不思議な雲の円2016/03/13

20160311円形の雲
もう1週間も悪天が続いています。雨や雪はさほど降りませんが、昼も夜も灰色の曇天続き。太陽・月・星、そして魅力あふれる雲や気象光学現象も全く見えません。

こういう日は気象衛星ひまわり画像を見て気張らし(笑)。そんな折り、二日前3月11日の画像に興味深いものを見つけました(左画像・画像元:NICTサイエンスクラウド)。13:00可視撮像の一部ですが、中央近くにコンパスで描いたように綺麗な「雲の円」が見えます。場所はフィリピン東の沖合。こんな整った形を見たのは初めてかも…。

20160311円形の雲
前後の時間帯を見比べると、最初は雲の固まりだったのに、シャボン玉がはじけるような感じでゆっくり広がっていました。4、5時間で消えてしまいます。よくよく見るとここだけではなく、似た現象と思われるところがたくさん見つかりました(右画像の赤矢印、左はフィリピン)。また別の日にもいくつか見つけました。いずれも特徴は「泡の中央に筋雲の固まりがある」「円周の雲と中央の雲との間に何もない隙間がある」という二点です。形が不安定なものもあり、一週間分ほど探した中では最初の画像が一番整った形でした。

雲に穴が開くと言えば、穴あき雲(hole punch cloud)という現象が時々話題になります。下の(a)と(b)は、2004年10月18日に茨城県つくば市で見られた穴あき雲。この現象は過冷却の雲が広がる層の下部に何らかの別の対流が接することで、急速に雲が下部へずり落ちる現象と言われます。落ち込んでゆく中央に肋骨型の尾流雲が見られ、またそこから周囲に向かって雲がすっかりなくなった穴になります。雲が厚めだと穴も目立って人目に付きやすくなりますね。必ず円形とは限らず、細長いときもあります。また夜間に見えたこともありました。

頻繁ではありませんが、直前に下の(c)や(d)のような「カブトガニ」の形をした雲が見えることもあり、これも同じ原因のようです。カブトガニのしっぽの部分が下層に流れ落ちる尾流雲。蚕の繭から絹糸をたぐり寄せるような光景です。

  • 20041018穴あき雲

    (a)
  • 20041018穴あき雲

    (b)
  • 20041018カブトガニ型の雲

    (c)
  • 20041018カブトガニ型の雲

    (d)

最初に載せた円形の雲は、この穴あき雲に特徴が似ています。ただ、規模が全然違いました。地上から見上げる穴あき雲の直径はせいぜい数百mから1km以内。ところがフィリピンの東に現れた円形雲を測ると、上の13:00の段階で200km近くあります。周囲の似た現象を起こしているところも150kmから300kmに及んでいました。

この現象を私はまだ理解できていませんが、穴あき雲と同じ理屈で大規模に形成されるのだとしたらびっくりですね。空を見上げてもそれと気付かないほどのスケールですから、青空と思っていたのに穴の中だったと言うこともあるでしょう。海洋でないとできない…などの地域性はありそうですが、一度で良いから大穴を拝んでみたいものです。