2025年で日の出が最も遅いシーズンです2025/01/07

2025年・日出最遅日マップ
一年で最も日の出が遅い時期になりました。左に示したのは2025年の「日出最遅日マップ」。これによると1月2日に北海道道北を出発し、1月7日までに本州南部まで南下しています。みなさんの住む街も、ここに書いた翌日からは日の出時刻が早まり始めますよ。日没最早日は約一ヶ月前に過ぎていますから、この後は夏に向かって日の出・日の入り共に昼が長くなるほうへ変化します。

ところで、毎年同じ日付の日の出位置は変わらない様に感じます。小中学校でもそれ以上深くは学びません。ですが、太陽が画面いっぱいに写る程度の拡大率で全く同じ場所から撮影すると、年ごとに少し違うことが分かるでしょう。

特に今年1月の日の出を去年の同じ日と比較すると、右下図(1月7日・日本経緯度原点の例)のようにかなり変化したことが分かります。実写で確かめたいことのひとつですが、生憎私は撮影に適した「浜辺の家」みたいなロケーションを持ち合わせていないので、ここではStellariumによるシミュレーションで代用しました。

どうして2024年と2025年の変化が他の年のペースと違うかと言うと、日数が1日多いからです。つまり「閏日」のぶんだけ太陽黄経が進んでしまい、閏年の翌年1月の同じ日は4年分の遅れを取り戻すように動いて見える訳です。日本から見ると、この動きは日出の方位角のずれとして顕著に現れるのです。当然、方位がずれれば日出時刻も変わります。

日出方位の変化
かくして4年に一度、閏年翌年は日の出の状況が一変するため、つられて日出最遅日分布も大きく変わることになります。昨年の最遅日マップは2024年1月5日記事内に掲載してありますから、本記事の地図と比較してどれくらい変わったかみてください。パッと見て毎年似たような地図に見えますが、詳しく見るとこのような秘密が隠されているのです。せわしない私たちの日常ではなかなか感じ取れない変化ですね。

多くの方にとって天文や地学の知識は小中学校止まりではないでしょうか。大学受験で地学を選択した私も、高校で地学教師がいなかったため独学受験し、以降もずっと自分で勉強を続けました。ここでお話ししたように、義務教育範囲の知見は詳細を省いた、いわば解像度の低い広角レンズで切り取った宇宙観。閏日補正の意味すら気付けない、住んでる土地の降水量変化や火山・断層分布すら知らない、荒いザルの目で見た自然観のまま一生を過ごすことになるでしょう。

天文・地学に限りませんが、世間を細かく正確に観る目を養えば世の中の歪みもはっきり分かって、何をすべきか判断しやすくなると言うもの。人間としての解像度を上げることは、お高い望遠鏡を買うため腐心するよりずっと安上がりで価値あることです。老若男女問わず、今日からでも始められます。ぜひ今後の目標のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)

今日の太陽2025/01/07

20250107太陽
昨日は一日ぐずついたお天気。今日も雲が多い空ですが、午後になって少しだけ青空が広がった時間がありました。その後すぐ曇ったけれど…。

20250107太陽リム
左は13:10過ぎの太陽。左リムからの新たな黒点追加は無いようで、中央左上の活動領域13947の黒点だけ目に付く感じ。南半球はダークフィラメントやプロミネンスがいっぱいです。右端やや下リム沿いは裏側に回ろうとしている活動領域でひしめいています。

2025年のうるう秒調整はなくなりました2025/01/07

2017年1月-2024年12月のLOD累積
国際地球回転・基準系事業(IERS/INTERNATIONAL EARTH ROTATION AND REFERENCE SYSTEMS SERVICE)から1月6日UT付け(発表は7日夜JST)に「2025年7月1日(同年6月末UT)のうるう秒挿入はない」と発表がありました(→>IERS News:2025年1月6日UT付けBULLETIN-C69)。これにより、少なくとも今年いっぱいUTC-TAI = -37秒が維持されることになりました。最後のうるう秒挿入(2017年1月8:59:60JST)から今年の正月で丸8年。来年までうるう秒はありませんので、9年間うるう秒無しは確定。観測史上最長を再々更新です。

左図は2017年のうるう秒挿入直後を原点として、1日ごとのLOD(Length of Day:1日の実測長)差分値を足してゆき(水色線)、正確な時を刻む原子時計に対して自然に基づく時計がどれだけズレているか(緑線)を表したグラフ。(※測定データは昨年12月1日までを利用。)また右下図は、LODと24時間=86400秒との差の日々の値(薄青線)、および31日移動平均(赤線)をグラフ化したもの。一昨年までは一日が24時間より少ない傾向が強かったですが、去年はプラスに転じる時期が長くなりました。当面は多少の変動はあれど「ほぼ24時間」という期間が続くのかも知れません。

2020年1月-2024年12月のLOD差分変化
一方で昨年7月5日に「観測史上最短の一日」という記録も出ています。2022年6月29日の記録更新時には「史上最短日」などというニュースを国内外問わず結構見かけたけれど、昨年の記録更新の際はマイナス1.65ミリ秒という大幅更新にも関わらず報道を全く見かけませんでした。人間が慣れてしまったのかな?ネットを検索しても2022年の件しか出てきません。wiki「Leap second(閏秒)」の項も2022年の記録のまま更新されていませんね(2025.1.7.現在)。

右グラフの範囲内だけ見ると、移動平均の赤グラフは去年からマイナス側へ引き戻されている傾向も感じます。24時間より短い日が2021-2022年並に戻ると、再び史上初の「閏秒削除」という話になるでしょう。1日あたり1ミリ秒という小さな世界でも1000日続けば1秒になるんです。現在のように急速な温暖化が進めば南極や北極の氷が溶け、海が赤道付近に多く集まり、海底との摩擦が大きくなり、自転を遅くする要因となる…といった主旨の研究も進んでいます。

世界規模で2035年までに閏秒という仕組みを無くすことは既に決定されています(廃止に関する議論は国立天文台・暦Wikiにある解説を参照)。それまでに閏秒挿入/削除が起こるかどうか、見守りたいと思います。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)