板垣さん立て続けに突発天体発見、明け方は火星と星雲星団コラボ ― 2020/02/19
昨日から今日にかけて火星が干潟星雲(M8)と三裂星雲(M20)&M21散開星団の間を通りぬけてゆく豪華な光景が見えるはずでした。かなり前から楽しみにしていましたが、17日夜から18日朝はずっと悪天でガッカリ。でも昨夜から今朝はビックリするくらいカラッと晴れて、天の川を渡る赤い惑星周辺を楽しむことができました。
記事末に火星と干潟星雲が5°以内に接近する日時を載せておきました。表を見ると概ね2年ほどの周期で接近するようですが、時々ピョンと跳びます。詳しく見ると、回を追う毎に少しずつ日が早まり、近年は接近のたびに接近ルートが少しずつ南へずれています。この南下は向こう10年あまり続くようです。
今回のようにM20とM8の隙間(=およそ1°)のちょうど中間を通過し、しかも観察可能な時間帯に実現するのはかなり貴重と言えましょう。日の出直前か日の入り直後にしか見えないような時期に集中していますが、どうしてこうなるか考えてみてください。ちなみに干潟星雲は黄道付近にある星雲星団の中では黄緯が最も低い位置に存在していますよ。
前回2018年春の最接近は天気に恵まれませんでしたが、最接近4日後の2018年3月24日に奇跡的な晴れ間の中で観察できました。火星と星雲・星団たちが少し離れてしまいましたが、それでも双眼鏡程度の視野に様々な天体がギュッと詰まった様子は例えようがないほど豪華です。
今朝の空はすぐ近くに月がありました。月も一緒に入れようかとも悩みましたが、明るさのバランスを考え、ここはひとつ星雲・星団を大きく撮ってみようと左上画像のような構図に落ち着きました。月から漏れる迷光が凄まじかったけれど、星雲のディティールを損なわないようにしつつ、なんとか抑え込んでいます。天体たちが撮影可能高度に昇ってきたとき既に薄明が始まっていました。大慌てだったけれど、贅沢な時間を過ごすことができて本当に幸せ…。なお日本からは見えませんでしたが、北米・中米・カナダなどでは火星が月に隠される掩蔽(火星食)を見ることができました(国立天文台による予報資料)。
さて、明け方までの間も大忙しでした。まず、山形県の板垣公一さんが18日3時過ぎに16.9等の突発天体を発見したという情報がありました。場所はコップ座です。これを撮影するため、日付が19日に変わる少し前から撮影開始。右がその天体です。近くに幾つか銀河がありますが、突発天体はどの銀河にも属していないようですね。ひと晩経っていますが明るさを維持しているようです。(追記:最終的に、すぐ西側にあるPGC1016591がこの天体近くまで広がっており、Type IInのSN2020cuiとして登録されました。)
この撮影後、同じ板垣さんが1月13日に発見したNGC4636の超新星SN2020ueがまだ明るいので、状況を撮影しておこうと望遠鏡を向けました(下B画像)。撮影している間に天文情報をチェックすると、なんとまたしても板垣さんによる発見情報が!!発見時刻は19日0:45、明るさは16.9等…まさに直後の情報でした。Host銀河はNGC4559ということで、いつものLBV天体(Luminous Blue Variable)増光のようです。空を確認すると撮影できる位置だったので、SN2020ueを途中で切り上げ、NGC4559に向きを変えました(下C画像)。この突発的増光は度々起こっており、今年1月18日にも板垣さん本人によって発見されています。今回は前回より少し明るめでした。
かくして板垣さん関連天体尽くしの夜となってしまいましたが、発見しているご自身は私の何十倍も忙しいのだろうなと思うと、こちらも努力のし甲斐があります。
記事末に火星と干潟星雲が5°以内に接近する日時を載せておきました。表を見ると概ね2年ほどの周期で接近するようですが、時々ピョンと跳びます。詳しく見ると、回を追う毎に少しずつ日が早まり、近年は接近のたびに接近ルートが少しずつ南へずれています。この南下は向こう10年あまり続くようです。
今回のようにM20とM8の隙間(=およそ1°)のちょうど中間を通過し、しかも観察可能な時間帯に実現するのはかなり貴重と言えましょう。日の出直前か日の入り直後にしか見えないような時期に集中していますが、どうしてこうなるか考えてみてください。ちなみに干潟星雲は黄道付近にある星雲星団の中では黄緯が最も低い位置に存在していますよ。
前回2018年春の最接近は天気に恵まれませんでしたが、最接近4日後の2018年3月24日に奇跡的な晴れ間の中で観察できました。火星と星雲・星団たちが少し離れてしまいましたが、それでも双眼鏡程度の視野に様々な天体がギュッと詰まった様子は例えようがないほど豪華です。
今朝の空はすぐ近くに月がありました。月も一緒に入れようかとも悩みましたが、明るさのバランスを考え、ここはひとつ星雲・星団を大きく撮ってみようと左上画像のような構図に落ち着きました。月から漏れる迷光が凄まじかったけれど、星雲のディティールを損なわないようにしつつ、なんとか抑え込んでいます。天体たちが撮影可能高度に昇ってきたとき既に薄明が始まっていました。大慌てだったけれど、贅沢な時間を過ごすことができて本当に幸せ…。なお日本からは見えませんでしたが、北米・中米・カナダなどでは火星が月に隠される掩蔽(火星食)を見ることができました(国立天文台による予報資料)。
さて、明け方までの間も大忙しでした。まず、山形県の板垣公一さんが18日3時過ぎに16.9等の突発天体を発見したという情報がありました。場所はコップ座です。これを撮影するため、日付が19日に変わる少し前から撮影開始。右がその天体です。近くに幾つか銀河がありますが、突発天体はどの銀河にも属していないようですね。ひと晩経っていますが明るさを維持しているようです。(追記:最終的に、すぐ西側にあるPGC1016591がこの天体近くまで広がっており、Type IInのSN2020cuiとして登録されました。)
この撮影後、同じ板垣さんが1月13日に発見したNGC4636の超新星SN2020ueがまだ明るいので、状況を撮影しておこうと望遠鏡を向けました(下B画像)。撮影している間に天文情報をチェックすると、なんとまたしても板垣さんによる発見情報が!!発見時刻は19日0:45、明るさは16.9等…まさに直後の情報でした。Host銀河はNGC4559ということで、いつものLBV天体(Luminous Blue Variable)増光のようです。空を確認すると撮影できる位置だったので、SN2020ueを途中で切り上げ、NGC4559に向きを変えました(下C画像)。この突発的増光は度々起こっており、今年1月18日にも板垣さん本人によって発見されています。今回は前回より少し明るめでした。
かくして板垣さん関連天体尽くしの夜となってしまいましたが、発見しているご自身は私の何十倍も忙しいのだろうなと思うと、こちらも努力のし甲斐があります。
【火星と干潟星雲の接近・2000年-2040年調べ】
地心最接近日時(JST) | 最小離角(°) | 火星位置 | 測心最接近日時(JST) | 最小離角(°) | 火星位置 |
---|---|---|---|---|---|
2001年9月11日 1:36 | 2.443 | 南 | 2001年9月11日 2:51 | 2.445 | 南 |
2003年3月6日 17:23 | 0.841 | 北 | 2003年3月6日 17:20 | 0.841 | 北 |
2005年2月8日 11:38 | 0.643 | 北 | 2005年2月8日 11:36 | 0.642 | 北 |
2007年1月18日 13:26 | 0.456 | 北 | 2007年1月18日 13:25 | 0.455 | 北 |
2008年12月29日 0:09 | 0.276 | 北 | 2008年12月29日 0:09 | 0.276 | 北 |
2010年12月9日 16:57 | 0.080 | 北 | 2010年12月9日 16:58 | 0.079 | 北 |
2012年11月18日 20:37 | 0.169 | 南 | 2012年11月18日 20:40 | 0.170 | 南 |
2014年10月28日 6:28 | 0.563 | 南 | 2014年10月28日 6:23 | 0.563 | 南 |
2016年9月29日 10:24 | 1.478 | 南 | 2016年9月29日 9:56 | 1.479 | 南 |
2018年3月20日 2:02 | 0.891 | 北 | 2018年3月20日 2:12 | 0.890 | 北 |
2020年2月18日 13:00 | 0.722 | 北 | 2020年2月18日 12:56 | 0.722 | 北 |
2022年1月26日 12:49 | 0.528 | 北 | 2022年1月26日 12:48 | 0.527 | 北 |
2024年1月6日 14:38 | 0.347 | 北 | 2024年1月6日 14:38 | 0.346 | 北 |
2025年12月17日 7:29 | 0.159 | 北 | 2025年12月17日 7:28 | 0.159 | 北 |
2027年11月27日 19:15 | 0.063 | 南 | 2027年11月27日 19:17 | 0.063 | 南 |
2029年11月6日 2:32 | 0.381 | 南 | 2029年11月6日 2:32 | 0.381 | 南 |
2031年10月12日 19:35 | 0.995 | 南 | 2031年10月12日 19:47 | 0.996 | 南 |
2033年4月10日 0:26 | 0.753 | 北 | 2033年4月10日 0:53 | 0.751 | 北 |
2033年7月17日 22:54 | 4.222 | 南 | 2033年7月17日 22:54 | 4.227 | 南 |
2033年8月19日 1:06 | 3.766 | 南 | 2033年8月19日 1:06 | 3.768 | 南 |
2035年2月28日 12:58 | 0.801 | 北 | 2035年2月28日 12:53 | 0.800 | 北 |
2037年2月3日 18:51 | 0.604 | 北 | 2037年2月3日 18:50 | 0.604 | 北 |
2039年1月14日 8:05 | 0.419 | 北 | 2039年1月14日 8:05 | 0.418 | 北 |
2040年12月24日 21:40 | 0.236 | 北 | 2040年12月24日 21:40 | 0.236 | 北 |
- 自作プログラムによる概算です。接近最小離角が5°以内のケースのみピックアップしました。
- 測心計算の観測位置は当ブログ基点の茨城県つくば市です。
- 火星位置の項は、干潟星雲に対して火星が北側を通過する場合は「北」、南側を通過する場合は「南」の表記です。