好条件のマギヌスの魔女 ― 2025/01/08
昨夜は晴れのち時々雲通過。透明度はそれなりに良かったのですがシーイングはかなり悪く、また3m/s程度の風が夜通し吹いていました。しばらく月面を見ていなかったことと、マギヌスの魔女が好条件で見えるタイミングだったので、一か八かに賭けて望遠鏡を組み立てました。
筒が冷えるまでの間も風は止まず、仕方なくそのまま観察&撮影開始。月が視野から消えるほど振り回されたこともあったので瞬間的には5m/sを越していたでしょう。酔いそうになりつつ、数シーン撮影しました。
左画像はマギヌスを含む欠け際南部。もう魔女の顔が見え始まっていました。右下画像に1時間ほど空けて撮影したマギヌスの魔女を並べてみました。悪シーイングで二重リムやスタックエラーが多いけれど、光のあたり具合が変化していることは分かりますね。左画像では月面E地形やL地形も見えています。全体が照らされてしまい文字としては見辛いですが探してみましょう。上側、デランドル内を走る深い溝地形も良く見えます。
下A画像はアペニン山脈付近。ちょうどアンペール山の二つ星も日が差し始まったところでした。ピトン山の影が長すぎますね。アルプス山脈のモンブランあたりからRayが幾つも漏れて綺麗でした。グルイテュイゼンの月面都市はまだ日が当たっていませんでした。下B画像はプトレマイオスからヴァルターにかけての中央クレーター列。明るくなった月面X地形が見えます。驚いたのはプトレマイオス内の浅い窪みが20ヶ所くらい確認できたこと。あぁ、もっとシーイングの良いときに見たかった…。4時間ほど前だったらネッシーの影が見えていたかと思います。
下C画像は23時を過ぎて西に低くなった月を撮ったもの。撮影高度は15°を下回り、細部がボケボケ。マギヌスの魔女はもう太ってしまって魔女らしく見えませんね。とは言え、上弦が空高く輝く時期(赤緯最北は1月12日13:23:21JST)に、近地点通過(1月8日9:06:52JST、370207.1km)に近いタイミングで大きな月面を観察できたことは幸運でした。時々雲が横切り大気の状態は悪かったものの、久しぶりに月を堪能できました。
昨年の月秤動は南東と北西を行き来する直線的な動きで、センタームーンが起きやすい年でした。今年から来年にかけてはだんだん丸い遷移になり、タイミングを選べば全方向のリム地形が観察しやすくなります。ぜひ楽しんでくださいね。
筒が冷えるまでの間も風は止まず、仕方なくそのまま観察&撮影開始。月が視野から消えるほど振り回されたこともあったので瞬間的には5m/sを越していたでしょう。酔いそうになりつつ、数シーン撮影しました。
左画像はマギヌスを含む欠け際南部。もう魔女の顔が見え始まっていました。右下画像に1時間ほど空けて撮影したマギヌスの魔女を並べてみました。悪シーイングで二重リムやスタックエラーが多いけれど、光のあたり具合が変化していることは分かりますね。左画像では月面E地形やL地形も見えています。全体が照らされてしまい文字としては見辛いですが探してみましょう。上側、デランドル内を走る深い溝地形も良く見えます。
下A画像はアペニン山脈付近。ちょうどアンペール山の二つ星も日が差し始まったところでした。ピトン山の影が長すぎますね。アルプス山脈のモンブランあたりからRayが幾つも漏れて綺麗でした。グルイテュイゼンの月面都市はまだ日が当たっていませんでした。下B画像はプトレマイオスからヴァルターにかけての中央クレーター列。明るくなった月面X地形が見えます。驚いたのはプトレマイオス内の浅い窪みが20ヶ所くらい確認できたこと。あぁ、もっとシーイングの良いときに見たかった…。4時間ほど前だったらネッシーの影が見えていたかと思います。
下C画像は23時を過ぎて西に低くなった月を撮ったもの。撮影高度は15°を下回り、細部がボケボケ。マギヌスの魔女はもう太ってしまって魔女らしく見えませんね。とは言え、上弦が空高く輝く時期(赤緯最北は1月12日13:23:21JST)に、近地点通過(1月8日9:06:52JST、370207.1km)に近いタイミングで大きな月面を観察できたことは幸運でした。時々雲が横切り大気の状態は悪かったものの、久しぶりに月を堪能できました。
昨年の月秤動は南東と北西を行き来する直線的な動きで、センタームーンが起きやすい年でした。今年から来年にかけてはだんだん丸い遷移になり、タイミングを選べば全方向のリム地形が観察しやすくなります。ぜひ楽しんでくださいね。
本日はブラックムーン ― 2024/12/31
本日は2024年の大晦日ですが、都合よく新月日でもあります。新月瞬時は今朝7:27ごろでした。
今年の12月は1日も新月でしたので、一ヶ月内に二度新月になる「ブラックムーン」ということになります。新月はお月様自体が見えませんからブラックムーンであっても何も面白くはありませんが、一年の始めや終わりに新月になるのは時の流れがリセットされるようで気持ちが良いものですね。カレンダーを掛け替えたときの気分に似てます。
今回は「月間重複のブラックムーン」ですが、2025年には「二至二分に基づくブラックムーン」があります。6月21日の夏至と、9月23日の秋分との間に4回の新月があるため、3回目の新月となる2025年8月23日が該当日。通常は春分、夏至、秋分、冬至で分けられる四つの期間に3回の新月が起こります。
新月日と、その翌日における日没時の月高度を見てみましょう(左上図)。2025年は春の初月がかなり高く位置し、観察しやすくなります。これは2006-2009年期以来のことで、2032年ごろまで同様の傾向が続くでしょう。図中で青丸印がマイナス値のところは日没後に新月瞬時を迎えるケースです。
夕方の高度が高い傾向の時期に「夕方の水平月・逆転月」が見えるようになります。太陽からの離角が同じでも、地平方向に離れるのではなく天頂方向に離れるからです。図の期間では2026年4月18日や2027年4月8日に日本の広範囲で水平・逆転月を見ることができます。実は2025年4月28日にも広範囲で逆転月、函館や札幌あたりで水平月が見えるのですが、新月日ですから日没後すぐに月を見つけなくてはなりません。可能な方は挑戦してみましょう。2025年からしばらくは春季の新月日を意識しつつ、数日に渡って夕空の月を探してみてください。
参考:
新月当日の夕方に月は見えるのか?(2022/04/03)
今年の12月は1日も新月でしたので、一ヶ月内に二度新月になる「ブラックムーン」ということになります。新月はお月様自体が見えませんからブラックムーンであっても何も面白くはありませんが、一年の始めや終わりに新月になるのは時の流れがリセットされるようで気持ちが良いものですね。カレンダーを掛け替えたときの気分に似てます。
今回は「月間重複のブラックムーン」ですが、2025年には「二至二分に基づくブラックムーン」があります。6月21日の夏至と、9月23日の秋分との間に4回の新月があるため、3回目の新月となる2025年8月23日が該当日。通常は春分、夏至、秋分、冬至で分けられる四つの期間に3回の新月が起こります。
新月日と、その翌日における日没時の月高度を見てみましょう(左上図)。2025年は春の初月がかなり高く位置し、観察しやすくなります。これは2006-2009年期以来のことで、2032年ごろまで同様の傾向が続くでしょう。図中で青丸印がマイナス値のところは日没後に新月瞬時を迎えるケースです。
夕方の高度が高い傾向の時期に「夕方の水平月・逆転月」が見えるようになります。太陽からの離角が同じでも、地平方向に離れるのではなく天頂方向に離れるからです。図の期間では2026年4月18日や2027年4月8日に日本の広範囲で水平・逆転月を見ることができます。実は2025年4月28日にも広範囲で逆転月、函館や札幌あたりで水平月が見えるのですが、新月日ですから日没後すぐに月を見つけなくてはなりません。可能な方は挑戦してみましょう。2025年からしばらくは春季の新月日を意識しつつ、数日に渡って夕空の月を探してみてください。
参考:
新月当日の夕方に月は見えるのか?(2022/04/03)
スピカ掩蔽も快星でした ― 2024/12/25
今日未明、おとめ座の一等星スピカが月に隠される掩蔽現象が起こりました。関東は概ね晴れて、当地・茨城県南部でも良く見えました。
当地では潜入が3:18過ぎ、出現が4:13前でした。2時間前には機材をセットしましたが、気掛かりなのは高度です。特に出現側はわずか21°しかなく、おまけに電線や樹木、街灯の密集エリア。望遠鏡位置を5cm刻みで入念に調整し、ぎりぎり電線にかからない場所を見つけ出しました。また出現側は高度は問題ないものの、最初の設置位置から大きく移動しなければならず、一旦望遠鏡を解体して再度別の場所に組み立てるという面倒な作業が必要でした。私は身体の半分が麻痺で動かせないため遠星は不可能で、家の前の狭い範囲でこうしたやり繰りが必要なのです。
低空でシーイングは無茶苦茶でしたが、それでも雲に邪魔されることなく全過程を楽しむことができました。左画像は潜入と出現のフレームを基準に、30秒おき各7枚ずつの経過を合成したもの。月画像は出現以降の動画からスタックしています。また、下に潜入直前と出現直後それぞれの30秒間を約1秒おきに取り出したフレームでGIFアニメ化して掲載しました。クリックして再生してください。※恒星時追尾なので、動いているのは月のほうです。大気の揺らぎで全体がゆらゆらして臨場感がありますね。虹の入江も美しい…。土星掩蔽、海王星掩蔽、スピカ掩蔽と、12月の珍現象三連コンボすべてが天気に恵まれ、十分に堪能できました。
日食の皆既帯と同様に、掩蔽が見える場所は太い帯状になっていて、月の運動に合わせて南下と北上を繰り返します。今回の掩蔽は南下の途中にあたり、日本から見えるものに限ると最後になります。2025年中に南極まで到達し、その後しばらくは世界のどこでもスピカは隠れません。2031年から再び南極をスタートし、北上した掩蔽帯が日本に届くのは2032年4月25日になります。この日は未明の西空でほぼ満月の月に隠される様子を全国で観察できるでしょう。
当地では潜入が3:18過ぎ、出現が4:13前でした。2時間前には機材をセットしましたが、気掛かりなのは高度です。特に出現側はわずか21°しかなく、おまけに電線や樹木、街灯の密集エリア。望遠鏡位置を5cm刻みで入念に調整し、ぎりぎり電線にかからない場所を見つけ出しました。また出現側は高度は問題ないものの、最初の設置位置から大きく移動しなければならず、一旦望遠鏡を解体して再度別の場所に組み立てるという面倒な作業が必要でした。私は身体の半分が麻痺で動かせないため遠星は不可能で、家の前の狭い範囲でこうしたやり繰りが必要なのです。
低空でシーイングは無茶苦茶でしたが、それでも雲に邪魔されることなく全過程を楽しむことができました。左画像は潜入と出現のフレームを基準に、30秒おき各7枚ずつの経過を合成したもの。月画像は出現以降の動画からスタックしています。また、下に潜入直前と出現直後それぞれの30秒間を約1秒おきに取り出したフレームでGIFアニメ化して掲載しました。クリックして再生してください。※恒星時追尾なので、動いているのは月のほうです。大気の揺らぎで全体がゆらゆらして臨場感がありますね。虹の入江も美しい…。土星掩蔽、海王星掩蔽、スピカ掩蔽と、12月の珍現象三連コンボすべてが天気に恵まれ、十分に堪能できました。
日食の皆既帯と同様に、掩蔽が見える場所は太い帯状になっていて、月の運動に合わせて南下と北上を繰り返します。今回の掩蔽は南下の途中にあたり、日本から見えるものに限ると最後になります。2025年中に南極まで到達し、その後しばらくは世界のどこでもスピカは隠れません。2031年から再び南極をスタートし、北上した掩蔽帯が日本に届くのは2032年4月25日になります。この日は未明の西空でほぼ満月の月に隠される様子を全国で観察できるでしょう。
明け方の月や新天体 ― 2024/12/24
昨夜から今朝も良く晴れました。未明まで仮眠を取り、その後に新天体をふたつ撮影。最後に南中を迎えた下弦過ぎの月を眺めました。薄明時はもうベガが高くなり始めていました。
左は24日5:20過ぎの撮影で、太陽黄経差は約279.94°、撮影高度は約46.17°、月齢は22.59。明日はスピカ掩蔽があるので、望遠鏡の設置位置などを細かく確認。障害物や街灯が多い方向で、悩みます。
今朝の月はシーイングガタガタでしたが、なるべく丁寧に仕上げました。flが1500mm程度の望遠鏡ながら、この時期にしては細かいところまで写っています。欠け際にたくさんのリッジがあって楽しい。直線壁が糸のように細く光っています。途中が一ヶ所途切れていますが、バート・クレーターの影がここまで伸びてるんですね。
プラトーやエラトステネスのクレーター内は真っ暗。ピコ山が良く光っています。北部のムーシェからフィロラオスGに向かうゴツゴツした谷のような地形が迫力満点。
明日のスピカ掩蔽は、東京付近でラッセルやエディントンの近くに潜入します。観察地によって大きく異なるので、こういう現象こそ多元中継が面白そうですね。北海道道南では12月13日記事に書いた通り接食掩蔽(グレージング)になります。天気が不安定ですが、お近くの方は見えるといいですね。
薄明までに撮影した天体のうちひとつは、10日6時ごろ山形県の板垣公一さんがNGC5945に発見した超新星SN2024aduf。諸般の事情で撮影するまでに時間が経ってしまいましたが、まだしっかり輝いていました(下A画像)。これはType1aだそうです。もうひとつ、23日4:30過ぎに静岡県の西村栄男さんと金子静夫さんがりゅう座に12.4等の突発天体を発見した(TCP J15094534+5651488)とのことで、該当位置を撮ってみました(下B画像)。12-13等の星は見当たらず、報告位置に元々あった暗い星が写ったのみ。一時的な増光だったのでしょうか?
左は24日5:20過ぎの撮影で、太陽黄経差は約279.94°、撮影高度は約46.17°、月齢は22.59。明日はスピカ掩蔽があるので、望遠鏡の設置位置などを細かく確認。障害物や街灯が多い方向で、悩みます。
今朝の月はシーイングガタガタでしたが、なるべく丁寧に仕上げました。flが1500mm程度の望遠鏡ながら、この時期にしては細かいところまで写っています。欠け際にたくさんのリッジがあって楽しい。直線壁が糸のように細く光っています。途中が一ヶ所途切れていますが、バート・クレーターの影がここまで伸びてるんですね。
プラトーやエラトステネスのクレーター内は真っ暗。ピコ山が良く光っています。北部のムーシェからフィロラオスGに向かうゴツゴツした谷のような地形が迫力満点。
明日のスピカ掩蔽は、東京付近でラッセルやエディントンの近くに潜入します。観察地によって大きく異なるので、こういう現象こそ多元中継が面白そうですね。北海道道南では12月13日記事に書いた通り接食掩蔽(グレージング)になります。天気が不安定ですが、お近くの方は見えるといいですね。
薄明までに撮影した天体のうちひとつは、10日6時ごろ山形県の板垣公一さんがNGC5945に発見した超新星SN2024aduf。諸般の事情で撮影するまでに時間が経ってしまいましたが、まだしっかり輝いていました(下A画像)。これはType1aだそうです。もうひとつ、23日4:30過ぎに静岡県の西村栄男さんと金子静夫さんがりゅう座に12.4等の突発天体を発見した(TCP J15094534+5651488)とのことで、該当位置を撮ってみました(下B画像)。12-13等の星は見当たらず、報告位置に元々あった暗い星が写ったのみ。一時的な増光だったのでしょうか?