フンボルト海が見頃、金星とISSの大接近も2021/12/12

20211211フンボルト海付近

先月末ごろオリエンタレ・ベイズンが見頃だったため集中して観察しました。これは秤動によって月の南西(北を上にしたとき左下)が中央に寄っていたため、南西の裏側にあるオリエンタレ・ベイズンも表側に姿を現したわけです。秤動は一ヶ月弱の周期を持ち、半月後は反対の向きになることが多いため、今は北東側の地形が見やすいことになります(右下秤動図参照/5月以降の秤動図は特集記事「センタームーンを観よう・Part2」にも載っています)。

2021年12月・月の秤動
オリエンタレ・ベイズンの正反対には縁の海、またその北にはフンボルト海があり、これらの見やすさで秤動の様子がわかります。秤動図を見るとフンボルト海の方位に近い軸に沿って傾くことが分かりますね。9月は名月のころ10月は十三夜少し前から11月は十日月前後という具合にフンボルト海の見やすい日々がありました。今月は上弦前から4、5日間が見やすかったのです。なかなか撮影時間が持てませんでしたが、昨夕にやっと観察することができました(上画像)。オリエンタレ・ベイズンのときに倣ってフンボルト海を上向きにしました。

残念ながらとても酷いシーイングだったためあまり鮮明ではありませんが、中央のアトラス、ヘルクレスのコンビからエンディミオン、その奥のフンボルト海まで一望できます。フンボルト海そのものは秤動がゼロのときでも少し見えますが、海の奥側にあるベルコビッチA・クレーターやハイン・クレーターは月縁に重なってしまうため、秤動がなければ見えません。今回は両方とても良く見えました。更にその奥、デュガン・クレーターも確認できます。このあたりが秤動による可視限界点と思われます。デュガンと同じ経度のコンプトン・クレーターは分かりませんでした。(多分クレーター壁は写っています。)画像右寄りはシーイング不良のせいかスタックズレが目立っており、判別が難しくなってしまいました。

月面Xデーでもあったので、頃合いを見計らって撮影しようと考えていましたが、20時頃からいきなり薄雲が広がってしまいました。もともとX地形が見頃になる22時過ぎはもう月高度が低く建物に隠れてしまうため、薄雲の隙間から少ないフレーム数で撮影、画質が酷いけれど何とか仕上げてみました(下A画像)。撮影時のX地形から見た太陽高度は約-1.88°で、まだ全体に光があたっていません。日照の具合はアーカイブ「月面文字地形の観察」にある-2.0°のCGシミュレーション図とほぼ同じことが分かるでしょう(下B図)。

  • 20211211月面X周辺

    A.12月11日20:30頃・月面X周辺
  • 月面Xチャート:-2.00

    B.月面Xチャート(-2.0°)


20211211金星と国際宇宙ステーション
時間が前後しますが、薄暗さの残る宵には金星の近くを国際宇宙ステーションが通過するイベントがありました。見かけ上は月直径程度しか離れないところを通る予報だったため、高倍率ズームデジカメで狙ってみました(左画像)。

ISSが思ったほど明るくなかったことと、高度が12.8°…つまりISSが当地からとても離れていた(1400km以上)ため像が暗くて小さく、国際宇宙ステーションらしさが感じられませんね。大気のゆらぎの影響で1フレームごとに明るさや色も違うし、金星も変形してます。それでも貴重な記録に変わりはありません。いい経験になりました。

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