新月当日の夕方に月は見えるのか?2022/04/03

20220402_01354月
昨夕は雲量7割ほどの酷い空でした。夕空の細い月を楽しみに日没前から待機していたのになかなか見つかりません。ようやく雲から出てきたときは18:30を過ぎており、高度は4°を切っていました。左画像は電線の隙間から薄雲越しに捉えたもので、撮影時の太陽黄経差は約13.54°、月齢は1.13。弦傾斜は25.84°まで寝てきており、どんどん水平月に近づいている様子が見て取れます。淡いけれど地球照も見えますね。撮って出しの画像はもっと明るくコントラストも非常に弱い状態です。

今月は1日が新月日でした。小の月なこともあり4月の新月は1回きりですが、来月も1日が新月、月末に二度目の新月がやってくる「ブラックムーン」になります(→アーカイブ「新月とブラックムーンの一覧」参照)。

ところで4月1日の新月瞬時は15:24:25…つまり夕方に近かったことと、月が太陽の南側を通った(→太陽より先に月が沈む)ことにより、新月当日に月を観ることはできませんでした。思い返しても近年に「新月当日の夕方」に月を見た記憶がなく、難しいものだなと感じます。月齢換算で1未満…ではなく、最高でも0.6とか0.7未満となるので相当な困難が予想できるでしょう。イスラム圏で知られるラマダンの新月観測が成り立つのは乾燥した気候で低空も見通せる土地に育まれた宗教故と思われます。(もっともイスラム教徒のみなさんは世界各地で新月観測を行っていますが…。)

では日本で新月日の月は絶対に見えないものでしょうか?そんな疑問にかられ、ちょっとした計算プログラムを作り調べてみました。下図Aは「新月当日の日没時における月高度」と「翌日日没時の月高度」をグラフ化したもの。今年2022年始めから2年間に起こる全ての新月を網羅しています。観察地設定は当ブログ基点の茨城県つくば市としました。なお「昼間(太陽が空に見える状態)のうちに探す」という選択肢は除外します。

新月当日の場合、日没直後の極細月は明るいうちに沈むため正に時間との戦い。十分な視界が確保でき、運良く低空まで快晴だとしても、国内の気象条件の中で探し出す猶予は日没から20分も無いでしょう。このため、日没時点で月ができるだけ高いチャンスを知っておく必要があります。グラフの青線を見ると今年なら7月29日、来年なら5月20日などが該当しそうですね。もし年間に1、2回チャンスがあるなら、根気よく探せば数年で見つけられそう。(※天体高度は観察地によって少し変化しますのでご注意。)

ところが…!対象期間を拡張し、2000年から2050年まで51年間の全新月についてグラフ化した下B図をご覧ください。このチャンスが不安定で不規則であることが分かるでしょう。5°台止まりが何年も続く期間もあれば、7°を超すようなチャンスもあります。正直、日没時点で5°では金星でも厳しい…。B図の範囲では2050年2月22日の9.24°が最高値でした。

これらのチャンスは「新月瞬時が0:00JSTから離れない」「日没が遅い時期」「夕方の白道がそそり立つ時期」など複数条件が幸運にも重なったときに限られ、そうでなければ今年10月25日や来年11月13日のように新月翌日ですら5°を下回るときもあるのです。性質上、水平月が見やすい条件とも合致しますね。ただ、少なくとも関東圏では春霞や天候不安定なシーズンとも重なってしまうため厳しいわけですが…。いつの日かしっかり見てみたいものです。

  • 新月日と翌日の日没時月高度

    A.日没時月高度
  • 新月日と翌日の日没時月高度(長期)

    B.日没時月高度(長期)


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