彗星と太陽観測衛星の甘いカンケイ ― 2026/04/01
MAPS彗星(C/2026 A1)が太陽に近づくと共に、地上観察がほぼ不可能になりました。反動で、太陽に近いところを観測している衛星に写るかも知れないと世界中の研究者や天文ファンの期待が高まっています。左は太陽圏観測衛星PUNCH(後述)が3月31日3:24JSTにとらえた彗星像(画像処理は筆者)。左上は金星です。およそ2.5°の尾が見えています。
古くからの太陽観測衛星でお馴染みのSOHOはいくつかのカメラを持っており、CME放出などをとらえるLASCOカメラだけでなく、SWANという全天カメラもあります。SWAN写野には少し前からMAPS彗星およびパンスターズ彗星(C/2025 R3)が写っていました(右下画像)。ただどちらも太陽遮光マスクに近く、これ以上太陽に近づけば隠れてしまうでしょう。
SOHO以外で太陽近傍を観測しているSTEREO衛星は地球の前後に離れて公転しており、地球近くにいるSOHOとは別の角度から太陽を監視できます。ネット上には二基のSTEREO(AとB)がラグランジュポイントであるL4とL5付近にいるとする表記を見かけます(→例:天文学辞典)が、これは正しくありません。地球軌道上にいるわけでもなく、地球・太陽・衛星のなす角はその都度変わります。またSTEREO-Bはだいぶ前に壊れてしまい、今はSTEREO-A単騎でがんばってます。(ステレオじゃなくてモノラルだよね。)
計算してみると3月末の数日間にSTEREO-A画面の端に写る可能性がありました。ただ、4月1日0時の時点では画像が公開されていませんので未確認(※写ってました→記事末の追記をどうぞ)。下A図に予報を載せておきます。背景の恒星(白ドット)・惑星(黄ドット)・太陽(赤丸)は3月30日0:00UTの位置。黄色の横点線は黄道、中央のグレイ正方形は公開されているSTEREO-Aのおおよその写野で、ネット経由でだれでも見ることができます(STEREO SCIENCE CENTER)。衛星は地球に近い速さで公転してますから、背景の恒星は日々右へずれ、惑星位置も各々変わります。太陽だけは写野に対する位置関係がほぼ保たれます。
ピンクマークの彗星予報位置は背景恒星と無関係に、STEREO写野に対する位置を描きました(日時はUT)。STEREOカメラは太陽直接光を外すように少し左側(天の東側)へオフセットしてあるため、地球に向かうコロナ放出などが見やすいです。MAPS彗星が近日点通過後も生き残れば再度写る可能性も。ちなみに4月24日ごろに左辺から木星が、同28日頃に右辺から金星が写野に入る予定。
B図は星図正確性を確認するために3月15日0:00UT設定で描画したもの。実際に撮影されたC画像と比べてください。プレアデス・ヒアデス星団や水星位置がだいたい合ってますね。概算なのでわずかな違いはご容赦を。
SOHOのLASCOカメラには4月2日夜半前JSTから写り出します(→日時や位置予報は2026年3月19日記事を参照)。当ブログでもその様子を追いかけてみようと思います(→2026年4月2日記事をどうぞ)。またSOHO同様に太陽周囲をとらえているものに、米国静止気象衛星のGOES-18・GOES-19があります。地球観測と同時に太陽も観ているなんて優れもの。今や地上天気も宇宙天気も一台の衛星が担う時代なんですね。これらのカメラもLASCOと同時期に彗星をとらえることでしょう。
もうひとつ、昨年3月に打ち上げられたPUNCH(Polarimeter to Unify the Corona and Heliosphere)も期待が高まります。PUNCHは地球の極軌道を回りつつ、少しずつ離れた4基のカメラ付き衛星群を太陽に向けて常時観測すると言う仕組み。もちろん彗星を観測するための衛星ではないけれど、写ってしまうサングレーザー彗星を観測するにはもってこい。しかも現代の衛星だから解像度がとても高いんです。
ただ、現段階ではSOHOのように手軽にweb閲覧できる仕組みが無いことや、飛行姿勢と撮影タイミングが複雑なので、一般の人工衛星が撮った一枚絵のようにはいきません(1コマごと視野が回転してしまうんです)。まぁ、合成をせずに1コマに写ってる彗星を探すだけなら回転は無視できるから簡単かな?PUNCHの生データ(fits)はここにありますから、適当に選んでプレートソルビングやストレッチしてみてください。また衛星カタログ番号は63178から63181までの4基を指定すれば追跡や軌道計算も可能です。地球の日陰に入らないような太陽同期軌道なのが特徴。
ものによってはリアルタイムで見ることができず、公開まで数日から数ヶ月以上待たされるなんてこともあるけれど、太陽衛星が撮影した画像を彗星捜索や観測に使うという、古くからある突飛な発想。実に面白いとあらためて思いました。
古くからの太陽観測衛星でお馴染みのSOHOはいくつかのカメラを持っており、CME放出などをとらえるLASCOカメラだけでなく、SWANという全天カメラもあります。SWAN写野には少し前からMAPS彗星およびパンスターズ彗星(C/2025 R3)が写っていました(右下画像)。ただどちらも太陽遮光マスクに近く、これ以上太陽に近づけば隠れてしまうでしょう。
SOHO以外で太陽近傍を観測しているSTEREO衛星は地球の前後に離れて公転しており、地球近くにいるSOHOとは別の角度から太陽を監視できます。ネット上には二基のSTEREO(AとB)がラグランジュポイントであるL4とL5付近にいるとする表記を見かけます(→例:天文学辞典)が、これは正しくありません。地球軌道上にいるわけでもなく、地球・太陽・衛星のなす角はその都度変わります。またSTEREO-Bはだいぶ前に壊れてしまい、今はSTEREO-A単騎でがんばってます。(ステレオじゃなくてモノラルだよね。)
計算してみると3月末の数日間にSTEREO-A画面の端に写る可能性がありました。ただ、4月1日0時の時点では画像が公開されていませんので未確認(※写ってました→記事末の追記をどうぞ)。下A図に予報を載せておきます。背景の恒星(白ドット)・惑星(黄ドット)・太陽(赤丸)は3月30日0:00UTの位置。黄色の横点線は黄道、中央のグレイ正方形は公開されているSTEREO-Aのおおよその写野で、ネット経由でだれでも見ることができます(STEREO SCIENCE CENTER)。衛星は地球に近い速さで公転してますから、背景の恒星は日々右へずれ、惑星位置も各々変わります。太陽だけは写野に対する位置関係がほぼ保たれます。
ピンクマークの彗星予報位置は背景恒星と無関係に、STEREO写野に対する位置を描きました(日時はUT)。STEREOカメラは太陽直接光を外すように少し左側(天の東側)へオフセットしてあるため、地球に向かうコロナ放出などが見やすいです。MAPS彗星が近日点通過後も生き残れば再度写る可能性も。ちなみに4月24日ごろに左辺から木星が、同28日頃に右辺から金星が写野に入る予定。
B図は星図正確性を確認するために3月15日0:00UT設定で描画したもの。実際に撮影されたC画像と比べてください。プレアデス・ヒアデス星団や水星位置がだいたい合ってますね。概算なのでわずかな違いはご容赦を。
SOHOのLASCOカメラには4月2日夜半前JSTから写り出します(→日時や位置予報は2026年3月19日記事を参照)。当ブログでもその様子を追いかけてみようと思います(→2026年4月2日記事をどうぞ)。またSOHO同様に太陽周囲をとらえているものに、米国静止気象衛星のGOES-18・GOES-19があります。地球観測と同時に太陽も観ているなんて優れもの。今や地上天気も宇宙天気も一台の衛星が担う時代なんですね。これらのカメラもLASCOと同時期に彗星をとらえることでしょう。
もうひとつ、昨年3月に打ち上げられたPUNCH(Polarimeter to Unify the Corona and Heliosphere)も期待が高まります。PUNCHは地球の極軌道を回りつつ、少しずつ離れた4基のカメラ付き衛星群を太陽に向けて常時観測すると言う仕組み。もちろん彗星を観測するための衛星ではないけれど、写ってしまうサングレーザー彗星を観測するにはもってこい。しかも現代の衛星だから解像度がとても高いんです。
ただ、現段階ではSOHOのように手軽にweb閲覧できる仕組みが無いことや、飛行姿勢と撮影タイミングが複雑なので、一般の人工衛星が撮った一枚絵のようにはいきません(1コマごと視野が回転してしまうんです)。まぁ、合成をせずに1コマに写ってる彗星を探すだけなら回転は無視できるから簡単かな?PUNCHの生データ(fits)はここにありますから、適当に選んでプレートソルビングやストレッチしてみてください。また衛星カタログ番号は63178から63181までの4基を指定すれば追跡や軌道計算も可能です。地球の日陰に入らないような太陽同期軌道なのが特徴。
ものによってはリアルタイムで見ることができず、公開まで数日から数ヶ月以上待たされるなんてこともあるけれど、太陽衛星が撮影した画像を彗星捜索や観測に使うという、古くからある突飛な発想。実に面白いとあらためて思いました。
【追記】
本記事をアップロードして間もなく、公開され始まったSTEREO-Aの3月29日画像の一角にMAPS彗星が写っていました(29日23:41:31UT=ほぼ30日0:00UT)。下D画像は公開されているものに文字入れ、下E画像は原画からの画像処理です。上A図の予報位置とほぼ一致していますね。よかったよかった。SOHOやSTEREOの画像は黄道座標系(または太陽座標系)で扱うのが基本なので、赤道座標系星図を見慣れている方々は尾の向きがおかしい等の違和感を持たれるかも知れません。これは慣れてください。
公開されているSTEREOやSOHO画像は荒れているように感じますが、淡い太陽コロナを炙り出すのにかなり強い処理をしていると思われます。元々の画像は星像が極めてシャープ。宇宙空間で30年以上も観測を続ける1024px四方センサー+光学系として実に優秀だと思います。
本記事をアップロードして間もなく、公開され始まったSTEREO-Aの3月29日画像の一角にMAPS彗星が写っていました(29日23:41:31UT=ほぼ30日0:00UT)。下D画像は公開されているものに文字入れ、下E画像は原画からの画像処理です。上A図の予報位置とほぼ一致していますね。よかったよかった。SOHOやSTEREOの画像は黄道座標系(または太陽座標系)で扱うのが基本なので、赤道座標系星図を見慣れている方々は尾の向きがおかしい等の違和感を持たれるかも知れません。これは慣れてください。
公開されているSTEREOやSOHO画像は荒れているように感じますが、淡い太陽コロナを炙り出すのにかなり強い処理をしていると思われます。元々の画像は星像が極めてシャープ。宇宙空間で30年以上も観測を続ける1024px四方センサー+光学系として実に優秀だと思います。
今日の太陽 ― 2026/04/02
月とスピカと夜桜と ― 2026/04/03
アルテミス2始動 ― 2026/04/03
昨日4月2日朝(日本時間)に打ち上げられたSLSロケットは轟音と共に青空へ吸い込まれました。いよいよアルテミス2計画が実働します。
世間では「アポロ以来53年ぶりの有人月飛行」「史上最遠」などのコピーが出回っています。もちろんそうなのですが、無人飛行として実施されたアルテミス1の成功があってこそ。計画全体の土台の部分もきちんと広報してるメディアがとても少なかったのが残念でした。
3日現在はまだ地球を周回しています。今日未明はいて座辺りを飛行しており(下A図/いて座付近)、晴天が多かった国内でも観測成功例がありました。問題が起きなければ今夜はもう月へ向かう往路に入ります(下B図/さそり座頭部付近)。下図は東京から見た測心計算なので、視点移動(地球自転)が反映され、飛行経路が「バネを伸ばした形」のようになります。
昨夜の満月はスピカ近くでしたから、今後は黄緯がどんどん下がり、さそり座やいて座辺りでオリオン宇宙船とエンカウントすることが理解できるでしょう。安全を考えればできるだけ近地点で月周回に入るほうがいいと思うのですが、今回は4月7日17:26JSTが遠地点通過。太陽フレアも頻発してますから、すぐ帰れないのは心配。
6〜7日ごろ月周回を果たしたのち、復路に入って地球へ戻ります。もし月を見ることがあれば「あそこに四人のクルーが行ってるんだなぁ」とエールを送ってあげてください。月周回前後はアマチュアレベルの望遠鏡で見ることはできないけれど、往路や復路の地球に近いタイミングなら観察可能です。(ただし移動天体ですからテクニックが必要ですよ。)ぜひチャレンジしてみてください。どこに見えるかはJPL-HORIZONSで「Artemis II」を指定すれば、ご希望の日時・観測地で算出してくれます。
参考:(※アルテミス1のときの記録です)
オリオン宇宙船に検出成功(2022/12/09)
オリオン宇宙船検出、二夜目(2022/12/10)
オリオン宇宙船検出、三夜目(2022/12/11)
世間では「アポロ以来53年ぶりの有人月飛行」「史上最遠」などのコピーが出回っています。もちろんそうなのですが、無人飛行として実施されたアルテミス1の成功があってこそ。計画全体の土台の部分もきちんと広報してるメディアがとても少なかったのが残念でした。
3日現在はまだ地球を周回しています。今日未明はいて座辺りを飛行しており(下A図/いて座付近)、晴天が多かった国内でも観測成功例がありました。問題が起きなければ今夜はもう月へ向かう往路に入ります(下B図/さそり座頭部付近)。下図は東京から見た測心計算なので、視点移動(地球自転)が反映され、飛行経路が「バネを伸ばした形」のようになります。
昨夜の満月はスピカ近くでしたから、今後は黄緯がどんどん下がり、さそり座やいて座辺りでオリオン宇宙船とエンカウントすることが理解できるでしょう。安全を考えればできるだけ近地点で月周回に入るほうがいいと思うのですが、今回は4月7日17:26JSTが遠地点通過。太陽フレアも頻発してますから、すぐ帰れないのは心配。
6〜7日ごろ月周回を果たしたのち、復路に入って地球へ戻ります。もし月を見ることがあれば「あそこに四人のクルーが行ってるんだなぁ」とエールを送ってあげてください。月周回前後はアマチュアレベルの望遠鏡で見ることはできないけれど、往路や復路の地球に近いタイミングなら観察可能です。(ただし移動天体ですからテクニックが必要ですよ。)ぜひチャレンジしてみてください。どこに見えるかはJPL-HORIZONSで「Artemis II」を指定すれば、ご希望の日時・観測地で算出してくれます。
参考:(※アルテミス1のときの記録です)
オリオン宇宙船に検出成功(2022/12/09)
オリオン宇宙船検出、二夜目(2022/12/10)
オリオン宇宙船検出、三夜目(2022/12/11)













