星などを通じて見ることができます。

左は本日15:00JSTの気象衛星Meteosat8号画像(画像元:RAMMB/地図・画像処理は筆者)。パキスタンやインド北西部が月の影で暗くなっていますね。この影の中心から見上げると、空に「輪っかになった太陽」が見えているわけです。新型肺炎の蔓延やそれによる渡航制限などが無かったら、大きな経済効果さえある天文現象だったでしょう。

20200621日食図(NASA)
右はNASA Eclipseサイトによる今回の日食図。この範囲を撮影している気象衛星は日本のひまわりを含め、いくつもあります。今回は「ひまわり8号」に加えて、東経42°の赤道上空にいる「METEOSAT8号」を利用しました。 2019年12月26日の日食月影同様、この2基の衛星で全経路の月影を網羅できるからです。ただしMETEOSATのほうはひまわりと観測波長が違うため、Natural Color色調による表示としました(画像元:NICT、RAMMB/画像処理は筆者)。

概ね日出時に日食が始まる4:00UT(13:00JST)から、日没時に日食が終わる9:00UT(18:00JST)の範囲で30分おきに下表へ掲載しました。月影が移動する様子をじっくりご覧ください。

なお、今後しばらく全国的に見える日食は起こらず、2030年6月1日夕方まで待たなくてはなりません。日本の一部で見える日食は2023年4月20日午後に起こります。これは本州太平洋側沿岸(南寄りの海岸近くのみ)および四国と九州の南部・南西諸島・伊豆諸島・小笠原諸島などで見ることができます。日本ではほとんど欠けませんが、インドネシア付近を通る中心食帯で「ハイブリッド日食」つまり「見る場所によって皆既日食のところと金環日食のところがある」という極めて珍しいタイプの現象になります。

【余談】
日食と全く関係ありませんが、一ヶ月のなかには二十四節気の中から二回の節目が訪れ、このうち下旬になるほうの日に新月を迎えるということは、「翌月初旬に満月」になることを意味します。(※今回なら夏至に新月→7月5日に満月。)平均朔望月は一ヶ月の平均日数より若干少ないため、数ヶ月も経つと「月初めに満月」あるいは「月末に満月」がやってくるでしょう。

この状況は「一ヶ月に二回の満月があるときの二回目」という、ブルームーンの定義(のひとつ)に一致する可能性がグーンと高くなりますね。事実、今年10月には二回の満月があリ、二回目の10月31日はブルームーンになります。(→アーカイブ「満月とブルームーンの一覧」参照。)なお一回目の満月前夜(10月1日)は中秋の名月ですからお忘れなく。


METEOSAT-8時刻HIMAWARI-8
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20200621a
METEOSAT-8時刻HIMAWARI-8



参考:
衛星がとらえた12月26日の日食月影(2019/12/26)
衛星がとらえた7月3日明け方の日食月影(HIMAWARI編)(2019/07/03)
衛星がとらえた7月3日明け方の日食月影(GOES編)(2019/07/03)
アーカイブ:静止気象衛星による日食月影の可視範囲