連続する半影月食のヒミツ2016/08/17

20160818半影月食
今日は関東から北海道にかけて台風が通過中。空の観察どころじゃないですが、台風一過の空には晴れ間が期待できるかも知れません。明日8月18日は、9月の名月から約1ヶ月前の満月となります。

幾つか天文現象カレンダーを見ると、明日の満月は「半影月食(半影食)」になると書いてあります。ただ積極的にアピールしてないところもあって「なんだろう、この歯切れの悪さは?」と感じました。そこで月食を起こす地球の影と月との位置関係を図に描いてみると…左図のようになりました。なるほど、ほとんど縁をかすめるだけでした。これでは「月食は見えません」と書いたほうが親切でしょう。

半影月食説明図
月食とは月が地球を回っている最中に、たまたま地球の影に入ってしまう現象です。このとき右図のような位置関係になりますが、図のABにはさまれた部分に月が入ると、太陽の直接光が当たりません。でもAからC、BからDの場所では直接光の一部が当たります。そこで、ABにはさまれた部分に月全体が入る時を「皆既月食」、一部がABに入るときは「部分月食」、そしてABには入らないけれどACかBDのどこかに入るなら「半影月食」と呼ぶことになっています。いうまでもなく、 ABCDは上図の二重円を縦に切った断面です。

でも実はこの地球の影、図に描いたほどキッチリした境界があるわけではありません。というのも地球は大気で覆われていますから、影の縁がぼけてしまうのですね。また大気の屈折によってAB内にも太陽光が少し入るため、完全に真っ黒になることもありません。ただでさえ半影月食はあまり減光せず見辛い現象なので、半影の縁をかすめるような月食は「ほぼ見えない」と言って良いでしょう。

仮に今回をカウントすると、今年は3回半影月食が起こります。前回は3月23日でした(関連記事)。そして次回は9月17日。なんと2ヶ月連続で月食なんです。どんな偶然が重なるとこんなことが起きるのでしょう?それを理解するため、まず次の図をご覧ください。2016年に起こる全ての満月12回について、空のどこで起こるか描いた図です。ボタンを押すと画像を切り替えられます。



ここでは極付近を除く空全体を直交座標に置き換え、また地球の公転軌道が水平になるよう「黄道座標」で描きました。図の左端は右端につながっています。真ん中の水平な黄色線は黄道で、地球から見ると黄道上を太陽が1年に1周するように見えます。また白い曲線は白道、つまり月の通り道。月は白道上を約29.5日かけて一周し、その移動中に太陽との離角が180°(図中の正方ブロック18個分)に達すると満月を迎えるのです。どんな満月でもこのような位置関係になりますが、白道が黄道に対して少し波打っていることに注目しましょう。


これは「地球軌道面が描く黄道上に太陽は必ずいるのに、月はちょっとだけ上下にずれる」ということです。前出の図を振り返ると、地球の影の中心は必ず太陽と地球を結ぶ直線上ですから、地球の影はほぼ黄道付近にあります。つまり、うまく黄道近くで満月になってくれないと月食は無理ということが分かるでしょう。

さらに詳しくご覧頂くため、上図の月近辺のみを切り出し、併せて地球の影も描いたのが左図です。同様にボタン操作できますのでやってみてください。

黄線は黄道、薄水色線は白道、二重の円が地球の影(外円が半影、内円は本影)。地球影の位置が黄道よりやや下側に偏って変化するのは、観測地が日本(北半球)であること、私たちは地球中心ではなく、月との重力中心で揺さぶられること、観測者と月との距離が毎回違うこと…等の理由が複雑に関係しています。また月は地球に近いため、白道の見かけ位置は観察場所の影響をけっこう受けますから、白道は黄道に対して一定位置にあるわけではない、という事情も絡みます。

なんにせよ、注目していただきたいのはこの二重円と満月との上下関係。おおよそ1年に1回、波打っていますね。今年2月と3月、あるいは8月と9月のように、白道が黄道を横切る前後のタイミングでうまく2回とも二重円にひっかかれば、2回連続での月食が起こる訳なのです。

白道がもっと黄道に近かったら、満月の度に月食…なんていう贅沢(?)な世界になっていたでしょう。でもそうなると、あの煌々と秋空にかかる美しい名月は永遠に見られなくなりますよね。それはそれで残念だなぁ…。


※今回の星図はステラナビゲーターを利用しています。

台風一過、今日の空模様2016/08/17

20160817-1200台風7号
本州の東海岸を北上した台風7号は、昨夜から関東に大雨を降らせました。今日日中は東北地方、そして午後には北海道へと被害域を移しています。16日ごろは一時的に弱まっていた勢力が今日は持ち直しており、暴風域もできました。このまま北海道東部を縦断する予報(追記:18時前に襟裳岬付近に上陸したようです)。左画像は本日12時の気象衛星による画像(画像元:NICTサイエンスクラウド)です。台風7号に関しては、後日あらためてまとめたいと思います。(追記:まとめました→関連記事

朝のうちに台風の雲から抜けた当地・茨城は、青空が広がりました。一時的に雲が出る時間はありましたが、概ね夕方まで晴れています。下の(a)画像は17:15頃の西空。低空の透明度が悪くてはっきりは見えませんが、所々に積乱雲が確認できました。太陽左側には淡い幻日も出ていました((b)画像)。日没30分前ごろには太陽が積乱雲に隠れてしまいました((c)画像)。もう少し低空まですっきりしていれば反薄明光線がきれいに見えたことでしょう。上空にかかる絹雲には、別の雲の影が映っていて美しかったです((d)画像)。

  • 20160817夕空

    (a)
  • 20160817幻日

    (b)
  • 20160817夕空

    (c)
  • 20160817雲の影

    (d)

20160817太陽
少し遅い時間となりましたが、15:20ごろ太陽を撮影しました(左画像)。13日以来だったため、方向感覚が戻らずに苦労しました。

20160817太陽リム
右のほうに縦並びに見える黒点周囲が活動領域12574や12577のようですね。その左下は12576、また左半球にも小さな領域12578が見えます。プロミネンスは右上のものが立派です。

台風7号が去った関東は9日の台風5号のときとちょっと違い、暑くて湿った南西・南の強風が吹き込みました。日中は凄まじい蒸し暑さでした。茨城県内で夕方現在までに吹いた最大風速は台風が近かった深夜の12m/s台でしたが、日中の南風も8m/s台でしたよ。

18時までの気象庁データによれば、県内の最高気温は古河の36.9度がトップでした。県内のほぼ全域で30度に届いています。全国的にも相変わらず暑く、真夏日(30度以上)のところは全国で539地点、35度以上の猛暑日となったのは101地点(18:00現在)でした。鹿児島県・喜界島で日最高気温の観測史上1位記録を更新。また本日の最高気温トップは群馬県・館林の39.6度でした。8月8日の岐阜県・多治見での記録39.7度に次ぐ、今年2位!(今日現在)。

利根川ダム統合管理事務所発表、今日15時現在の利根川上流8ダムの貯水状況は下表の通り。降雨レーダーを見ていた範囲では、ダム上流(主に群馬県北部)への降雨は少なく、劇的な増量はありません。ちなみに茨城県内では台風により土浦で1時間に65.5mmの降雨があり、1時間降水量・日最大値の観測史上1位記録を更新しています。また群馬県の東隣、栃木県鹿沼市付近で18:30までの1時間に約110mmの記録的短時間大雨情報が出されました。当記事最初に言及した(c)画像に写ってる積乱雲の、まさに直下です。

【利根川上流8ダムの貯水状況・2016年8月17日15:00現在】
場所貯水量(万m³)貯水率(%)0:00からの変化
下久保ダム3893.345.800.35%↓
矢木沢ダム500243.310.26%↑
奈良俣ダム3905.254.241.26%↓
草木ダム2940.696.410.25%↑
藤原ダム1261.585.870.03%↓
渡良瀬貯水池1169.295.841.04%↓
相俣ダム543.651.283.08%↓
薗原ダム157.652.536.57%↑
8ダム合計1887354.94
(対平年値:68.69%)
0.32%↓