天気下り坂の惑星とステレオ画像2022/10/04

20221003木星
昨夜は晴れ間があったものの透明度は悪く、夜半過ぎまで頻繁に雲の飛来もありました。月はいま南に低すぎて見えないため、あまり期待できなかったけれど22時ごろ訪れた雲の合間に木星を観察&撮影(左画像)。撮影後に空を覆った雲はしばらく去りそうになかったので、いったん終了となりました。数時間後、機材を撤収すべく外へ出たらなんと快星。せっかくなので火星も観察。(火星は後日まとめて掲載予定。)

シーイングがかなり酷く、木星の繊細な模様は踊り狂っていました。群雲が湧くような空では好シーイングは望めませんね。しかも視認できない雲の通過で突然光量が落ちたりします。雲と雲の合間がちょうど30分ほどあったため、試しに30分近くのDerotationを行ってみました。大局的なズレは無くノイズ改善も顕著ながら、30分もすると細かいローカル模様が変動するでしょうから、あまり長くないほうがいいのでしょう。木星より自転が遅い地球でも、気象衛星画像を30分もDerotationスタックしたら台風などがのっぺりした円盤になってしまいますからね。

画像がぼんやりしてるのが空のせいか、Derotationのせいか、時々発生する追尾振動のせいか特定できませんが、ともあれシーイングが良くなければ何をやっても良像にならないことは分かります。明日明け方前から降水予報で、いかにも天気が下り坂の兆候を示した夜でした。次に実験できるのはいつだろう…?

【Derotateを利用した立体視】

Derotationは異なる時間に撮影した複数画像を天体表面に描き戻す、いわば二次元・三次元投影変換の応用です。方法自体は惑星探査機ボイジャーのデジタルセンサー黎明期から存在したと記憶しています。(大学時代にいくつもの論文を読んだ記憶があります。)画角の狭いセンサーで惑星や衛星全体像を撮影するには、分割撮影(いわゆるモザイク合成)と衛星移動に伴う視線移動キャンセル(これがDerotateに通ずる)を駆使する必要があったからです。より発展したものでは航空・衛星画像のオルソ化など地図分野で目覚ましい応用例が見られますね。

ところで、WinJUPOSを使ったDerotateは時間管理された複数のスタック画像を用意しなくてはなりませんが、例えば前半画像群と後半画像群とを別々にDerotateスタックすれば、若干時間のズレた2枚の画像が仕上がるでしょう。

木星立体視(平行法)
これを応用すると両眼立体視の画像を容易に作れますね。昨夜の像はかなりお粗末なので、10月1日に撮影した大赤斑込みの木星像で作ってみました(左画像)。前半6シーン合成を右目用に、後半6シーン合成を左目用に配置しました。※北極が上なので、木星は左から右へ回っています。

2枚の画像間隔は約11分。クリックで拡大させ、PC画面から顔を少し離し、平行法で大赤斑同士を重ねるようにご覧ください。いかがですか?木星が飛び出て見えるでしょうか?頭の水平を保ってくださいね。約10時間で360°回ってしまう木星は、ちょうど10分間隔くらいの自転移動(約6°の経度移動)が立体視に良さそうです。瞳間隔が7cmとすると、50cm先の視線交差角が8°、65cm先なら6°程になるため、確かに約10分から13分の木星経度差で仕上げれば一般的モニターでも無理のない立体視ができそうです。

正確な追尾で木星を動画撮影できる方、あるいはPIPPなどで位置固定できる方は、1本の動画を左右10分から15分程度ずらした映像としてミックスして流すだけで立体動画ができますね。ぜひやってみてくださいませ。



今日の太陽2022/10/04

20221004太陽
今日未明は一時的に快星だったものの、明け方には雲が湧き始めました。日が高くなってくると南寄りの風が強まり、昼過ぎには風速7m/s、気温28度を越しています。

20221004太陽リム
左は10時ごろの太陽。望遠鏡が風に揺さぶられ苦労しました。活動領域13115・13116・13117が追加され、現在八つの活動領域が見えています。13113と13112は相変わらず活発で、Mクラスフレアを頻発しています。プロミネンスも何ヶ所かみえますね。南半球のダークフィラメントがいよいよ顔を出しそうなんですが…お天気が崩れつつあります。