気象衛星がとらえた日食月影(GOES編)2017/08/24

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日本時間2017年8月22日明け方に起きた日食の際に、気象衛星が月の影を捉えていました。今回は第二回目、対象はアメリカの静止気象衛星GOES-16です。( 概要は第一回目の「HIMAWARI編」をお読みください。)左はGOES-16による22日3:00JSTの画像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。北米全体が暗くなっていますね。画像左下、太平洋に見えているのはハリケーンからトロピカルサイクロンに変わったばかりの「Kenneth」です。

The Coordination Group for Meteorological Satellitesによれば、この衛星は現在西経89.5°の赤道上空に位置し、アメリカ全土をカバーしている気象衛星です。まさに今回の日食月影観察にうってつけですが、少し前まで衛星画像をモニターできるサイトがありませんでした。それもそのはず、GOES-16はまだ準備中(性能試験中)なんです。予定では今年2017年11月頃に西経75°まで移動して、運用限界を迎えつつあるGOES-13やGOES-14に取って代わるようです。

皆既日食を意識して今の位置にしてあったのか定かではありませんが、モニターできないのでは月影観察に使えません。あちこち探していたところ、数ヶ月前に偶然Regional and Mesoscale Meteorology Branch(RAMMB)のサイトを見つけました。ここではSLIDERというインターフェースでGOES-16とHIMAWARI-8のイメージを撮像単位で閲覧可能です。通常の気象衛星画像は気象判断用に完成された画像として公開されるため、撮影された波長ごとの元画像を見ることは滅多にありません。それが(ある程度)閲覧できることは計り知れない可能性を生むでしょう。残念ながら一般に公開している日本のサイトでここまで閲覧できるものを私は知りません。(研究者向けならあるかも知れませんが、それでは意味が無いです。)

ということで、無事GOES-16撮影による月影を観察できました。下に22日1:00から5:30(JST)まで30分おきの衛星画像を掲載します。RAMMBサイトではNatural Color処理の画像を公開していますが、可能なら可視光像に近いTrue Color処理によるRGB画像にしたかったので、自力で合成しました。ただし必要波長の画像が欠損しているものもあるため、その場合はナチュラルカラー画像にしています。下の画像で雲が水色のものはNatural Color、それ以外はTrue Colorです。なおGOESは15分ごとに撮影しているようなので、時間分解能は下記の掲載よりも細かくできます。

20170714X線フラックス
GOESは1975年頃に始まった気象衛星シリーズ。GOES-WEST(西経135°)とGOES-EAST(西経75°)に分けられ、太平洋寄りと大西洋寄りのダブル配置でアメリカ全土の気象を監視します。地球側だけでなく太陽環境も観測しており、太陽観察経験者ならGOESによるX線データをよく見かけるでしょう。(右例はNOAAによる今年7月14日のGOESのX線フラックス。)

1999年にH2ロケット8号機打ち上げ失敗で日本の次期気象衛星が失われ、日本で衛星観測ができなくなる危機が生じたことがありました。このため寿命を迎えていた気象衛星ひまわり5号を延命し、その後アメリカから借り受けたGOES-9を2003年5月から2005年7月まで運用した歴史があります。ひまわり6号が2005年6月末に運用を開始するまで「気象衛星ひまわりの無い空白の2年間」、日本は色々と学んだことでしょう。

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    通常のカラー可視画像
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    G-chにバンド4を加えると…
  • Natural Color処理のものはRAMMBサイトで公開されているもので、リサイズ以外は無加工です。

  • True Color処理のものはGOESバンド1-3を使って再合成しています。NICTサイエンスクラウドから公開されているひまわり8号の可視光カラーとは観測波長が違うため、特に緑色の発色が異なります。

  • GOES-16のバンド3はひまわり8号のバンド4と同じ(Vegetation band/植生が強調される近赤外域)です。ひまわりカラー可視画像のGチャンネルをバンド4に差し替えたり加算することで上画像と似た色調にできます。(右は本日正午の画像で作った例。)実際に宇宙から見える色調とは異なるので真の意味で「True Color」ではありませんが、緑に覆われた大地が分かりやすくなるでしょう。


今日の太陽と内暈2017/08/24

20170824太陽
今日は昨日より一段と暑くなりました。茨城のアメダスポイントでは六ヶ所も日最高気温が35度以上。もう8月も終わりだというのに…。

20170824太陽リム
日差しはあるものの昼過ぎまで雲が多く、結局左の撮影ができたのは16時近くなってからでした。今日も9:30頃に活動領域12671でC3クラスのフレアとなり、左画像もまだくすぶっていますね。左側の12672はややおとなしく見えますが、こちらもCクラスのフレアが時々起こっています。左端のプロミネンスは光球側に入ってきたのか、やや見えにくくなっていました。

20170824内暈
昼から15時過ぎ頃まで、右のように内暈が出ていました。青空が広がるに従って消えました。久しぶりに今夜は晴れそうです。

台風になるかも知れない熱帯低気圧発生2017/08/24


20170824-1500ダブル熱帯低気圧
台風13号「HATO」は今日15時に熱帯低気圧へ変わり、丸4日間の台風寿命を終えました。昨日午後は中心付近の風速が80ノットに達し、大陸に上陸する前後は「強い台風」となってかなり被害が出たようです。その後今日朝までに急速に衰え、熱帯低気圧になった次第。

いっぽう同時刻には、後を追うように新たな熱帯低気圧がルソン島東沖に発生しました。気象庁に寄れば1日内外で台風になる可能性があるとのこと。左画像は15:00の気象衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理は筆者)。沖縄本島の真南で、西進しているようです。