NEO最大級の小惑星フローレンスが今夜地球に接近2017/09/01

最接近から約25時間後に撮影した小惑星フローレンス画像が9月3日の記事内にあります。どうぞご覧ください。

20170901小惑星フローレンス接近
小惑星とは惑星に比べてかなり小さめの太陽系天体ですが、それでも最大クラスのケレス(※現在は準惑星に分類)は平均直径が約940km、パラスが約550km、ジュノーが約250km、ベスタが約530kmと、数百kmオーダーの大きさを持っています。こんなものが落ちてきたら国家消滅の危機ですが、幸いこのクラスの大きさで地球軌道近くへやって来る小惑星は今のところ発見されていません。

でも、地球近傍天体(NEO/Near Earth Object)や地球近傍小惑星(NEAs/Near Earth Asteroid)リストの中には直径数kmから10km近くある天体がいくつもあります。その中でトップレベルの大きさを持つ小惑星フローレンスが本日9月1日21時(JST)過ぎに地球のそばを通過します。(→参考:NASAニュース)。左はステラナビゲーターでフローレンスの地心視位置を表示した星図。小惑星フローレンスの直径は約4.9km(JPL Small-Body Database Browserによる)とされ、実際の空では9等前後で見えそうですから、アマチュアの小型望遠鏡やカメラで観察可能です。しかも日本では最接近時に南中する絶好のタイミング。晴れている地方のみなさんはぜひご覧ください。(注意:みなさんの観察場所に応じて小惑星位置は星図位置からズレて見えます。星図はあくまで参考程度に。)また右下グラフは地心距離の変化を描いたもの。両図とも時刻はJST表記です。なお、一部報道でフローレンスが「小惑星最大級」と取られかねない表現をしていますが、あくまで「地球に近づく既知の天体として最大級」なのでお間違えないように。

ところで、接近する小惑星サイズは地球の脅威に直接関係するわけですが、その多くは数mから数十m程度の小さいものです。これでは地上の立派な望遠鏡でも直接大きさを測ることができません。測れないのになぜ数値が発表になってるか矛盾に思う方も多いでしょうが、簡単に言うと過去に測定できたものを参考にしつつ「見た目の明るさを測り、軌道や距離も計算し、直径を推定」しているのです。

小惑星フローレンスの地心距離
ただし対象天体・地球・太陽間の距離と光度(+スペクトル)だけで物体の大きさは分かりません。なぜなら、対象天体表面の反射しやすさで見た目の明るさは大きく変わってしまうからです。反射しにくい黒い天体なら直径は大きく、真っ白い雲に覆われたような天体なら小さく見積もらないと観測に矛盾します。月のような満ち欠けや、球形でない場合の自転による光度変化のズレなども考慮する必要があります。どれくらい小惑星が白いか黒いか、その理由まで知るには、組成や生い立ちを知る必要がありますので、たくさんの小惑星をできるだけ近くで(可能なら降り立って)調べる必要もでてくるでしょう。

接近小惑星の閲覧や計算ができるCNEOSサイトで直径の欄に幅があるのは、考えられる反射率(アルベド/albedo)に幅があるからですね。地球のアルベドは0.3程度、つまり照らす光の3割を反射しています。月なら0.1、金星はなんと0.9もあります。CNEOSの推定では最小直径の場合は0.25、最大直径なら0.05というアルベドを用いて計算するそうです。だから直接測定した直径でない限り、NASAなどが発表している小さい小惑星の大きさが間違っている可能性もありますね。あくまで推定であることをお忘れなく。現時点で発見された60万超の小惑星に対し、位置・サイズ・アルベド・スペクトルまでデータが出ているのはわずか4%程度です。

これまでフローレンス並みに「大きい小惑星」の接近はあったのでしょうか?気になったので1950年以降、今回のフローレンスまでの「推定最小直径1km以上の小惑星接近」を集計して下表に掲載しました。結構な回数ありますが、フローレンスほどの直径で18LD程度まで近づいたのは1989年の小惑星16960 (1998 QS52)ひとつだけですね。地球にぶつかることはありませんが、今夜の接近はとてもレアケースです。下表のフローレンス直径も固定値ではなく幅を持って書いてあるのは前述のような理由だからです。接近時に詳しい観測が成功すればより正確なサイズやアルベドが算出され、他の小惑星の研究にも役に立つことでしょう。

【地球に接近した大きい小惑星・1950年始-2017年9月調べ・接近日時順】
小惑星番号最接近日時(UT)最接近地心距離
(LD)
推定最小直径
(km)
推定最大直径
(km)
68346 (2001 KZ66)1953/11/06 6:5114.451.12.5
163051 (2001 YJ4)1954/05/26 22:3515.271.53.3
163243 (2002 FB3)1957/04/12 8:1014.111.33
87684 (2000 SY2)1957/09/11 8:2617.831.63.6
35396 (1997 XF11)1957/10/25 7:385.971.12.5
163243 (2002 FB3)1959/04/13 2:207.491.33
163243 (2002 FB3)1961/04/12 16:204.901.33
4450 Pan (1987 SY)1963/02/16 6:3316.0712.3
163243 (2002 FB3)1963/04/13 2:407.601.33
163243 (2002 FB3)1965/04/12 8:4014.671.33
136618 (1994 CN2)1965/10/05 13:3013.871.22.6
68216 (2001 CV26)1965/10/11 10:3313.681.33
66391 (1999 KW4)1966/05/26 7:5017.241.33
267494 (2002 JB9)1966/12/04 8:1413.011.83.9
136618 (1994 CN2)1967/08/12 6:5114.351.22.6
1566 Icarus (1949 MA)1968/06/14 20:3916.531.12.5
192642 (1999 RD32)1969/08/27 3:203.631.53.3
35396 (1997 XF11)1971/05/19 4:2712.331.12.5
31669 (1999 JT6)1973/12/14 19:3013.171.83.9
251346 (2007 SJ)1974/02/03 19:3418.511.12.5
12538 (1998 OH)1975/05/04 23:1514.481.84.1
2102 Tantalus (1975 YA)1975/12/26 8:1518.221.73.8
143651 (2003 QO104)1981/05/18 4:562.761.73.8
66391 (1999 KW4)1984/05/25 3:336.261.33
3671 Dionysus (1984 KD)1984/06/19 1:1011.861.33
16960 (1998 QS52)1989/06/12 4:5116.263.78.2
(2014 LJ21)1989/08/01 8:597.031.73.8
4769 Castalia (1989 PB)1989/08/25 4:2410.481.12.5
217628 Lugh (1990 HA)1990/04/06 9:4113.051.53.3
53319 (1999 JM8)1990/08/08 9:5513.032.45.4
4179 Toutatis (1989 AC)1992/12/08 5:369.402.35.2
1620 Geographos (1951 RA)1994/08/25 10:1012.9624.5
308242 (2005 GO21)1995/06/22 12:1817.941.33
140288 (2001 SN289)1996/03/17 19:017.451.22.7
4179 Toutatis (1989 AC)1996/11/29 22:5313.792.35.2
164121 (2003 YT1)1997/04/28 2:125.221.53.4
4486 Mithra (1987 SB)2000/08/14 8:1418.1124.5
66391 (1999 KW4)2001/05/25 23:3112.581.33
4179 Toutatis (1989 AC)2004/09/29 13:374.032.35.2
23187 (2000 PN9)2006/03/06 4:247.921.63.6
374851 (2006 VV2)2007/03/31 5:498.811.22.6
4450 Pan (1987 SY)2008/02/19 22:2115.8912.3
35107 (1991 VH)2008/08/15 13:0017.811.22.7
68216 (2001 CV26)2009/10/08 15:479.801.33
308242 (2005 GO21)2012/06/21 18:1517.111.33
214869 (2007 PA8)2012/11/05 16:4216.851.43.1
4179 Toutatis (1989 AC)2012/12/12 6:4018.032.35.2
251346 (2007 SJ)2014/01/21 15:3918.921.12.5
85989 (1999 JD6)2015/07/25 4:5518.8412.3
164121 (2003 YT1)2016/10/31 9:2513.531.53.4
3122 Florence (1981 ET3)2017/09/01 12:0618.3849

20121225-Toutatis
  • CNEOSサイトのデータによる推定です。
  • 同じ小惑星が複数回接近することもあります。
  • 日時は世界時表記なので、日本時間に直す場合は9時間足してください。
  • 接近距離の表記は1LD=384400kmが単位です。
  • 参考までに、表の下から5番目「トータチス/Toutatis」を最接近後の12月25日に撮影したものが右画像。月齢12の月明かりでしたが、M1(カニ星雲)の南を通過するトータチスが明るい線状に写っています。500mmF4、ISO2000、25sec×15枚で十分撮影可能でした。今回も同程度でしょう。


台風15号もノロノロ?16号も発生2017/09/01


20170901-0900衛星画像
2017年の9月が始まりました。本州の南には大型で強い台風15号が居座り、小笠原諸島近くで行きつ戻りつしています。今日正午時点で、父島の72時間降水量日最大値が353.5mm(9月観測1位)、母島が308.5mm(観測史上1位)となっており、記録的な大雨が今も続いています。

いっぽう、南シナ海にあった「台風になるかも知れない熱帯低気圧」が、本日3:00に台風16号「マーワー/MAWAR」になりました。直前の台風15号発生から3日と12時間後になります。現在ダブル台風状態ですね。台風16号になった熱帯低気圧は、もともと以下のような経緯がありました。

  • 8月28日21時:「台風になるかも知れない熱帯低気圧」として発表
  • 8月29日21時:勢力が衰えたため発表がキャンセル、低気圧に格下げ
  • 8月30日15時:再び熱帯低気圧に発達
  • 8月31日3時:「台風になるかも知れない熱帯低気圧」として再度発表
  • 9月1日3時:台風16号となる

170901-台風15号の動き
左上画像は本日9:00の衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。ナチュラルカラー処理のため、水色に着色した雲は活発に上昇した氷粒状態、白やグレイの雲は低層の水粒状態を表します。右側の赤点円は台風15号中心の直径1500km円、左側の赤点円は台風16号中心の直径1000km円。15号は大型だけあって、この円より外側まで影響していることが見て取れるでしょう。今後予報のもっとも東寄りを進んだとしても、台風の西側が本州や北海道の東側にかかってしまいます。向こう三日間ほど注意が必要ですね。

ところで、15号の動きはあまりにも遅く、ノロノロ台風5号の時のようになっています。右は熱帯低気圧発生から今日9:00までの経路(速報値)を地図に描いたもの。最初の位置から5日ほど経ちますが、10°四方の範囲から全く出ていませんね。島の人々がとても心配です。つい4ヶ月前まで深刻な渇水・水不足に悩まされていたのに、今はこれでもかと言うくらいの雨…。自然と付き合うのも大変ですね。

多様な気候を小さな地図から読み取る試み2017/09/02

10日間降水量(20170627-20170706)

(A)10日間・降水量実況値

10日間降水量平年比(20170627-20170706)

(B)10日間・降水量平年比

「暑い」「日差しが少ない」「雨が多い」などと言ってるうちに9月に入ってしまいました。この夏全国から届いたニュースには「日照不足」と「干ばつ」、あるいは「高温注意」と「低温注意」、はたまた「降雨期間最長」なのに「少雨」といった正反対の気象言葉が錯綜し、混乱しました。これらは複雑に絡んでいるので、いったい日本がどこへ向かっているか把握できない方も多いでしょう。

気象は地域性があるので、日本という国を十把一絡げに言い表せません。天気予報を見ていると日本の多様性を感じるのですが、それをある程度理解したいのにどうしたら良いか分からなくなることがあります。そんなとき私が閲覧しているのは次に紹介する小さな気象地図です。

気象庁サイトの「最新の気象データ」というページでは今日の降水や風、気温などの状況をまとめて地図で閲覧できます。今回はそれではなく、同ページの一角にある「天候の状況」のメニューに注目。クリックすると左図のような「ある程度の期間で気温・日照・降水量をまとめた地図」を見ることができます。私たちが把握しやすい間隔で均した天気傾向を推し量れるというわけですね。

期間は5日間、10日間、20日間、30日間、60日間、90日間から選択できます。この地図は平年値に対する比較(比率または差分)を描いてあるので、「例年より多い/少ない」といったことがひと目で分かって便利。気温と降水量に関しては平年比だけでなく実況値の地図もあります。当日の状況を示す地図なら世界中にあまたあるけれど、一定期間の傾向を示してくれる分かりやすい地図を毎日更新してくれるサイトはおそらくここが世界唯一じゃないでしょうか。とても重宝しています。

あらためて左上図を見てみましょう。これは2017年6月27日から7月6日の10日間降水量をまとめたもの。A図が実況値、つまり実際に10日間で降った雨量、B図は同期間の平年値と比較した比率です。期間中に本州以南のほぼ全域で雨が降ったことがA図から分かります。この期間は梅雨前線・台風3号・九州北部豪雨を含んでいますから、多雨を示す黄色やオレンジ、赤マークが目立ちますね。ところがB図を見ると、降水のあった地域が全て平年越えだったわけではないことも分かるでしょう。例えば九州南部や東海、東北太平洋側など。このように「地図同士を比較することで状況を深く理解できる」ことが、この地図最大の魅力と考えています。

実は記事冒頭に書いた国内気象の複雑な状況を、この地図から読み取れないかずっと考えていました。気温・日照・降雨の地図3種を、例えば7月と8月とで比較すれば「傾向の変化」が分かります。でも合計6枚もの地図を見比べるのは大変…。そこで、うまく組み合わせて見やすくする方法を試行錯誤、ある程度結果が出たのでご覧ください。

下記3枚は気温・日照・降雨それぞれ、7月期間と8月期間の地図画像を直接加工したもの。(※月集計ではなく30日集計なので末尾の31日はデータに入りません。)見やすいよう1.5倍にしました。処理過程でふたつの月を独立した色彩グラデーションに変換して組み合わたので、カラー凡例が2次元に広がってます。色が判別しやすいよう黒い背景にしました。こうすることで「7月は○○だったけど8月は△△だった」といった傾向の変化が地図1枚から読み取れます。例えばE図の奄美・沖縄あたりを見ると、全く色が違うでしょう。沖縄は7月・8月とも降水が極めて少ない(青マーク)のに対し、奄美は7月少なかったけど8月は例年の3倍以上降った(赤マーク/台風5号による豪雨)という差です。

  • 30日気温平年比の比較

    (C)30日間・気温平年比の比較
  • 30日日照時間平年比の比較

    (D)30日間・日照時間平年比の比較
  • 30日降水量平年比の比較

    (E)30日間・降水量平年比の比較

これら三種の地図を組み合わせることで、更に細やかな気象傾向が読み取れます。一例として東日本から北海道にかけてを見比べてみましょう。切り取って1枚に並べた右下図をご覧ください。

総合的な比較の例

(F)総合的な比較
まず気温を見るとエメラルドや水色、黄緑など、凡例チャートの右下寄りのマークが全体を占めています。7月気温が平年より高く、8月は平年並みかやや低いと言うことですね。では気温低下に転じた理由は日照不足でしょうか?雨が多くなったからでしょうか?それとも、それ以外の理由?これを知るため残りの地図も見ましょう。

日照の比較では、場所によって傾向がずいぶん違います。目立ったところを幾つか書き込みました。北海道だけ見ても、気温が低い理由が一様に日照不足だったからではないのです。同様に降水量比較を見ると、これまた7月と8月と傾向が多様な組み合わせ。道東は8月に日照も降水も少なくなってますから「8月冷夏は雨と無関係」と分かります。東北地方日本海側は7月8月とも多雨で「7月から雨が降り続く日照不足」、東北地方太平洋側は8月になってから多雨の傾向が強まり「8月から雨が降り続く日照不足」。晴れても涼しかったり雨でも暖かいことがありますが、そんなことも地図から読み取れますね。自分の街や周囲の多元的な気候変動が少しは分かりやすくなるでしょう。西日本はさらに複雑なので、ぜひ読み取ってみてください。

地図を描く大元のデータも公開されてますから、それを読み取って地図描画するプログラムを一本作れば済む話なのですが、せっかく地図画像があるのですから有効活用したいという発想でした。この地図もデータ欠損やマーク位置のズレがたまにあるので完璧には処理できませんが、津々浦々の多様性を把握するのにとても役立つ気がしています。今回は同じ種類を違う時期同士で組み合わせましたが、同じ時期の気温と降水を組み合わせる、といったことも可能です。いずれ機会があればご紹介しましょう。

今日の太陽2017/09/02

20170902太陽
台風の影響で昨夜から今日午前の早い内は雨が降る時間がありました。でも思っていたほどではなく、昼には晴れ間も広がってきました。風がやや強く、空には滑るように流れゆく雲がひっきりなしです。

20170902太陽リム

20170902太陽
左は14時頃に雲間から顔をのぞかせた太陽。4日ぶりですが、新しい黒点が増えていました。いちばん大きいものを含む一列が活動領域12674、その下、赤道を越したところに12673、そしてもうひつ、右寄りに明るく見えるのが12675です。うむむ、なかなか豪華で良いですね。右上のプロミネンスも見事でした。

9月になったのでそろそろ太陽の北極が地球側へいちばん傾く時期。正確には1週間後ですね。気が早いけれど、経緯度線を重ねてみました(右下画像)。かなりお辞儀していることが分かるでしょう?Nマークの方向は天の北方向です。

参考:
太陽面の「向き」のお話し(2017/07/04)