Harveyによる壊滅的な雨2017/08/31


170830-1800ut_気象衛星
26日のテキサス上陸後に大量の雨を降らせたハリケーン「Harvey」は、熱帯低気圧に衰えながらも今日で5日目を迎えました。28日には一度メキシコ湾へ出ましたが、30日9:00UTC(18:00JST)頃にルイジアナ州へ再上陸。緩やかに勢力を下げつつ、尚も雨を降らせています。

左は30日18:00UTC(31日3:00JST)の気象衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。大西洋からアメリカ大陸にかけて幾つもの大渦が見えますが、フロリダ半島西に見えるのがHarvey。いまだにこんなところにいることが驚きです。

大きな災害となっているのが降雨による洪水で、ニュースでも惨憺たる様子が伝えられています。右下図はNational Hurricane CenterとAdvanced Hydrologic Prediction Serviceで公開されているいくつかのデータを組み合わせ、Harveyの30日12:00UTC(21:00JST)までの経路と、23日から29日までの1週間累積降水量(解析値)を地図化したもの。日付が書いてある点はその日0:00UTCのHarvey中心位置です。集計した1週間にはハリケーンの雨が全期間含まれます。上陸前はほとんど降ってなかったので、ほぼHarveyによる雨と考えてよいでしょう。

1週間雨量(テキサス)
元データはインチ表示だったので、敢えてそのまま掲載しました。単位を見なければ気にもならないけれど、紫色の部分…ちょうどヒューストンの街があるところが降水量40インチ以上です。1インチは25.4mmですから、40インチは1メートルと16mm。これが実質5日ほどで降ってしまったのです。地区の全域で1メートル!?ぞっとしませんか?ピンク(約900mm)や赤(約750mm)の所だって十分過ぎるくらい多いでしょう。地図を描いてる途中で「間違いじゃないのか?」と何度も目を疑ってしまいました。ざっくり言うと、この夏に日本を襲った九州豪雨や奄美豪雨の2倍の量が半分ほどの時間に降った計算になるでしょう。ほとんど起伏のないヒューストンの至るところがあっと言う間に水没してしまいました。 今回降った雨は15兆ガロンとも20兆ガロン(約56.8兆−75.7兆リットル)とも言われ、これは2005年に甚大な被害をもたらしたハリケーン「Katrina」の6.5兆ガロン(約24.6兆リットル)の2倍から3倍に相当します。

地図中にCedar Bayouという地名が書いてありますが、左表にまとめたようにHarveyによる総雨量(速報値)がなんと1317.75mm(51.88インチ)を記録しました。暫定値ながら1つの熱帯低気圧による総降水量としてはアメリカ本土内の最高記録とのこと。

【Harveyによる降り始めからの総降水量】
順位場所降水量(mm)
1CEDAR BAYOU AT FM 19421317.75
2CLEAR CREEK AT I-451254.76
3DAYTON 0.2 E1250.44
4MARYS CREEK AT WINDING ROAD1249.68
5SANTA FE 0.7 S1186.18
6PASADENA 4.4 WNW1161.80
7BEAUMONT/PORT ARTHUR1161.54
8HORSEPEN CREEK AT BAY AREA BLVD1158.24
9SOUTH HOUSTON 4.0 SSW1140.71
10BERRY BAYOU AT FOREST OAKS BLVD1137.92
11BERRY BAYOU AT NEVADA1128.78
12FRIENDSWOOD 2.5 NNE1118.87
13LITTLE VINCE BAYOU AT BURKE RD1105.41
14HOUSTON WEATHER FORECAST OFFICE1101.85
15LEAGUE CITY 2.7 NE1100.33
16WEBSTER 0.4 NW1100.33
17LITTLE CEDAR BAYOU AT 8TH ST1074.93
18ARMAND BAYOU AT GENOA-RED BLUFF RD1070.86
19TURKEY CREEK AT FM 19591069.85
20ARMAND BAYOU AT PASADENA LAKE1046.48
21TAYLOR LAKE AT NASA ROAD 11027.18

  • ※元データはTHE WEATHER PREDICTION CENTERによる24日13:00UTCから30日14:00UTCまでの集計値です。
  • 31日朝(JST)時点で1000mmを越えていた地域を全てリストにしました。
他にも1000mmを越えた観測地点が現時点で21箇所もあります。 いくらアメリカンサイズと言っても、こどもが沈んでしまう水かさはあんまりじゃないですか…。ちなみにバイユー(bayou)は「入り江」と訳されることがありますが、元々は平野末端を流れる傾斜が穏やかな川を意味します。(TDL好きならカリブの海賊のアトラクション内にあるブルーバイユーというレストランをご存じのはず。)左表中にbayouの名が多いことから推測できますが、この一帯は海に近い低地のため、洪水に極めて弱いのです。

National Hurricane Centerなどの広報でここ数日「Catastrophic and life-threatening flooding」という表現が目を引きました。カタストロフという言葉を日常で目にするのは初めてですね。以前に力学をかいつまんでいたころカタストロフィー理論をかじった程度です。悲劇的、破滅的、絶望的な状態なのでしょうが、言葉に言い含められない悲しみと苦しさを感じます。

Harveyはヒューストンから遠ざかりつつあるので、新たな低気圧でも来ない限り追加の雨は降らないでしょう。しかしながら氾濫した川は簡単に引きませんし、流された建造物や車、水に沈んだ家財などもおシャカでしょう。メキシコ湾の海面が熱い時期なので新たな低気圧が発生する可能性もあります。それに、今後何ヶ月も自宅へ戻れない人が抱える問題は気象だけに留まりません。自分にはブログで細々と伝えることしかできませんが、被災されたみなさんの穏やかな日常がどうか一日も早く戻りますように。