居座り続けた台風5号で奄美地方が大雨被害2017/08/06


20170805-1800台風5号
強い台風5号は九州の南海上に長時間居座り、奄美地方を中心に大雨を降らせました。今日6日朝時点で台風はゆっくり南東へ移動をしており、今日昼には九州に差しかかり、明日以降もゆっくりと日本を横断するコースに入っています。

左は昨日5日18:00の台風5号の全体像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。ナチュラルカラー処理のため、水色に着色した雲は活発に上昇してよく冷えている部分(発達した雨雲)を表します。四国や関西にも影響を受けたと思われる背の高い雨雲がかかってますね。

気象庁の位置速報を元に台風5号の移動距離や移動速度を計算すると、下図(A)や(B)のようになりました。4日午前中以降は極端に遅くなっているのが分かるでしょうか。4日0:00から6日0:00の48時間でたったの484.8kmしか移動しませんでした。台風自身の強風域直径が560kmですから、直線で考えたら二日間たっても強風域が通過しないことになります。今日6日3:00の時点で台風寿命は378時間、移動距離は5771.57kmに達しました。寿命は観測史上4位に並び、万が一あと3日半生き残ったら1位となります。(※→台風寿命については8月2日の記事参照。)いやはや、恐ろしい…。

  • 2017年台風5号移動速度(170806-0300時点)

    (A) 台風5号移動速度
  • 2017年台風5号移動距離(170806-0300時点)

    (B) 台風5号移動距離

今回移動の遅さによって大きな被害をもたらしているのは、強風よりも大雨のようです。下図(C)から(F)の4枚は気象庁サイトからの引用で、4日12:00から12時間おき本日0:00までの降雨状況。いいですか、「2時間おき」じゃないですよ、「12時間おき」ですよ。本当に居座ってほとんど動いてないのが分かりますね。こんな状態見たことありません。長時間の大雨で、昨日5日だけでも奄美地方に6回もの記録的短時間大雨情報が出ました。記録的短時間大雨って「数年に一度の大雨」場合によっては「数十年に一度の大雨」です。それがひとつの地方に一日6回ってあり得ないでしょう。

  • 20170804-1200降雨

    (C) 2017年8月4日 12:00降雨
  • 20170805-0000降雨

    (D) 2017年8月5日 00:00降雨
  • 20170805-1200降雨

    (E) 2017年8月5日 12:00降雨
  • 20170806-0000降雨

    (F) 2017年8月6日-00:00降雨

奄美地方の雨量変化を見るため、九州北部豪雨秋田豪雨と同様にグラフ化しました。それが下図(G)と(H)です。気象庁アメダス10分降水量データを使っており、(G)図は雨量データを直接描いたグラフ、(H)図は4日0:00をゼロとして雨量を積み立てたグラフ。比較参考として、九州北部豪雨のグラフも掲載しました。スケールを統一してあるので直接比較可能です。 これによると今回の雨量増加は九州北部豪雨を越していますね。今日朝の時点ではまだ強い雨が続いており、現地の方々がとても心配です。

1976年台風17号
(追記)奄美大島の名瀬では6日9:50までの72時間降水量の日最大値が649.0mmを記録しました。これは1976年9月12日の1012mmに次ぐ記録で、年間降水量平年値(2837.7mm)の22.9%に相当します。なお1976年のトップ記録も台風によるもの。右の1976年台風17号経路図を見ると、記録が出る前の三日間はほとんど移動せず、奄美群島と屋久島の中間近くに留まっていたことが分かるでしょう。(※気象庁ベストトラックを使って作図しました。黄緑色部分は熱帯低気圧です。)

  • 20170804雨量1

    (G) 奄美付近の雨量
    (2017年8月4日0:00から3日間)
  • 20170804雨量2

    (H) 奄美付近の積算雨量
    (2017年8月4日0:00から3日間)

  • 20170704雨量1

    (I) 九州豪雨の雨量
    (2017年7月4日0:00から3日間)
  • 20170704雨量2

    (J) 九州豪雨の積算雨量
    (2017年7月4日0:00から3日間)


参考:
アーカイブ:記録的短時間大雨情報のリスト

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