アーカイブ:月面文字地形の観察1971/02/02


月面の欠け際を見ると、地形の一部だけに光が当たって見える場所があります。日本で言うと富士山頂だけ日の出を迎えているような面白い光景です。月面は大気がないため明暗がクッキリしますから、光が当たる地形によってはシミュラクラ現象のように人の顔と錯覚したり、動物や道具、文字などにも見えてくるでしょう。ここでは「月面X」「月面A」「月面LOVEの四文字」で知られる“文字のように見える地形”について、観察をサポートするデータをまとめました。


《月面文字地形の日照日時》

各文字地形の日照日時は、ユーティリティ「月面地形の日照カレンダー」を使ってください。年/文字種類/観察場所(都道府県単位)を指定すると一覧表を表示できます。月高度などの観察条件も併せて調べることが可能です。下のリンクからどうぞ。(※リンク先で番号や条件を変えることもできますので、どこから入っても構いません。)また月面LOVE四文字が揃う条件判断は「月面LOVEの日照タイミング」をご覧ください。




《文字地形はいつ見える?》

【文字地形の位置】…当ブログ独自基準の計算代表点です
対象名月面経度月面緯度月面標高
X地形0.34180°-25.60352°2252m
A地形-73.58789°0.16992°2239m
L地形-1.79102°-54.66602°1027m
O地形6.74023°-26.61914°2037m
V地形1.60352°7.97070°1657m
E地形-1.42773°-48.25586°1135m
K地形48.40430°-29.21289°1839m
文字地形は「月面の名所巡り」として楽しめる現象です。地形への日射は刻々と変化するため、数時間にわたって楽しるでしょう。観察最適時間をかなり過ぎて全体が明るくなってからも、「どこが文字だったか」と謎解きを楽しむことだってできます。日照カレンダーの時刻にあまりこだわらず、様々な楽しみ方を見つけてください。

「X・A・L・O・V・E」の6文字地形は上弦側(新月から満月の間)に限られます。また「K」は下弦側(満月から新月の間)に限られます。字形が日射方向に強く依存するため、位相が反対になると位置は特定できても字形感が薄れてしまうからです。

文字地形の見え始めは、月面上で地形に太陽が差し込む高度に左右されます。(注意:地球での太陽高度と勘違いしないようにしましょう。)いわゆるピーク時間とは「字形を作る山頂全体に太陽が当たっているけれど低地は暗い」ような状態のこと。暗闇にぽっかりと文字が浮かぶような時間帯はかなりシビアに計算する必要があります。具体的な日時を月齢や太陽黄経差だけで導くことはできませんが、おおよその目安は下表のようになるでしょう。

月面LOVEについては四文字が揃うタイミングが秤動で変わってしまうため、判断が難しいところ。これはユーティリティ「月面LOVEの日照タイミング」で一連の可視タイミングを一括表示することで条件の良し悪しが分かるでしょう。短時間で四つ全部が揃い、かつ月が高く見えるタイミングがごく稀にあります。チャンスを逃さず狙ってください。

これら以外にも面白い形は存在すると思われます。もしなにか発見したらアーカイブで計算できるように加えますから、ぜひお知らせください。あまり注目されない下弦側を探すのも面白いですよ。

【文字地形・観察タイミングの目安】
文字地形名明暗境界となる月齢範囲明暗境界となる太陽黄経差範囲
月面X地形6.9 − 7.881.1° − 97.6°
月面A地形13.0 − 13.9157.6° − 168.7°
月面L地形7.0 − 8.181.8° − 100.9°
月面O地形6.4 − 7.374.9° − 91.4°
月面V地形6.8 − 7.780.4° − 96.0°
月面E地形7.0 − 8.081.8° − 100.1°
月面K地形17.4 − 18.8212.6° − 230.0°

  • 各地形が明暗境界に一致する月齢および太陽黄経差を概算しました。主に秤動によって月面の向きがゆるやかに振動するため、月齢値なら約1、太陽黄経差なら約15°の揺らぎ幅があります。
  • 各地形が明暗境界(=欠け際)に達する前後の数時間内にピーク時間がやってきます。見頃の正確な日時は前項のユーティリティ「月面地形の日照カレンダー」をご利用ください。



《文字地形ファインディングチャート》

詳細な位置について、ファインディングチャートを掲載します。自由にお使いください。CGマップはNASAが公開するLRO月面標高データを使い、自作プログラムで描きました。このため実際の日照陰影と若干異なりますのでご了承ください。

 月面X(上弦)月面A(上弦)月面L(上弦)月面O(上弦)
月面Xチャート2
月面Aチャート2
月面Lチャート2
月面Oチャート2
月面Xチャート:-2.00
月面Aチャート:-2.00
月面Lチャート:-2.00
月面Oチャート:-2.00
月面Xチャート:-1.00
月面Aチャート:-1.00
月面Lチャート:-1.00
月面Oチャート:-1.00
月面Xチャート:+0.00
月面Aチャート:+0.00
月面Lチャート:+0.00
月面Oチャート:+0.00
月面Xチャート:+1.00
月面Aチャート:+1.00
月面Lチャート:+1.00
月面Oチャート:+1.00
 月面X(上弦)月面A(上弦)月面L(上弦)月面O(上弦)

 月面V(上弦)月面E(上弦)月面K(下弦)予備欄
月面Vチャート2
月面Eチャート2
月面Kチャート
月面Vチャート:-2.00
月面Eチャート:-2.00
月面Kチャート:+2.00
月面Vチャート:-1.00
月面Eチャート:-1.00
月面Kチャート:+1.00
月面Vチャート:+0.00
月面Eチャート:+0.00
月面Kチャート:+0.00
月面Vチャート:+1.00
月面Eチャート:+1.00
月面Kチャート:-1.00
 月面V(上弦)月面E(上弦)月面K(下弦)予備欄

  • すべての図は月面の北を上向きにして描きました。月縁に近い地形ほど形が潰れます。従って見かけ上の文字地形に比べ、上図の縦横比や向きが一致しない場合があります。

  • A…各地形付近の傾斜量+標高+名称マップ。概ね20°四方内外の範囲です。文字地形位置は淡い緑線で縁取りました。濃い色ほど急斜面、明るい色は平坦地、ブルーグレイ色ほど低く、ベージュ色ほど高い土地です。裏技ですが、この地図画像をPhotoshopなどで彩度100%にすると青と黄色にクッキリ分かれますので、標高0mがどこなのか分かります。なお地形名と位置はIAU(国際天文学連合)のデータに基づくものです。

  • B行からE行まではCGマップです。標高データを使って日照をシミュレートし、それを地形正面から見た地図として描きました。太陽高度はユーティリティ「月面地形の日照カレンダー」の太陽高度に対応します。

  • 上弦地形の場合、B行からE行までの順に対象地形代表点から見た太陽高度がマイナス2°からプラス1°まで1°おきに変化させました。

  • 下弦地形の場合、B行からE行までの順に対象地形代表点から見た太陽高度がプラス2°からマイナス1°まで1°おきに変化させました。

  • 上弦地形の場合、太陽方位角はほぼ90°(真東)、下弦の場合はほぼ270°(真西)に位置します。多くの日照現象で太陽方位の影響を受けるのは日照タイミングのみですが、シビアな地形の場合は太陽方位で見える見えないが左右されることもあります。

  • 実際の明暗境界付近はかなり暗いため、CGシミュレートは意図的に明度を上げました。眼視観察では見え始めに気付けないことがあるのでご注意ください。



《ブログ記事リンク》

当ブログ内で文字地形の観察や考察を扱った記事のリンク集です。




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