赤い輝星の二等辺三角形に注目! ― 2022/10/18
夜半前から見えている火星・ベテルギウス・アルデバランがつくる「赤くて明るい星が作る三角形/Red Stars Triangle」が見ごろです。
実際の三星はオレンジ寄りだから、RedというよりVermilion、赤よりも朱色や丹色の表現が似合ってるかも。スペクトルがどうこうではなく、International orangeやFire engine redなど「明るく浮いた赤系」の印象に近いと個人的に感じます。(スペースシャトル時代の宇宙服や消防車の“赤”ですね。)
直近の火星の合は2021年10月8日でしたから、もう1年以上前から火星は明け方側の空にいました。覚えていらっしゃる方も多いでしょうが、明け方に月・惑星が一堂に会した今年6月下旬にも、当然火星が混じっていましたね。ただ、この頃はまだ背景が秋の星座でした。12月の地球接近に向かって火星の観察を始めたのは8月16日。このころやっと火星ーアルデバランーベテルギウスが直線状に並んで接近感が増し、光度比較にも一役買っていました。以降火星はメキメキと明るくなり、今日に至ります。
まとまった「輝星三角アステリズム」として意識したのは9月中旬頃。火星とアルデバランが接近し、やや離れたベテルギウスと共に細長いとんがり帽子を作っていました。惑星位置は日々変わりますから、天候不順とも相まって、週一程度のわずかな晴れ間に空を仰ぐたび三角形が変わっていて面白かったのです。こういうのを子供たちに見せることができたら、さぞ天文沼にはまるだろうにと思ったものです。10月に入ると、このままいけば今度は火星を頂点とした二等辺三角形ができるかも知れないと思い始めました。折よく星仲間のMayumiさんからも楽しみにしてるメールが届いたので、本腰入れて計算してみることにしました。結果を図化したのが左上図です。(マーカー位置は各日0:00JST/星図はステラナビゲーター利用。)
ベテルギウスとアルデバラン両星までの角距離が一致する位置は天球上に大円を描きます。図の黄色線がその「等距離線」。そして火星がこの線上に輝けば二等辺三角形が完成します。もちろん火星以外でもOK。ただし他の惑星や月はそんなに赤くありません…。今回の重要ポイントは「みんな赤い二等辺三角形」なところですから。
今年秋から来年春にかけて火星はおうし座で順行→逆行→順行と向きを変えるため、うまく行けば等距離線を三回またぐのだけれど…残念、一回だけでした。左上図の等距離線に近い付近を拡大したのが下A図。10月末に限りなく接近するものの10.5′角ほど足りず、線をまたぐことはありません。でも月直径の1/3程度の僅差です。朱い三つの星が作る「ほぼ二等辺」の三角形をご覧になりたい方は、火星が留(りゅう/天球上で移動方向が変わること)を迎える10月30日プラスマイナス数日あたりに夜中から明け方にかけて空を見上げてください。極めて二等辺三角形に近い状態をご覧になりたいなら、2023年3月18日宵の西空まで待ちましょう。(ただし火星は今よりずっと暗くなってます…。)
火星と地球は約2年あまりの周期で黄道近くを一周しつつ会合するため、この二等辺三角形も約2年に1回必ず起きます。そのうち、おうし座の角付近で逆行する年だけは短期間の立て続け三回パターンも起こりうるのです。前回そうなったのは2007年秋から2008年春でした(下B図)。次回は2054年秋から2055年春です。記事下に二等辺三角形実現の正確な日時を掲載しましたので、観察の参考にしてください。今は夜明けの頭上近くに輝く位置ですから、三角形を国際宇宙ステーションが横切るチャンスもありますよ。なお夏至の頃の太陽がこの線を跨ぎますから、6、7月ごろ二等辺三角形になっても太陽に近すぎて見えません。そういう意味で2026年8月までが観察の限界、そのあとは2034年5月まで見えないでしょう。ぜひ貴重なチャンスを活かしてくださいませ。
(※二等辺三角形のタイミングから少しズレますが、11月8日は皆既月食も追加されて、東天に「四つの赤い天体」が勢ぞろいします。これも楽しみですね!)
実際の三星はオレンジ寄りだから、RedというよりVermilion、赤よりも朱色や丹色の表現が似合ってるかも。スペクトルがどうこうではなく、International orangeやFire engine redなど「明るく浮いた赤系」の印象に近いと個人的に感じます。(スペースシャトル時代の宇宙服や消防車の“赤”ですね。)
直近の火星の合は2021年10月8日でしたから、もう1年以上前から火星は明け方側の空にいました。覚えていらっしゃる方も多いでしょうが、明け方に月・惑星が一堂に会した今年6月下旬にも、当然火星が混じっていましたね。ただ、この頃はまだ背景が秋の星座でした。12月の地球接近に向かって火星の観察を始めたのは8月16日。このころやっと火星ーアルデバランーベテルギウスが直線状に並んで接近感が増し、光度比較にも一役買っていました。以降火星はメキメキと明るくなり、今日に至ります。
まとまった「輝星三角アステリズム」として意識したのは9月中旬頃。火星とアルデバランが接近し、やや離れたベテルギウスと共に細長いとんがり帽子を作っていました。惑星位置は日々変わりますから、天候不順とも相まって、週一程度のわずかな晴れ間に空を仰ぐたび三角形が変わっていて面白かったのです。こういうのを子供たちに見せることができたら、さぞ天文沼にはまるだろうにと思ったものです。10月に入ると、このままいけば今度は火星を頂点とした二等辺三角形ができるかも知れないと思い始めました。折よく星仲間のMayumiさんからも楽しみにしてるメールが届いたので、本腰入れて計算してみることにしました。結果を図化したのが左上図です。(マーカー位置は各日0:00JST/星図はステラナビゲーター利用。)
ベテルギウスとアルデバラン両星までの角距離が一致する位置は天球上に大円を描きます。図の黄色線がその「等距離線」。そして火星がこの線上に輝けば二等辺三角形が完成します。もちろん火星以外でもOK。ただし他の惑星や月はそんなに赤くありません…。今回の重要ポイントは「みんな赤い二等辺三角形」なところですから。
今年秋から来年春にかけて火星はおうし座で順行→逆行→順行と向きを変えるため、うまく行けば等距離線を三回またぐのだけれど…残念、一回だけでした。左上図の等距離線に近い付近を拡大したのが下A図。10月末に限りなく接近するものの10.5′角ほど足りず、線をまたぐことはありません。でも月直径の1/3程度の僅差です。朱い三つの星が作る「ほぼ二等辺」の三角形をご覧になりたい方は、火星が留(りゅう/天球上で移動方向が変わること)を迎える10月30日プラスマイナス数日あたりに夜中から明け方にかけて空を見上げてください。極めて二等辺三角形に近い状態をご覧になりたいなら、2023年3月18日宵の西空まで待ちましょう。(ただし火星は今よりずっと暗くなってます…。)
火星と地球は約2年あまりの周期で黄道近くを一周しつつ会合するため、この二等辺三角形も約2年に1回必ず起きます。そのうち、おうし座の角付近で逆行する年だけは短期間の立て続け三回パターンも起こりうるのです。前回そうなったのは2007年秋から2008年春でした(下B図)。次回は2054年秋から2055年春です。記事下に二等辺三角形実現の正確な日時を掲載しましたので、観察の参考にしてください。今は夜明けの頭上近くに輝く位置ですから、三角形を国際宇宙ステーションが横切るチャンスもありますよ。なお夏至の頃の太陽がこの線を跨ぎますから、6、7月ごろ二等辺三角形になっても太陽に近すぎて見えません。そういう意味で2026年8月までが観察の限界、そのあとは2034年5月まで見えないでしょう。ぜひ貴重なチャンスを活かしてくださいませ。
(※二等辺三角形のタイミングから少しズレますが、11月8日は皆既月食も追加されて、東天に「四つの赤い天体」が勢ぞろいします。これも楽しみですね!)
【火星・ベテルギウス・アルデバランが二等辺三角形を作る瞬間/1970-2070年】※火星が頂点
日付(JST) | 時刻(JST) | 角距離(°角) | 光度(等) | 日付(JST) | 時刻(JST) | 角距離(°角) | 光度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1970年5月26日 | 15:39:29 | 17.17715 | 1.67 | 2019年5月10日 | 13:07:41 | 17.36407 | 1.68 |
1972年5月5日 | 22:56:50 | 17.41186 | 1.66 | 2021年4月17日 | 21:09:53 | 17.69230 | 1.45 |
1974年4月13日 | 14:28:39 | 17.77248 | 1.38 | 2023年3月19日 | 03:50:00 | 18.37034 | 0.75 |
1975年10月1日 | 13:09:05 | 16.07715 | -0.38 | 2024年8月28日 | 21:30:59 | 16.25236 | 0.74 |
1975年12月7日 | 07:25:36 | 18.60902 | -1.73 | 2026年8月5日 | 07:22:47 | 16.51468 | 1.30 |
1976年3月10日 | 03:36:27 | 18.59851 | 0.51 | 2028年7月15日 | 03:21:51 | 16.71483 | 1.51 |
1977年8月24日 | 06:05:59 | 16.30173 | 0.87 | 2030年6月26日 | 03:20:25 | 16.88991 | 1.49 |
1979年8月1日 | 14:05:24 | 16.55157 | 1.36 | 2032年6月6日 | 10:24:50 | 17.06606 | 1.57 |
1981年7月11日 | 17:16:17 | 16.74643 | 1.53 | 2034年5月18日 | 08:04:45 | 17.26840 | 1.69 |
1983年6月22日 | 19:41:43 | 16.92057 | 1.47 | 2036年4月26日 | 19:30:15 | 17.54325 | 1.58 |
1985年6月3日 | 02:23:09 | 17.09918 | 1.61 | 2038年4月1日 | 18:36:52 | 18.02291 | 1.11 |
1987年5月14日 | 20:34:32 | 17.31057 | 1.69 | 2039年9月10日 | 20:01:48 | 16.13367 | 0.34 |
1989年4月22日 | 21:37:57 | 17.60636 | 1.53 | 2041年8月13日 | 21:48:54 | 16.42150 | 1.13 |
1991年3月27日 | 05:35:48 | 18.15579 | 0.97 | 2043年7月23日 | 20:48:18 | 16.64049 | 1.46 |
1992年9月4日 | 02:53:01 | 16.18351 | 0.53 | 2045年7月3日 | 12:51:01 | 16.82291 | 1.52 |
1994年8月9日 | 23:03:18 | 16.46237 | 1.22 | 2047年6月14日 | 18:46:21 | 16.99527 | 1.47 |
1996年7月19日 | 08:27:50 | 16.67419 | 1.49 | 2049年5月25日 | 22:25:29 | 17.18312 | 1.67 |
1998年6月30日 | 04:09:47 | 16.85307 | 1.51 | 2051年5月6日 | 03:10:47 | 17.42147 | 1.66 |
2000年6月10日 | 11:05:03 | 17.02742 | 1.52 | 2053年4月12日 | 12:58:05 | 17.79245 | 1.35 |
2002年5月22日 | 12:38:29 | 17.22159 | 1.69 | 2054年9月28日 | 12:10:15 | 16.07364 | -0.28 |
2004年5月1日 | 10:35:12 | 17.47463 | 1.63 | 2054年12月14日 | 15:38:10 | 18.95311 | -1.78 |
2006年4月7日 | 22:55:01 | 17.88573 | 1.26 | 2055年3月8日 | 12:48:34 | 18.67956 | 0.42 |
2007年9月19日 | 09:23:26 | 16.07455 | 0.04 | 2056年8月23日 | 05:49:49 | 16.31902 | 0.90 |
2008年1月8日 | 22:45:55 | 19.64933 | -1.32 | 2058年7月31日 | 19:17:38 | 16.56185 | 1.37 |
2008年2月23日 | 05:15:26 | 19.07367 | 0.01 | 2060年7月11日 | 00:10:33 | 16.75344 | 1.53 |
2009年8月18日 | 22:05:36 | 16.36385 | 1.01 | 2062年6月22日 | 02:34:40 | 16.92676 | 1.46 |
2011年7月28日 | 04:16:35 | 16.59732 | 1.42 | 2064年6月2日 | 08:51:15 | 17.10605 | 1.62 |
2013年7月7日 | 14:52:09 | 16.78486 | 1.53 | 2066年5月14日 | 02:03:37 | 17.31834 | 1.69 |
2015年6月18日 | 19:00:46 | 16.95790 | 1.43 | 2068年4月21日 | 23:24:32 | 17.62038 | 1.51 |
2017年5月30日 | 00:28:47 | 17.14042 | 1.65 | 2070年3月25日 | 17:19:17 | 18.19618 | 0.93 |
日付(JST) | 時刻(JST) | 角距離(°角) | 光度(等) | 日付(JST) | 時刻(JST) | 角距離(°角) | 光度 |
- 自作プログラムによる計算です。(使用天体暦:JPL-DE440)
- 日本経緯度原点から見た場合の測心計算です。恒星の固有運動や年周視差は考慮しません。
- 表内では1975-1976年、2007-2008年、2054-2055年が「立て続け三回パターン」です。この他1928-1929年、2086-2087年、2101-2102年などもあります。際立った周期性は無いようです。
- 角距離は火星・ベテルギウス間および火星・アルデバラン間の両方共通で、小数以下8桁まで一致しています。表の範囲で最小なのは2054年9月28日のケース。このとき二等辺三角形の面積が最小と言うことです。
- 光度欄は火星の光度概算値です。アルベド(火星地形の明暗)の影響は考慮していません。