気象衛星がとらえた日食月影(METEOSAT編)2017/08/26

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日本時間2017年8月22日明け方に起きた日食の際に、気象衛星が月の影を捉えていました。今回は第三回目(最終回)、対象はヨーロッパの静止気象衛星METEOSAT-10です。(概要は第一回目の「HIMAWARI編」をお読みください。)左はMETEOSAT-10による22日5:00JSTの画像(画像元:EUMETSAT/地図と経緯線は筆者)。アフリカと南アメリカにはさまれた大西洋上が月影で暗くなっています。

The Coordination Group for Meteorological Satellitesによれば、この衛星は経度0°の赤道上空に位置しています。つまり世界時で12:00のとき衛星正面(グリニッジ子午線!)が正午となって、とても分かりやすいですね。METEOSATは他にもインド洋寄りのものがあり、現行機+バックアップの数機体制でヨーロッパ全体を観測しています。本州より緯度が高い国が多いので、静止衛星から細部は辛そうですね。今回の日食はヨーロッパやアフリカの西側で日没を迎えたので、METEOSAT-10にも写っていた次第。

ただ残念ながら衛星をモニターできるEUMETSATのサイトが分かりにくく、苦労しました。(私が力不足なだけかも…。)ようやくお目当てのフルディスク画像までたどり着けても、表示画像には地図や経緯線交点などが埋め込まれており、また高解像度画像でカラーのものはNatural Color一択。(※観測波長がTrue Color処理に向いていません。)更にこのサイトでは1時間おきしか提供していないため、月影観察としての時間解像度は低いのでした。ああもったいない…。(※METEOSAT自体は15分間隔で11バンド・フルディスク撮影しています。)

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それでも一応写っていましたので、下に22日2:00-6:00(JST)の5枚を引用しておきます。見やすくなるよう若干加工しました。影がはっきり分かるのは4:00と5:00の2枚のみ。残りは物理的に写らない時間か、写っていてもほとんど判別できないようです。

日食月影の観察を三回に分けてお伝えしました。他にもGOES-16以外のGOESシリーズなどで捉えられているかも知れません。また静止衛星にこだわらなければたくさんの衛星が写しているはずで、NASAからもいくつかの動画や静止画が公開されています。みなさんも探してみてください。(右はNASA-DSCOVRによる日食月影。) [連載おわり]

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テキサスに迫るハリケーン「Harvey」2017/08/26

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アメリカ・テキサス州の海岸を大型ハリケーン「Harvey」が襲っています。

このハリケーンは今日26日9:00JST現在の風速が115ノットに達し、最大風速(1分間平均)による強さの分類ではカテゴリー4(114−135ノット/約59−69m/s)になります。メキシコ湾を北西に横切りながら数日間で大きく発達しました。9:00の中心位置は海岸まで残り数十kmでしたから、この記事を掲載する昼までに上陸しているかも知れません。

左は今朝6:00JST(=16:00CDT)の気象衛星画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。しっかりした目が確認できますね。ザッと調べたところ、2000年以降でアメリカ上陸時にカテゴリー4だったハリケーンは2004年8月のハリケーン「Charley」しかありませんでした。

ハリケーンHarveyの成長
アメリカ以外の上陸または通過も含めると、昨年2016年のMatthew(ハイチやキューバ、バハマ通過時にカテゴリー4)、2015年のJoaquin(バハマ通過時にカテゴリー4)、2008年のGustavやIke(それぞれキューバ通過時にカテゴリー4)など、平均すると数年に一度のペースで起こっています。2000年以降昨年末までに大西洋で発生したカテゴリー4以上のハリケーンを記事末の表に掲載しました。

このハリケーン、実は元となった雲のかたまりが皆既日食時の衛星写真にしっかり写っています。右画像は日食のあった22日2:00JST(=21日17:00UTC=21日12:00CDT)から二日おきに並べたもの。成長具合をご覧ください。日食の皆既帯から外れているとは言え、空の便などに乱れが生じたでしょうから、日食当日にかからなくて良かったですね。とは言え、今の現地が心配。中心のみならず、東にかなり離れたアウターバンドがとても発達し、大雨となっているようです。どうか大きな被害が出ませんように。

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(26日午後追記)
National Hurricane Centerによると、Harveyは26日12:00JST(25日22:00CDT)、テキサス州ロックポート付近に上陸した模様です。上陸時の最大風速は115ノット、中心付近の最低気圧は938hPaとのことです。

(27日午後追記)
Harveyは急速に弱まり、熱帯低気圧に変わったようです。でも被害はかなりあったようですね。左は27日6:00JSTの気象衛星画像。ひとまわり小さくなりました。この後の様子は8月29日の記事8月31日の記事に書いてあります。


【大西洋の強いハリケーン・2000年-2016年調べ】
※最大風速114ノット(カテゴリー4)以上に達したものをリストアップしました。
ハリケーン番号名前到達最大風速
ノット(m/s)
到達最低気圧
hPa
上陸/通過時の
カテゴリー
2000年13号ISAAC120(61.7)943
2000年15号KEITH120(61.7)939カテゴリー1
2001年11号IRIS125(64.3)948カテゴリー4
2001年15号MICHELLE120(61.7)934カテゴリー4
2002年13号LILI125(64.3)938カテゴリー2
2003年10号FABIAN125(64.3)939
2003年13号ISABEL145(74.6)915カテゴリー2
2004年3号CHARLEY130(66.9)941カテゴリー4
2004年6号FRANCES125(64.3)935カテゴリー3
2004年9号IVAN145(74.6)910カテゴリー3
2004年12号KARL125(64.3)938
2005年4号DENNIS130(66.9)930カテゴリー4
2005年5号EMILY140(72)929カテゴリー4
2005年12号KATRINA150(77.2)902カテゴリー3
2005年18号RITA155(79.7)895カテゴリー3
2005年25号WILMA160(82.3)882カテゴリー4
2007年4号DEAN150(77.2)905カテゴリー5
2007年6号FELIX150(77.2)929カテゴリー5
2008年7号GUSTAV135(69.4)941カテゴリー4
2008年9号IKE125(64.3)935カテゴリー4
2008年15号OMAR115(59.2)958
2008年17号PALOMA125(64.3)944カテゴリー2
2009年3号BILL115(59.2)943
2010年6号DANIELLE115(59.2)942
2010年7号EARL125(64.3)927カテゴリー1
2010年11号IGOR135(69.4)924カテゴリー1
2010年12号JULIA120(61.7)948
2011年12号KATIA120(61.7)942
2011年16号OPHELIA120(61.7)940
2014年8号GONZALO125(64.3)940カテゴリー2
2015年11号JOAQUIN135(69.4)931カテゴリー4
2016年14号MATTHEW145(74.6)934カテゴリー4
2016年15号NICOLE120(61.7)950

  • 1ノット=0.5144m/sです。
  • 元データはThe National Hurricane Center (NHC)が公開しているThe revised Atlantic hurricane database (HURDAT2)で、自作プログラムにより集計しました。
  • 上陸時についてはWikipedia「List of Category 5 Atlantic hurricanes」「List of Category 4 Atlantic hurricanes」を参考にしました。ただしカテゴリー1未満のケースは除いてあります。(大陸上陸だけでなく島国領域の通過も含みます。)


参考:
2017年・台風関連の記事(ブログ内)……ハリケーンやサイクロンの記事も含まれます