2月から3月へ穏やかに移りゆく空 ― 2021/03/01
3月が始まる時間は満月過ぎのお月さまが煌々と光り、空と街を浮かび上がらせていました。当初は曇りの予報だったため晴れた夜空に面食らいましたが、せっかくなので有効活用。月面の観察と、前夜の続きの重星巡りを楽しみました。
左は27日21時前に撮影したシリウス。何をしなくても伴星がはっきり見えるほどシーイングが良くて驚きました。丸一日経った28日夜は湿度が上がり、薄雲が度々通過して前夜ほどシーイングも透明度も上がりませんでした。でも月面を見る限り、川底を見るほどの揺らぎは無く、比較的穏やか。
右下は3月1日0:40頃の撮影で、太陽黄経差は約197.54°、撮影高度は約59.0°、月齢16.86。東が欠け始まっており、ペタヴィウスやラングレヌスなどの大型クレーターがよく見えます。また南極側がよく見える秤動だったため、スコットからシューメーカーあたりまでしっかり確認できました。アムンゼンは影になってしまったようですね。
2020年2月4日記事に書いたように、先週の2月25日に見えた月面Aは昨年2月同様に「極めて貴重な好条件」でした。でも全国的に天気が悪かったようで、当地も完全な曇り空。けれども27日から昨夜まで安定した空が訪れたので良しとしましょう。
この2夜で巡った重星は冒頭のシリウスを含め25、見えなかったものも含めれば30くらい。以下、撮影日時順に掲載します。画像上が天の北方向、縮尺は統一(800px四方=約200″四方相当)してあります。(※εLyrはダブルダブルを全部入れたため画像面積が大きいですが、縮尺は一緒。)ほとんどは離角が15″以下、特に4″以下のものを攻めました。最初のμCMaは今回の観察で基準とした重星です。「基準とした重星」とは、「これが分離して見えるなら、当夜は○秒角程度のものを中心に見てみよう」と大雑把に決めるため独自基準にしてる指標星。
お隣のν3 CMaは、2夜の限界付近。離角1.2″で、ほぼ分離しませんでした。ただ、大気による色ズレを補正したあとも伴星の方向角(位置角)7°あたりに明るさや色の偏りが見られ、星像が分離しなくても「何かありそうだ」と思わせぶりな画像です。ζ1 Cncは1″台ながらお団子状に分離しかけています。この星系は正しくいうと(写せる範囲では)三重星で、南北並びのA・B星系(離角1.11″ , PA:0.9° at 2021)と、少し離れたC星系(離角6.27″ , PA:64.2° at 2021)が集合してます。
同じく三重星のε Hyaは、白く明るく写っている主星が少し歪んでおり、A・B星系(離角0.089″ , PA:314.6° at 2021)が合体して写ったものと思われます。C星系(離角2.712″ , PA:311.6° at 2021)も、ほんの少し右上に離れて暗く写りました。(注:ε HyaのA・B星系PAは来年にかけて120°以上も動くため、ここに書いた年始の値から既にかなり変わっていると思われます。→追記:WDSカタログによる軌道要素に基づき、自作プログラムで2021年3月1日0:00UTCの値を計算したら、離角:0.069″、PA:335.15°でした。たった二ヶ月で20°も回った!)
39 Comや57 Virなどは離角の狭さに加え、主星と伴星の等級差が3等近くあり、分離を難しくしている一因です。色々気難しさはあるけれど、重星観察がこんなにダイナミックな世界だとは知りませんでした。毎年撮りためると移動が分かりそう。いやぁ、面白い!
(補記:星空のシミュレーションで名の知れたフリーソフトStellariumでは、重星の表示が無かったり、明らかに間違っているものが結構ありました。特にPAが全く違うものがあって紛らわしい…。)
参考:
シーイングが悪い夜に重星はどこまで見える?(2021/02/25)
意外に良く見えた重星たち(2021/02/23)
凍える夜の二重星めぐり(2021/01/10)
左は27日21時前に撮影したシリウス。何をしなくても伴星がはっきり見えるほどシーイングが良くて驚きました。丸一日経った28日夜は湿度が上がり、薄雲が度々通過して前夜ほどシーイングも透明度も上がりませんでした。でも月面を見る限り、川底を見るほどの揺らぎは無く、比較的穏やか。
右下は3月1日0:40頃の撮影で、太陽黄経差は約197.54°、撮影高度は約59.0°、月齢16.86。東が欠け始まっており、ペタヴィウスやラングレヌスなどの大型クレーターがよく見えます。また南極側がよく見える秤動だったため、スコットからシューメーカーあたりまでしっかり確認できました。アムンゼンは影になってしまったようですね。
2020年2月4日記事に書いたように、先週の2月25日に見えた月面Aは昨年2月同様に「極めて貴重な好条件」でした。でも全国的に天気が悪かったようで、当地も完全な曇り空。けれども27日から昨夜まで安定した空が訪れたので良しとしましょう。
この2夜で巡った重星は冒頭のシリウスを含め25、見えなかったものも含めれば30くらい。以下、撮影日時順に掲載します。画像上が天の北方向、縮尺は統一(800px四方=約200″四方相当)してあります。(※εLyrはダブルダブルを全部入れたため画像面積が大きいですが、縮尺は一緒。)ほとんどは離角が15″以下、特に4″以下のものを攻めました。最初のμCMaは今回の観察で基準とした重星です。「基準とした重星」とは、「これが分離して見えるなら、当夜は○秒角程度のものを中心に見てみよう」と大雑把に決めるため独自基準にしてる指標星。
お隣のν3 CMaは、2夜の限界付近。離角1.2″で、ほぼ分離しませんでした。ただ、大気による色ズレを補正したあとも伴星の方向角(位置角)7°あたりに明るさや色の偏りが見られ、星像が分離しなくても「何かありそうだ」と思わせぶりな画像です。ζ1 Cncは1″台ながらお団子状に分離しかけています。この星系は正しくいうと(写せる範囲では)三重星で、南北並びのA・B星系(離角1.11″ , PA:0.9° at 2021)と、少し離れたC星系(離角6.27″ , PA:64.2° at 2021)が集合してます。
同じく三重星のε Hyaは、白く明るく写っている主星が少し歪んでおり、A・B星系(離角0.089″ , PA:314.6° at 2021)が合体して写ったものと思われます。C星系(離角2.712″ , PA:311.6° at 2021)も、ほんの少し右上に離れて暗く写りました。(注:ε HyaのA・B星系PAは来年にかけて120°以上も動くため、ここに書いた年始の値から既にかなり変わっていると思われます。→追記:WDSカタログによる軌道要素に基づき、自作プログラムで2021年3月1日0:00UTCの値を計算したら、離角:0.069″、PA:335.15°でした。たった二ヶ月で20°も回った!)
39 Comや57 Virなどは離角の狭さに加え、主星と伴星の等級差が3等近くあり、分離を難しくしている一因です。色々気難しさはあるけれど、重星観察がこんなにダイナミックな世界だとは知りませんでした。毎年撮りためると移動が分かりそう。いやぁ、面白い!
(補記:星空のシミュレーションで名の知れたフリーソフトStellariumでは、重星の表示が無かったり、明らかに間違っているものが結構ありました。特にPAが全く違うものがあって紛らわしい…。)
参考:
シーイングが悪い夜に重星はどこまで見える?(2021/02/25)
意外に良く見えた重星たち(2021/02/23)
凍える夜の二重星めぐり(2021/01/10)
今日の太陽とハロ現象 ― 2021/03/01
3月になりました。昨夜から今朝は晴れ時々くもり。特や夜半過ぎからは飛来する雲が多くなりました。朝から午前中は太陽が観察可能な程度晴れてくれたけれど、午後は一気に雲が多くなってきました。
左は10:15頃の太陽。黒点があった活動領域12804はほぼリムに到達しました。残りの12803と12805も数日でリムに届くでしょう。面白いことに、中央左下、南半球側に黒点が現れました。いきなりだったから驚きです。順調に育つといいな。
右リム側のあちこちに明るいプロミネンスが見えました。ジェット噴射みたいでちょっと怖い…。
午後は日が指す時間もあったけれど、明日に向かってゆっくり下り坂、明日は雨とのことです。17時近くにははっきりしない内暈が見えました(右画像)。ずいぶん日がのびましたね。あと20日で春分ですよ。
左は10:15頃の太陽。黒点があった活動領域12804はほぼリムに到達しました。残りの12803と12805も数日でリムに届くでしょう。面白いことに、中央左下、南半球側に黒点が現れました。いきなりだったから驚きです。順調に育つといいな。
右リム側のあちこちに明るいプロミネンスが見えました。ジェット噴射みたいでちょっと怖い…。
午後は日が指す時間もあったけれど、明日に向かってゆっくり下り坂、明日は雨とのことです。17時近くにははっきりしない内暈が見えました(右画像)。ずいぶん日がのびましたね。あと20日で春分ですよ。
今日の太陽と花粉光環 ― 2021/03/03
昨日明け方から断片的な雨が続き、午後遅くには雷鳴が轟く台風並みの暴風雨になりました。日の入り時間頃は気温が10度も下降し、冷たい夜へ。夜半前に雨は上がったものの、曇り空は明け方まで続きました。桃の節句を迎えた今朝からは雲ひとつ無い良い天気です。
左は9:50頃の太陽。黒点があった活動領域12804は裏側に回り、そのすぐ西にあった12803もリムぎりぎりです。二日前から南半球に出ていた黒点群は12806と採番され、中央子午線を超えています。またその西側に新たな黒点群が生まれており、12807と採番されました。地味に活発になっていますね。小さいプロミネンスが所々目立ちます。
雨上がりの快晴のせいか、スギ花粉による光環がくっきり見えています(右画像)。こうなると換気したくても窓を開けられない…。
左は9:50頃の太陽。黒点があった活動領域12804は裏側に回り、そのすぐ西にあった12803もリムぎりぎりです。二日前から南半球に出ていた黒点群は12806と採番され、中央子午線を超えています。またその西側に新たな黒点群が生まれており、12807と採番されました。地味に活発になっていますね。小さいプロミネンスが所々目立ちます。
雨上がりの快晴のせいか、スギ花粉による光環がくっきり見えています(右画像)。こうなると換気したくても窓を開けられない…。
宵空で火星とすばるが接近 ― 2021/03/04
昨夕は曇りの予報でしたが、日没後の僅かな晴れ間があったので、すばる(プレアデス星団/M45)に接近中の火星を見るべく急いで準備しました。望遠鏡組み立て中から淡い雲がどんどん広がるのが見え、間に合わないかなぁとヒヤヒヤしながら撮影開始。少し雲がかかったけれど、何とか記録することができました(左画像)。薄雲がにじみフィルターみたいな効果を出してくれました。青と赤のコントラストがいい感じ!なお計算上は本日4日宵のほうが若干近いようです。
黄道近くにあるM天体に惑星が接近することは度々あります。小型双眼鏡で見える7等以上の明るさで、黄緯がプラスマイナス5°以内のM天体は、M4、M8、M19、M21、M22、M23、M24、M25、M28、M35、M44、M45の12個。今回は「火星とM45」の組み合わせだったわけですね。(→過去の例:2018年3月の火星とM8・M20接近、2018年4月の火星とM22接近、2020年2月の火星とM8・M20接近、2020年2月の火星とM22接近。)
次に火星がすばるに5°以内まで接近するのは2024年7月21日前後の明け方です。前述のM天体だと、直近では今年2021年4月27日宵にM35へ大接近(離角約0.5°)、同6月23日宵にM44のど真ん中通過(ただし低空)、同12月26日明け方にM4接近(ただし低空)と続きます。撮影が難しくても双眼鏡で気軽に楽しめますから、ぜひご覧ください。
その後完全に曇ってしまいましたが、今日未明に起きてみるとだいぶ雲が引いていました。月が登っていたので撮影できるかなと準備。途中で何度も薄雲通過に悩まされたけれど、こちらもなんとかカメラに収めることができました。右は3時過ぎの撮影で、太陽黄経差は約239.59°、撮影高度は約40.5°、月齢19.96。数日見ない間にずいぶん欠けてしまいました。天の赤道より南に来てしまったため、大気の揺らぎがかなり像を悪化させています。
月面撮影後もまだ晴れが続いていたので、空が白むまで重星を観察。うち6つほど撮影できました。撮影時刻順に下に掲載します。いつもの通り、画像上が天の北方向、縮尺は統一(800px四方=約200″四方相当)してあります。シーイングが悪かったので、やや離れている重星メイン。離角2″の52 Herはモニター上で全く分離しませんでしたが、スタックしてみると北東側(左上)に暗い恒星がくっついているのが分かります。17 Draは上側の接近したふたつがA・B星系で、下に離れている星(16 Dra)もC星系の三重星のようです。
黄道近くにあるM天体に惑星が接近することは度々あります。小型双眼鏡で見える7等以上の明るさで、黄緯がプラスマイナス5°以内のM天体は、M4、M8、M19、M21、M22、M23、M24、M25、M28、M35、M44、M45の12個。今回は「火星とM45」の組み合わせだったわけですね。(→過去の例:2018年3月の火星とM8・M20接近、2018年4月の火星とM22接近、2020年2月の火星とM8・M20接近、2020年2月の火星とM22接近。)
次に火星がすばるに5°以内まで接近するのは2024年7月21日前後の明け方です。前述のM天体だと、直近では今年2021年4月27日宵にM35へ大接近(離角約0.5°)、同6月23日宵にM44のど真ん中通過(ただし低空)、同12月26日明け方にM4接近(ただし低空)と続きます。撮影が難しくても双眼鏡で気軽に楽しめますから、ぜひご覧ください。
その後完全に曇ってしまいましたが、今日未明に起きてみるとだいぶ雲が引いていました。月が登っていたので撮影できるかなと準備。途中で何度も薄雲通過に悩まされたけれど、こちらもなんとかカメラに収めることができました。右は3時過ぎの撮影で、太陽黄経差は約239.59°、撮影高度は約40.5°、月齢19.96。数日見ない間にずいぶん欠けてしまいました。天の赤道より南に来てしまったため、大気の揺らぎがかなり像を悪化させています。
月面撮影後もまだ晴れが続いていたので、空が白むまで重星を観察。うち6つほど撮影できました。撮影時刻順に下に掲載します。いつもの通り、画像上が天の北方向、縮尺は統一(800px四方=約200″四方相当)してあります。シーイングが悪かったので、やや離れている重星メイン。離角2″の52 Herはモニター上で全く分離しませんでしたが、スタックしてみると北東側(左上)に暗い恒星がくっついているのが分かります。17 Draは上側の接近したふたつがA・B星系で、下に離れている星(16 Dra)もC星系の三重星のようです。