今年の台風は異例尽くめ ― 2016/08/22
日本に被害をもたらしているトリプル台風のうち台風11号は、21日23:00ごろ北海道の釧路付近に上陸したようです。その後北海道を通過し終えたところで、本日22日3:00に温帯低気圧に変わりトリプル台風からダブル台風へ状況が移りました。
8月18日の記事に書いたとおり、気象庁が観測した1951年以降の全台風で、北海道に直接上陸したのは先週の台風7号が5回目、今回の11号が6回目となります。同じ年に立て続けというのは前例がありません。また、これで安心というわけではなく、本日関東付近を通過予定の台風9号が、そのまま北海道まで到達する恐れがあります。
トリプル台風になっていた期間は1日18時間でした。この間、台風同士の距離は複雑に変化しています。中心間の距離(地面に沿って測った測地距離)を計算してグラフを描いてみました(左上図)。台風の距離が近いと相互の移動などが影響し合う「藤原効果(藤原エフェクト)」(気象庁サイト・用語のページ中ほど参照)が知られ、進路予測が困難になると言われます。
北上している台風9号は本日22日0:00から暴風域を伴っており、昼から夜にかけて関東に上陸通過する見込みとのこと。当地・茨城も昨夜から断片的に強い雨が降り出しています。その影で不可解な動きをしているのが台風10号です。一般的なお天気の知識しかない私のような大多数の市民は、「台風は低緯度で西北西向き、だんだん緯度が上がると北東向きに移動」ということしか頭にありません。事実多くの台風がその様になります。でも今年の10号は「関東近海から沖縄に向かう」奇妙な動きを見せています。
(※以下、23日に自作プログラムを吟味し直して再掲載)
過去にこんな動きの台風があったかどうか、あらためて1951年から2015年まで全台風(1700個)の移動を調べてみました。北緯30度以北・東経140度以東の位置から僅かでも西へ進んだ台風は70個。また北緯30度以北から僅かでも南西に進んだ台風は24個。そのほとんどは日本から東に離れているか、短時間(24時間未満)でごく僅かに南西へ動いただけのものでした。
その中で今回に近い状況と思われるのは右の1964年台風14号と、1968年台風7号のふたつです(※図は気象庁サイトから引用、書き込み)。いずれも一度北緯30度以北まで到達した後に何日もかけて南西へ進んでいました。気圧配置まで照らし合わせると奇妙な移動の理由が分かるでしょうね。いずれにしても1700個の中でたったふたつですから、極めて珍しい現象であるのは違いありません。
台風1号の史上二番目に遅い発生以降、今年の台風は異例尽くめです。
12時現在、台風9号が通過中 ― 2016/08/22
強い台風9号が関東近辺を襲っています。左の上画像は本日22日正午の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。各赤点円は台風中心(推定値)の直径1000km円です。また左の下画像は同時刻の降水レーダー画像(画像元:気象庁)。台風は12:30前後に千葉県館山市付近に上陸した模様です。
関東周辺で1時間に100ミリ前後レベルの記録的短時間大雨情報が出ています。当地・茨城県南も正午の時点で強風域に入っており、午前中から県内全域で大雨暴風警報などが出ていました。防災放送が時々流れていますが、強い風雨による騒音がひどくて全く聞き取れません。12:47には竜巻注意情報が発令されました。15時頃までには暴風域に入る見込みです。通過し終えるまでは気が休まりませんね。唯一の気休め(?)は、狙ったように利根川上流8ダム流域へ雨を降らせていることでしょうか。
ふたつの台風中心間の推定距離は約909km。601kmまで近づいた21日15:00を境に、少しずつ離れているようです。
関東を通過した台風9号とボイス・バロットの法則 ― 2016/08/22
台風9号は22日夜にやっと関東を抜けました。前座の大雨を含め、丸一日影響を受けたことになります。東北地方や北海道はまだこれから被害がありそうなので心配ですね。
台風の中心位置があまりにも居住地近くを通ることになったため、22日午後は具体的な位置を追いかけていました。速報値ではありますが、自宅から10km圏内を15時台に通過したようです。人生で一番台風の中心近くに立つという貴重な経験になりました。左はその時刻に近い16:00の気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド/経緯線などは筆者)。各赤点円は台風中心(推定)の直径1000km円です。
窓越しに外を観察しましたが、いわゆる台風の目で雨が収まったり青空が見えると言うことはありませんでした。気象衛星画像を見ても分かるように、台風9号にそれほどはっきりした目はありません。 通過直前には自宅に最も近いアメダス龍ヶ崎ポイントで風速18.3m/sという、この日の県内最高値を記録しました。写真を撮ろうと思って窓を少し開けたら、風圧で閉まらなくなってびしょ濡れになってしまいました。雨も同時刻を中心に県内各地で1時間20mm以上と、滝のような雨です。
台風が通り過ぎた後、18:20前後には西空低空に僅かな夕焼けを確認(右)。この時まだ風が強く、小雨も降っていました。
関東の真ん中を通過した台風だったので、各地のアメダスが台風の動向を捉えたことでしょう。2015年・台風記事のいくつかで「ボイス・バロットの法則」の確認を試みましたが、今回はまさにおあつらえ向き。ということで早速やってみました。
ボイス・バロットの法則は「風を背にして立ったとき、左前に低気圧がある」というシンプルなもので、低気圧や台風の位置を簡易的に知る方法として知られています。もちろん建物や地形など風が周囲の影響を受けやすい場所では成り立ちませんが、それも含めてどうなるか調べてみるのは面白いことです。
左図は、気象庁サイトで発表されている各地のアメダス風向きデータを元にGoogleMapへ描画するプログラムを作り、それをキャプチャした画像です(※拡大や移動はできません)。台風の経路(紺の線)、台風中心位置(青丸)、アメダスポイント(黄緑点)、風向き(緑線/例:南風の場合は北へ向かう線になる)、風を背にしたときの左前45度方向(赤線)です。下部のボタンを押すと6時から21時まで1時間おきの画面を切り替え表示できます。赤線・緑線は固定長で、風の強さとは関係ありません。またアメダス風向は16方位なので、精度はその程度です。
いかがですか?傾向をつかんでいると言えそうでしょうか?また、皆さんのお住まいでは成り立ったでしょうか?簡単な法則ですが、何かに役立つことがあるかも知れませんよ。