月初めの素晴らしい空に彗星ふたつ観察2018/11/01

  • 20181101ステファン・オテルマ彗星(38P)

    A.ステファン・オテルマ彗星(38P)
  • 20181101ジャコビニ・ツィナー彗星(21P)

    B.ジャコビニ・ツィナー彗星(21P)


10月最後の星空から11月最初の星空へバトンタッチ。夜半過ぎくらいまでは雲が流れ、しかも二層になっていて厄介でした。低い雲は速く、高い雲は遅く移動し、なかなか雲間がありません。仮眠を取ってやり過ごしていると、2時くらいからメチャメチャ透明度の高い空がやって来ました。気温が急激に下がったためと思われ、明け方には5度台まで冷え込んでしまいました。

ちょうど下弦の月があり、まだ淡い天体向きではない空ですが、見頃の彗星を写したい気持ちが勝りました。偶然にも、もう見えないだろうと思っていたジャコビニ・ツィナー彗星(21P)が南中頃に少しのあいだ近隣住宅の隙間から写せると分かり(南下の速度が遅くなった?)、このタイミングを待つ間に月から離れたステファン・オテルマ彗星(38P)も狙ってみました。

38Pは正に見頃で、月があってもしっかり写ります。三日前の10月29日の撮影では緑に広がるコマしか写りませんでしたが、今回は短いダストテイルがよく分かります。画像右上のぼんやりした光芒はNGC2339というふたご座にある銀河。いっぽう、21Pは液晶モニタで全く見えなくなりました。撮影中盤から突如原因不明のピンぼけが生じて星像が肥大してますが、無理矢理コンポジットして仕上げました。彗星は急速に暗くなっていますが、まだ西向き(右向き)の尾の存在が分かります。さすがにコマはよく分かりませんでした。

薄明の中で後片付けをしていると、東に何やら明るい星。なんだろうと思ったらアルクトゥルスでした。明け方のしし座やおおぐま座がどんどん高くなるシーズンを迎えます。

今日の太陽2018/11/01

20181101太陽
朝からよく晴れています。近くのアメダスポイントでは明け方の最低気温が2.8度でしたから、なかなか気温が回復しませんでしたが、日差しが雲で遮られないため、10時頃までには15度を越えました。

20181101太陽リム
左は10時少し前の太陽。活動領域はありません。左上リムの大きなプロミネンスは今日も絶好調。そろそろ足元が光球内に入ってきたかなと思われます。

まだ台風26号が存在してる!2018/11/01


20181101-1200台風26号
11月に入りましたが、もっと早く衰えると思っていた台風26号がいまだ健在なのに驚かされます。左は今日11月1日正午の気象衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。しっかりした渦がまだ見えています。発生当初はなかなか進路が定まらなかったとか、一度衰えながら再度猛烈な台風になったとか、天気予報も右往左往していました。日本に接近していないためあまり話題になりませんが、間違いなく今年最恐の台風と思います。それが11月にまで縺れ込んでいるという事実が衝撃だというわけです。

発生から今日正午までの各種集計図を記事下に示しました。ここ2日は移動速度が遅くなったため、あまり動いてないように見えます。ざっと集計したら、今日正午時点で台風26号が「今年一番」となった記録が少なくとも次の6種ありました(※ただし21号まではベストトラック確定値、22号以降26号までは速報値)。まだ台風として継続してますから、今後も更新が続くでしょう。

  • 継続時間(寿命):249時間(内66時間は猛烈なクラス)
  • 最大風速:115ノット(2位の22号は110ノット)
  • 最低気圧:905hPa(22号とタイ記録)
  • 台風単体のACE値:300675ノット²(2位の22号は295525ノット²)
  • 気圧増加速度:6.67hPa/h
  • 風速増加速度:5.00ノット/h


台風存在度数

A.日々の台風存在度数
ところで、一般的な台風統計は「○○月に平均△△個の台風が発生」などと、発生日によるカウントが多いです。でもこれでは「その台風はいつまで存在していたか」といった日々の存在有無までは分かりません。そこで自作プログラムを組み、気象庁ベストトラックを使って1日4回(0時UT、6時UT、12時UT、18時UT)ずつ、その日時に台風がいくつあるかを度数集計してみました。台風ひとつの存在につき1ポイントで、1951年から2017年までの全台風を年間串刺し集計です(右図)。

これを見ると、10月から11月へ縺れ込んだ台風は初夏以上に多いことが分かるでしょう。必ずしも日本近海ではないでしょうが、少なくとも気象庁台風監視区域内に存在していることは事実。このあたりの微妙な状況は台風発生数だけ見ていても分からないことですね。26号はまもなく台風でなくなるようですが、その後もしばらくは影響がありそうです。

  • 2018年台風26号・中心気圧

    B.中心気圧
  • 2018年台風26号・最大風速

    C.最大風速
  • 2018年台風26号・強風域直径

    D.強風域直径
  • 2018年台風26号・移動速度

    E.移動速度


【11/2追記】
台風26号は2日15:00に熱帯低気圧となり、台風活動を終えました。確定値ではありませんが、継続時間は276時間(11.5日)でした。


アンドロメダ銀河とスイフト・ゲーレルス彗星2018/11/02

20181102スイフト・ゲーレルス彗星(64P)とM31
明後日に近日点を通過するスイフト・ゲーレルス彗星(64P)が最盛期を迎えています。計算上の光度ピークは10月末に過ぎていますが、ちょうど今週後半から夜遅くまで月明かりがない時期がやって来たので、観察するにはベストでしょう。

左画像は昨夜ちょうど日付が2日に変わる頃撮影した64P。ここ1週間ほどかけてM31アンドロメダ銀河から約4.5°のところを通りつつあり、素晴らしい眺めです。(※この画像は右方向が天の北方向。)少し透明度が落ちた夜で、しかも光害あふれる街のど真ん中でこれだけ写ってくれるのはありがたいですね。推定光度は10等前半といったところでしょうか。

20181102スイフト・ゲーレルス彗星(64P)
望遠鏡で拡大した姿も撮ってみました(右画像/こちらは上方向が天の北方向)。緑色のコマが大きく広がっています。今年は尾が目立たずコマが大きい彗星が多かったですね。よくよく見ると7時の方向に薄らとダストテイルが伸びているような、いないような…?

64Pは今期の冬が終わる頃までに15等以下まで暗くなりますが、その間ずっと宵空高く見え続けます。もしこの彗星を観察可能な機材をみなさんがお持ちなら、どこまで見え続けるのかチャレンジするのもいいですね。自分の観察眼や機材の能力も推し量れますよ。

参考:
M13に接近したパンスターズ彗星(2018/02/21)